ダンジョンに出会いとボッチを添えて   作:テクロス

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お待たせしました!次回が千葉編最終回になります!


#7 別れの賛美歌はない

 

 

雪ノ下を包む髑髏から発する冷気で霧が町中に発生する。神の恩恵を受けていても少し不便に感じる。そんな状況でも俺と雪ノ下は戦闘を繰り広げていた。

 

「らあッ!!」

 

バリィン!

 

髑髏の持ってた氷柱を破壊しその胸に剣を突き立てようとするも来る事が分かっていたのか上空から迫る氷柱に阻まれる。

 

「これならどうかしら?」

 

髑髏の口が開く。見るからに冷凍ビームを撃とうとしているのが分かる。回避に努めようとするが雪ノ下が何の策も無しにそんな事をする筈が無いと考え、思わず射線の延長線を見る。そこにはよく見慣れた建物があった。総武高校だ。

 

「選びなさい…あなた一人か避難民を」

 

「ホントに…悪魔みたいな奴だ…」

 

「フフフフフ、褒め言葉として受け取るわ……」

 

髑髏の口から水色の光線が出る。躱すのは容易いがあそこには雪ノ下さんも材木座も川崎も…親父も母ちゃんも小町もいるのだ。

 

「おおおおおおおお!!!」

 

ギルガメスを全力で壁のように展開し光線を受け止める。激しい威力に押されるが何とか耐えれる。

 

ザシュッ

 

「ッ…!!??」

 

見なくても分かる。雪ノ下が俺の後ろに展開した氷柱を足に刺したのだ。ホントに…悪魔みたいな女だ。

 

「ウフフフフフフフフフフフ……貴方がこうするのは予想済みよ。本当に変わらないわね…貴方は、自分よりも他人を優先する。だから拒絶される……だから私は貴方に……」

 

「喋るか撃つか…どっちかにしろよ…クソいてぇ…」

 

「じゃあ撃つわ」

 

ザシュザシュッ!!

 

「グアッ!…普通攻撃止めてお話する展開だろ…」

 

今度は右脇腹に穴が空く。力が抜けて光線に押され膝を着く。

 

「いい加減諦めなさい!1に諦め2に諦め3に諦める貴方が何故こうも踏ん張るの!?」

 

「雪ノ下……俺はアイツらと出会って『諦めない』ってのを学んじまったんだよ…グウッ!……愛も力も誇りも手に入れなきゃいけない…『共に高みへと』って約束も果たさなきゃいけない…!」

 

光線に押され、塔の縁にまで追いやられる。

 

「ッ!!」

 

ハリネズミにしようとしているのか後ろに大量の氷柱が出現する。

 

「前言撤回するわ、変わったのね。私達以外の人の手で」

 

きっとプリキュアなら今の所で謎のパワーアップか助っ人が来るだろうが現実はそう甘くない。でもどうせなら一矢報いてやるか。

 

「〜〜〜オラァッ!!」

 

冷えきっているギルガメスの壁を思いっきり思いっきり振り、髑髏に向けて光線を弾く。

 

「ッ!!無駄な足掻きよ!」

 

光線を弾いた反動で俺の体は吹き飛ばされる。重力に逆らわず地面に向かって落ちていくが魔腕を壁に引っ掛けて落下を止める。

 

「これ、登るのめんど…」

 

「こりゃまたひでぇな…」

 

すぐ後ろに翼を生やした悪魔がいた。人型で山羊のような角を生やした悪魔、2、3回見たことがあるし手合わせのした事のある奴だ。

 

「アラストルか…来てたのか」

 

「おう、にしてもスゲェ怪我だな。レンコンみてぇだww」

 

ケラケラと笑うアラストル。この体たらく、笑われても仕方ないだろう。

 

「うるせぇ…」

 

手を伸ばし上に登って行く。

 

「………」

 

登る光景をアラストルはずっと見つめてくる。

 

「なんだよ」

 

「また行ったって殺られるだけだぞ」

 

「かもな」

 

「それでも上んのかよ」

 

「まぁな……」

 

「……………………あーもうッ!!仕方ねーーなぁ!?今回だけだぞ!!」

 

そう言うと何をとち狂ったのか自身の右手首を魔剣アラストルてバッサリリストカットした。やつの血がドクドクと溢れ出てる。

 

「おま…何やって…ガッ!!」

 

強引に口を開けられ血を喉に流し込まれる。鉄臭い味が口の中に広がる。

 

「ゲホッゲホッ!!何しやがる」

 

「見ろよ」

 

顎でクイッと俺の傷を見るように促さる。傷を確認するとみるみるうちに穴が塞がっていく。

 

「なんだ…アンタの血はポーションかなんかなのか?」

 

「答え合わせは終わってからだ。行け」

 

怪我が治ったのにどこか落胆している雰囲気のアラストルは飛び去って行った。まぁ、助けてくれたのならありがたい。

 

「そんじゃ、行くかっ!…うおっ!?」

 

思い切り上に向かって飛ぶと体は思っていたよりも遥かに上に上昇して行った。これもアラストルの血の力か?

 

「貴方も懲りないのね…比企谷君」

 

「ごめんな雪ノ下、今回ばかりも“諦めない”を通させてもらう」

 

「そう…なら貴方も楽園の土となりなさい!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

場面は平塚静とベルとの戦闘に切り替わり2人は打っては捌き打たれては捌くといった一進一退の攻防戦を繰り広げていた。

 

「フッ!!」

 

「ぜああっ!」

 

平塚の拳に対しベルのナイフの刺突。ヘスティアナイフは平塚の拳を突き破った。

 

「どうした!その程度か!?」

 

「ッ!!ファイア・ボルトォォォ!!」

 

アカイホノオは平塚の肩を貫きその右腕を焼き切った。

 

「フハハハハ!……これでは戦えんな…」

 

「どういうつもり…ですか?」

 

「いやはや、聞きたいのだ…比企谷のことを」

 

「ハチマンの事?」

 

「そうだ、アイツは君たちから見てどうだ?」

 

「ハチマンは僕の最初の仲間(家族)です。面倒くさがりやだけどなんやかんや面倒を見てくれて…料理も掃除もとても上手で…僕の兄のような人です。レベルアップした時も一緒に喜んで、どこか思い詰める様な顔をしてしまいますけど、僕は最期までハチマンと一緒に行きたいです!」

 

「そうかそうか……それは、よかった」

 

悪魔の平塚はどこか嬉しそうな声を出すと後ろ向きによろめいた。

 

「ハチマンの事を思ってるならこんな事もうやめてください…悲劇が増えるだけです!」

 

「はっ!彼の事なんて思ってやいないさ、嘗ての小間使いがどうしているか気になっただけさ……ただ私は今度こそ生徒達に寄り添おうとしただけさ…」

 

「?」

 

「持ちすぎるが故に人から拒絶された雪ノ下雪乃…彼女の暴走に一枚かんだだけさ…それでも人が死ぬよう暗躍した罪は消えんがな」

 

塵になっていく平塚…。彼女の命はそう長くない事は傍から見てもよく分かった。

 

「ただ一つ…心残りがあるなら……私は生まれる世界を間違えたのかもな…教員ではなく冒険者になれたらなぁ」

 

「…………」

 

「気病むな少年…比企谷を頼む。アイツは人の心をよく知っている。故にそれを守ろうと自分を平気に犠牲にする」

 

そう言い残して平塚静は息絶えた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

ベルとそれ程離れていない場所でアイズとベートは由比ヶ浜と戦っていた。

 

「アイズ!!」

 

「うん…この悪魔、攻撃を受ける度に強くなってる」

 

「邪魔ァァ!!シナイデェェェエエエエ!!」

 

ボコボコに膨れ上がった肉体の由比ヶ浜はその剛腕を乱暴に振り回す。

しかし相手はレベル6の猛者。駆け引きのかの字もない攻撃なんぞ当たりやしない。躱しながらアイズに切り傷を入れられベートに肩を砕かれる。それでも由比ヶ浜の肉体はブクブクと膨れ上がり体がまた一回り大きくなる。

 

「無駄…ナノ、ワカッテルルルルゥ??」

 

「こいつ…段々バカになってねぇか?」

 

「!!ベートさん、何度も攻撃を当て続ければ…」

 

「面白そうじゃねぇか…!」

 

幾度もなく細胞分裂を繰り返して体を肥大化させ由比ヶ浜自信が制御出来なくなるまで強化させ自滅へと導くのがアイズの考えだった。

 

「ふっ!!」

 

「おらァァァァ!!」

 

そこからはされるがままだった。アイズの剣撃、ベートの打撃が無数に叩き込まれる。えぐられた部位と切り裂かれた部位は肥大化しより体は鈍重になり、最初に相対した時の面影すら最早残っていない。

 

「ァ…ァ゛…………」

 

意識が朦朧とし始めたのか由比ヶ浜結衣は動くことすらままならなくなった。

 

「はっ!こんなもんかよ…にしても汚ぇなぁ」

 

「…………」

 

足裏に着いた由比ヶ浜の肉を忌まわしそうにするベート。剣先に着いた血肉を少し気にしているのかアイズも怪訝な顔を僅かにしている。

 

「オイてめぇ、んな目にあっても俺達の邪魔をする訳はなんだよ」

 

「………ヒッキーを…知りたかっ、たから」

 

「ヒッキー?あいつの事か…」

 

「あの時…何で ヒッキーが姫菜に 嘘のこ はくをしたか知って……ひどいこと言っちゃって………いつか 謝ろうと思っても…ヒッキーは死んじゃってて………」

 

肉塊は段々と萎んでいき人間の女の子の形を象っていく。

 

「こんな私じゃ…謝れないかな……」

 

少女の目線はアイズへと向かう。

 

「貴女は…そうならないようにね…ヒッキーは、、目を離すとすぐ独りになっちゃうから……」

 

そう言い残すと由比ヶ浜結衣は塵へと帰っていった。

 

「行くぞ…アイズ、邪魔は消えた…」

 

「うん……」

 

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ベル達やアイズ達とそれ程離れていない場所でヴェルフとリリルカと命と葉山は三浦優美子と戦っていた。

 

ヴェルフ達は三浦が操る悪魔達を相手にし、葉山はそんな三浦と戦っている。

 

「隼人…今ならウチからユキノシタさんに言って仲間に入れられるッ!また、また、やり直せる!」

 

「それで…どうするんだい?昔に戻って僕はまた皆の『葉山隼人』になって皆の人形にならないといけないのかい?」

 

「ッ!……ゴメン…色々押し付けた事は謝るよ…あーし、周りが見えてなかった…」

 

「それはヒキガヤに言って欲しかったよ優美子…僕達は彼に押し付けすぎたんだ。彼の顔に幾度もなく泥を塗ってしまった」

 

「分かってる…分かってる…」

 

「ならどうしてこんな事を!」

 

「……………」

 

「優美子!!」

 

「罪滅ぼしのつもりだった…最初、ヒキオが死んだなんて何も思わなかった。ほんのちょっとした笑い話としか受け止めてなかった。でも…姫菜から話を聞いて…あーしら、取り返しのつかない事をしたんだなって…それで雪ノ下さんの計画に乗って…でも何故かヒキオが生き返って…姫菜も大岡も大和も殺されて……」

 

「罪の意識が消えてきたのか……」

 

「ヒキオのアノ目!人殺しの目だった…あーしらの事をそこら辺のゴミとしか思ってない目だった!」

 

感情的になった三浦の攻撃が雑になってきた。

 

「それがヒキガヤの見られてた目なんじゃないのか?」

 

「!!」

 

「自分がどう思われようとアイツはいつも人の為に戦う。例え相手が旧知の仲でも」

 

「ッ!!クソオオオッ!!」

 

三浦の大振りの攻撃を避けた葉山は手のドリルを三浦に向ける。

 

「ドリル…アタック…」

 

放たれたドリルは三浦の胸を貫き地面にくい込んだ。

 

「がはッ……」

 

「ゴメン…優美子…」

 

「隼人…アタシ…」

 

地面に落ちた三浦はその手を葉山へと向ける。葉山はそれを掴みとる。

 

「ヒキオに謝っといて…」

 

「あぁ…」

 

三浦の体は塵と化して地面に崩れていった。

 

「葉山さん…お辛いですよね…」

 

リリルカが心配そうに葉山に声を掛ける。

 

「いや………そうだね…偽物でも…本当の思いがあったんだ…」

 

「「「……………」」」

 

「さ、まだ悪魔は残ってる。ヒキガヤの所に行かないよう片付けるよ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

一本…また一本と雪ノ下の伸ばしてくる腸をリベリオンで切り裂く。血が中に入っていたらしく辺り一面は血の海だ。

 

「ちょこまかとッ……」

 

さっきみたいに口から冷凍ビームを出そうと口にエネルギーを貯めている所に魔腕を出して顎を押さえつける。

 

「これでビームは撃てないな…ぐおっ!」

 

髑髏が思い切り体を揺さぶった拍子に血飛沫が飛び散り目に血が入る。目眩しを食らったところで髑髏の巨大でグロテスクな肉のこびり付いた手で掴まれる。

 

「これで攻撃出来ないわね…さぁ、その手を離しなさい…さもないと雑巾みたいに絞るわよ」

 

ググググ…バギィッ!

 

「グブッ!?」

 

口から血が溢れる。肋骨が肺に刺さったのだろう。更にいえば左腕の感覚が無いのは神経が潰されたのだろうか。

 

「大人しくすれば苦しまないように殺してあげるわ」

 

「どっちにしろころすんじゃねぇかよ…」

 

ギギギギ……

 

魔腕を離さずに髑髏の顔を掴む力を強める。

 

ミシミシミシ…!!パンッ!!

 

それでも俺を掴む髑髏の力は強まりどこかの内蔵の弾ける音がした。口からさっきと比べ物にならない程の血液が流れ出る。

 

(あ、このままだと死ぬな…)

 

ーうちの部員をいたぶってくれたようだけれど、覚悟はできているかしら? 念のために言っておくけれど、私こう見えて結構根に持つタイプよ?

 

ーええ。つい最近気づいたのだけれど、私はこの二か月間をそれなりに気に入っているのよ

 

ーようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ

 

「あぁ…思いだした」

 

「今更何を思い出すって言うの?恥ずかしい走馬灯かしら?」

 

「『平塚先生曰く、優れた人間は哀れな者を救う義務がある』だったっけか?」

 

「どういう…意味かしら?」

 

「こういう…意味だッ!」

 

モゾモゾして右腕を取り出し、素早くホルスターの中の拳銃を手に取る。オンブラを髑髏の胸、雪ノ下がいると推測される所に何発も撃ち込む。

 

「リスクリターンの計算は貴方の得意分野の筈だったのに残念ね…死になさい」

 

今度こそミンチになると覚悟していたがいくら待っても痛みを感じることは無い。

 

「な…んだ?」

 

「ッ…ッ!このっ…動きなさい!」

 

『こ…して』

『い…い』

『苦し…』

『…は…ち…ん』

 

肋骨の心臓部から聞こえる雪ノ下の焦った声とは別に声が無数に聞こえる。声の元は今俺を掴んでいる髑髏の口からだ。

 

「これは…相模と似たような感じか…?」

 

しかし今回は制御が上手くできていないように感じる。相模は人質として人間を体に取り込んでいた。……まぁ、俺がこの手で皆殺しにしたが。

 

『八幡…僕だよ』

 

呻き声ばかりが聞こえるのにハッキリとこの耳が俺を呼ぶ声を捉えた。

 

「誰だ…?いや、まて、聞き覚えがある…この声…まさかッ…とつ…か?」

 

満足そうに頷いた髑髏は俺を地面に下ろして俺に近付きじっくりと俺を見つめる。その一挙一動に戸塚の面影を感じる。あぁ、認めたくなかったがまさか本当に…

 

『ゴメン八幡……僕達もこの体をそう長くは乗っ取れないんだ…』

 

「この死に損ないッ……!」

 

雪ノ下と戸塚達が激しく体の取り合いをしている。髑髏の挙動が不安定になっているのがいい証拠だ。

 

『八幡ッ!!今の内に…皆の願いを…残された人たちの明日を……』

『頼む!小僧!』

『殺してくれよ…』

『もう嫌だ…』

『俺達がこれ以上増えないようにッ!』

『家族を…巻き込みたくない…』

『君しかいない……』

『解放してくれ……!』

 

「…………分かった」

 

閻魔刀をベルトに挿し、リベリオンを背中に背負い、右手を閻魔刀の柄に近付けて居合のように構えて目標を見定める。魔力を練り上げ閻魔刀とリベリオンに集中させる。閻魔刀は蒼く、リベリオンは紅く光る。全体的に高まった俺の魔力は背後に魔人を作り出しそいつも構えを取っている。

 

『『『ありがとう……』』』

 

「……………」

 

涙混じりな声が聞こえる。全員、本当は生きたかったのだ。明日を見たかったのだ。人として当たり前の感情、それを雪ノ下が摘んでしまった。到底許されるべきではない。

 

『私を…止めて…』

 

崩れる瓦礫の中で雪ノ下は確かにそう言った。もし、俺の仮説が正しいのならばこれこそ彼女の希望なのだろう。

 

次元斬…絶

 

刹那、閻魔刀の居合により髑髏の体に無数の切れ目が走ると同時にその体の延長線上の何も無い空間にも切れ目が走る。

 

同時にリベリオンのスティンガーを髑髏の心臓部に穿つ。紅い光は的確に心臓部を捉え背中までその刃は貫通した。その勢いで髑髏は天を仰ぐように倒れる。

 

「…………」

 

リベリオンを抜きそのまま髑髏の直上に飛び上がりフォースエッジを取り出す。紫の魔力帯び、赤黒い稲妻が走るその刃の先をを真下の倒れた髑髏に向けて降下する。

 

「天獄……雪ノ下、お前の死が来たぞ」

 

フォースエッジが髑髏を介して地面に刺さった瞬間に赤と黒の入り交じったドス黒い魔力が塔を砕きながら迸る。亀裂は塔のあちこちに広がりとうとう衝撃に耐えられなくなりその巨塔は崩れた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

ゴゴゴゴゴ……

 

「塔が…崩れてく…」

 

集まったオラリオ勢は崩れる塔を眺めていた。未だに戻らない仲間を待ちながら。

 

プップー!

 

「お前ら!危ねぇから乗れ!」

 

トレーラーを運転するネロのデビルブリンガーと扉からやれやれ、と面倒くさそうに出て来たダンテとバージルによって一行はトレーラーに乗せられた。

 

「ま、待ってください!まだハチマンが!」

 

「…貴様らの仲間はこの程度の瓦礫で死ぬのか?」

 

「待つことだって信頼の一つじゃないのか?」

 

シートに深く腰を掛けて寡黙な雰囲気を醸し出しているバージルと呑気にピザを食べているダンテに諭される。

 

「取り敢えず総武高校の体育館まで行くぞ。避難民達の世話をキリエとニコがやってる」

 

「あの鬼ババ達は何してんだ?」

 

「万が一の為に体育館の護衛をしている」

 

「ダンテさん…一つ聞いてもいいですか?」

 

「なんだ坊主、野郎のナンパはNGだぞ」

 

「どうして八幡にあそこまで?黙って見過ごしていればあのまま敵を殲滅していたのに…」

 

ダンテがいくらおちゃらけようと葉山の目は真剣だった。

 

「あの力はな…上手く説明できないが…あんな風に使っちゃいけねーんだ。衝動に任せて振るう暴力程みっともねーのはない」

 

「悪戯に命を奪っても残るのは罪悪感とやるせない気持ちだ。ならば正気で、本気で挑んだ方が良いに決まってる」

 

「なるほど…」

 

ダンテとバージルにも過去に何かあったのだろうと察して深追いしない葉山だった。

 

「私からもお一ついいですか?」

 

「おっ、なんだ?嬢ちゃんからの逆ナンなら大歓迎だぜ」

 

後で二人に言ってやろ

「マジで勘弁してくれネロ」

 

「コホン!改めまして…どうしてバージル様は閻魔刀を持っているのですか?」

 

「それはこっちのセリフだ」

 

「はい?」

 

「リベリオンと閻魔刀は2本目なんてある筈がない。あってはいけないのだ」

 

薄く目を開けいつも以上に真剣に語るバージル。

 

「それって…どういう」

 

「リベリオンと閻魔刀はな…親父の形見なんだよ」

 

「「「「!!!」」」」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!リベリオンと閻魔刀は……あの、ハチマンが作ったんです」

 

「なに?」

 

「鍛冶場で打ったとかじゃなくて…こう、生み出した…みたいに」

 

「成程…大体分かった…そうか、そうだったのか…」

 

「因みに御二方のお父様はどういった方なんですか?」

 

リリルカが恐る恐る質問する。

 

「あぁ、知らないのか…親父はスパーダって名前だ」

 

「スパーダ?スパーダってあの…」

 

「伝説の魔剣士…スパーダだ」

 

「「ええええええええええ!!??」」

 

「てててててことは…バージル様の息子のネロ様は…そのお孫さん?」

 

「そういえばそうなるな…ま、顔も見た事ねーけどな。っと、着いたぞ」

 

ダンテとバージルが雪ノ下陽乃から聞いた伝説の魔剣士スパーダの息子で更にネロはその孫という衝撃の熱が冷めないままに一行はトレーラーから降りて総武高校の校門をくぐり体育館へと足を運ぶ。

 

「ニコもいねぇな…」

 

「あの鬼ババ共はどこいった?」

 

「ついさっきスポーツカーを奪って何処かに向かいました…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

ガラガラガラ…

 

瓦礫の中から這い出るひとつの影があった。紫のボロボロなコートを着た男だ。左腕はベキベキに折られており、ピクリとも動かすことは出来ない。口からは大量に血を吐いた跡が見られる。

 

「チッ……こんだけやってもまだ生きてるのか」

 

その男、ハチマン・ヒキガヤが徐に歩き、瓦礫の上で横たわっているもう一つの影の元へ歩み寄る。

 

「俺の勝ちだ…雪ノ下」

 

「そう、ね……私 の、負け…」

 

「理由なんて聞かない…分かるからな」

 

「そう……ひきがやくん…耳を…かしてくれる、かし ら?こえ が うまく だせ、なくて」

 

「あぁ…」

 

比企谷が雪ノ下の元に近付く。

 

「なんだ……」

 

「…………これが、答えよ…」

 

突如彼女の腕が比企谷の襟を掴み、その顔を自分の元へ引き寄せる。そして彼女の唇が彼の唇に触れる、ことはなかった。彼の唇のすぐ横だった。

 

「ね…さんに、して もらってた でしょ…」

 

「見えてたのか…」

 

「つみなおとこ…地獄に…落ちなさい…」

 

「直ぐは行かねーよ…由比ヶ浜と待ってろ。最高の土産話を聞かせてやる」

 

彼の中で既に修学旅行の件はどうでもよかった。その件は今回の勝負で既にケリがついていたからだ。

 

「ちりになって…死にたく、ないわ……」

 

「勝ったのは俺なんだけどな……わぁった」

 

ー勝った方が負けた方に何でも命令できる、というのはどうだ?

 

「そんな事もあった……怖いな、全てが過去になっていくのが」

 

「かこ…では、ないわ…おもいで…よ」

 

そうか、と呟き比企谷はルーチェを取り出し一発…雪ノ下雪乃に銀色の弾丸を撃ち込んだ。満足そうに微笑みながら死亡した彼女の体はポロポロと帰天悪魔達と同じように崩れていった。一つだけ違う点は手の平に収まるほどのとんでもない冷気を発する欠片を残した事だ。

 

「…………」

 

それを拾い上げ、ハンカチに包みポケットに入れる。そしてフラフラと歩き出し瓦礫から少し離れた所に無造作に置いてあった紅いバイクに跨り学校へと運転していく。

 

「…………………………」

 

暫く運転していたが体力と身体がが限界に達したのか転倒し、バイクから転げ落ちた。朦朧とする意識の中で彼の目にはほんの少量の涙が浮かんだ。

 

「あら…こんな所に大きい落し物ね」

 

「トリッシュ…これが話に聞いた…」

 

「何呑気にしてんだよ!こいつ左腕潰れてんぞ!早く運ぶぞ!」

 

「分かったわ…あら?泣いてるのかしら?」

 

泣いてない…これは雨だ…

 

「雨なんて降ってないわ…」

 

金髪の女性に担がれてハチマンは総武高校の保健室まで運ばれた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「……………んぁっ?」

 

重かった目が開くと昨日運び込まれたばかりの保健室の天井が視界一杯に広がった。何故か上裸なのを置いておいて左腕の違和感を確かめると包帯でぐるぐる巻きにされていた。

 

「いててて…」

 

重い体を起こして椅子に掛けてあったコートを上から羽織る。そのままフラフラと目的もなく歩く。今は午後の暗くなってきた頃なのだろうからか、その際に誰一人ともすれ違わないのに違和感を覚えながら歩を進める。

 

外に近付くにつれてガヤガヤと人の気配が多くなっていく。あまり目立たないように慎重に昇降口から外に出ると違和感の正体が分かった。

 

「夕飯の配給か……」

 

テントの中には見慣れたメンツと配給係だと分かるようビブスを着た生徒が飯をよそっては渡しを繰り返していた。唯一知らない事といえば見知らぬ茶髪の美女がいる事だ。何だあの天使スマイルは!?

 

「何ともなさそうだ…」

 

今の所悪魔の脅威に晒されてないようだ。終わったのか…。

 

ギュルルルル……

 

「そういえば何も食ってねーな…」

 

「ほらよ」

 

どうにかして配給を受け取ろうと考えていたら突然隣から弁当が差し出された。

 

「どうも……」

 

「髪色…黒くなってんぞ」

 

「白黒つかない髪なんすよ…」

 

確かネロさん…だったっけ?いつの間にか隣にいた彼から弁当を受け取り食べようとするが左腕が使えない為魔腕を出して左腕代わりに使い食べる。うん…美味いな…ちょっと冷めてるが絶品だ。

 

「美味い……」

 

「だろ?キリエの手作りなんだ」

 

「キリエ?」

 

「ほら、あそこの茶髪の…」

 

「あぁ、あの美女か…」

 

「一目惚れしたのか?」

 

ちょっとネロさん、殺意出てますよ?

 

「まさか、そういうのは信じない主義なんで」

 

「アンタも面倒くさいんだな…」

 

「なんとでも言ってください…」

 

箸を進めあっという間に完食する。

 

「ごっそさんでした…ハックショイ!!うぅ…チッ」

 

「そんな格好してるからだ…ちょっと来てくれ」

 

ネロに誘導されるがままについて行くと。彼等が乗ってきたトレーラーに案内された。

 

「ニコ、いるかー?」

 

「なんだよ、今煙草吸ってんだろ…」

 

急いでポケット灰皿に煙草をしまうニコと呼ばれた褐色肌とへそ出しが特徴的な女性がいた。

 

「俺が昔着てたコートどこやった?」

 

「知らねーよ…奥の棚じゃねーの?」

 

「適当な女だな……」

 

ガチャガチャと辺りを調べたネロさんは赤いパーカーと黒いコート一式を取り出した。

 

「ボロボロの格好じゃ締まらねーからな、俺のお古だけど着てみろよ」

 

ニコさんの目を気にしつつ「お前の裸体なんて興味ねーよ」……それはそれで男の尊厳に関わる気もするが気にされないなら良いだろう。……ぐすん。

 

着替えをする際にホルスターを外して二丁拳銃を机に置くと運転席にいたニコさんが勢いよく飛んできた。

 

「おい!ちょっと見せろ!」

 

「え!?」

 

まさか俺の裸体に…と思いきや置いた銃に目が釘付けになっていた。銃に負けた…のか、俺は。

 

「見た目はトリッシュのと同じだ…お前…これをどこで?」

 

「知り合いの悪魔からプレゼントされたんすよ」

 

「知り合いの悪魔って…大丈夫なのか?」

 

「まぁ、まだ実害はないですから…」

 

少し体弄られたけど。

 

「おいお前…ハチマンとか言ったな…これ借りてもいいか?」

 

「え…何すんすか」

 

「ちょーっとじっけ…改良してやるよ。今までよりホットでクールな45口径にしてやるよ!」

 

「まぁ、火力とか上がるなら別にいいですけど…」

 

着替えの邪魔だからどいてくれませんかね?

 

「よっしゃ!ラボに引っ込んでるから邪魔すんじゃねーぞ!」

 

嵐のように銃をかっさらいニコさんは奥に引っ込んで行った。

 

「嵐みたいな人ですね…」

 

「まぁな、腕は確かなんだけどな」

 

そうこう話している内に着替えは終わった。

 

「おぉ、似合ってんじゃねーか」

 

包帯巻の左腕を首から吊るしているため痛ましさが取れない気がする。ま、似合ってると言われてるのだからいいのだろう。

 

「やるよ、それ」

 

「え…いいんすか?」

 

「あぁ、着られなくなって燻ってるよりまた着られるならソイツも喜ぶだろ?」

 

「じゃあお言葉に甘えて…頂きます」

 

「俺はキリエん所に行くからそこに飲みもんとか食いもんがあるから適当に飲んでてくれ」

 

ネロさんはトレーラーから出て行ってしまった。

 

バンバンバンバン!!

 

するとニコさんの引っ込んだ奥から銃声が聞こえた。今までより重く強い音がした。どうやら本当に強化されてるのだろう。

 

「あーーー!!ムッずかしいなぁ!」

 

突然癇癪を起こしながらニコさんは出てきて冷蔵庫に入っている飲み物を強引に取って俺の隣に座り栓を開けた。

 

「詰まったんすか?」

 

「構想は出来てたんだけどな。銃口が熱くなっちまってな…連射が効かなくなんだよ…… アタッチメントとの干渉もあるしな……」

 

「あ……だったらこれ、使えませんか?」

 

ボロボロのコートに入っていたハンカチに包まれた雪ノ下が遺した欠片を渡す。

 

「冷たっ!おおお…これならイけるかもな!サンキュー!」

 

勢いを取り戻したニコさんは再び奥に引っ込んで行った。

 

「これは……」

 

また暇になった俺は辺りを見渡していると気になる本を見つけた。グラビアとか雑誌ばかりなのに1冊だけある一風かわつわた本。表紙に大きくVとあるその本をパラパラと捲ってみる。

 

「悪意から語られる真実は、どんなでっちあげの嘘も顔負けだ。……ウィリアム・ブレイクか懐かしいな」

 

中学二年の頃にめちゃくちゃ格言とか調べまくったっけ…それを小町に披露して引かれたのは記憶に残っている。

 

「お前は本を読むのか?」

 

するとガチャ…と蒼いコートの男、バージルさんが入って来た。

 

「まぁ、暇な時とかに…」

 

「そうか…アイツらは文学に詳しくないから新鮮だ」

 

「そっすか…まぁ、失礼ですけどそんな感じしましたもん」

 

ネロさんは明るい陽キャみたいな感じで本とかはあんま読まなそうだし、ダンテさんに関しては本を嫌悪してそう。

 

「おーおー、言ってくれるなー」

 

するとダンテさんが入って来た。ダンテさんは俺の対面に座るバージルさんの隣にどかりと座る。あ、バージルさんちょっとスペース空けた。いや、距離置いてるだけか。

 

「調子はどうだ?担ぎ込まれた時は失血による貧血で死にかけてたんだぞ?お仲間さん達の血液型なんて分からねーから俺達が血分けてやったんだからな?そこら辺感謝しろよ?」

 

「…ありがとうございました」

 

「なんか素直に感謝されるとむず痒いな」

 

冷蔵庫から冷えたジャンボリーパフェを2つ取り出したダンテさん。見た感じストロベリサンデーだろうか。

 

「食うか?」

 

「もちろん」

 

「バージルも食うか?」

 

「…今回だけだ」

 

「素直じゃないねぇ…」

 

ダンテさんからパフェを受け取ったバージルさんも加え今までにあった体験とかを談笑しながらパフェを平らげた。ベル達が来て安静にしてろと怒られるのはその後の話だ。

 

この2人と話していると親友かいるはずも無い自分の子供と話している気分になっていたのは秘密だ。




如何でしたか?1万字を超えてのは多分初めてなのではないかな?

感想などを頂くと今後の糧となるのでバシバシ下さると嬉しいです。
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