こんにちは比企谷八幡、あ、いや、ハチマン・ヒキガヤです。今私は隣にいる【ヘスティア・ファミリア】の団長、ベル・クラネルと一緒に正座してます。え?なんで正座してるのかって?そりゃあれだよ、「冒険者は冒険してはいけない」なんて教えを破ったからだ。
「キィミィ達はっ!私の言ったこと全っ然っ分かってないじゃない!!5階層を超えた上にあまつさえ7階層!?迂闊にも程があるよ!」
「ごごごごごめんなさいぃっ!」
必死に頭を下げるクラネルを端目に 見慣れない応接室をぐるりと見回す。はえ〜、すっごい応接室って感じ。
「ハチマン君も聞いてるの!?」
「ちゃんと聞いてますよ」
「んもう!2人共危機感無さすぎ!つい1週間前にミノタウロスに襲われて死にかけたのは誰だっけ!?」
うぐ、それを言われると弱るというか…
「まぁまぁエイナちゃん、許してやりなよ。若気の至りってやつだからナ!」
そう言い花京院よろしく入室してきたのはかつて俺にフォースエッジを渡したあの神父風の男だ。
「アラル神父…」
「エイナちゃんがどーーしても納得できないならステイタスをちょちょっと見せて貰うといい。坊主達もそれで納得してもらったら7階層なり10階層なりと行くといい」
「7階層はともかくそれ以下はダメですよ!」
「とーもーかーくーだ。ほら、脱げ」
淡々と脱ぐことを強要された俺達は揃って上着を脱ぎその背中をエイナ・チュールさんに見せる。
ベル・クラネル
Lv1
力:E 403 耐久:H 199 器用:E 412 敏捷:D 512
魔力:I 0
ハチマン・ヒキガヤ
Lv1
力:D 510 耐久:G 299 器用:D 526 敏捷:E 421
魔力:D 514
【魔法】
魔力操作
なんだろう、凄い視線を感じる。
チラと後ろを見るとチュールさんだけでなく神父も此方を覗き込んでいた。クラネルには目もくれず…
「まだ弱いな」
グサッ!!
「何を言ってるんですか神父!駆け出しでここまで伸びてるのなら万々歳ですよ!?」
「そうか?ワハハ、いやぁ、今まで他の冒険者との接点なんて死体を弔う位しかしなかったが…いやね?ほら、Lv1、なんて聞けば誰しもまだまだだなって思わない?」
「全員がそうだとは思わないで下さい!」
「そうだな、皆そうだとは限らないもんな…じゃ!俺はこれで失敬するよ。君達の吉報が待ち遠しいナ!」
スタスタと部屋から出てく神父。
「あの、エイナさん。あの人って…」
「あぁ、あの人はアラル神父っていってね、ダンジョンで死んじゃった冒険者の亡骸を運んでは共同墓地で弔ってくれてる神父様だよ。たまーにダンジョンにいる時もあるんだよね」
「お優しい人なんですね」
「そうなんだけど、どこか掴めないっていうか、ダンジョンにいる時も何かを探してる感じがするって他の冒険者も不気味がってるんだ。今ではあんなにニコニコしてるけどそれまではただ冒険者を弔ってはダンジョンへ、弔ってはダンジョンへって感じだから1部のギルド職員は『悪魔』って呼んだりするんだ」
「それはちょっと…」
「うん、分かるよ?その気持ち、でも1週間前くらいから急に上機嫌になったから余計不気味がる人も増えてさ」
苦笑混じりに説明してくれるチュールさん。
そんなムードを切り上げ俺達を交互に見渡すチュールさん。
「2人とも明日予定ある?」
━━━━━━━━━━━━━━━
次の日、俺達は大通りと面するように設けられた半円形の広場に1人立っている。
待ち合わせをしているからだ。
隣のクラネルは顔を赤くしている。(ここここれって、デート!?)とか思ってるんだろう。クラネルは分かりやすくて仕方ない。まるで過去の俺を見てる気分だ。…あんな目にあったかどうかは別として。
「おーい、ベールーくーん!ハーチーマーンーくーん!!」
俺の名前、呼びにくいでしょ…そういうのクラネルだけで充分っすよ?待ち合わせの十時ぴったし、と。
「おはよう、来るの早いね。なぁに?そんなに新しい防具買うのが楽しみだったの?」
「いやぁ、実はハチマンに朝早くに起こされて…」
「え!?ハチマンくんが!?」
「えぇ、なんでも『女性との待ち合わせは30分前集合が常識だボケ』って言われて」
「ふーん、案外紳士なんだね!」
………めっちゃ楽しみでした!
なんなら昨日の午後にはダンジョンに潜って集金してたもん!金はあっても損は無いからネ!!
「それで?君達?」
「どうかしました?」
「私の私服姿を見て、何か言うことは無いのかな?」
「普段と違い似合ってますよ」
「嬉しい事言ってくれるじゃない!このこの〜」
そう言いエイナさんに軽くヘッドロックを掛けられる。別に振りほどこうと思えばできるがそんな事はしない、何故なら俺は紳士!女性を傷つける事なんて出来ないのだから!別に胸の感触を堪能してる訳じゃないと断言しよう!
「ハチマン、見た事ない位顔が緩んでるよ…」
聞こえない聞こえない…
━━━━━━━━━━━━━━━
「今日行くところは…ダンジョンだよ」
「えぇっ!?」
「正確にはダンジョンの上にあるバベルだけどね」
聞くに『バベル』とはダンジョンの蓋をするように築かれた超高層の塔。つまりあの摩天楼施設だ。
ギルドの役割はそのダンジョンの監視、冒険者の為にシャワールームとか簡易食堂や治療施設、更によく使わせてもらってる換金所もある。
今日行くところは商業者にテナントを貸し出している所、つまりは武器や防具の大手ブランドを作ってる【ヘファイストス・ファミリア】だ。それって凄く高い所なんじゃ?とも思ったがどうやら俺達が見て回るのは末端の鍛冶師が作った商品らしくどれも手頃な価格らしい。
武器とかにも色々あるらしく鍛冶師の『恩恵』の力で武器に属性を付与できるらしい。つまりはエンチャントだ。中には絶対折れない剣だったり、切れ味が落ちない刀とか、『魔剣』なんて呼ばれてる消耗品とか。
魔剣……ね。
それからは自由に店を見回ったりした。なんのタクティカルアドバンテージもなさそうな剣だったり、逆に無骨すぎる槍、何故かこの店でバイトをしてる神様etc…いやあんた何してんの?仮にも仮にもだよ?神様でしょ?
まぁ神様には神様なりの事情があるらしく俺達は何故かあるエレベーターで上に昇った。どうやら魔石の力で上に行ってるらしい。なんか使えそうだな…
原石の鍛冶師達の商品が並んでるスペースに行き商品を見てく。どれもさっき見た様なアホみたいに高い商品とは違いどれも手の届く値段だ。
クラネルの方を見てみるとどうやら気に入った防具を見つけたらしい。俺はどうしようか、防具なんてこれといって何も付けてない。そんなに金に余裕が無かったからだ。
「ベル君は…見つけちゃったみたいだね、ハチマン君は見つかった?」
「いいえ、何にしたらいいか分からなくて「それじゃあちょっと付き合って!」あ、ちょっと…」
強引に手首を掴まれて連れていかれる。おのれクラネル…覚えておけよ?
「これなんてどう?」
ガッチリした甲冑を試着させられる。
「動きにくくて…」
「じゃあこれなんてどう?」
ベルみたいな軽装の装備を付けてもらう。その際にチュールさんに手の平を見られる。
「これって…豆?」
その手の平には豆ができていて所々割れていたりした。
そんな手を触るチュールさんの手を払い除ける。
「あまり気分のいいものじゃないでしょう、やめてください」
「嫌な思いさせちゃったかな、ごめんね」
「いえ、悪いのはこっちですよ」
どうしても自分の醜い所は見て欲しくない気持ちが湧いてきてしまう。
これも人の性と決めつけて受け入れてしまう自分がどうしても嫌になる。
「それで、ライトアーマーはどうかな」
「えぇ、動きやすくていいと思います…けど」
「コート、脱ぎたくないの?」
そう、装備を着ける上でどうしても邪魔になってしまうコートを脱いでしまうのはなんだか勿体ない気がする。なんだろうか、譲れないという魂が叫びたがってるんだ。
「じゃあ、コートの中に着れる様にプロテクターかレザーアーマーにしようよ」
ということでコートの中に黒い革のレーザーアーマー、膝当て、丈夫なブーツに某ソルジャーみたいな肩パッドを買う。中々な値段だ。
チュールさんはなんか別の買い物をしてる。
ギルド職員が装備屋で買い物の用事なんかあるんだ。
全員広場に戻り後は解散するだけとなったのだが
「ベル君。はいこれ」
クラネルに手渡されたのは細長いプロテクターだった。彼女と同じ瞳の色のエメラルドのプロテクター。
「こ、これって…」
「私からのプレゼント。ちゃんと使ってあげてね」
自分が情けないのか渋るクラネルだが彼女は1歩も引かない。そこが彼女の強さなのだろうか。
「ハチマン君もはい!」
不意打ち気味に彼女は俺にとある物を渡してきた。
「これって……」
「革のグローブ、悪い事しちゃったから…」
「それこそ受け取れませんよ。貴方は何も悪い事をしてないんですから」
「いいから、付けてみて」
言われるがままに手袋を着ける。うん、ピッタリだ。試しにフォースエッジを出して降ってみるが全然手に痛みは来ない。これなら…
「はい、これはもう君が使っちゃったから君の物ね!」
「えぇ…」
「君のためだと思って受け取ってほしいな」
「え……」
「本当にさ、冒険者はいつ死んじゃうかわからないんだ。どんなに強いと思っていた人も、神の気まぐれみたいに簡単に死んじゃうの。私は、戻ってこなかった冒険者を沢山見てきた」
「「………」」
「…いなくならないでほしいなぁ、君達には。あはは、これじゃあやっぱり私のためかな?……ダメ…かな?」
そんな事言われたんだ。答えは決まってる。
「「喜んでお受けします」」
━━━━━━━━━━━━━━━
SP感覚でチュールさんを家に送った後俺達は路地裏に入ってくと何かが駆ける音が聞こえる。
「行ってみるか?」
「うん…」
夜中に聞こえる足音なんて面倒事でしかない。
しかしそんな足音はこっちが行くまでもなくやがてこちらに向かってきた。
「あうっ!」
「えっ?」
一つの小さな影はクラネルにぶつかるとそのまま転んでしまった。見るに神様よりも小さい身長、細い手足、確かクラネルから聞いた情報と一致するな…
「パルゥム…」
「追いついたぞ、この糞パルゥムが!」
いかにもな格好の冒険者が現れる。
「もう逃がさねぇからな……!」
こいつは何故この子を?
そんな事を考えてるとクラネルがその子の前に立ちはだかる。
「…あぁ?ガキ、邪魔だ、そこをどきやがれ」
頬を引き攣らせ睨んでくる男。
この前みたいに舌戦ができるようでもない。
仕方ない、今回だけはクラネルに付き合おう。幼い子を虐めるのは紳士(自称)として見過ごせないからな!
「そこのガキもやるってのかよ、マジで殺されたいらしいな…!」
「一回落ち着いた方が…」
クラネルが下手に出る。よし、それでいいぞ。
「カルシウムを取った方がイライラしないで済みますよ…」
真似て下手に出る。ナイスフォローだと自分的に思う。
「黙れ!!何なんだよてめぇらは!!そのチビの仲間なのかっ!」
あれ、余計に怒らせちゃった?
「「いや、初対面です」」
「じゃあなんでそいつを庇ってんだ!?」
「「ぉ、女の子だから?」」
「ふざけんじゃねぇ!!」
男が剣を構えた瞬間俺とクラネルは同時に得物を構える。あれ?おかしい……
「止めなさい」
芯のある鋭い声が割って入る。
声の持ち主はチュールさんと似てる整った顔立ち。そして突き出た耳。
そしてちょっとばかし前に行った店のエプロン。
「次から次へと…!?今度は何だァ!?」
「貴方が危害を加えようとしているその人は…彼は、私のかけがえのない同僚の伴侶となる方とその仲間です。手を出すのは許しません」
「どいつもこいつもわけのわからねぇ事を!ぶっ殺されてぇのかぁッ!?あぁっ!?」
「吠えるな」
ヒェッ…声のせいもありさながらその場が凍る。
「手荒なことはしたくありません。私はいつもやり過ぎてしまう」
それってもしかしてオラオラ的な意味ですか?
男は店員さんの迫力に負けてしまい退散していった。
追いかけられていたパルゥムもいつの間にか逃げていた。余談だがあの店員さんの名前はリュー・リオンというらしい。
リオンさんにお礼を言ってからその場で別れた。
━━━━━━━━━━━━━━━
次の日、と行きたい所だがクラネルも神様も寝静まった頃、俺は一人地下から出て魔法の練習をしていた。
(俺の魔法は『魔力操作』、つまり魔力さえあれば出来ないことは無い…多分…)
オラリオ生活を初めて思うのがアニメが無いという事だ。気になっていたアニメや特撮の結末が知りたくて眠れない夜も無くはない。例えば某ウルトラなマンのZとか気になっていた。
余談は兎も角今は新しい魔法の構想を試すのに集中しなくては。
偶にやる戦法としては相手を掴んでは投げたりちぎったりして戦うこともある。しかし体格のある敵に対しては自分の腕などちっぽけにも程がある。
手を前に出しイメージを練る。
ー全てを掴む剛腕ー
ーどれ程伸ばしても届くような腕ー
ーそんな私の手は一体、誰が握ってくれるのだろうかー
ボウ…と出てきた俺の腕の2倍はある大きな右腕。
動かそうとすると直ぐに目眩がして腕が消えてしまう。少し休憩…。
何度でも、何時までも試す。倒れそうになっても踏ん張り維持し続ける。出来るなら生活の支えになるくらいには仕上がらせなくては…。気が付けば腕は10秒位は維持出来るようになった。更には細かい動きも可能になった。
(今度は両手で…)
と思ったが流石に時間と体力を掛けすぎた、また今度にしよう。
フフフ、クラネルの奴に大目玉喰らわせてやる。
如何でしたか?
八幡の魔法については質量に対し消費する量も半端なくなるのでチート、という程でも無いと思います。
少しでも面白いと思ったら高評価と感想をお願いします!