ダンジョンに出会いとボッチを添えて   作:テクロス

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お待たせしました。
今回はベルとのちょっとした絡み、八幡の家族に対する思い、フレイヤとの確執、ハーレムとタグを付けても中々ヒロインとの話がない回となっております。ヒロイン達との絡みはもう少し落ち着いた状況になってからがいいと思います。弱いまま口説かれても、ねぇ?


♯5 あの日

 

拳を振り下げるモンスターの拳をフォースエッジで突き刺す。

 

「ガアアアァァァァァ!!」

 

痛みに悶えるモンスターの顔を綺麗な十字に切り刻みトドメと言わんばかりに首を切断する。

ゴシャ、と4等分にされたモンスターの顔が落ちる

「これで3匹目…」

 

流石にちょい下ら辺の層にいるモンスターは手応えを感じる。

フォースエッジを背中にしまいダイダロス街の住宅街の屋根に登る。

 

「他には…」

 

スタッ

 

隣に軽い音を立て此方を見てるのは『戦姫』。決して歌ったりもしないし殴ったりもしてこないだろう。…多分。

 

「何か用か?」

 

「どうしてそんなに強いの?」

 

「嫌味か?」

 

「そんなこと、ない…」

 

目に見えて少ししょぼんとする『戦姫』。

 

「ひたすらダンジョンにいたからな」

 

「どんな戦い方をしたの?」

 

「あ?ひたすら斬ったり殴ったり掴んでは投げてみたりしてただけだが…」

 

「…独特、だね」

 

そうか?別に誰かが教えてくれるような戦い方なんて無いし。ベルからは微妙な顔をされたが間違ってる筈がないだろう。人によって戦い方なんて千差万別。ベルはナイフで戦うならヴァレンシュタインは腰に提げたレイピアを使ったりするのだろう。

 

「ヴァァァァァァァ!!」

 

少し離れた場所からモンスターの雄叫びが聞こえる。丁度反対側にも一体モンスターを発見した。

 

「ヴァレンシュタインはあっちのモンスター、俺はあっちの猿んとこに行く」

 

「うん、気をつけて」

 

「……」

 

人に心配される経験が少ない為なんとも言えない気持ちの悪い感覚に襲われる。

 

「…訳わかんねぇよ」

 

彼女の背中を見ながら呟く。見ず知らずの男にそこまで気にかけるか?

しかしそんな事に時間と思考を割く暇は無いから足早にモンスターの元へ向かう。

 

 

「「ほああああああああぁぁぁ!?」」

 

何やってんの?アイツら…

そこには神様をお姫様抱っこしてるベル・クラネルの姿があった。

逃げるクラネル達を追いかける猿のモンスター、少ししつこすぎやしないか?

俺も追いつく為に走ってるがクラネルの速さは知ってる通りめちゃくちゃ早い。しかしそれに負けず劣らずモンスターも早い。

 

「あそこは…」

 

しかしクラネル達が行き着いた先は袋小路だった。

目に見えてクラネルの顔が暗くなっていく。

ダイダロス街の住民達は屋内からクラネル達を盗み見している。

 

「見捨てるのか…」

 

良く考えればそれもそうだ。

誰だって自分が可愛い、巻き添えは喰らいたくない。そんな事は当然の反応だ。

 

ジワッ……

 

……見てるならそこで見てろ。

 

喋ってる神様とクラネルの間をモンスターが拳を振り上げる。

 

「不味い…!」

 

拳と彼らの間に割り込みモンスターの拳をフォースエッジで受けるが攻撃は防げても威力までは防げず吹き飛ばされ壁に激突する。

 

「がはっ…!」

 

「ハチマン!?どうしてここに!?」

 

「モンスターが逃げたらしいから狩ってたんだよ。多分そいつが最後になる」

 

「ハチマン……服似合ってるよ。後髪の毛また少し白くなってるよ」

 

「今、それ言う必要ある、か?」

 

息絶え絶えに返事をする。なんか悪い気はしない。クラネルからは少し出会ったばかりの戸塚臭がする。天使とまではいかないがな!

ていうかまた髪の毛白くなってんの?マジで何なんだよこれ。

 

「倒す手はあるのか?」

 

「ベル君のステイタスを更新して強化したベル君の力をヤツにぶつける」

 

なるほど、クラネルの爆発的な伸びならもしかしたらヤツを殺れるかもしれない。チラと彼を見てみるとやはりその顔は暗く沈んでいた。

 

「…無理です、神様。神様も見たでしょう?僕の攻撃、アイツに効かないんです。少し力が強くなっても、シルバーバックには致命傷を与えられません。僕は…あいつを、倒せません」

 

見るからに落ち込んでるクラネル、こりゃ必殺技的な奴が弾かれたんだろう。

 

「攻撃が、通用するようになれば?」

 

「え?」

 

「ダメージを与える事ができれば、君はあのモンスターが倒せるかい?」

 

そう言った神様は手にしてたケースを開けて中身をクラネルに渡す。

 

「ベル君、いつから君はそんなハチマン君みたいな卑屈なやつになったんだい?ちょっと前なら運命の出会いとか馬鹿みたいなこと言って、平気でダンジョンの奥へもぐっていったじゃないか。あの時の能天気な君は、目標を見つけて絶対に強くなるって誓ってた君は、一体どこへ行ったんだい?」

 

クラネルを諭す様に語る神様…絶対俺の事いらないよね?

 

「ボクは君のことを信じてるぜ?こんなの『冒険』の内にも入らない。だってそうだろ?ヴァレン何某とかいう化物みたいな女を目標にしている、冒険者ベル・クラネルなら、あんなモンスターちょちょいのちょいさ。ボクが君を勝たせてやる。勝たせてみせる」

 

「神様……………………ハチマンの前で言わないで下さい///」

 

「あれ?言っちゃダメだった?」

 

「ダメです!」

 

「ヴァアアアアア!!!」

 

猿のモンスター、シルバーバックが痺れを切らせたのか吠えてる。

 

「時間は俺が稼ぐ、神様はクラネルのステイタス更新を」

 

「任せたよ!ハチマン君!」

 

シルバーバックの前に立ちフォースエッジを逆手に持ち魔力を篭める。

 

「メインディッシュには少し早すぎやしないか?」

 

力一杯振るった斬撃は魔力と共にシルバーバックの足元へ向かい右足を切断した。

 

「こんくらいでいいかな…」

 

痛みを怒りに変えたシルバーバックの拳は先程のより早く向かってくる。

 

「まだなんだよなぁ」

 

振り上げていたフォースエッジに残っていた魔力をできるだけ充填し追い討ちにと振り下げる。

 

斬撃は拳とぶつかり相殺される。斬撃は砕け散りシルバーバックの拳も砕ける。あれじゃ暫くは動けまい。

 

「それじゃあメインディッシュだ。クラネル!!」

 

バッと物陰からステイタス更新を終えたクラネルが飛び出す。その速さは今までとは比べ物にならない速さだった。

 

「━━ぁああああああああああああああああッッ!」

 

突撃槍(ペネトレイション)

 

クラネルの新しい漆黒の刃がシルバーバックの胸部を穿つ。

 

その勢いを殺しきれなかったクラネルは宙を舞い落っこちた。

 

「━━━━━━━━ッッ!!」

 

瞬間歓声が迸る。

ダイダロス通りの住民達が興奮を爆発させた。

歓声に当てられたクラネル達は嬉しそうに笑う。

 

ジワッ……

 

もう1人の立役者の方を見ると彼女は路上に倒れていた。

彼女の元へ駆け寄ると歓声を振り切ったベルも到着した。

 

そんな時にも関わらず、いやそんな時にだからこそなのか背中に何時ぞやの気持ち悪い視線を感じる。

バッと振り返るが何も見えない。

ーきっとそいつがモンスターを放した犯人だ。

 

精一杯の殺意を込めて視線の先を睨む。

 

「……殺す」

 

そんな呟きは歓声にもみ消された。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

ゾワッ!!

 

これまで長い間を生きてきたが有り得ない程の殺気を今回の犯人。フレイヤを包む。

 

「フフフフフ…久しぶりだわぁ!この感覚!身の毛もよだつような感じ!でもまだ足りない…人からしたら黒でもまだ覚醒もしてない貴方は純白。その翼が!その咆哮が!その殺気が!オラリオを包んだその時貴方はやっと私のモノになるの……」

 

お気に入りの2人のうち1人を怒らせてしまった。

しかし収穫もあった。

やはりあの目はあの時のあの方に瓜二つであった。

 

「子供か血縁者かまたは……まさかね」

 

そう、あの方の血縁者は何故か途絶えたはず…この世界に誰一人としていないのだから。

 

「お詫びを考えとかなきゃ後味悪いわね…」

 

そしてその顔は恋する乙女のそれであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

途中で出会ったフローヴァさんの提案で『豊饒の女主人』に神様を休ませてもらえる事になった。因みに神様は過労で倒れたらしい。

 

そんな神様との会話を一通り終わらせたクラネルは俺とテーブル席に座っている。

 

「じゃあ、始めようか!」

 

「何をだよ」

 

「親睦会!」

 

「えぇ……」

 

「そんな面倒くさそうな顔しないで!?」

 

「めんどくさいじゃん…」

 

高校入学当初もあったらしいけど体のいいグループ分けみたいなもんだろ?俺?呼ばれてないよ?事故で入院してたし。

 

「とは言え親睦会つったって何すんの?」

 

「軽く自己紹介とかかな?」

 

クラネル、意外とオドオドしてる感じがするがこういう時コイツは中々引かない奴である事が今日1番の発見だな。

 

「名前はハチマン・ヒキガヤ」

 

「それから?」

 

有無を言わせないような笑顔、やだこの子意外と悪魔っぽい?

 

「…年は17、趣味は読書位かな…好きな物はマックスコーヒー、イチゴパフェ、オリーブ抜きピザetc…。嫌いな物は…それ以外」

 

「好きな物と嫌いな物がざっくりし過ぎてるよ!?」

 

「仕方ないだろ、嫌いな物なんて考えると何時ぞやの狼野郎しか出てこないんだよ」

 

「恨みが強すぎる気がするんだけど…」

 

「逆にお前は気にしなさすぎるんだよ」

 

「そうかなぁ…」

 

「そうだそうだ、ここは冒険者の街なんだろ?冒険者の性格も質も千差万別、いい人も居るかもしれないしバカみたいな事をする奴もいる」

 

「それは確定なんだ…」

 

「当たり前だ。良い奴なんてポンポンいる訳ないだろ」

 

ふと目を泳がせると慌ただしく皿を運ぶ猫耳生やした女性にエルフと思しき女性、普通の女性、豪傑な女性ガイル。いい人も居るだろうけどよく分からないから保留ね。

 

「ホントにこの街は色んな種族の人が集まんだな…」

 

ふと話を逸らすように語る。いやほんと、エルフとかドワーフとかファンタジーの塊みたいな人がわらわらといんだもん。面食らうじゃん?

 

「そうだね、ボクもここに来たばっかりの頃は驚いたよ。ハチマンの故郷にはそういう人達はいなかったの?」

 

「いなかったぞ、なんなら同じヒューマンなのに肌の色、国、宗教、思想で戦争も虐殺も差別も起こるほど荒れ果ててたさ…まぁ、それだけじゃないだろうけどな」

 

「そんな……」

 

「まぁ…嘘なんだけどな」

 

「嘘なの!?嘘にしては暗すぎると思うんだけど…」

 

「フフ、チョットシタドッキリダヨ」

 

「顔が全然笑ってないよ?」

 

「他には…」

 

「え?」

 

「他に聞きたい事は?」

 

あんなに興味深々だったんだ。少し位は御要望に答えないとな。

 

「ハチマンは本が好きって言ったよね。じゃあ好きな物語は?」

 

好きな物語…か。ホントに色々ある。ラノベ系から日本文学、挙げればキリがない。俺が本を読むようになった切っ掛け…あの本があったな。

 

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「じゃあ八幡、私達北海道に旅行行ってくるから留守番宜しくね」

 

バタンとしまったとびらはガチャりとかぎがかけられる音がする。向こうからかぎをかけたのだ。

 

「いってらっしゃい……」

 

手に持つくしゃくしゃの作文用紙、そこには「夏休みの思い出」という題名が書かれていた。

 

リビングに戻れば誰もいなく静まった空気が俺をむしばんでいた。足早に自室に向かい本棚をあさる。

 

「あった」

 

手に取る1冊の古ぼけた本、「ホームアローン」だ。それを机に広げて読みふける。

この本はたんじょうびに渡された500円をポケットに入れ古本屋で買ったのを覚えてる。

これのストーリーは家族旅行にふてぎわで置いてかれた男の子が空き巣どろぼうをきそうてんがいな発想でげきたいする物語だ。ギャグシーンにはクスッとさせられたが個人的には少年の不在を心配し旅行から帰ってきた家族に抱きしめられるシーンが1番印象的だった。

 

胸が痛かった。未知の感情に押しつぶされそうなそうな感じ…

 

「あれ?」

 

不意に泣いていた。ポタポタと終盤のページに涙が落ちる。

汚れてしまったらいけない。

何度もゴシゴシと拭くが何度拭っても涙は落ち続ける。

 

涙も一通り落ち着かせ机に作文用紙を広げ鉛筆を持つ。

この作文は休み明けの授業参観で読むんだ。ちゃんとした文にしなくては…

 

 

そして迎えた授業参観日、勿論というかやはり親は来ず妹の小町の所に行ったのだろう。

親のいない授業参観、でも恥はかけない。妹にも親にも迷惑は掛けられないのだから…

慣れない料理で傷ついてしまい雑に貼られた絆創膏がある指を隠すように作文用紙を持ち教卓の前に立つ。

 

目の前には興味無さそうにこちらを見る他の生徒の保護者、早く授業が終わらないかなと時計ばっか見つめる奴や早く読みたくて仕方ない奴、寝てる奴、様々な有象無象がいる。

 

見せてやるよ、俺の思い出話(空想話)

 

「僕の夏休み、3年○組、ひき谷八まん、夏休みに家族と北海道へ旅行に行きました。そこでは蟹をいっぱい食べたりお父さんとスケートをしたりしました。妹はずっとはしゃぎっぱなしでとても楽しそうでした。時計塔に行ったりクラーク博士の像をみたり熊を見たり楽しかったです。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━」

 

ビキビキとナニかが音を立てて壊れていく、視界がモノクロになっていく、あれ?世界ってこんなにも味気無かったっけ?

 

止めてくれ………

 

「━━━━━━━━━━━━━━━また、行きたいです…」

 

ぺこり頭を下げ色のない拍手が送られる。

 

やめてくれ…

 

その日の夕飯は父が授業参観で撮った小町のビデオを鑑賞した。

父も母も小町も笑っていた。俺も笑わなくては…

 

精一杯の笑顔を浮かべる俺は家族と偽りの一つになれた。それが堪らなく嬉しかった。

 

ヤメテクレ…………

 

その日は涙で枕を濡らした。

布団をかぶり枕カバーを噛み精一杯嗚咽を殺して殺して殺しまくった。暖かいはずの布団を被ってる筈なのにどうも寒かった。

ごみ箱に入った「ホームアローン」に背を向けて俺は寝ていた。

 

 

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━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ホームアローンかな」

 

「えーと、それってどういう本?」

 

席の前にいる白髪頭のベル・クラネルが首を傾げる。そりゃ分からないだろう。こっちの世界のやつだからな。

 

「そうだな、一言で言うと平面的な家族愛を描いた物語だな」

 

「へぇ〜読んでみたいな」

 

「悪いがそれは出来ないな、どこにもないんだ。クラネルはおすすめの本とかあるか?」

 

「あるよ!アルゴノゥトって本なんだけど凄く面白いんだ!今度ハチマンも読んでみなよ!」

 

「あぁ、そうする」

 

「2人だけのファミリア(家族)だけどこれからも宜しくね!ハチマン!」

 

「おう」

 

ファミリアはいずれ大きくなってく。団員も増えてくれば必然として『1人でも大丈夫』な奴は存在感が無くなってく。

 

ファミリア(家族)なんて、そんなもんだ。

 

ニコニコと底抜けに笑うクラネルは眩しくてそして届きそうに無かった。

 




以下がでしたか?八幡の過去は。
それなりに有り得そうな感じにはしましたがもう少し暗くした方が良かったりします?
面白いと感じたら好評価とコメント宜しくお願いします!
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