語彙が狭まってしまったと思うので国語の勉強をし直さないとなあ...なんてかんがえてます。
生きとし生けるもの全てにおいて好調、不調が存在する。それはどんな強者にも有り得る事だ。ほら、かの有名なうまぴょいするダービーでもそんなステータスあるでしょ?ケーキ食べさせれば問答無用で絶好調になる魔道具は全国の社畜さんに是非配って欲しいな。
閑話休題、俺は今とんでもなく不調だ。
倦怠感、頭痛、高熱etc……体調不良のフルハウスなもんだからベッドで眠るしかない。フレイヤファミリアの所に行きたくないから風呂上がり体を拭きもせず外に出た訳じゃないよ。ホントダヨ
「じゃあハチマン…僕達ダンジョンに行ってくるから安静にしててね」
「おう…気を付けろよ」
ベル達を見送り何とも言えない不安に駆られながらホームに戻る。一足先にバイトに行った神様もこんな気持ちなのだろう。
カチン…コチン…
大きくてのっぽだが新品の時計が時を刻む音を反響させている。神の恩恵故かはたまた悪魔の力のせいなのかは分からない。それ程体に対する影響が強くなってきた。
考えてみればオラリオ中の冒険者に訪ねたところで悪魔由来の力を持つのは俺くらいしか居ないのだろう。葉山に関してはそもそも冒険者じゃないからカウントしないが。
比企谷八幡は人間から生まれたはずなのに…こんな力を持つ理由は一体どこから来ているのだろうか…スキルは本人の思いに呼応して発動するらしいが俺は内心とんでもない事を考えているのだろうか。
「ダメだ…ネガティブな事ばかり考えちまう」
こういう時は寝るに尽きる。
いや、待てよ?そういえば俺がオラリオに来てからだよな…悪魔が出現したのって…ベオウルフにギルガメス、葉山、アラストル、マキャヴェリ、ベリアル、アルゴサクス…他にいたっけ…後は、俺の心の中のアイツか。
「訳が分からんな…」
震える体に鞭を打ちコートを羽織る。ミアハさんの所で薬でも買おう…そうすれば少しは楽になれるだろう。
「うう…寒…」
季節的にそんな事ないのに風を感じるだけで震えが止まらない…本格的に弱ったな、と思いながら街を練り歩く。
おぼつかない足取り…家を出た時はハッキリしていた意識も少しラグい。
「よお、体調悪い子ちゃんなのか?」
「アラル…助けろ…」
「はいよ」
肩を担がれて教会に運ばれる。適当な長椅子の上で寝かされて診察?を受ける。
「アルゴサクスを取り込んだ影響か…一気に受け入れすぎだ。昔居たんだよ、アビゲイルっていう大悪魔を取り込んだクソザコナメクジの悪魔がよ…ま、キャパオーバーで全然力を使いこなせてなかったがな」
へーー、と流してステンドグラスを眺める。
「取り敢えず暫くは休め…じゃないと、死ぬぞ。この短期間で傷付き過ぎだ」
「……わーったよ」
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「ただいまハチマン!体調はどう?」
「無論大丈夫だ、探索はどうだった?最近良からぬ噂が広がってるらしいが…」
そう、最近オラリオでもっぱらの噂になっている喋るモンスターの件。以前出会った事があるがそれっきりの為あんまり気にしていなかったが…と考えた所でベルの後ろに隠れている少女の影を見つけた。
「べールぅ?まーた女の子を誑かしたのか〜?そのうち刺されても知らんぞ?」
「そ、そんなのじゃないよ!この子は…神様が帰ってきてから話をしよう」
どうやらこの少女、問題を抱えてるらしい。
「ただいまぁー!ハチマン君、大丈夫だった?」
「まぁ…そんな事より、ベルが大切な話があるらしくて」
「ぬわぁんだってえええ!今行くよ!!」
バイトから帰った神さまを迎えて俺も談話室に向かいベルから話を聞く。
「喋るモンスター!?」
ベルのサラマンダーウールを被ってよく見えなかった少女は限りなく人間に近いモンスターだったようだ。さり気なく懐に手を入れて何時でも撃てる用意をしておく。
「俺としてはホームに置いても俺は全然構わないが、他の冒険者達の目が気になる。暫くは事実上の軟禁状態になるが…」
不安なのは俺達が冒険者であるという点だ。数え切れない程モンスターを手に掛けている。そこ辺り割り切れないのがリリルカを始めとした皆の心情なのだろう。
「モンスターは下界の住人の、君達の敵・・・・争わなければならない存在だっていうのはわかってる。でも、こうまで怯えられちゃあ見捨てることはできないよ」
きっと神様にとってもこの子の存在は謎なのだろう。
「それじゃあ……!」
「ああ、この娘はしばらく保護しよう」
とまあ、このナンタラって種族の女の子を我が家で保護することになったのだが、肝心の話を忘れている。
「そういえばこの子の名前は?」
「「「「「!!!!!」」」」」
「身元の確認は必要だろ…ま、モンスターに名前があるか疑問だがな」
モンスターの少女に視線を移すとベルの方にべったりして顔をうずくめてしまった。どうやら俺の悪人面はお気に召さなかった様だ。
「ま、そこ辺りの話はお前達で決めてくれ…俺は寝るよ。…少し疲れた」
部屋に戻りベッドに倒れる。
「ゲホッ…ゲホッ…ガっ゛…!」
ホント、どうしたんだろう…俺。
死ぬのかな…なんて思ってると部屋に足音が近付いて来る音がした。
「失礼します、ハチマン殿…」
「命さん…どうかしたんですか?」
ズカズカと歩いてきた彼女はベッドまでやって来るとおもむろに枕をひったくってきた。
「やはり、体調がここまで悪く…今すぐ人を…!」
赤く染った枕の裏側を見た命さんはどこかに行こうとするが肩を掴んで首を横に振り止める。
「大丈夫です、ゆっくりしてれば治るらしいので…暫くはあんまり動けないだけです」
「で、ですが!」
「ただでさえあの子でいっぱいいっぱいなんです…俺が足を引っ張る訳にはいきません。せめてこの件が片付いたら然るべき場所には行きますから…」
お願いです、と肩を掴む力を強めると彼女は俺を見据えて続けた。
「分かりました…ですが、極力戦闘には不参加でお願いします。それと素人目線でも危なくなったら直ぐに医療機関に送りますからね」
ふぅ、と一息付くとベッドの縁に腰を下ろす命さん。寝てては失礼だと起き上がろうとするも胸に手を当てられて制される。
「そういえば自分とハチマン殿はあまりぷらいべーとで会話した事が無いな、と思い訪ねたのです」
「あー、俺も命さんもあまり自分から喋りませんもんね」
最初に会ったのはベル達にモンスターを押し付けた後だったんだっけ。俺が追いかけた時に出くわしたんだ、今となっては遠い昔のようだ。
「改めて、春姫殿を助けて頂き…ありがとうございます」
「いいってことよ…同じファミリアじゃないですか。それに困ってた春姫さんを見捨てる理由なんてどこにもありませんでしたし」
「……、ハチマン殿はどうしてそこまで分け隔てなく誰かに優しいのですか?」
フッ、と鼻で笑う。
「優しかったら俺は人に剣を振るいませんし…どっちかっていうと哀れみに近い感情なんですよ」
一息ついて俺はポツリポツリと言葉を探しては繋ぎ合わせていく。
「力が大きくなるにつれて誰とも知らない記憶が脳裏に過ぎるんです。日の目を見れない人生…太陽とは真逆の場所にある闇で必死に空に手を伸ばす異形の腕……そんな誰かの記憶にあてられた俺は春姫さんや、あの女の子にできるだけそう思って欲しくないと思って助けようとしてるだけです。だからこれはベルみたいな高潔な善心ではなく経験に基づく偽善心なんです」
知っちゃえばその程度だと笑い飛ばせる理由だろう。俺でも自分が嫌いになる。
「それでも、偽善心でも、救おうとする心に偽物も本物もありません。きっと大切なのは…救い方や心をしっかり汲み取れるかなのでしょう」
何科を決心したかのような横顔をする命さん。
「吹っ切れました?」
「はい!ありがとうございます!」
ベッドを立ち部屋を後にしようとする命さんはふとこっちを見る。
「それと、彼女の名前が決まりました。ウィーネとなりました」
「いい名前だ…美人になる名前だ…」
そうですね、と返す彼女が扉を開けると盗み聞きをしていたのだろう他の皆が一斉に倒れる。
「あはは…それじゃあボクは寝るよ!おやすみぃ!」
「あっ神様!?」
蜘蛛の子を散らすように部屋に戻る奴らをベッドから見送りそろそろ重くなってきた瞼を閉じる。
窓の外を見るとオッドアイの梟がこちらを見つめていた。
「盗聴は関心しないな…」
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「アラストル…それは!?」
「なんで俺が何10年とちまちまと人間の死体を集めてたか…これがその答えだ。いつか奴が現れることを信じて待ってた俺の勝ちだな」
「比企谷にそれを食わせる気か…!」
「道は一つしかないんだぞ?黙って見てたら奴は死ぬ」
「っ!!くそ!」
「そう悔しがるなよ葉山くん〜。やっと出来たお友達が助かるんだぜ?本望だろ?」
黙りこくる男を前に異形の悪魔はクルクル回る。
「猛特訓による身体の強化、どさくさに紛れて補強用のギルガメスの移植手術をしようと思ったがアホロンのお陰で難なく成功。閻魔刃、リベリオンの精製、動力炉と成りうるアルゴサクスの吸収…そしてアビゲイルに続きムンドゥス…ガタが来たらこの実を食わせて限界を越えさせる。フフハハハハ…楽しみだ」
その手には禍々しい林檎のような実が握られていた。
「あ、そうだ…葉山、アイツにこれを渡してくれ…不届き者の亡骸だ」
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朝、少しは体調が良くなったが気は抜けない。
「今日はウィーネ君みたいな喋るモンスターの情報を集めてもらいたい。今の状況じゃ誰が敵になってもおかしくない…細心の注意が必要だ、どうか気を付けてくれ」
神様のいうとおり、俺達には情報が欠落している。その点には賛成だが…どう集めようか…一応外に出て宛もなく彷徨うが特に何も得られず中央広場のベンチで休んでいると見知った人がやってきた。
「やあ、比企谷」
「奇遇…じゃなさそうだな葉山」
「まあね、この前渡されたリストを辿ってみたよ」
「結果は?」
「どうやら奴らは一つのルートからモンスターを仕入れてるらしい。これが巧妙な手口だからどこからとはまだ分からないな」
「そっか、サンキュー。後は危ないから手を引いてくれ。お前といえど闇派閥に目を付けられたらひとたまりもないだろう?」
「そうさせてもらうよ」
あ、それと…と葉山は肩から下げていたギターケースを渡してくる。
「何これ」
「アラル神父からの贈り物…らしい」
開けてみれば紫色の鋭利なギターが入っていた。
「ネヴァン……」
「知ってるのかい?」
「や、何でもない…ありがとう」
立ち上がり葉山の視線を背中に受けながらホームへと戻るも別の視線を感じる。この気味の悪さは女神フレイヤだろう。約束を破られたのを不服に感じているのだろうな。
「よォ、プレゼントは受け取ってくれたか?」
「アラル…?ストーカーに成り下がったのか?」
かなり痛めのゲンコツを喰らう。
「ばーか、途中絡まれたら面倒だろ?ホームまで担いでってやんよ」
有無を言わさずアラストルに担がれホームまで運ばれる。
「ありがとう…そこまでしてくれるなんてアンタにしては珍しいな。今度は何を企んでるんだ?」
「別に〜?愛弟子の世話を焼くのは師匠の務めだからネ!達者でな!」
手を振り後にするアラストルに何とも言えない不安を覚えながら門を潜る。丁度昼時、今日は春姫さんの当番だった気がする。
「ただいま…戻りました」
「おかえりハチマン君、どうだった?」
「一部富裕層の間で喋るモンスターの取引がされてるのを見つけました。どうやらモンスターの仕入先はたった一つらしいです」
「つまりウィーネ君の仲間はいると…」
「まぁ、こんな事されてるなら数は少ないでしょうがね…希望が無い訳じゃないですね」
「分かった…ハチマン君はご飯を食べてゆっくり休んでくれ」
「はい……」
談話室からキッチンに向かうとメイド姿のはるひめさんが丁度昼ごはんを作り終わった所の様だ。
「あっ!ハチマン様」
とてとて、と駆け寄って来た彼女は皿に盛られたサンドイッチを差し出してくる。
「どうか、味見をお願いします…ちゃんと作れたか私一人では不安で…」
「えぇ、春姫さんの腕なら必要ないんじゃ「どうかお願いです!!」あ、はい」
尻尾をブンブンさせる春姫さんの目の前でサンドイッチを一つ口に運ぶ。
朝一で買った採れたてのレタスはシャキシャキしておりハムやトマトと美味くマッチングしている…トマト?
「俺、トマト嫌いなのに…美味い」
「本当ですか!?良かった…!」
空も飛べるんじゃないの?と思えるくらいブンブンしてる尻尾とは真反対に胸をそっと撫で下ろす。
「今からお庭にいるクラネル様とウィーネ様に届けようと思っているのですが一緒にどうですか?」
「や、俺は苦手意識持たれてるっぽいんで遠慮しますよ」
「ハチマン様!めっ!ですよ!」
「?」
「歩み寄るからこそ子供に好かれるんです!行動あるのみですよ!」
「えぇ…?」
ずいっと詰め寄る彼女の謎説得により無理やり外に連れ出される。芝生の広がる庭にてベルとウィーネは抱き合っていた。児ポかな?
「ハチマン?」
「よ、良かったら飯、食わないか?春姫さんが作ってくれたんだ」
「うん、全然大丈夫だよ。ね、ウィーネ」
俺を見た途端ベルの後ろに隠れたウィーネはおずおずと前に出てくる。その視線は俺と横にいるベルを行ったり来たりしている。
「あー、自己紹介をキチンとしてなかったな...ハチマン・ヒキガヤだ。えと...よろしくな」
視点を合わせて髪をポリポリと掻きながら挨拶をする。元来自己紹介を真っ当にした事がなかった為慣れない。
「言葉足らずだけど優しいよ」
ベルのひと押しもあってかウィーネは俺を見る。
「よろしく...ハチマン」
「えと、親睦を深める為に昼食を取らないか?」
「?」
「ハチマン様、言葉が難しいと上手く伝わりませんよ」
「あぁ、すまんすまん...仲良くなりたいからご飯を食べよう?」
なんだかストレートに伝わった気がするが田だろうか?
「いい...よ?」
「あはははははっ」
「ふふふふふ...」
「何笑ってんだよぉ」
ベルと春姫さんに微笑まれ理由が分からずとも俺たちはサンドイッチに手を伸ばす。きっとこの関わりは楽しいだろうがそれ相応のリスクがともなうのだろうな...なんて考えながら。