ちくしょう…。
気が付くとそこは青、赤、紫が入り交じった空が広がっていた。地面は灰色。
「どこだ?ここは…」
確か俺は、アイツらを半殺しにして、殺そうとしたらリオンさんに止められて…。変なのに気絶させられて…。そこからが思い出せない。
考えても仕方ないから当たりを見回すとそこには扉があった。とてもとても大きく固く閉ざされた扉。
ふと近づき開けようとすると…
「うっ!!うぁあああ!!あああああぁぁぁ!!」
黒いナニカが全身に纒わり付くと激痛が走る。
ーまだだ
何がだよ!
ーまだお前は飢えられる
腹減っちゃねぇよ!!
ーまだ足りない
だから何がだよ!!
ー誇りも愛も
知らねぇよ…!そんなの知らねぇよ!!
ー八幡…
……ッ!
ー貴方は何でもできるわね…
違うッ!違う!!俺は…!俺は…
俺の意識は暗い闇の中へと飲み込まれていった。
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目が覚める。知らない天井、自然と安心できる匂い。身を起こして窓から外を見ると辺りは暗かった。夢…だったのか?だったらタチの悪い夢だな…
「目が覚めたか?」
振り返るとあの時駆けつけてきた髪の長い神がいた。
「貴方は…」
「そうか、初対面だったな。私はミアハ、この【ミアハ・ファミリア】の主神を務めている。ヘスティアとは長い付き合いでな、君の事は聞いている。そう警戒するな、というのは難しい話だな」
「一つ、良いですか?俺はどのくらい寝てましたか?」
「丸一日だ。あの後エルフのウェイトレスが君をここまで運んでもらってからポーション風呂に入れたんだ。その後は熟睡だ」
「ポーション風呂って…」
「む?ポーションは苦手か?」
「我儘言うのもアレなんですけど味が苦手で…」
「ふむ、ならばポーションに味を付けるとするか…好きな味は何だ?」
「激甘コーヒー…です」
「即答する程好むとは…今度共に飲みに行こう。私も味を確認したい」
「あの、なんで新作ポーションを作る流れになってるんですか?」
「同じ極貧ファミリアとしては顧客の1人や2人は確保したいのでな、その程度の願いを聞かずして神は名乗れないだろう?」
ヤバい、なんだこの優しさの塊みたいな神は…!
お、堕ちるもんか!
「そそそ、それじゃあ俺はこの辺で失礼します。看病ありがとうございました!それじゃ!」
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足早にその場を去る。外は太陽が出てこようとしてる時間だ。足は自然とあの場所に向かっていた。そう、噴水の広場だ。
(ここでドンパチやりあってたんだよな…)
フラッシュバックする光景…、平気で刃を振るい、魔法を使う俺は奴等からどう見えたんだろうか…。
怯えた目、震える足、痙攣する手。
「悪魔じゃないかしら?」
バッと後ろを振り向くとそこにはローブを見に纏いフードを深く被った女がいた。この気配、神か?
「誰だ…」
「通りすがりの女神、今はそれで充分よ」
「だったらその女神が何の用だ?」
「一つ質問させて貰えないかしら?ズバリ貴方の願いは何かしら?」
随分と詰めてくるな…。俺の願い…ね…。
「ノーコメントだ、アンタに教える義理が無いな」
「ふふっ、ミステリアスな子ね。いいわぁ、貴方はそのまま進み続けなさい」
「何様のつもりなんだよ…」
「あら、知らないかしら、私達は神様よ?どうか私を楽しませてちょうだい…」
まるで懇願するように告げた彼女は瞬きした瞬間に消えていた。なんなんだよと思っていても仕方ないから考える事をやめた。広場で腰をかけてじっとしている。
ープリキュアどこまで進んだんだろう…
ーガンダム新作やってるのかな…
ー仮面ライダーかっこいいなぁ
ー戦隊も引けを取らないよなぁ
ーウルトラマンZ…
ーFGOどうなったんだ?
ーニノ先輩可愛いなぁ
駄目だ。変な考えしか浮かんでこない。
「あの、何をしていらっしゃるんですか?」
顔を上げると【豊饒の女主人】のウェイトレス、フローヴァさんがいた。明け方に買い出しなのだろうか、重そうな荷物を持って大変だなぁ。
「どうも、ご無沙汰してます」
「そんなにかしこまらないでください!」
「はぁ…」
「それよりも、大丈夫なんですか?」
「まぁ、体の方はピンピンしてます」
「それは良かったです。ハチマンさん、お店の方に来ませんか?ミア母さんも心配してましたし」
あのミセス豪傑が!?これは大事件の予感だ。それに顔を出さないとなんか言われそうだしな。
「それじゃあお言葉に甘えて…」
立ち上がりフローヴァさんの方に近づき荷物をひったくるようにして持つ。
「あっ…いいんですか?」
「重そうだったんで…それとも持ちます?」
「意地悪な聞き方するんですね」
「あなたもいつもやってるでしょう?」
軽口を叩きながら【豊饒の女主人】の扉を潜る。
するとカウンターに立っていた彼女はこちらを見つけると直ぐにキッチンへと行った。
「それじゃあハチマンさんはそこの席に座って待っててください」
指定された席に座る。客のいないこの店はどこか寂しがってる印象を受ける。暫くするとドンッと前に置かれた山盛りのトマトソースパスタ。あぁ、きっとこれから全てが始まったのかもな…。
「…いただきます…」
1口飲み込めばまた1口とスプーンは進む。丁寧に丁寧にパスタをフォークに絡めては口に運ぶ。
「美味いなぁ…」
味わった事の無い味が口に広がる。
その味は出来たてだからなのだろうか、はたまた唐辛子でも入っているのか、感じたことの無い温かさに支配される。
「あたしの作ったパスタだから当然だよ!」
「そうですね…」
「今度食いに来なかったら容赦しないよ!」
「善処します…」
「素直にはいと言いな!」
「は、はいっ!」
勝てない、本能が叫ぶ。力量とかそんな生ぬるい奴じゃない。もっと根本的な何かで負けてる。
そう感じてると黒髪で猫耳を生やした店員がやって来て隣に座る。
「つかぬ事聞くけどおミャーは拷問されてたのかニャー?」
「クロエ!」
突然の質問に戸惑うとリオンさんが割って入る。きっと気を使ってくれてるのだろう。
「平気ですよ、リオンさん」
軽くリオンさんに告げると近くの椅子に彼女も座る。
「そうだな、拷問…されたな」
ハッと息を飲む声がする。他の店員もこの場にいなくても耳を傾けているのだろう。
「教えて欲しいニャ、どんな気持ちだったのかニャ?やっていた側だったからその気持ちを知りたいのニャ」
サラッととんでもない事が聞こえたから無視をしよう。
「平たく言えば悔しさと悲しさかな…」
うーん、と考えた結果この言葉しか見つからなかった。
「それはどうしてだニャ?」
「少しでも痛みを和らげる為に色々してた手の一つってだけだ。楽しい出来事とかそんなのを思い出そうとしたんだけど…」
「けど?」
「……いや、この話は終わりにしよう。店長、ごっそさんでした」
「今回はあたしの奢りだよ。また来な」
「うす」
強引に話を切り上げて店から出る。
「言えねぇなぁ…」
だって、何も無いんだから…
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「よぉ」
と言いホームの扉を開けた3人目の同居人。2人目のボクの眷属。その姿は何かを探していたように眠っていた時よりも何かを垣間見たような清々しい佇まいをしていた。
「おかえり、ハチマン君」
「ハチマァァァァン!!!」
ボクの
「ハチマンンンンンンンン!!」
ハチマン君が抗議するような目で見てくるがベル君の意思も汲み取って欲しい。昨日だけで何回お見舞いに行くと言ったと思うんだい?生活のために一応ダンジョンには行ったらしいけど行く前に1回、お昼に少なくとも3回、夜には5回も行ったんだよ!?挙句の果てには泊まるなんて言い出して連れて帰るのに大変だったんだぞ!!
「じゃあハチマン君の退院祝いにじゃが丸くんパーティーと洒落こもうぜ!」
「わーい!」
「え?俺、食ってきたのに…」
今回の主役は君だぜ?逃がさないよ。
「クラネル、今日の午後は空いてるか?」
「特に用事は無いけど、どうして?」
「神様と2人で出かけたらどうだ?」
ハチマン君…君って子は!?なんて良い子なんだ!
にやけが止まらないよ〜///
「ちょっとは奮発して美味いもんでも食ってこいよ」
「ハチマンはどうするの?」
「俺はちょっと用事があるから」
「だったら、分かったけど…」
「なら決まりだ、さっさとダンジョン行って金稼ぐぞ!神様はこれを使って高い服でも選んどいて下さいね」
どん!と懐から出したお金の詰まった麻袋をテーブルに置く。
「こんな大金、受け取れないよ…」
「この前の賠償金だと思ってて下さい」
彼には彼なりに思っていることもあるのだろうか…。
「ハチマン君…」
「?」
「君は君を誘拐したヘファイストスの子達をどう思っているんだい?」
「うーん…」
顎を撫で深く考える素振りをする。
「別に、何も?恨んではいますけどそれを引き摺るつもりはありません。いつまでもグチグチ言ってたらそれこそ同じような奴になる気がするんでね」
「そうか、なら良いんだ…」
「それじゃあクラネル、さっさと用意しな。お前も一張羅買うんだから…」
「うん!」
ベル君は軽装【
「それじゃあ神様、いってきま〜す!」
「いってきます」
「うん、行ってらっしゃい!」
笑顔で彼等を送り出す。
さてと、ハチマン君が折角気を遣ってくれたんだ。飛びっきりのオシャレをしないとね!
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ーダンジョンにてー
俺は斬る、掴む、投げる、殴る、撃つ。
もう1人は駆ける、捌く、そして駆ける。
様々な手を使ってモンスターの命を摘み取っていく。冒険者とは仕事というには責務とかそんなのを感じる必要がないからどっちかって言うと金の稼げる趣味のようなものだろう。きっと色んな人がいるのだろう。金が欲しくて冒険者やってる人、モンスターに大切な人を殺されたから復讐心で冒険者を やってる人、隣にいるこいつのようにモテたいからという何ともまぁ、なんだ、うん…。みたいな理由で冒険者になった奴がいる。
そこで浮かんでくるのが「じゃあ俺は?」だ。なんとなくとしか言い様がない。そこで思い浮かんでくるのが鳥等の動物に見られる帰省本能というものだろう。自然と体が巣に帰ろうとするやつだっけ?そんなのだろうか。だからといって俺の体にはダンジョン生まれのモンスターとこれといった共通点は見られないしなんなら襲われるまである。
「よし、この辺で切り上げるか」
「?もういいの?」
「バッカお前、準備とかに時間かけんだから当たり前だろ」
「そっか、じゃあ戻ろう」
その後はシャワーを浴びて換金して、俺がコートを買った服屋でそれなりに似合う一張羅買う。うむ、我ながらいいセンスだ。
待ち合わせによく使うようになった噴水前でクラネルを待機させる。何故かモジモジするクラネル、キモイぞ」
「キモイって…緊張するんだもん!」
「なんだ、お前デートもした事ないのか?」
「え?ハチマンはあるの?」
「あぁ、あるぞ、「荷物、持っといて」しか言われなかったがな」
「それってデートって言えるの?っていうかこれもデートなの?」
「
「でも神様だよ?僕達みたいな
なるほど、つまりクラネルは自分達とは次元の違う神と
「クラネル、お前は互いの身分を超えた話を知ってるか?」
「勿論!ジュリエとロミエットとかがいい例だね!」
少し俺が知ってるのと違う気がするがあまり言及はしないようにしよう。
「きっとそんな感じなんだよ、神も…」
「え?」
「例え生きる時間が違くても一緒にいたい、そう思うんだろう」
「でも、死んじゃったら一人ぼっちになっちゃうんだよ?」
「それも承知の上だろう」
「だったら…「だから」」
「そこは俺達が頑張んだよ…」
「?」
「確かレベルが上がるという事は神に近づく事なんだろ?」
「そうだけど、まさか…」
驚愕するクラネルに向けてニヤッと笑いかける。
「だったらそのカミサマに少しでも近づけばいい」
「強くなる事とレベルアップがイコールで結べるのなら強くなろう、もしイコールで結べなかったらその他に必要な事をすればいい。その先にあり、尚且つ不変にて不滅ならそれはきっと他のどんなモノよりも本物なのだから…」
「ハチマン?」
「まぁ、兎も角頑張れよ、俺も頑張るから…」
「ハチマン…」
「今の俺にはダンジョンで戦う理由なんてこれっぽっちも無い、だから探す。俺の戦う理由を…。ダンジョンでな」
「うん!!」
隣にいたクラネルは俺の前に立ち手を出してくる。一瞬呆気に取られたが瞬時に理解し手を取ろうとするが…
(あぁ、ここでも邪魔してくるのか…)
過去の記憶が…黒いモヤが、邪魔してくる。
それでも…あと1回だけでも…
「お〜い!2人共〜」
少し離れた所から神様が走ってくる。結構似合うドレスを見に纏いながら。
「そら、行ってこ…」
「あ、いたーー!」
叫び声がした方を見ると複数人の女神がこちらを指さしている。これって不味い状況なのでは?
「ヘスティアがおったぞーー!」
「ということは…あの隣にいるのがっ!」
「2人いるけどどっちー!?」
「あの、紫コートのハンサムくんだ!」
例外なく見目麗しい美女美少女の集団が、大挙して、攻めかかってくる。その光景はさながら某ジブリなナウシカの王蟲の様だ。
「狙いは俺の様だ、お前は神様と!」
クラネルを俺がいる場所より少し離れた所に向けて魔腕を使い押し出す。魔法だって傷つけるだけじゃなく色んな使い道があるんだぜ。…これでいいんだ。
「ゲットーッ!」
「やーん、抱き心地いい〜!」
「ヘスティアもいい男見つけるわね!」
「むぶ〜〜!!///」
沢山の腕が俺を引っ張り代わる代わる胸の中で抱きしめる。良く女性の胸はそれぞれ感触が違うといわれているが、本当にそうだった。マシュマロみたいだったり風船みたいだったり、綿あめみたいだったりする。
「なっ、なっ!」
「ごめんなさいね、ヘスティア。私達どうしても貴方の子が気になっちゃって、後をつけてきちゃったの、…あらやだ、本当にハンサムね。私好み…」
「ん──っ、ん────っ!ん?」
「ハ、ハチマーーーーン!!」
肉の波に触れてそれを掻き分けながら腕を天に向けて出す。サムズアップ、そのサインがクラネル達に届くように…。
「ベル君!ハチマン君が耐えてる内に早く!」
「でも!ハチマンが!」
「彼の意志を無駄にするんじゃない!行くよ!」
「ハチマン…」
離れた所から2人分の足音が離れてく…。
へへっ、俺の屍を超えてゆけ。
これでいいんだ!!
これでいいんだ!!