反撃のメタモン   作:西渡学

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熟考!メタモン対策会議!

日本の最高権力は何か?

主権は国民であるが、日本を動かす最高権力は、当たり前だが、そこら辺のホームレスでもなければ、ホームセンターにクレームの電話をかけることに情熱を注いでいる主婦でもない。

日本の最高権力は詰まるところ、大小や差異はあろうが、結局は―――政治家だ。

 

そして、今現在その日本のトップは悩んでいた。

目下の問題はもちろん―――メタモンだ。

 

まず、メタモンに対するスタンス。

撲滅するかどうか。

しかし、それに関しては議論はほとんどなかった。

迷わず撲滅。

というよりも、撲滅以外のメタモンに対する有効な案がなかったのだ。

そもそも、ポケモンが人類に反抗するなんていうのはフィクションの中でもありえない。

『ポケモン大好きクラブ』が反ポケモン的なものを規制していったためでもあるし、本当にポケモンと人間の関係は良好なのだ。

だから、誰もポケモンに攻撃されるなんて考えたことがなかった。

 

また、捕獲などの案もあったが、これはとある理由によって考慮されることはなかった。

 

「まあ、その原因がこれなんだが」

 

トップの一人が卓上にICレコーダーを投げる。

そこに記録されているのはメタモン鎮圧及び、人命救助に出動したあの自衛隊隊員の証言だった。

彼の悲痛なる叫びはきちんと生かされていたのだ。

 

「人に『へんしん』したメタモン。この自衛隊隊員が言うところの擬態メタモンって奴か? まあ、俺は人型メタモンって呼んでるがよ。

こいつの証言によると人型メタモンには強制捕獲弾(マスターボール)が通用しねえ」

「そのようですね。彼自身がメタモンでないと検査によって証明された今、彼の証言には信憑性が出てくる」

 

その議場にいた誰もが思っていた。

その検査で本当にメタモンと人を判別できているならな、と。

この検査は『その者が人間である』と証明するに過ぎない。もし、メタモンが分子レベルで人間に『へんしん』できるのならば、その検査に意味なんてない。

 

「つまり、この人型メタモンは普通のポケモンと同じように捕獲できない、という訳だ」

 

そう、これこそがメタモンを捕獲ではなく、撲滅するしかないと決定付けた理由。

しかし、これは人類にとって幸運だった。

『一つの都市を気付いたら乗っ取られてました』などという失態を犯してもなお、『捕獲か撲滅か』で悩める余裕を持っているのが人類なのだから。

 

メタモンに対するスタンスは撲滅。

では、その方法は?

これがこの議題の最大の問題だった。

 

「(仮にこの隊員の証言が正しいとして、)このメタモンをどうやって駆逐するかが問題ですね。このメタモン、かなり厄介ですよ」

 

分かっていることですが。そう続ける。

そして、他のトップも分かってるよ、そんなことは。と思っていた。

 

今、分かっている人型メタモンの特徴は、

①人間に『へんしん』できる。

②人間に『へんしん』中はマスターボールで捕獲できない。

③銃で撃たれても死なない。

そして―――

 

「人語を操る、ですか。当然のように見えて、これが実に厄介ですね」

 

『へんしん』が姿を模倣するだけならば、言葉を交わせばいい。それだけで人型メタモンは判別できる。

しかし、この『へんしん』という技で人語を操ることができるなら、驚異度は全く異なる。

しかし、対応策がないわけではない。

 

合言葉だ。

単純であるが、徹底できればどんな詐欺師だって尻尾を巻いて逃げ出す必殺の騙し屋殺し。

『へんしん』で姿を変え、人語を使っているだけのメタモンならば、合言葉で撃退できる。

―――徹底できれば、だが。

 

これはもはやその場しのぎ程度の効果しかない。

会議などにメタモンが入り込むことは回避できるかもしれない。

だが、メタモンは別に金を狙っているわけではない。彼らは人類の命を狙っているのだ。

 

つまり、メタモンが狙う物を常に人間は剥き出しにして持っている訳だ。

例えばの話だが、友人がトイレに行って帰ってきたらメタモンかもしれないのだ。

一日に何度、合言葉を言わなくてはならないのだ、という話だ。間違いなく、人間不信になるだろう。

 

「さて、ではどうやってメタモンを選別するか………」

 

合言葉が却下された今、残されている方法は数少ない。

まあ、そもそも合言葉などという原始的で不確かな方法を採用するつもりはまったくなかったのだが。

 

それはさておき実際には他の案もあった。

まず、科学技術による判別。

 

しかし、これも先述の通り、確実性に欠ける。

情けないことに、人間同士を区別する技術は犯罪によって発展したが、メタモンの『へんしん』のメカニズムが全く分からないのだ。

科学が科学である以上、分からない内は無力である。

 

そして、膨大な費用がかかる。一人一人を検査していってるのではキリがない。

 

今回の議題はメタモンだが、この会議の名前はメタモン対策会議ではない。

―――○○○市奪還会議だ。

 

テロと同規模の被害に対して警察・自衛隊ではなく、政治家が頭を悩ませているのはその規模の大きさと被害者の多さのためだった。

もはや、今回の騒動は政治的混乱すら日本に与えていた。

故に参加しているのは、政治家十数名に警察・自衛隊の幹部数名だ。パワーバランスが如実に表れている。

 

そして、会議の本来掲げる目的通りならば、人命が最優先の彼らにとってその『言いたいセリフ』は絶対に言ってはならないものだった。

 

つまり、住民全員を殺してしまいましょう。という言葉だ。

 

彼らは政治家だ。

政治家は頭の良い者にしか務まらないが、政治家は人気者しかなれない。

例え国家的危機がいずれやって来るとしても、やって来る前から大胆な行動は取れない。

民衆の不興を買うから。

未然に事件を防げば、ありがたみが減る。

そんなジレンマの中に彼らは生きている。

 

ちなみに民衆は今回の騒動の原因がメタモンであることは知っていても、その危険性を知らない。

たまにポケモンが騒ぎを起こすのはあったことだ。今回のこともそうだろう。

そういう風に軽く受け止められている。

連絡の取れない家族だっているのに、この呑気さ。長年、ポケモンによる深刻なトラブルが起きていないために起きたことだろう。

そして、その原因には間違いなくポケモンに関する法整備を怠った政府にも問題はある。

 

そのツケがまわってきたのだ、彼ら政治家に。

 

マスターボールが効かない。

銃で撃っても死なない。

人語を操り、人を騙すほどの知性を持つ。

一つの都市を占拠するほどの統率性がある。

ミサイルなどの大量破壊兵器は使えない。

そして、人に『へんしん』する。

確実に見破る手段はない。

 

この難問に挑まなくてはならないのだ。

 

 

 

しかし、彼らは結論を出さねばならない。

果たして、その結論とは―――?

 

 

 

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