反撃のメタモン   作:西渡学

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反撃!秘密兵器と政治戦略!

その日、メタモンに占拠された○○○市に向かって戦闘機が飛んでいった。

目的はメタモンの排除。

そして、その機体に積まれてるのは―――。

 

 

 

 

○○○市奪還会議は一端休憩時間という形となり、翌日再開された。

その第二回○○○市奪還会議で政治家・大山タケル議員は考えていた。

しかし、最終的には実行することにした。

膠着状態となっていた会議において彼の言葉はまさに救世主だった。

 

『P4という兵器を使いましょう』

 

P4。

それは政治家たちにとって聞き慣れない言葉だった。

いや、例え政治家でなかったとしても、この言葉を聞いたことがあるものは限られるだろう。

なぜなら―――。

 

『この兵器はかつて弾頭団(だんとうだん)が用意していた物です』

 

これには他の政治家たちもざわめいた。

弾頭団。

P4に聞き覚えのない者でも、この名前は聞いたことがあった。

 

宗教団体・弾頭団。

ポケモン下位的存在神話を教典とする宗教団体。

その教えは、ポケモンは神が人間のために造り出した存在だというもので、ポケモンは人間の労働力になることを至上の悦びとしているという。

 

この宗教の信者数はそれほど多くはなかったが、その活動の過激さと非社会的行動から摘発され、解体された。

憲法の『精神の自由』を盾にやりたい放題だったが、『ピカチュウクローン化計画』を期にとうとう裁判で判決が下されたのだ。

 

そして、その摘発・解体に最も深く(たずさ)わったのが、この大山タケル議員だった。

 

しかし、何故、彼がそのような組織の物を?

ほとんどの政治家はそう疑問を持っていた。

 

『私は弾頭団解体後もあの組織について調査を進めていました。そしたら、このP4の存在が明らかになったのです』

 

ここからは大山議員にとって鬼門だった。

P4の出自については話した。

あとは―――。

 

『それで、そのP4という兵器はどんな物なんだい?』

 

大山タケル議員の同期で、交友のある風間ヒサシ議員は尋ねた。ここからが勝負だ。

 

『P4は端的に言ってしまえば、《対ポケモン用殲滅兵器》です』

 

その兵器は弾頭団の教義である『ポケモン下位的存在神話』とは相容れないものであった。

弾頭団は別に非ポケモン社会を目指していた訳ではない。

言うなれば、『ポケモン奴隷化社会』を築こうとしていたのだ。

ポケモンを殲滅してしまうこの兵器はいわば、『言うことを聞かないとぶっ殺すぞ』という威嚇兵器であった。

 

『この兵器を使用すれば、半径10キロ圏内にいるポケモンに対して有効なダメージを与えることができます』

『有効なダメージ、というと?』

『充分に殺傷可能な威力です』

 

政治家たちは絶句とまではいかなくとも、十分に驚いていた。

対ポケモン兵器。

それも戦略兵器と分類されてしかるべき威力だ。

そのような物を弾頭団が所有していたとは誰も想像すらしていなかった。

 

『対ポケモン兵器という訳ですね………。攻撃対象ポケモンは選べるのですか?』

『いえ、それはできません』

 

選べない。

つまり無差別攻撃という訳だ。

これは普通ならば、到底通るはずのない案だ。

そう、普通ならば。

 

『それは困りましたね。それでは無関係のポケモンまで傷ついてしまう』

『ええ、まったく困りました。せっかく人間に対してほぼ無害といえる兵器なのに』

 

これには政治家たちも反応を隠せなかった。

人間に無害だとぉ?

心が一致した瞬間であった。

 

『私としては、この案が最良だと思うのですが、やはり使用は倫理的に難しいでしょうね』

 

提案した大山議員は自ら提案したというのに、なにやら案を引く気配をみせはじめた。

これは明らかに見え透いた誘いだ。こんなのに乗る奴はいない。

 

 

『いやいや中々良いと思うよ、それは』

『そうですね。少し工夫すれば充分使えると思いますよ』

 

 

いや、いた。

誘いに応じたには稲田サトル議員と田中アキラ議員。

どちらも壮年の男性議員でそこそこベテランの議員だ。

普通ならば、こんな誘いには乗らない。

しかし、乗ってくる奴が現れた。

これは他の議員に衝撃を与えた。

そして、選択を迫った。

お前らは乗るのか? という選択を。

 

『私も使用には賛成ですね』

 

短い言葉ではあったものの、悩む議員に追い討ちを掛けるように賛同する声。

これは真田カズミ議員のものだ。

 

その後も追い討ちを掛けるように増えていく声。

その数は徐々に増えていく。

 

『私も賛成です』

 

そして、稲本カズハラ議員の賛成の声が聞いた時、大山タケル議員は心の中でガッツポーズをとっていた。

別に稲本カズハラ議員を含めても、まだ全体の三分の一にも達していない。

しかし、稲本議員は大山議員にとって他の議員と違う点があるからだ。

 

この時点で警察部の官僚・杉崎ワタルはこの会議で何が起こっているのか理解していた。

そして、同時に理解できないと呆れていた。

 

キャリアであり、此度の大事件にオブザーバーではあるものの、参加するほどの力を持った彼には大山タケル議員の作戦が透けて見えていた。

 

その作戦とは、すなわち、サクラ。

他の議員への根回しをしておき、会議における最低数を確保しておく作戦だ。

だが、こんなものは作戦などと言うのもおこがましいものだ。

他の議員で気付いていない者がいるならば、そいつは無能だ。

しかし、杉崎ワタルが呆れているのは、それをしている大山タケル議員に対してだ。

 

何故、このような回りくどい手を使う?

そもそも、P4などという兵器の存在を明らかにしたこと事態がまず理解できない。

自分も初めて知った兵器だが、それは所持していても利益などない代物だ。

ポケモンを虐殺できる兵器なんぞ、現代では排他対象以外の何物でもない。

 

緊急時だから?

強敵を相手にしなければならないから?

会議が膠着状態に陥ってしまったから?

 

―――馬鹿馬鹿しい。

そんな理由で自分の弱点を露にするなど政治家ではない。

ただのヒーロー気取りのガキだ。

警察部である杉崎ワタルですら断言できる、いたって単純で当たり前のことをしない大山タケルに対して杉崎ワタルは『無能』の烙印を捺していた。

 

わざわざサクラ作戦などという回りくどい手を使って、自分には利益のないことをする。

他の議員に任せていても良いだろうに。

 

そう杉崎ワタルは考えていた。

しかし、彼は誤解していた。

勉強漬けでドラマを見る暇なんてなかったのだろうが、彼にはしかし、政治家に対する偏見があった。

政治家・大山タケルを下に見すぎていた。

 

政治家とは決して自分の保身だけを考えているクズばかりで出来ている訳ではない。

むしろ、保身や利益のことを第一とする時点で杉崎ワタルは大山タケルに劣っていると言って良いだろう。

支配者としてではなく、人間的に。

杉崎ワタルは大山タケルに劣っている。

 

大山タケル議員は決して熱血バカではないが、国難に対して利益を優先させるほど腐ってはいない。

P4は自分の立場を危うくさせる物だが、今の膠着状態では誰かが火をつけるしかない。

誰がやるの? ―――俺でしょ。

 

その正義の心を持っているとも言える大山タケル議員は現在―――。

 

(さて、あとは斎藤議員に責任を擦り付けるだけか………)

 

全力で保身を考えていた。それも擦り付けという汚い形で。

しかし、これは当たり前である。

別に彼は○○○市奪還会議のために政治家になった訳ではない。○○○市が奪還したら、はい終了ではないのだ。

 

さっきは勢いで流せたが、いずれ必ずP4の所持理由を問われる。そうなれば、厄介なことになる。

対ポケモン兵器。

この兵器の所持は今の現代ではテロの準備と同義である。

それを追及されれば、政治家生命どころか人生が終了するだろう。

いくら弾頭団を解体したと言っても、言及されれば、言い訳は難しい。

 

だから、擦り付ける。

ついでに邪魔な斎藤議員も排除出来て、一石二鳥である。

ちなみに斎藤議員とは斎藤マサハルのことで、浅黒な肌と馴れ馴れしい態度が不評な議員であり、大山タケル議員の天敵でもある。

嫌われ者には退場願おう、という考えである。

 

日本を救うのに正義感は必要だが、それだけでは一時的な処置に過ぎない。

救い続けたければ、賢くなければならない。

彼はまだ終われないのだ。

 

 

会議は終わる。

大山タケル議員の思惑通り、会議はP4使用に賛成の方向に進む。

実はサクラを入れても可決に必要な人数の半分しか確保できなかった大山議員としては、何気に冷や汗モノだったのだが、可決に持ち込めて大山議員も一息つく。

 

こうして、小さいようで必要な一歩は歩み出された。

 

 

 

 

 

戦闘機が○○○市に向かっている。

積んでいるのはP4と呼ばれる対ポケモン兵器。

いずれは対メタモン用に改造される予定だが、今はポケモン全てに対して有害な兵器だ。

 

結局、会議では周辺への立ち入り禁止を徹底することになった。

人間がいなければ、その人間が所有するポケモンもいないだろう、という考えだ。

野生ポケモンの避難に関しては最大限善処する(・・・・・・)方針となった。

この会議は公開制の会議ではなかったため、その内実は国民には知られていない。

ただ、人間の生命を脅かすメタモンを駆除するため、という名目でこの作戦は実行されている。

 

そして、この作戦に対する世間の注目度は驚くほど低い。

明確な被害者数が少ないとはいえ、この作戦が実行されるにあたって、一度も横槍は入ってこなかった。

 

しかし、それは人類にとっては行幸。

速やかにメタモンへの攻撃を始めることができた。

そして―――P4は○○○市に投下された。

 

 

 

 

その日はどういう日だったのか。

P4は投下すべきだった。

P4を投下したのは過ちであった。

それは数十年先の歴史家たちの間でも意見は別れている。

 

しかし、思う。

人類はやり返したのだと。

いままで虐げていたメタモンの怒りに対して、人類も怒りを以てやり返してしまった。

 

―――もしも。

人類がやり返さず、その身を以て、メタモンの怒りを呑み込んでいたのならば………。

そんな仮定に意味はないが。

 

人類は、共存できたかもしれない。

 

 




本作品における政治的描写は全て作者の想像であり、創造です。
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