やっぱり文才が欲しい。
「うぉおおおおおお!」
絶対超える!超えてみせる!!いつもの汚い手なんて使わない!!!
力だ!もっと力が…!
八つ当たりにも等しい感情に身を任せモンスター共を切り刻む。3、4回切ると幻影剣は砕けてしまうから新しいのを次から次へと新しいのを出す。
もう100にも届く程モンスターを殺した。コボルトやゴブリンは勿論ウォーシャドウやフロッグ・シューターを相手取る。
姿勢を低くしウォーシャドウの足を掴み振り回し他のウォーシャドウの頭と頭を衝突させて同時に殺す。
フロッグ・シューターは伸ばしてきた舌を掴み空いた口に幻影剣を3、4本投射する。
流石に魔力も尽きてきたのか地に膝をつけてしまう。
くそ…こんな所で立ち止まってる場合じゃねぇんだよ!
コケにされた。久しぶりにプライドなんてもんが傷ついた気がする。
あの時は普通でいられた。だって真実だったのだから…
「フフフフフ……」
可笑しくて笑っちまう。久々にこんな感情が湧いた。
「……誰だ!」
物陰から視線を感じる。モンスターか?幻影剣を俺の周りに固定し物陰周辺をロックオンする。
「ったく、最近の若者は礼儀を知らないのか?」
手を上げながら物陰から出てきたのはローブを被った老人だった。黒髪のオールバックで神父を彷彿とさせる格好をしていた。いかにも冒険者向きではないのはなりたての俺でも分かった。
「そんな所にいるからモンスターか闇討だと思わないか?」
「ふむ、そう考えればそうだな」
「で、何か用でもあるの?」
「フフフッ…渡したい物があってな…」
「?」
そう言い彼が渡してきたのは何か長いものが包まれた布だった。
「これは?」
「開けてみたら?」
言われるがままに布を取ってみると…
「これは…剣?」
それは灰色のロングソードだった。
「ん?この形って…」
「お前さんがピュンピュン飛ばしてんのと一緒だな」
当然だろ?という風に言ってるが頭が混乱して考えが纏まらない。
どうしてだ?どうして幻影剣と形が一緒なんだ?
「そいつはフォースエッジっていうからな!大切にしろよ〜」
そう言いながら去る彼を追いかけた方がいいと思うがそうはしなかった。
「なーんか、臭うなぁ」
バキバキ…
壁からモンスターが1匹産まれてくる。
「試し斬りには丁度良いじゃねーかよ…」
生を受けたばかりなトカゲの首元に目掛けてフォースエッジを振り下ろすと見事に首と胴体は別れを告げる時間も無く離れ離れになった。
「…ん?」
この剣何かおかしい…切れ味に問題は無いが何かしっくりこない。まるで何かを隠しているような…
ギュルルルル…
そろそろ戻るか…
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街を歩いているとふと目につく喫茶店があった。
「コーヒー…か」
そういえばここに来てから全然飲んでないな…。
見る限り今の所客はいないようだ。
「行ってみるか…」
扉を開ければ鼻腔をくすぐるコーヒーの匂い…はあ、これなんだよ。
「おばちゃん、コーヒー1杯、あと練乳と砂糖、あーいちごパフェも1つ」
「あいよ」
おばちゃんがテキパキと準備するがその姿には一切の無駄がなく洗練されていた。
「はいよ」
出されたコーヒーに練乳と砂糖をぶち込む。一見適当に入れてるようだが体がマックスコーヒーの味を覚えているため適量に完璧にマックスコーヒーが再現されていく。
1口啜る。
「流石マックスだな…」
甘みが脳に届き頭に掛かっていたモヤが一気に晴れてく。
残りは一気に胃に詰め込む。
いちごパフェにも手を付けるがこれもまたとんでもなく美味い。よし、これからはここに通うとしようか。
「ごっそさんでした」
「まいど、520ヴァリスだよ」
「ほい」
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寄り道もしたがホームに帰るとベルと神様がベッドで仲良さそうに寝ていた。
「相変わらず仲良さそうなこって…」
背中に背負っていたフォースエッジを立て掛けるために外そうとするとそれは光となり俺の中に吸い込まれていった。
何を言っているかわからねぇと思うが俺もさっぱり分からん。
改めて出て来いと思うとフォースエッジはフッと出てくる。
…そんな感じね。
さてと…俺も寝るか…
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〜とある場所〜
カツン…カツン…空虚な空間には似合わないヒールの音が鳴る。
女の目的は最も奥にあるたった一つの牢獄。
女は格子を優しく掴み、中にいる男に話しかける。
「彼が現れたわ」
男は岩のように動かなかった首を上げ女を見る…いや、その目はただただ虚空を写すだけだった。
「………」
女にでさえ聞こえない声で彼は呟く。
「じゃあ、必要な物は言いなさい。何でも揃えてあげる」
「………」
「約束しましょう。彼への罪滅ぼしが終わったら貴方の魂を還してあげるわ」
まるで何かの皮が剥がれたような音がする。彼が指を動かしたからだ。
「スパーダ」
確かにその声を聞いた彼女は不敵な微笑みを浮かべた。
そしてその微笑みは誰にも見られることはなかった。
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あれから丸一日寝ていたらしく俺はベルの叫び声で起こされてしまった。なんだよ…女神に添い寝されたからってうるさいなぁ…
後神様、髪の毛事は気にしないでくれ…グレてないからね?
ホントこれ、いつ治るのかな…
「ととと取り敢えずステイタスの更新でもしましょうか!」
ハチマン・ヒキガヤ
Lv1
力:H 130→F 312 耐久:I 32→I 40 器用:G 220→F 350 敏捷:H 190→G 269 魔力:F 375→E 419
《魔法》
魔力操作
《スキル》
相変わらず凄い成長、いやこれじゃまるで『進化』とでもいうのか…
ベルのステイタス更新をしている神様を見るがやはり何かあるような顔をしてる。何か知られちゃ不味い事でもあるのか…はたまた知らせる必要はなくただ隠し事が苦手な人なのか…
「ベル君、紙を切らしてしまったから今日は口頭で伝えてもいいかい?」
「あ、はい。僕は構いませんけど…」
ちょーちょー、思いっきしあったでしょうが。
「とまぁ、2人の熟練度がすごい勢いで伸びてるわけ。何か心当たりはある?」
「「6階層まで行ったんだっけ」」
「ぶっ!?あ、あふぉー!防具もつけないまま到達階層を増やしてるんじゃない!」
「「す、すみません」」
「…これはボク個人の見解に過ぎないけど、君達には才能があると思う。冒険者としての器量も、素質も、君たちは兼ね備えちゃってる」
なんか、そう言われるとむず痒いというか、なんと言うか…
「君達はきっと強くなる。そして君達自身も、今より強くなりたいと望んでいる…約束して欲しい、無理はしないって。昨日みたいな無茶はしないと誓ってくれ。強くなりたいっていう君達の意志をボクは反対しない、尊重する。応援も、手伝いも、力も貸そう。…だから、お願いだから、ボクを1人にしないでおくれ」
神とは根本から俺たちみたいなヒトとは違う。永遠を生き、変わることの無い神生を送ってきた。刺激を求めて下界に降りヒトと触れ合い寵愛してきたから失いたく無いのだろう。
寂しい……そんな感覚はとうの昔に無くなっている。
でもこの神は違う。俺じゃない孤独は辛いし静寂は身を蝕む。そんな体験をしたのだろう。その果てにベルと出会った。ベルもまた然り。
そんな2人の間に入った俺は上等な料理にハチミツ、いや練乳をぶちまけるが如き所業をしたのかもしれない。
どうもいたたまれない。ベルへの恩返しが終わったらどうしようか。
「ハチマンくんとベルくんっ、ボクは今日の夜…いや何日か部屋を留守にするよっ。構わないかなっ?」
「えっ?あ、分かりました、バイトですか?」
「友人の開くパーティーに顔を出そうかなと思ってね。久しぶりに皆の顔を見たくなったんだ」
友人…パーティー…プロム…ウッアタマガ。
それから神様は宴に行きベルはダンジョンに潜りに行った。
俺?俺は…寝る。もうね、疲れが溜まりまくりなのよ、時には休みも必要だよね。
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〜豊饒の女主人〜
「すみませ〜ん、その、シルさん…シル・フローヴァさんはいらっしゃいますか?」
『豊饒の女主人』へ足を踏み入れた僕は自分でも情けないくらいの声しか出なかった。
「ああぁ!あん時の食い逃げニャ!シルに貢がせるだけ貢がせといて役に立たニャくニャったらポイしていった、あん時のクソ白髪頭ニャ!!」
「貴方は黙っていてください」
「ぶにゃ!?」
エルフの店員さんがキャットピープルの店員さんに見舞った一撃が見えなかった。
直ぐにシルさんはやって来る。一昨日の事を思い出すと恥ずかしくてしょうがない。
「一昨日は、すいませんでした。お金も払わずに、勝手に」
「いいんです…こうして戻ってきて貰えたんですから、私は嬉しいです」
「これ、払えなかった分です。足りないって言うなら、色を付けてお返しします」
「あら?フフフッ、あの人も素直じゃないんですね」
何かを察したそうに笑うシルさん…。誰の事を言ってるんだろう。
「坊主が来てるって?」
カウンターバーの内側にあるドアからぬぅと出てきたのはここの女将さん──ミアさんだった。
「ああ、なるほどね、金を渡しに来たのかい。関心じゃないか…でも受け取れないね」
「えぇっ!?ど、どうしてですか?ぼ、ボクはその、食い逃げをしたんですよ?」
「坊主、お代はとっくに払われてるんだよ」
「え?」
え?お代はとっくに払われてる?誰が…
ふと頭に彼の顔が浮かんでくる。ダンジョンに行くかと誘ったが手をヒラヒラとさせて断った彼が…
「全く…あの坊主も大概だよ。酔ってるとはいえ一級冒険者に楯突くなんてさ。フフっでもスッキリしたよ」
「な、何があったんですか…」
「本人に聞きな!」
「…坊主」
「何ですか?」
「冒険者なんてカッコつけるだけ無駄な職業さ。最初の内は生きることだけに必死になってればいい。背伸びしたって録なことは起きないんだからね」
目を見開く。ボクの事情を見通しているのだろうか?彼女はニッと笑みを浮かべる。
「最後まで2本の足で立ってたヤツが1番なのさ!惨めだろうがなんだろうとね。すりゃあ、帰ってきたソイツにアタシが盛大に酒を振る舞ってやる。ほら、勝ち組だろう?」
ミア、母さん…!
「気持ち悪い顔してんじゃないよ!さぁ!行った行った!アタシにここまで言わせたんだ、くたばったら許さないからねえ」
「大丈夫です、ありがとうございました!行ってきまーす!」
勢いよく駆け出して店を出る際、「行ってきます」なんて叫んでしまずいっと顔を赤くさせっぱなしだった。
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「
「そうですよ、知らないんですか?【ガネーシャファミリア】主催のお祭りで」
知らない単語に戸惑う俺は今洋服屋にいる。
神様が宴に行ってから3日経つが実はここに来てずっとジャージしか着てない俺である。汚いよね。
さすがにヤバいと思ったから部屋を飛び出した訳だが…
「やっぱコートかなぁ?」
赤、青、紫、黒のロングコートが隅っこにポツンとある。店員曰く試しに作ってみたがどうも売れないらしい。
オラリオの人達は俺のいた世界とは違い奇抜な格好をした人が非常に多い。今までジャージで過ごせたのはそのお陰だと思うが…流石にね?
「少し痛手だが、ズボンとかも一緒に貰おうかな」
「ま、毎度ありがとうございます!」
「それと、服がボロボロになったらまたここで作ってもらおうと思うのでストックを作ってもらえませんか?」
「分かりました!他の店員にも分かるようにお名前を伺ってもいいでしょうか?」
「ハチマン・ヒキガヤです」
「ではヒキガヤ様、今後とも当店をご贔屓お願いします!」
試しにと紫のコートを着てみる。
うん、なんだか足りない気もするが気にしない。
一旦荷物はホームに置いてこうかなと踵を返すと目の前には金が広がっていた。マックスコーヒーとは違うまた別の独特な香りが俺を包む。
しかし気を取られる事0.5秒、その匂いをハッキリと頭のデータベースに記録した後その人物を躱そうと横にズレるとその金もまたズレる。
「あの…」
「……」
「なんか用でも?」
「……」
無言を貫く金髪のチャンネー、いや何となく正体分かんだけどね?
「……」
「………」
ダッ!
俺は勢い良く地面を蹴る。チャンネー改めアイズ・ヴァレンシュタインから反対の方向に駆け出す駆け出しの俺。
しかし不意打ち虚しく上から再び金アイズ・ヴァレンシュタインが降ってきて目の前に立ちはだかる。
今度は向かい合う形で対面する。
「……」
「……あの」
「はいっ!?」
いきなり話しかけてきたからつい声が裏返ってしまう。
「あれから、順調そう?」
「あぁ、まぁな、着実に強くはなってる気がする」
「良かったら付き合う?」
刹那頭が真っ白になる。いや、中身の話ね?
フラッシュバックするあの日の光景…
『好きです、付き合ってください…なーんて言うと思った?』
『ナルガヤキッも!』
『だーれー?ヒキガエルにメアド教えたのー?ちょーキモイんだけど!』
「アンタを好きな奴なんている訳ないでしょ〜?」
「えーと、友達じゃダメかな…」
消し去りたくて仕方ない記憶が鮮明に思考を侵食する。
「大丈夫?」
しかしそれはアイズ・ヴァレンシュタインによって制止された。
「あ、あぁ、平気だ。心配かけたな…」
「顔が真っ青だよ?」
「か、糖分が足りなくて…」
咄嗟に誤魔化す。誤魔化しきれないと思うが…
「おーい、アイズたーん!どこいくねーん!」
後ろから追いかけてきた
ナイスタイミング!
「アイズたーn…誰やそいつ」
後半ドスの効いた声でアイズ・ヴァレンシュタインに話しかけるが目では「自己紹介しろや、われ」と語りかけてくる。怖っ!
「ど、どうも、偶々ヴァレンシュタイン氏に助けていただいた者です。じゃあ俺は用事があるんでこれで!じゃ!」
「あ……」
後ろで寂しそうな声を出してるアイズ・ヴァレンシュタインを無視して帰ろうとするが運命がそれを許さなかった。
「モンスターだー!!」
嘘だろ…と思ってると頭に“頑張ってね”なんて女の声が聞こえた気がした。運命どころか因縁じゃないすか…
よっしゃ、さっさとモンスターぶちのめして犯人にビンタかましてやるか!
フォースエッジを取り出しモンスターと対峙する。
「全く…退屈させてくれないな、この街は!」
さあ、パーティーでも始めようか…
いかがでしたか?フォースエッジを渡したのは誰なのか、牢獄に囚われてるのは誰か…気になりません?
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