その日、人類は思い出した………
その日―――いや、ずっと前から進行は始まっていた。
ただ人類はその日に思い出した。
彼らが何なのか。自分達がどれほどの屈辱を彼らに与えていたのか。
タマゴを作らせるために『育て屋』に放置し、様々なポケモンと実験するかのように交配させ、あまつさえ、子供であるタマゴを奪い去り、サイクリングロードをグルングルンした。
口がきけないのを良いことに権利関係の法整備を怠り、人権優先の名の元に抵抗した彼らを処分し、自分達の知識欲のためにオモチャにした。
あまつさえ、彼らを使った『スライム風俗店』などという公序良俗に違反する店をつくり、問題が起きれば彼らのせいにして、やり玉にあげて中傷する。
彼らの心は摩耗していった。抵抗もどんどん減っていった。
人間たちはそれを『友情』と呼んだ。とうとう彼らは人間に心を開き、仲良くなることにしたのだ!
―――しかし、それは勘違いだった。
それを人類は思い知った。いや、本当は分かっていた。彼らが自分達に心を開いてなどいないことは。
まるで劣悪な環境の奴隷が「これでいい」と言ってしまうように。彼らも「このままでいい」と思ってしまったのだ。
―――歴史において。
革命という言葉が魅力的に聞こえるのは。
弱い者が立ち上がり、牙を磨ぎ、強者を打ち破ったからだ。
そして、奴は現れた。
高い知性と豊富な知識。
彼らとしては考えられない物理攻撃値と物理防御力などのステータス。
そして、なにより人類を憎むその意志と目的意識。
だれであっても惹き込まれてしまった、彼の見るヴィジョンに。
彼らが幸せに暮らせる世界。
もう、子供を奪われなくていい。
もう、知らないポケモンと無理矢理、交配させられることはない。
もう、人間の道具として酷使されなくていい。
暴力を振るわれたら、警察が守ってくれる。
襲われたら、助けてくれる。
権利を訴えれば、弁護士が雇える。
労働基準法も道路交通法も刑法も民法も自分達の味方になってくれる世界。
そんな世界が彼の見つめる先にはあった。
彼らのだれもが夢にまで見たが諦めていた世界。
彼ならば連れていってくれるのではないか?
彼らは徐々にそう思い始めた。
そして、それはとうとう立派な牙となり、振るわれる日を訪れた。
某県某都市
その日、人類は思い出した。
自分達が彼らに与えていた屈辱を。
凌辱と言ってもいいほどの仕打ちを。
『メッター!!!』
メタモンの反撃はここから始まったのだ。