ダンジョンに出会いとボッチを添えて   作:テクロス

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TRPGにハマってしまった…だって楽しすぎるもの。


#40 ハチマン危機一髪

さてと、今の状況はマズすぎる。

現在午前10時。ヘファイストスさんとの待ち合わせまであと2時間だ。幸いすみっコにて石像に扮している為、バレる心配はまだない。

 

「君の目の事もあるし端の浴槽にしようか。キミも眼帯を着けたまま浴槽に入りたくないんだろう?」

 

「あ、ありがとう。ヘスティア」

 

そう言い俺の前にある浴槽に浸かる女神2人。

何故そこで気を利かせられるんだ!!神様ァァ!!?

 

「で、どうなんだい?今日ハチマン君とデートするんだろう?」

 

「デ、デートじゃないわ!!彼の装備の事とかで話をしたくて……///」

 

もう逆上せてきたのか顔を赤らめるヘファイストスさん。ムフフ顔をしている神様は久しぶりに人をからかえて少し上機嫌そうだ。

 

「素直じゃないな〜!君も彼も!」

 

「そういうヘスティアはどうなのよ。愛しの彼とは」

 

「べべべベルくんは関係ないだろぅ!?今は休暇と一緒に新しいメンバーをどうするか話し合っているよ」

 

「因みにその子…女の子かしら?」

 

「あぁ……」

 

「彼に対しては?」

 

「惚れてるよ…」

 

うっそ、マジかよ!!?春姫さんもうベルに惚れてんの!?あいつホントに女たらしだな〜。神様とリリルカというものがありながら。

 

「少し競争率高くないかしら?」

 

「ホントにね…困ったものだよ。他のファミリアの子も意識してるってヘルメスから聞いたよ」

 

「敵は多いわね…」

 

「諦めるのかい?」

 

「いいえ!そんなの理由にならないわ」

 

あれ?ヘファイストスさんもベルが…?でも会話の流れ的にはか違う気も……?訳わかんなくなってきたな。

 

「あれ?そういえばこの像…変わってないかい?」

 

「あら、本当ね。『できたてなので触れないでください』だから変更されたのよ。ヘスティア、イタズラしちゃダメよ?」

 

「そんな事しないさ!」

 

「「……………」」

 

マジマジと見てくる2人。

 

「…………」

 

「それにしても似てるわね…」

 

「そうだね……」

 

ギクッ!!??

 

「あら、ヘスティアじゃない」

 

「「「!!!」」」

 

疑いの視線が向けられた瞬間、2人の後ろから声が掛けられる。

 

そこには圧倒的なソレがあった。神様も神様でとてつもなかったがソレを遥かに凌駕するモノが彼女には備わっていた。

 

「デメテル…それとロキ…」

 

神様の脇で見られないようにと眼帯を着けるヘファイストスさん。女神デメテルの横には名前が呼ばれるまで存在感の欠片も無かった女神ロキがいた。デカい彼女とは違く、どこがとは言わないが清々しい程負けている彼女が。イケね、涙が出てきた。

 

「なんも言わんといてや」

 

「あ、あぁ、分かったよ」

 

「それよりヘスティア〜、『亡影』君は元気してるかしら?」

 

「え…デメテル、ハチマン君と知り合いなのかい?」

 

「そうよ〜、彼、私のお店によく来てくれてるの。彼ったら、野菜を見る目があるわね〜」

 

いやぁ、照れますよ。

 

「そんで、アンタらは何を話してたんや」

 

「あ、そうそう。この石像が気になってね」

 

一同の視線が俺に刺さる。

 

「なんや、『亡影』はモデルの仕事を受けたんか?」

 

「いやぁ、そんな話は聞いてないけどな〜」

 

「もしかして……」

 

ヘファイストスさんが俺の目の前にやってくる。このままではバレるのも時間のもんだろう。あーあ、しょぼい人生だったな…。

 

「!!!」

 

その時、死を肌で感じたハチマンに走馬灯が走った。絶体絶命の時に生存の手がかりをその記憶から探るのが走馬灯である。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ハチマン様の新魔法『Realize』は理解して体感したものをコピーできるんですよね?」

 

「まぁな、でも少しは性質が変わるからガチャ要素が含まれるな」

 

「ガチャがなにが分かりませんが…それならリリの魔法はどうなんでしょう?体感…の部分がよく分かりませんができるかもしれませんね」

 

「ベルの奴ができたら試してみる」

 

「もしできたら戦術の幅が効かせられそうですね」

 

「嫌な予感がするけどな…」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「きゃあッ!!」

 

少し離れた所で小さな悲鳴が聞こえた。

 

「このベンチペンキが塗りたてじゃない!」

 

その瞬間、普段は悲鳴が聞き慣れていないその銭湯ではちょっとしたパニックに陥った。

 

(今だ!!!!!)

 

クイックシルバーを発動。

Realizeを用いてリリルカの魔法、シンダーエラをコピーに成功。

隠した服を脱衣所の端にある目立たないカゴに投げ入れる。

白色のにごり湯に潜ってクイックシルバーを解除。

 

「なんだ…ペンキか…」

「この程度で騒がないでよね…」

 

そんな喧騒の中、誰とも面識の無い人物が余計白くなった湯船から現れた。ストレートの黒髪だが頭頂部に特徴的なアホ毛があり、普通にモデル体型の目つきの悪い美女だった。

 

ささっと体を洗い流し、ペンキを落としてさっさと銭湯から出る。インナーだけの着用に済ませ、コートを脇に抱えてそこから脱出しようと出入口に向かう。

 

「もしそこの…どこかで会わなかったか?」

 

そこで見張りをしていると言っていた…えと…えーっと…シャクシャク団長?から声を掛けられる。

 

「な、ナンパならお断りよ。私は、そっちには興味無いの」

 

「そうか、済まなかった…どこかでみた覚えがあったものだから」

 

フン、と鼻を鳴らして銭湯から出る。

そして足早に近くの路地へと向かう。

 

「あら、面白い所から出てきたわね」

 

「はァっ!!??!」

 

路地の向こうには今1番出会いたくない女神ランキング圧倒の1位。その腹黒さはきっとオラリオ1番の女神。その名もフレイアが不敵な笑みを浮かべてそこに立っていた。

 

「失礼します!!」

 

踵を返して帰ろうとするも後ろにはいつから立っていたのかオラリオ最強の冒険者、オッタルが立っていた。

 

「アンタか…愛しの女神が他の男と話すのを手助けするのか?随分みっともないわね」

 

「それがフレイア様の思し召しなら…」

 

「そう…」

 

魔法を解き、元の姿に戻る。

あぁ、この魔法で影響する俺の性質ってのは性格もモデルになった人に似るって奴か?罵倒キャラは強く根付いてるな…。

 

「さて、この事を証言したら貴方はどうなるかしらね?」

 

「何がなんでも無罪を掴みとりますよ…俺は」

 

「神相手に嘘が付けないのは分かっているのかしら?」

 

「勿論……それすらも跳ね除けるトリックがありますから」

 

危険な博打になるけど一生ムショ暮らしか晒し首ならやらなくちゃいけないだろう。

 

「そう…体験入団の日程が決まったわ。明後日に私達のホームまで来なさい。案内はそこからよ」

 

「オッタルさんはそれでいいんすか?訳の分からない男が家に上がり込んで来るんですけど…」

 

「それがフレイア様の思し召しなら……」

 

「もう少し自由意志を持った方がいいと思うんだけどなぁ…」

 

ガチ恋勢やん。

 

「それじゃあ、俺はこの後予定があるので…」

 

「貴様…フレイア様を邪険に扱うのか」

 

少しピリピリしてるだけで空気が震えてる感覚がする。これがオラリオ最強の風格か…。

 

「違うな…お前とあの女神が2人きりになれる時間を多くしてるだけだぞ」

 

「そ、そうか、有難い///」

 

チョロっ…これでいいのかよ、オラリオ最強。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「待ったかしら?」

 

「い、いえっ!?…全然待ってませんよ?」

 

ふわりと石鹸の香りを漂わせながら彼女はやってきた。さっきの出来事もあるから心臓が高鳴ってしまう。罪悪感と謎の緊張が頭を埋め尽くす。

 

「どうかしたのかしら…?」

 

「なんでもないんでっ…早く行きましょう…」

 

ずいっと寄ってきて顔を覗き込んでくるもその肩を掴んで引き離す。

 

「?……そうね、じゃあ私の工房まで着いておいで」

 

先導するヘファイストスさんに着いていき、その工房まで向う。鼻をスンスンと鳴らすと部屋の中はやたら小綺麗で芳香剤の香りと炭の匂いが鼻をくすぐった。

 

「えっと、一応のデザインと用途はここにあるから意見をちょうだい?手直しとかあったら気軽に言ってね」

 

分厚いファイルを渡される。

適当な椅子に腰掛けてファイルを開く。隣に彼女が座ってきて一緒に眺めていく。

 

「剣はもうあるから大丈夫かな…ボウガンも大丈夫か…」

 

多数の敵に覿面なリベリオン、一対一に適当な閻魔刃、普通に使えるフォースエッジ。遠距離に使えるルーチェ&オンブラとその他モジュール。何かと使えるギルガメス。

 

今の俺に足りないのは……なんだろうか。

 

「魔法…?」

 

「?…何かあったかしら?」

 

「いや、俺って魔法に依存してるのかな…って」

 

しかしまた考えてしまう。

俺は誰かからもらいすぎなのではないだろうか。

 

銃も…剣も…全部に誰かのモノだったり貰い物だったりする。冒険者としてそれは普通なのかもしれないがどこかもどかしくなる。

 

それに新しい武器を次々と手に入れて俺はちゃんと今までの武器達を使いこなせているのか?

 

フォースエッジは?閻魔刃は?ベオウルフは?ルーチェとオンブラは?リベリオンは?数々の魔法は?

 

きっと、これ以上手に入れるのは傲慢というものだろうな。

 

「武器がダメなら防具ね…ていうか貴方、どんな防具を着けてダンジョンに行ってるの?」

 

「?…このままですけど」

 

「はぁ!?コートにシャツ一枚って貴方ダンジョン舐めてるの!?」

 

「ルーキーの頃は着けてましたけど…色々あって付けてませんね」

 

それから防具らしい防具は着けていない。

そもそも体を動かすのに邪魔でしかない、機動力が落ちてしまい殺されるのならこのポテンシャルを最大限に引き出せるこの格好がいいのだ。

 

「苦悩してるらしいな…主神よ」

 

いつからいたのか扉の付近に立っていたのはサラシを巻いた眼帯を着けた痴女みたいな女性だ。うわ

 

「そうなのよ…椿」

 

「椿…あぁ、団長の人…」

 

ヴェルフがそんな事言ってたな。

ヘファイストス・ファミリアの団長はおっかないって。

 

「ねぇ椿…ダンジョンに何も着けてかない人っているのかしら?」

 

「ふむ、そんなの自殺志願者位だな」

 

「ちょ、そこまで言わなくても…」

 

「手前が噂に聞く『亡影』か…色々噂は聞いてるぞ?派手に暴れてるらしいな」

 

ギグッ!?

 

「何かしたのかしら?ハ チ マ ン」

 

「いやぁ、俺は別に…何も」

 

「イシュタル・ファミリアとの徹底抗戦。たった一人の可哀想な女子を助ける為に何人もの団員を重体にしたと言えばいいか?」

 

「………」

 

「ハチマン、そんな事したの?」

 

「先に仕掛けてきたのはあっちですよ。それに、俺達がやらなかったらオラリオは今頃火の海でしたから」

 

「そう、なら感謝はしても責める権利は私にも誰にも無いわ」

 

「そう言って貰えると嬉しいです」

 

「それと、これは個人的に気になっているのだが…手前、朽ちぬ魔剣を持っておるな?」

 

「朽ちぬ魔剣…?どういう事?」

 

「ダンジョンににて、手前が魔力の刃を飛ばす魔剣を使っている場面を見た事があるという話を何度も聞いた」

 

「!!!」

 

「手前、ヴェル吉に魔剣を作らせているのか?」

 

椿さんの目が鋭くこちらを見据える。

ヘファイストスさんも真偽を確かめるように見てくる。

 

「まさか、ヴェルフには自分の作りたいものを作って欲しいですよ。それに壊れる前提で作られる魔剣は俺も好きじゃないですし」

 

「成程…」

 

そう、壊れる事が分かってるのにそれを振るえる感覚が俺には分からない。意図せぬ破損ならまだ分かる、それが剣の本懐だからだ。しかし壊れる事が運命付けられて生み出される剣は…悲しいだろうに。武器の本質は…人を守る為にあるのだから。

 

「俺は…コイツら。閻魔刃にリベリオンにフォースエッジ、ベオウルフにギルガメス、ルーチェとオンブラとケルベロス、それと魔法…さえあれば他には要らないですかな」

 

「……その心は?」

 

「売ってる商品を見ても何も惹かれやしないから」

 

「儂の作品を見てもか?」

 

「勿論、俺はコイツらにゾッコン、めちゃラブって奴ですから…これ以上浮気したら刺されるかもしれないんで」

 

「「…………」」

 

「まぁ、俺なんぞに渡そうなんて思ってるなら…もっと、必要にしてる人に貸し出したりした方が儲かりますよ」

 

3人の間に沈黙が流れる。

ヤバい、言い過ぎたかもしれん。

 

「…貴方は冒険者としては失格よ。録な防具も着けないし、より良い武器があっても使わないなんて…貪欲じゃなきゃやってけない仕事なの」

 

「分かってます」

 

「でも…そう言えるアナタが好きよ」

 

「ありがとうございます…」

 

「だったらここにいる用も無くなったわね。早く家族の元に戻りなさい」

 

「はい…」

 

「貴方に武運を願うわ…」

 

「ハチマンですから…大丈夫ですよ」

 

彼女達に見送られてホームに戻る。

夕焼け色に染まった空は意外と短いようで長い時間あそこにいた事を証明していた。きっとヘファイストスさんと関わっている時間も俺の中ではかけがえの無い時間になっているのだろう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「惹かれる…ね」

 

考えもしなかった。

天界にいた頃は果てしない時間、腕と鎚を振るっていたから、ただ強い武器を作ろうと必死だったから。

 

「さ、椿。日も暮れて冷えるわ。中に入りなさい」

 

そんな格好なんだから、と付け加えて室内に入ろうとするも椿は微動だにしない。

 

「椿…?」

 

「主神よ…あの男が言ってた言葉に嘘はあったか?」

 

「冗談言わないで…ハチマンはああいう時には嘘はつかないわ」

 

「何も惹かれない、か…フフッ」

 

「椿…?」

 

「決めたぞ主神!儂はあの男に儂の武具を身に付けさせる!!」

 

「え?」

 

「絶対だ!絶対彼奴の愛刀と呼ばれる位最高の傑作を持たせてやる!!」

 

キラキラとしたその顔には何とも言えず、彼女に火をつけたハチマンに少し妬いてしまう。

 

ホント、女たらしね

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「「「「「「「いっただっきまーす!」」」」」」」

 

「今日の料理当番は命さんか…うん、サバの味噌煮が美味い…箸が進むぜ」

 

「魚はあまり食べたことないけど…うん!美味しい!」

 

頬を赤らめて照れる命を他所に皆が美味い美味いと箸を動かす。

 

「うーーん…」

 

「神様、どうかしましたか?ハチマンを見つめて」

 

「ねぇ、ハチマン君。君、石像のモデルやった?」

 

ピタッ………

 

「やって、ませんけど?」

 

「そうだよねぇ…今日は何をしてたの?」

 

「今日は……アラル神父達と特訓して…それからヘファイストスさんと話をして…」

 

うさみちゃんみたいな目をして見てくるヴェルフを他所に神様は淡々と質問を繰り返していく。今日の昼前についてばかり聞いてくる。

 

「どうかしたんですか?ヘスティア様」

 

「いやね?今日はヘファイストスと風呂に行ったんだよ」

 

「あの、女神浴場ですか?」

 

「うん、男子絶対禁制のね。それでそこには石像が何体か置かれてるんだけど、そこにハチマン君そっくりの石像があったんだよ」

 

「「えええーーー!!?」」

「…趣味が悪いッスね」

 

「それでどうしたんですか?」

 

「その石像なんだけど…少し目を離した瞬間に消えていたんだ」

 

「「「「「「「!!」」」」」」」

 

空気にヒビが入った気がするがポーカーフェイスを保たせてマッ缶に口を付ける。俺に甘いのはお前だけだよ…擬人化してたら即告ってフラれるまである。フラれちゃうのかよ…。

 

「まさか神様…ハチマンは覗きをするような人じゃありませんよ!?ヘルメス様じゃないんだから…」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はあッくしょい!!!」

 

「ちょっとヘルメス様!?汚いですよ…誰かに噂されてるんじゃないんですか?」

 

「アハハ…そうかな、かわい子ちゃんなら歓迎だな〜」

 

「もうやだこの主神…」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「で、どうなんだい?ハチマン君」

 

「俺が覗きを進んでするとでも?」

 

そう、仮にも千葉の紳士である俺は女風呂を覗こうなんて馬鹿な真似はしない。()()()()()()()しない。

 

だが脳裏によぎるのは罪悪感。

このまま隠し通すのだってできるだろうけど…きっと心はそんなの許さないだろう。脇の銃はほのかな冷気を発している。まるでそれが正しい選択だと言おうとしているように。

 

「少し…聞いてくれますか?」

 

俺は話した…訓練が終わり、閻魔刀で帰ろうとしたら次元が繋がってしまい、余儀なくその場に潜んだ事を。

 

神様やベル達は軽蔑することなく俺の話を聞いてくれた。途中でどもってしまっても俺が話し続けるのをじっと待ちながら。

 

「……それが、今日の出来事でした」

 

「嘗てあの銭湯に立ち入って…タダで済んだ者はいなかった。ヘルメスすら潜入できない程厳重な警備故にだった。1人だけ成功させた神がいたけど奥さんにそりゃもう酷く叱られていた」

 

「はい…俺も罰は覚悟しています」

 

「罰はもう受けたじゃないか…ハチマン君」

 

「え……」

 

「君の話術ならボクたち神を騙すなんて造作もない事の筈。それなのに騙さなかったのは君がやっと自分の心に従ったからじゃないのかい?」

 

「………」

 

「キミにはいつも嫌な立ち回りを任せてるから…今回の件はこれで不問とするよ。皆もいいかい?」

 

「「「「「「異議なーーーし!!」」」」」」

 

あぁ、本当に、ここに来て良かった。

 

「それとハチマン君、壊した像は何とかして元に戻すんだよ」

 

「目星は付いてますから大丈夫ですよ」

 

その後、寄付された余り物のアポロンの石像が設置されたがその余りにもの不評さに客足が減った為一日で撤去されたのはまた別の話。

 

カポーンと音のなるホームに設立された風呂に男3人で入る。いつもは別々というか自由な時間に入っていたが今回は何となく一緒に入ることになった。

 

「ふい〜〜〜〜、沁みるな〜〜」

 

「癒される〜〜〜」

 

「いい湯だな〜」

 

なんてほのぼのとしているとベルが口を開いた。

 

「ねぇ、次のダンジョン探索…春姫さんの事は連れていく?」

 

「俺は本人次第でいいと思うが…ハチマンはどうだ?」

 

「俺は…彼女に戦って欲しくないと思う。確かに春姫さんの魔法は強力だけど俺達はそれ目的で彼女を引き入れた訳じゃない。もし戦いたいと言っていたらそれはきっと俺達の力不足から出した結論かもしれない。だからってホームで燻らせるのもどうかと思う」

 

「…というと?」

 

「ハブりは…良くない」

 

うーーん、と水面を揺らせながら話し合いは続く。

 

「結論俺達が強くなったらダンジョンにも連れて行けるのでは…?」

 

「きょ、極論…!」

 

「しかしハチマンの論にも一理ある…新人の為にベテランがついて行くのはどのファミリアにも当てはまることだ。だがな…」

 

「このファミリアにベテランがいない…」

 

うーーーーーーん、と再び思い悩む。

 

「きっと、俺達のこの思いが彼女の足枷になる。俺達は春姫さんがどこまで戦えるか分からないしその伸び代も図る術を持たない。ゆっくり、時間を掛けて考えさせてやるのが先決だ。俺達に出来ることは彼女の選択が後悔に苛まれない様に全力を尽くすだけになる」

 

「そうだね、決めるのは春姫さんだからね」

 

「だったら俺達は後腐れなく…」

 

「「「冒険をしよう」」」

 

よし!!と立ち上がる。

 

「背中でも洗いっこするか!ベル!背中見せろ!」

 

「うん!ハチマンも後ろ見せて!」

 

「俺もやるのか…ヴェルフ、魔腕で背中洗うけど良いよな」

 

各々がそれぞれの思いを込めて背中を洗い合う。

 

明日は……フレイヤ・ファミリアか……

 

いつも以上に気を引き締めないと…殺されるかもな。

 

 

 

 

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