ダンジョンに出会いとボッチを添えて   作:テクロス

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誤字報告してもらうと読者がいるだなって安心します。
いや誤字とか無いといいんだけどね?
でも感謝します。

ウジウジ八幡終わります。


駆ける

「クソッ!!殺してやる!殺してやる…殺してやる、、、ッ!!『亡影』ェェェェエエエエエエエ!!!!」

 

「おーおー、昂ってんね〜」

 

「てめェは…!」

 

暗い洞窟の中で復讐に燃える男に神父の皮を被った悪魔は語りかける。

 

「条件付きだけどアイツに復讐…しちゃうぅ?」

 

薄ら笑う神父はその心にドス黒く光る明るい闇を抱えて瞬く間にディックスに詰め寄る…。有無を言わさないようにその喉元に剣先を突き立てながら。

 

「とりま手土産に連れてきたけど丁寧に扱えよ〜」

 

その手で引っ張ってきたであろう数多の檻を復讐の鬼に引き渡す。檻の隙間からは人間では無い瞳の輝きが覗かせていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

葉山の渡したノートを見た。

俺は悪人だ。どうしようもない悪人だ。その記憶が無いだけでこの手は真っ赤に染まってる。それはどうしようもなく避けられない現実であり、逃げられない罪だ。悪党としてどう向き合ってどう生きるか…。自首する?罪を償う手としては有効だ。長い年月を檻の中で過ごせばいいのだから。よしそれだ、確かガネーシャ・ファミリアはオラリオの警察的な立ち位置だったはず。

 

「俺、人殺しちゃってたらしくて…」

 

「え?え?た、担当の者を呼ぶので暫く待ってて…ください」

 

受付の人が戸惑いながらもドラマで見たような取調室に移動させてもらう。暫くすると青髪で威厳のありそうな人と象の仮面を付けた騒々しい神っぽい神が室内にやってくる。丁寧に自己紹介までしてたんだ、ガネーシャ・ファミリアの主神だ。

 

「全く、忙しい時期なのに世話を焼かせるな、『亡影』。受付の子が戸惑ってたぞ」

 

「すみません、こうでもしないと気が収まらなくて…」

 

「記憶喪失というのは嘘ではないようだな」

 

「まぁ、そうですね」

 

余談なんていらない。ここならきっと俺を正しく裁いてくれる。

 

「『人を殺しちゃったらしくて…』か、何人をどうやって手に掛けたんだ?」

 

「1人以上をよく分からないけどできるだけ惨たらしく殺しました…」

 

ただノートには『悪魔に囚われた救えない人々を皆殺しにした』としか書いてなかったのだが確証のないハズのその記述はやけに納得ができた。

 

「…」

 

青髪の女性は主神をチラリと見る。

腕を組んで唸る象の仮面を付けた筋骨隆々な神はこちらからは見えない瞳で俺を覗く。

 

「シャクティ…少し外してくれるか」

 

「ガネーシャ様?」

 

「ここからは男の話だ」

 

理解が早いのかシャクティと呼ばれた青髪の女性は取調室を出る。ふざけた象の仮面を付けているがその表情は真摯そのものだがどことなく優しさを感じた。

 

「許せないのか…過去の自分が…」

 

「許されちゃいけないんです…あんな事をしておいて、手を真っ赤に染めて裁かれてないのが…」

 

「戦いに疲れ果てた者は見てきたが君は特に罪悪感を感じているな」

 

「散々痛めつけて殺してきたんです…その果てに記憶喪失になって全てを忘れて幸せ…になろうとしてる自分に嫌気が差して…せめて裁かれて償った後に…」

 

「顔向けしないだろうな、君は。清廉潔白でない自分にも嫌気が差して君はまた逃げるのだろう」

 

「神の経験則ですか」

 

「いや、少なからず君の活躍は耳にしていた。公になっていないが君が夜な夜な守るべき一般市民暴力を振りかざす冒険者に鉄槌を下して我々の元に連れてきた事も何度かある」

 

「そんなの偽善ですよ」

 

「だとしても救われた者がいる、君の悪評の裏にはいつでも救われた者達や君の新しい家族への愛情があった。形は暴力であれそれは立派なおこないだ、誇りなさい」

 

「覚えてない出来事にどう誇れと?」

 

「覚えのない罪は裁きようがないのだがな」

 

普通に言い負かされた。少し恥ずかしくなり下を向く。

 

「許してやりなさい、今まで君は頑張ってきたのだから。罪を自覚しない者達の為に我々がいる。自覚して償うつもりがあるなら我々の出る幕はないさ」

 

「俺は一体どうすれば…償うったって今の俺は非力です」

 

「……今本当に助けを必要としている人達がいる。歴史の闇に、人間の傲慢に踏み潰されそうな人達が…君に出来ることを、君なりのやり方でいい…成し遂げてくれ」

 

顔を上げると満足そうに頷いたガネーシャ様は俺を立たせて取調室から出るように促す。建物から出た俺は真っ先に【黄昏の館】に向かう。

 

門を開いてもらい早足に部屋に向かう。

『やりたい事をやりきれ!』と書かれたメモと一緒に保管していた剣を取り出して背中にマウントして義手は腰に付けておく。机に置いていたノートをもう一度心に刻むように読む。

 

「雪ノ下…俺は、もう逃げない…お前からも、自分からも…」

 

「もうええんか?」

 

振り返るとドアにもたれかかるようにロキがいた。いつものような二ヘラと笑う表情ではなく、眉先と目尻の角度を下げて心配そうにしている。

 

「ここいればもう戦う必要はないんやで?もう傷付ける事も、傷付けられる事もないんや」

 

「ありがとう、ロキ…アンタが拾ってくれなかったら今頃俺は死んでただろう。厨房で料理をして、皆に美味い美味いって言って貰えて嬉しかった。けど、きっと俺は今動かなかったらずっと後悔すると思う、だから…」

 

続く言葉はロキの手によって止められる。

 

「行ってきーや、やるべき事が終わったら戻ってくるんやで?飯もキッチリ食べる事!そして、何があっても死なんといてや。約束できるか?」

 

「死んでも帰ってくる…約束だ」

 

そう言うとロキのもう片方の手に持っていた綺麗に畳まれたコート一式を渡される。黒いコート、右肩には白い刺繍で百合が描かれている。

 

「倒れてた八幡が着てたんや、こんな日が来るんじゃないかってボロボロのやったから直しておいて正解やったわ」

 

黒いズボンに黒い革のブーツ、白いシャツを着てコートを羽織る。

 

「行ってらっしゃい、八幡」

 

「あぁ、行ってきます」

 

ロキを残して部屋から出て廊下を歩く。

一歩一歩、廊下を踏みしめながら歩いていると少し先にロキ・ファミリアの幹部陣とレフィーヤが前を塞ぐように立っていた。

 

「そんな顔をして、どこに行くんだい?」

 

「そんな顔って…そんなに覇気がありません?」

 

「いいや、寧ろ逆だ。清々しい表情をしている、まるで死地に向かう戦士のようだ」

 

リヴェリアさんが睨むような表情をしてこちらを見てくる。その推察は長年の戦いと払った犠牲の経験からだろうか。

 

「いいや俺は戦士なんて柄じゃありませんし、どちらかっていうと…勇者?」

 

ピキッとフィオナさんの青筋が浮かび上がる音がする。

 

「団長の前でソレを名乗るのかぁ…?」

 

おー怖っ…殺気が肌で感じられるのはフィン団長が『勇者』の通り名で知られているからだろう。知ってて踏んだ地雷だがちょっぴり後悔。

 

「君のこうするに至った判断をボクは頭ごなしに否定するわけじゃないけど…神の恩恵もない君がどうこうできる問題かい?」

 

「確かに恩恵は戦う上でこの上なく便利ですけど…混じり気のない『俺』で戦います。戦って勝って、俺は俺を許せるように、殺してきた相手に向き合える自分に…なれるように」

 

「だから…見ててください。俺、やりきるので」

 

そう言うと満足そうにフッと笑った団長は道を譲るように脇に寄った。それに真似て他の人達も脇に寄る。アイズやリヴェリアさんやレフィーヤは不安そうな顔をしている。

 

「よく言った!それなら満足するまで暴れて来い!!」

 

バン!とガレスさんに背中を押される。それは父のような威厳を感じた。

 

「んな訳だったらさっさと片付けろ!」

 

ゲシ!とベートに背中を蹴られる。その蹴りの裏には優しさが隠れていた。

 

「行ってくる!」

 

押され蹴られた勢いで駆けていく。

道中ファミリアのメンバーが行ってらっしゃいと見送ってくれる。

 

「開門!!」

 

丁度よく開いた門をくぐってバベルに向かって走り出す。今はこの勢いを殺したくない。…家族愛って奴なのかな、と思いながら軽い足取りで走っていく。

 

街中はいつもと違う騒がしさで溢れており「喋るモンスターが」とか「ヘスティア・ファミリアが」とか不穏な会話が耳に飛び込んでくる。

 

「葉山!」

 

「呼んだかいッ!?」

 

どこからともなく現れた葉山は俺の隣で併走する。ほんとキミどこから沸いてきたの?ストーカーなの?

 

「今北産業!」

 

「喋るモンスターがダンジョン内で冒険者を襲ってる。

ギルドで探索の制限と討伐隊の編成が行われてる。

ヘスティア・ファミリアが疑われてるけど犯人はスパーダ一行。」

 

「了解した、サンキュー!」

 

「ダンジョン18階層に迎え!案内する!」

 

「おう!」

 

冒険者顔負けのスピードで疾走するハチマンの姿は瞬く間にギルドへと伝わった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

ギルドでは喋るモンスターの件やそれに関する探索

制限の抗議で溢れかえっていた。中には喋るモンスターに襲われた事を証言するリヴィラの怪我人もいた為噂は真相になり、より抗議の火に油を注いでる状態だった。

 

(どうして…こんな事に…ベル君…)

 

受付嬢のレイナはカウンターでその火を鎮めるのに手一杯だった。

 

「大変だー!!」

 

ギルドの入り口に吉報か凶報を伝えに来た冒険者がやって来てギルド内がそちらの方に振り返った。誰もが新しい情報を知りたいからだ。

ゼェ、ゼェ、と方で息をする冒険者は言葉を必死で紡いだ。

 

「『亡影』がとんでもねぇ形相でギルドに向かってるぅ!!!」

 

『『『『『『『!!!!!!』』』』』』』

 

「嘘だろ!?アイツ引退したって聞いたぞ!」「バカお前!復帰したんだろ!」「俺は死んだって聞いたぞ!」「そりゃガセだ!」「やっぱりヘスティア・ファミリアが…」

 

そんな会話を聞いていたレイナは一瞬安堵したがそれと同時に冷や汗が伝っていた。そんな彼女の心を代弁するように冒険者(バカ共)のカリスマ的存在であるモルドは声を荒らげた。

 

「お前らァ!邪魔しようもんなら問答無用にぶん殴られるぞ!!それが嫌なら手とか盾を上に上げろぉ!!」

 

ゾワリ、と一同にも嫌な汗が出てくる。家族ラブとして知られるハチマンの邪魔をしたらどうなるか…アポロン・ファミリアとの戦争遊戯を見ていた一同はその顛末がどうなるか嫌でも想像出来、一斉に面積のあるものを上に掲げた。

 

同時に階段を猛スピードで駆け上がってきたヤツが姿を現した。

 

「葉山ァ!」

「分かってる!」

 

人混みに突っ込む手前で跳躍したふたつの影は冒険者達の掲げた剣や盾、手の平にハゲ頭を踏み台にして蓋のしまったダンジョンへの入口に差し掛かった。

 

「頼んだぞ!!」「ぶちかませぇ!!」「何とかしろぉ!」

オラリオのトラブルメーカーとして知られたヘスティア・ファミリア。そしてそれを収めるべく奔走していたハチマン・ヒキガヤはなんやかんやあって冒険者達に期待されていた。アイツなら何とかしてくれる、なんやかんやあって丸く収まる、建物とかぶっ壊れるし怪我人とかもとんでもねぇ程出るけど解決?する。そんな期待にもハチマンは背中を押された。

背中の剣のグリップを握って加熱させる。ヴィンヴィン!と赤熱した刀身を抜いて男は駆ける。

 

「今開けるから待ってくださいぃ!!!」

 

「どけぇええええ!!」

 

そんなギルド職員の懺悔に近い願いも虚しく飛び上がった彼は今までの加速と位置エネルギーを無視して急降下しダンジョンの入口である蓋の中央に刀身を突き立てるとヒビと同時に炎が迸りその蓋を瓦解させた。

 

「今行くぞ!!バカやろぉ!!!」




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