ダンジョンに出会いとボッチを添えて   作:テクロス

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お待たせしました!前回はお粗末になってすみませんでした!


♯8 やはり俺は人が·····

 

「すみません!紫のコートを着てて髪が黒色に銀色が入ってて目が特徴的な男の人を見ませんでしたか!?」

 

酒場の冒険者に聞いて回る。しかし収穫は得られず…

 

「紫のコート?あぁ、確か【ヘファイストス・ファミリア】にいたなぁ」

 

【ヘファイストス・ファミリア】?それじゃあ神様に聞いた方が手っ取り早いかも。

 

踵を返してホームに向かう。今の時間なら神様は帰ってきてるだろう。

 

「神様!!」

 

「なんだい!ベル君!?」

 

「神様のバイトしてるお店に何かありませんでしたか!?」

 

「ふーむ、そういえば万引き犯が捕まったらしいよ?ボクはちょうどその時席を外していたから立ち会わなかったけど…ベル君?」

 

「神様、もしかしたらその人、ハチマンかもしれません」

 

「なんだって!?でもハチマン君は万引きなんかしないだろう!?……ハッ」

 

神様が何かを察したような顔になる。

 

「か、神様?」

 

「もし本当にハチマン君が万引きをしたのなら既に僕達のファミリアに何かしらのアクションがあってもおかしくない」

 

「何もないって事は…」

 

「十中八九……冤罪だ」

 

ハッと息を飲む。どうして?どうしてハチマンがそんな目に会わないといけないのか…。黒いモヤモヤが頭を埋め尽くす。

 

「こうしちゃいられない、ベル君、行くよ!」

 

神様に手を取られて連れて行かれる。しかし神様の目的地を察した僕はシルバーバックに襲われた時のよう神様をお姫様抱っこで連れて行った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「リュー」

 

私の同僚が申し訳なさそうに語りかけてくる。こういう声色をする時は大体2パターンに分かれる。

 

「どうかしました?シル」

 

「お願い、ハチマンさんを助けてあげて…」

 

きゅっと袖を掴みこちらを見つめてくる。

 

「しかし私にはまだ仕事が…」

 

「お願い!…私、胸騒ぎが止まらないの…もしハチマンさんをこのままにしてると、何か取り返しのつかない事になるんじゃなかって思って…」

 

「リュー!!」

 

自分を呼ぶ声が聞こえ、そちらを見るとミア母さんが腕を組んで立っていた。

 

「おつかいに行ってきな」

 

「ミア母さん!?今はそれどころじゃ…」

 

「口ごたえするんじゃないよ!ここじゃ私がルールだよ!」

 

「ミア母さん…何を買ってくるんですか?」

 

「あたしのパスタを美味い美味いって食う坊主を連れてきな」

 

「「え?」」

 

「いいから行ってきな!!」

 

言われるがままに店を飛び出す。

 

ハチマン・ヒキガヤ

私の同僚のシルがとても気に入ってる冒険者の相棒のような立ち位置にいる男。性格は寡黙な人だと思いきや自分よりも圧倒的に強い冒険者にも構わず舌戦を繰り広げる事。愚かなのか仲間思いなのか…。特徴的な目の奥に何が秘められているのか…。見極めたい。

 

私は木刀と刀を持ち店を飛び出した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ちっ!こいつ全然喋りやがらねぇ!冷めちまったじゃねぇかよ。おい!!酒飲みに行くぞ!!」

 

男達の声が遠ざかりドアが閉じる音がする。どうやら耐えれた様だ。奴らに暴行を加えられた際に魔力を薄く体にコーティングさせなんとかダメージを5分の1程抑えていたが麻袋を顔に被せられてからはどこに攻撃が当たるかも分からず終始コーティングを続けていた為魔力が少ししか残っていない。

 

残りの魔力を使い糸ノコギリみたいにし両手の拘束を解く。足の拘束も外し顔に掛けられた麻袋を取る。目に映る景色は右半分が暗い。奴らに熱したハンマーで殴られたからだ。脱がされ壁に追いやられたコートに手を伸ばす。炉の方に目をやればレザーアーマーは燃やされた様だ。爪は殆ど剥がれかけバカみたいに痛い。一本はあらぬ方向に折れ曲がっている。床には自分の血が飛び散っていて鍛冶場は一瞬で拷問場に変わっていた。どうやら手袋は無事だったようだが今は着けられない。痛いもん。痛みに耐えながらブーツを履き念の為部屋に使えそうな物がないか調べるとポーションが4本程見つかった。ポーションの味はマジで嫌いだが背に腹はかえられない為そのうち一本を一気に飲み干す。傷が癒えた気がするがやはり目は回復しない。近くに転がってるとある物を回収する。

 

扉を慎重に開け外に出る。外風が俺の肌を刺す。

 

「グッ…」

 

あいつら、絶対に許さねぇ…。

 

周囲を警戒しながら歩を進める。1歩1歩が辛いしなんなら左足も引き摺りがちだし。右手なんか肩は外れ、折れてるし…。取り敢えず身を休める為の場所に行かなくては…。

 

「やっぱり出てきたかぁ…」

 

男達がニヤニヤといやらしい微笑みを浮かべている。どうやら脱走は予想されていたらしい。

 

(マジかよ……)

 

絶望感が頭を支配するがすぐに全速力で走る。

 

「待ちやがれぇ!!!」

 

駆ける、駆ける、駆ける。足の痛みなんて無視して走る。アドレナリンが分泌されているのか痛みが引いてく。自然と笑いが零れる。とうとう狂ったのかと思うが違う。実感できたんだ。俺は生きてるんだと。今、夜空の下で自由に走り回っているんだ。前の世界じゃコレの片鱗も味わえなかった感情。なんていうんだろうか?

 

「ハハハッ、ハハハハハハハハハハ!!」

 

待ち合わせ等に使われる大広間に出る。噴水の前に着いた俺は手で水を掬い喉に流し込む。喉の痛みで盛大に噎せ返るがそれでも笑みは止まらない。

 

「ククククッ、フフフフフフフ…」

 

「とうとうイカれちまったのかぁ!?」

 

「いやいや、楽しみなんだろうなぁ!アンタらを殺れるのが!」

 

空っぽだったハズの魔力が溢れる。今の俺ならアイツらに負ける気がしない。

 

練った魔力を各通路に結界として展開し維持する。それだけで魔力が大きく消費されるがまぁいいハンデだろう。

 

「さぁ、始めようか、イカれたパーティーをよ!」

 

「ちくしょう…てめぇら!!殺るぞ!!」

 

剣を抜く冒険者、いや、落伍者達は全部で3つ。

 

奴らの動きが全てスローに見える。振り下ろされる斧を小さく後ろに下がることで避けその腕を掴み力を込める。

 

バキャ…

 

「うぎゃぁぁぁぁああああ!!!!」

 

鈍い音と共に腕が折れる。蹲るその体を頭を掴む事によって持ち上げ魔法を撃ってくる奴の盾にする。盾の役目を終えた男を地面に叩きつける。

 

グシャ…

 

動かなくなった奴の事に目もくれず次の男を見る。

 

「ひっ…こ、このおおぉぉぉぉ!!!」

 

ショートソードを振り回してくるがフォースエッジで払うとショートソードは中を舞い転がってる男の足に突き刺さる。

 

「ぐああああぁぁぁぁぁぁ……」

 

叫ぶ気力も残ってないのか呻き声しか上がらない。剣を払われた男は尻もちをついているがニマニマしてる。ウザイ顔、直ぐに叩き潰してやるよ。

 

「ソイツの後にな…」

 

後ろに向かって回し蹴りを放つと予想通り忍び寄ってた男の顎に当たる。男は慣性に従うまま重力に逆らい10mは吹っ飛ぶ。尻もち男は放っておいてソイツの元に歩いてく。俺を認識したのか男はその顔を恐怖で塗りつぶされ逃げようと試みるが上手く立てないようだ。

 

「立てないだろ。顎の振動は脳に伝わり脳震盪を起こすんだよ。まぁ、アンタらには分からんだろうがな…」

 

魔力を腕に纏わせ強度を増加させ拳を振り上げる。この技はアンタらの拷問のお陰で出来るようになったんだ。そこは感謝するよ。

 

「あがっ、あがっ…」

 

「じゃあな…」

 

拳をその顔に叩きつける。ピクリとも動かなくなった。

 

「助けてくれぇ!誰かぁ!!!」

 

股間を濡らしながら結界に手を叩きつけ助けを乞う男、そういえばこいつが俺に濡れ衣を着せたんだよな。

 

夜風にコートをハタハタとたなびかせ。元凶の元にゆっくり歩いてく。俺の存在に気づいたのかそれは酷く怯えている。ポケットからあの場所から出る際に持ち出した物を取り出す。こいつが俺を陥れる為に使ったナイフだ。

 

魔腕で男を抑え腹部にズブリと刺す。

 

「ギ、ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

叫び声が収まるまで待つ。さっさと終わってくれよ。俺は耐えたんだからさ…。

 

男の嗚咽が静寂を支配する中フォースエッジを携えその首元に刃を掛ける。

 

「ま、ま、待ってくれ!!悪かった!俺達だって金が欲しかったんだ!あまり良い作品が作れなくてスランプ気味だったんだ!許してくれよ!なっ!?なっ!?」

 

涙目で懇願してくるが耳に入らない。

刃を振り上げる。

 

「あ、あぁああ……」

 

「……あばよ」

 

振り下ろす。

しかし…

 

ガキン!!

 

「何故邪魔をするんですか…リオンさん…!」

 

疾風のように現れた彼女は俺の一閃を受け止めていた。一体どこから入ったんだ?と思ったが結界は壁のように張っていた為、上から侵入されたようだ。

 

「今すぐ剣を降ろしなさい。まだ今なら歯止めは効きます」

 

「……………………………」

 

剣を収める。彼女の力量は俺と雲泥の差だ。今の俺に届く事は決して無い。

 

「ハチマン!!」

 

結界の向こう側にクラネル、神様、そして知らない神様がいる。赤髪で眼帯を付けた女神と女性にも引けを取らない程長い髪でローブに身を包んでいる。男…なのか?

 

結界を解くとこちらに全員駆け寄ってくる。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

神様の呼び掛けでヘファイストス様とミアハ様がハチマンの探索に同行

してくれる。

 

先ず当時の店番の男達を割り出しその人達の鍛冶場に向かう。しかしそこは鍛冶師の武具や防具を作る場所では無く拷問場でしかなかった。壁や床に飛び散った血の跡。恐らく被せられていたのだろう血の染みた麻袋。鉄を打つ為にある筈のハンマーにも血が付いていて自体の深刻さを物語っていた。

 

「逃げ出せたのだろうがこの血の量じゃあまり遠くに行けない筈だ」

 

「早く行こう。ハチマン君が心配だ」

 

「ヘスティア、ごめんなさい、私の子が貴方の子に酷い事を…!」

 

「気にしないでくれヘファイストス、君は悪くないよ」

 

部屋から出ると血の跡がある事に気付きそれを辿っていく。血の量は段々増えていってる。傷が開いてきてるのかもしれない。

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

血を辿っていくと男性の物と思しき絶叫が聞こえた。

 

「この声、ハチマンのじゃない」

 

「とにかく急ぐんだ!」

 

道を抜けた先は大広間で何故か半透明な壁に阻まれて先に行くことが出来なかった。きっとハチマンの魔法だろう。しかし壁の向こう側には見慣れた影があった。

 

「ハチマン!!」

 

精一杯声を上げると壁が崩れて先に進む事ができるようになった。ハチマンが助かってる。それだけで嬉しかった。ハチマンの影に向かっていくと段々彼の全容が明らかになってく。

 

ハチマンを見た神様はワナワナと震え、ヘファイストス様は口を抑え絶句し、ミアハ様はポーションをポケットから取り出そうとしているが手が震えている。

 

その姿は今朝の面影を残していなかった。

酷い、どうしてこんな事を…。

 

「何とか一線は超えなかったようです。少し遅れていたらどうなっていた事か…」

 

何故かいるリューさんが何かを言ってるが聞こえない。周りには首謀者と思しき人達が転がってる。恐らくハチマンに返り討ちにあったのだろう。

 

「ハチマン君、君に何が起こったのか、教えてくれないかい?」

 

「……………」

 

「お願いだよ。今回の件について良く知っておきたいんだ」

 

「冤罪着せられて、拉致られて、拷問された。逃げて追ってきたから二度と立てないようにした」

 

淡々と、無感情に、告げるハチマン。その声はガサガサだった。やはりかとやるせない顔をする神様と自分の眷属がやった事にショックを受けているヘファイストス様。

 

「怪我の具合を見せてみろ」

 

是非も問わミアハ様がハチマンの体のあちこちを調べる。まるで陶磁器を扱うように慎重に…。その間リューさんは首謀者達を縛り上げている。【ガネーシャ・ファミリア】に突き出すのだろう。

 

「一通り終わったが聞いてくれ。ハチマンの体の傷は粗方治る」

 

その言葉に一同が ホッとする。しかし…と続けるミアハ様。やめてくれ、続けないでくれ。そう思ってしまう。

 

「しかし治すにはそれ相応のポーションが必要になる」

 

バツが悪そうに語るミアハ様。僕達のファミリアが貧乏なのを気遣っての事だろう。

 

「ポーション代は私のファミリアが持つわ!この子が治るならなんでもするわ。これは私の子が招いた事…」

 

さてと、残るは断罪だな

 

ゾワッ!!!

 

その場にいる全員に悪寒が走ったのか声のした方を向く。ただしハチマンは驚く事もなく表情一つ変えずに顔を上げるだけだった。

 

そこには今までに見た事ない人形の化け物がいた。

山羊のような角に逆だった髪?ををしており一対の翼を広げ紫の稲妻がその黒い体を迸っていた。

 

「モ、モンスター…?」

 

おいおい、そんな俺達の10000000000分の1にも満たないような奴らと一緒にしてもらったら困るな。この事は今日の日記に書かせてもらうぜ

 

見た目に違わず軽口を叩くソレはヤレヤレといった仕草をしていた。ダメだ、情報に頭が追いつかない。

 

先ずはっと、ソイツラの処分の後は坊主の鍵でも開けてやるか…随分と硬いらしいしな。…よっと

 

「げはっ!!!」

 

地上に降りたソレは何処からか出した剣を手に目にも止まらぬ速さで僕達の後ろにいた。…気絶させたであろうハチマンを抱きながら。

 

ブシャアアア

 

冒険者達の首から間欠泉のように吹き出す血…

その光景にカタカタと口を震えさせ怯えながらも僕は口を開いた。

 

「ハ、ハチマンに何かしたら…ゆ、許しませんよ…!」

 

安心してくれ、取って喰う訳じゃない。タダの診断さ

 

ハチマンの胸に手を合わせるソレは暫くした後ハチマンをゆっくりと地面に降ろす。まるで我が子を扱う母親の様に。

 

ソイツをハイポーションの風呂にでも入れてやれ。そうすりゃ傷なんてすぐ治る。じゃあ拙者はドロンさせて頂く

 

雷光と共に消えたソレはその場にいたハチマンを除く全員の胸にしこりを残しながら消えてった。

 

「神ヘスティア、先程のアレをご存知ですか?」

 

「詳しくは知らないけど。一つだけ言える。全員、さっきのヤツは忘れる事!アイツの事は知ってても関係を持ってもいけない存在だ。百害あって一利なしだ。そして勿論他言無用だ…」

 

「ではヘスティア、ハチマンを一先ず我がファミリアに連れて行こう。ヘファイストス、【ガネーシャ・ファミリア】」への通報を頼む。先程のヤツの事は掻い摘んで説明してくれ」

 

「勿論よ…あんなのが居るなんて、混乱しか産まないわ」

 

「神様、さっきのを知ってるんですか?」

 

神様に聞いてみるとハチマンをおぶってるリューさんも知りたそうに神様を見ている。

 

「悪夢だよ…あれは…」

 

とても懐かしそうに、そして奇異な物を見るような目で空を見る神様。一体どういう事なんだろうか…

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

カウンター入れるってマジかよww。やっぱりスゲー成長だなぁ

 

ダメージは入ってないが確実に当てられた腹を擦る。

 

「さてと、そろそろ準備を始めないとネ!」

 

夜風に吹かれる俺、かっくいいだろ?




ハチマンの拷問の件はハチマンにオラリオには良い人ばかりじゃないと再確認させて人にも刃を振るわせる事をコンセプトとしています。

敵の冒険者はハチマンよりレベルが上なのに勝てるのはおかしい、と思っていると思いますがそこはスキルが発動したという設定なのでご了承ください。

また次回のご購読よろしくお願いします。
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