テストとか諸々で忙しかったんですーー!
「これはなんだ…雪ノ下」
周りに転がっている悪魔の死体を視線で指さす。よく考えてみたら殺した悪魔とは違い消滅していない為、生きてはいるのだろう。
「帰天に失敗した元人間よ、悪魔の出来損ないね」
ポケットに手を突っ込みながら淡々と説明した。
「帰天…?」
聞いた事のないワードだ。
「5年前に実家の会社が資金提供していた宗教都市フォルトゥナ。そこで密かに行われていた人間に悪魔の力を宿す儀式を転用したものよ。何を間違えたのかオリジナルに比べて成功率は低いけれど…より強力な個体を精製するのに成功したのよ」
「人…?
じゃあ俺がさっきボコボコにしたのは人間だったのだろう。いや、オラリオでもこういうのは日時茶飯事だ。罪悪感は感じるが後悔はしてはいけない。アイツらは人の道から外れたのだから。
「そうよ、ほら、貴方の足元にいるのは…確か戸塚君だったわね」
「!!」
「一人で何とかできると思ったのかしら…ここまで辿り着いたご褒美に儀式を施したらこのザマよ。苦しみながら体の6割がゲル状になったわ」
「………」
「貴方が癒しと拝んでた人が悪魔の力にも耐えきれず肉塊になったのに怒ったかしら?」
足元の肉塊と化した戸塚を見下ろす。半分溶けたような悪魔の顔でも俺には最後の最後まで諦めていない顔に見えた。雪ノ下はその相変わらずの美貌で微笑む。しかし目は笑っていない。
「ゆきの…ちゃん…もう、やめよ?」
「黙りなさい、私は何としてでも計画を完遂させるわ。それが上に立つ人間の義務よ。貴女のような半端な人間と一緒にしないで頂戴」
雪ノ下がポケットから手を出すとポケットが握られていた。嫌な予感がし、それを撃ち抜こうと拳銃を取り出すがコンマの差でボタンを押されてしまった。
「ゆきのし!……た…」
「…………………………………」
揺れる部屋、音を立てて崩れゆく床崩壊する天井、様々な音が入り交じり彼女が何を言っているかは聞き取れないが、あぁ、きっとこういう事なのだろう。付き合いが長い(自身のこれまでの人付き合いから比較)とある程度分かってしまうのが怨めしい。
「必ず…殺してやる」
深く胸に誓うのであった。
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ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
悪魔の群れを撃退し、各々が集まり状況を確認をしていた際に突然の揺れが研究所だけでなく千葉全体を襲う。
「なんだなんだ!?」
「凄い揺れ…」
「また沸いてくるんじゃねぇだろうなぁ?」
「皆さんまた何が出てくるか分かりません!警戒態勢を!」
「何が起こってるんだ…?」
「あ、あそこを!!」
命が指さした辺りを周りが注視する。地鳴りは段々強くなっていく。すると突然地面が割れ、巨大な塔が地中から生えてきた。止まることを知らない塔は何処までも伸びていった。暫くすると塔の成長も止まり、空には暗雲が立ち篭った。
「あれは…バベル!?」
そう、オラリオにいる人間なら誰しもが見違える建造物はバベルに似ていた。相互点を挙げればその色は黄色や緑といった明色がふんだんに使われた外壁。明るい色と相まっておどろおどろしすぎる雰囲気であった。
ヒュルルルル……
「ん?」
すると一同の上に黒い影が被さる。迎撃しようと全員が身構えるがその正体を確認したら安堵の息と共に武器を下げた。その影は時間と共に大きくなっていく。
ギャギャギャギャギャアアアア!!!
「うっぷ……」
一同のすぐ隣に赤いバイクと共に八幡が落ちてきた。魔腕を出しており、そこには葉山以外が知らない気絶している女性が握られていた。
「ハチマン!!」
ベル達が駆け寄る。単騎でカチ込んだハチマンの身を案じていたからだ。アイズも心無しか心配そうな顔をしている。
「どうした…怪我はしてないだろ?」
すると一同が顔を見合わせる。ベートも葉山と怪訝な顔をしている。するとアイズが自身の頭を指差しハチマンに確認を促す。
「頭?…………あふん」
すっと頭に手の平を置きそれを確認するとボロボロの革の手袋に真っ赤な血を付着させていた。いつ付いたんだ?と思考を巡らせていると白目を剥いてその場に倒れ伏した。
「「ハチマン!?」」
「ハチマン様!!」
「ハチマン殿!!」
「医務室に運ぼう、そこの陽乃さんも」
「私は…大丈夫…」
すっと、陽乃の目が開く。しかし一応の事もあり医務室に行き、そこの担当の人に診察をしてもらおうという事だ。
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「軽い衰弱状態だったようね、聞いた話、そんな所にいたらそうなってもおかしくないわ…よく頑張ったわね」
「ありがとうございます…」
保険の先生の鶴見先生の軽い診察によって安堵する陽乃…その周りには話を聞こうとオラリオ一同が集まっていた。
「問題は比企谷君よ、頭を強く打ってるわね…失血による気絶で済むといいのだけれど…絶対安静よ」
「分かりました…」
娘の様子を見に行くと言って鶴見先生は部屋を後にする。ベッドに横たわる比企谷を背に一同は話を聞く。
「自己紹介が遅れたわね、私の名前は雪ノ下陽乃」
「陽乃さん、聞かせてください。千葉に何が起こってるんてすか」
「事の発端は私の父、雪ノ下秋人と宗教国家のフォルトゥナが原因よ」
「フォルトゥナ?」
「ええ、その国はかなり特殊な神様を崇拝しててね、悪魔を崇拝しているの」
『『!!!!!』』
「その悪魔の名前は…スパーダ」
「スパーダ?ベル、聞いた事は?」
「ううん?」
オラリオ一同はスパーダを知らない為、頭にハテナを浮かべている。
「2000年前に正義に目覚めて魔界に反旗を翻し人間界を救った伝説の悪魔よ。当時隔たりのなかった魔界と人間界を分け隔て封印した私達人間にとっての英雄よ 」
「英雄…」
「そんな悪魔を崇拝しているフォルトゥナの頂点に君臨する教皇はやがてそんな神にも等しい悪魔の力を欲して禁忌に手を染めたの」
ゴクリ…誰かが唾を飲み込む。
「悪魔の力を人に降ろす儀式を編み出したのよ。フォルトゥナ崩壊の際に父の手下がその技術を盗んでそれを強化発展させた“帰天”…そして父も悪魔の力に魅入ったの。研究所の地下深くに塔を建設、最深部には父が創造したハリボテの悪魔の体が設置され、その真上には帰天の儀式場。スイッチを押せば塔が地下から地上に生え、より大掛かりな儀式を執り行える。地下じゃ狭すぎるからね計画発動までのカウントダウンか始まった頃にクーデターが起こった。私の妹…雪ノ下雪乃が父に引き金を引いたの。計画は見事に乗っ取られて千葉が特殊結界と内側から発信できなくても外側が見れる電波網が張られた。後はついでに盗んだ技術の極小地獄門で雑魚悪魔達に千葉を恐怖に陥れた。後は適当な人間に帰天を施して、成功したなら部下に、失敗したなら人造悪魔の肉になる…そして計画は塔の起動と共に最終段階に入った…これが全てよ」
陽乃の長い話が終わり、オラリオ一同は黙り込む。そこに慌ただしい足音が近づいてきた。
「大変だ!皆の衆!!」
ベージュのコートを荒立てながら医務室に駆け込んできたのは材木座義輝だった。
「材木座君、何があったんだ?」
「コンピュータ室に来れば分かる。っ…八幡は…」
「軽い気絶だよ、すぐに起きるさ」
「分かった…着いて来てくれ」
八幡独りを残してコンピュータ室に向かう。アイズは別にいいと言い残し、ハチマンの傍に座り彼の手を握っていた。
「これを見てくれ」
モニターに映し出された映像は塔の頂上を写していた。なんでこんな光景が見れるのか心底不思議に思っている一同を察し、材木座が適当にはぐらかす。頂上には丸く黒く、そして大きな繭のようなものが赤い光と共に鼓動していた。
「あれが…雪乃ちゃん…」
「なんと…雪ノ下嬢であったか!!ここに居ないと思ってたら…ならば由比ヶ浜氏とも繋がってるかもしれぬなぁ」
「目標は分かった…要はアレをぶっ潰しゃいいんだろぉ?」
「今は無理ね」
陽乃が断言する。
「あ?んでだよ」
「今現在あの繭の中には大量の魔力が流れているわ。下手に刺激を加えると周りの街に被害が出かねないわ…殺すなら羽化した直後ね」
「そんな…殺すなんて」
「ごめんなさい…でもあの子は沢山の人の命を弄んだわ。到底許される行為じゃない…止めたとしても待ち受けるのは苦しい死。知らない人に殺されるより知ってる人に殺された方がまだ幸せよ」
「じゃあ…誰が命を奪うんですか…?」
「………比企谷君よ」
『『『!!!!!』』』
「ダメですよ!!ハチマンに人殺しなんて…させられません!!」
ベルが激しく抗議する。ヘスティア・ファミリアのメンバーも同意したような顔をしている。
「だったら僕が立候補しますよ。雪乃ちゃんとは知らない仲じゃないからね」
「隼人はあの子に嫌われてるじゃない…それに、貴方にあんな動きができるかしら?」
「あんな動き?」
「瓦礫から瓦礫へと飛び移る運動神経、私に傷一つ付けないように計算尽くで落ちてくる大量の瓦礫を撃ち落とす反射神経、自分をどこまでも犠牲にできる残酷さ…貴方は持ち合わせているかしら?」
「っ……」
押し黙る葉山…その場の空気は重く、暗くなっていた。
「俺が…殺ります」
声のした方を向くと入口に比企谷八幡とアイズ・ヴァレンシュタインが立っていた。
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「またここか……」
最初はウユニ塩湖の様な綺麗な精神世界だった筈なのにいつの間にか俺の立っている水面は黒くドロドロとしたものに変わり空は暗雲に閉ざされていた。両開きの扉はどちらも30度位開き、無理矢理体を捻り入れれば入りそうな気がする。もっと開けば強さを手に入れられるのだろうか。
「予想は当たっているが死ぬ程痛みを味わうからやめとけ」
「アンタか…」
「ああ、にしてもとんでもない巡り合わせだな、因縁の女がラスボスか…人生生きてりゃこんな事あんだな」
「アンタにもそんな経験があるのか?」
「いや、あー…一人滅茶苦茶面倒臭い女がいたな…ワンナイトラブな関係だったが相手さんは俺にベタ惚れしたのか執着してきて困ったなぁ」
昔を振り返り懐かしむ扉の向こうの男。
「どう断ったんだ?」
「妻子がいるからゴメンなって」
「!!??アンタ結婚してたのか!?」
「まぁな、幸せな家庭だった」
「
「大丈夫と言えば嘘になるがアイツ等なら大丈夫だろう…なんせ俺の家族だからな。んな事よりお前の話だ、どうすんだよ雪ノ下って女」
「…殺すしかないだろ」
「それがお前の答えか…あの塔からとんでもない魔力量を感じる。人造悪魔か…洒落臭い」
「なんかマズイのか?その人造悪魔ってのに」
「自分のクローンとか作られたら気持ち悪いだろ…その延長線だ」
「そうか…」
「勝てそうか?」
「当たり前だ…勝負もまだ着いてないしな」
『勝ったものが敗者に何でも一つ命令できる権利を与えよう!』
「そんな事もあったな…そろそろ起きたらどうだ?お前の目覚めを待つ人間もいるしな」
「? 誰だ?」
「起きてからのお楽しみだ」
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「むががががが…!!」
「むぅ…」
囁かな騒音がハッキリと聞こえてくると共に目を開けて騒音のする方を見ると後ろ姿のアイズが小さな女の子の頬を横に引っ張り少女は短い腕でアイズの腕を掴み小さな抵抗をしていた。
「おいおい、何してるんだ?」
「この子がハチマンの…//」
「むがががががが……」
「とりあえず手を離せよ…な?」
アイズが手を離すとアイズの背後でよく見えなかった少女の全貌が明らかになった。長い黒髪、落ち着いた目…鶴見留美だった。
「ルミルミか…どうしてここに?」
「おかあしゃんに…はちみゃんがここにいるってひいて…あと、ルミルミいふな」
ヒリヒリする頬を両手で撫でながら説明する。可愛い。
「お母さん…?鶴見先生の娘だったのか…驚いたなぁ。で、アイズはなんでルミルミに?」
「ルミルミッテイウn」
「ルミルミちゃんが…ハチマンのベッドに入ろうとしてたから…//」
俺史上初観測の顔を赤くするアイズ。
「……ルミルミはなんでベッドに?案件にでもする気?」
「それは…ハチマンが寒そうにしてたから…あとルミルm(以下省略)」
「こういうのをませがきってティオネが言ってた…!」
ちょっとティオネさん?純心なアイズに何吹き込んでるんですか?何故か分からないけど目のハイライトが消えかけてるんですけど?
「落ち着けよ…相手は子供だぞ?」
アイズとルミルミの間に割って入りアイズを制する。
「むぅ……」
そして何故か頬を膨らますルミルミ…
「そういえば他の奴らは?」
「こんぴゅーた?室に行ったよ」
「マジか、俺らも行くぞ」
脱がされていたコートとを手に取り、外されていた手袋を手の傷を隠すようにはめる。部屋を後にしようとすると持ってない方の袖を引かれる。犯人は確認せずとも分かる…この2人だ。
「何?袖引き小僧ならぬ袖引き小娘なの?」
「……また、戦うの?」
2人の顔は不安に塗れていた。
「もちろんだ…」
「どう、して?」
「剣や銃を握れる手がある。豊富な魔力が体を巡っている。ギルガメスが心臓になり鼓動を刻んでる。魂が叫ぶ、「守る為に戦え」って。ゴメンな…待たせてる奴がいるんだ」
いくぞ、とアイズに声を掛ける。今度は誰にも止められることなく部屋を後にする。
「八幡!!」
「?」
廊下にてルミルミに呼び止められる。
「死なないでね」
「おう、サンキューな、留美」
階段を登りコンピュータ室を目指す。
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「俺がって…比企谷、何を言ってるのか分かってるのか?人を殺すんだぞ?」
葉山が比企谷に詰め寄る。
「そうだ、俺は雪ノ下雪乃や悪魔に魂を売った畜生共を殺さなくちゃいけない」
ベルとヴェルフとリリと命は不安そうに八幡を眺め、ベートは横目で八幡を見つめ、アイズは彼に何をしたらいいのか分からず困ったようにしている。
「次の戦いはさっきまでと比べ物にならない程キツくなる…お前達にどれだけ言われようと巻き込みたくない気持ちは変わらない…だから…俺の我儘に付き合ってくれ……クイック シルバー…」
時を止めた八幡は材木座と雪ノ下陽乃以外の人間の意識を首トンする事によって刈り取った。使われてないコードで手足を縛り空き教室に閉じ込めた。
「もう二度と顔向け…できないなぁ…」
どのような形であれ仲間に牙を向けた。その事実が八幡に深く刺さる。今まで受けたどんな傷より痛む。血も出てないのにどうしてこんなに痛むのだろうか、と屋上にて星空の元悩む。
「君が彼ら彼女等を大切に思ってるからだよ」
その答えを簡単に雪ノ下陽乃は出した。
「頭の中身見ないで貰えます?」
「ゴメンね…比企谷君」
深く謝る陽乃に振り向く八幡。彼女は八幡の元に歩み寄り彼の隣に座る。彼等の前には紫に光る繭があった。
「それは何に対してですか?」
「悪魔になったとはいえ人を…ましてや知り合いの女の子を殺さなくちゃいけない状況に持っていっちゃって…私が止められてたら…雪乃ちゃんを…キャッ」
彼女が最後まで言い切るのを八幡は彼女を片手で抱き寄せる形で遮った。抱かれた陽乃には見えないが八幡は闇夜でも分かる程顔が赤くなり手が震えていた。
「は、陽乃さん…そこから先は言っちゃいけません。アンタはこれでも姉なんだ。家族なんだ。言っちゃいけない…と思います。安心して下さい、雪ノ下は俺がちゃんと息の根を止めますから…」
震える彼の手に陽乃も自分の手を重ねる。
(恐いのね…これから人殺しをするのが…家族のような仲間に二度と会えなくなるのが…)
暖かい彼の胸に顔を疼くめること数十分。
「比企谷君…ありがとう」
悩みを振り切った彼女の唇が彼の頬に触れる。
「なっ!?///」
「さっきのお返しだよ、じゃあ私は寝るね//」
屋内に戻っていく陽乃の背中を八幡はただ見つめる。後ろで繭が一瞬だけより一層の輝きを放っているのを知らずに…。
如何でしたか?面白かったと思ってもらえたら高評価と感想をお願いします!!