反撃のメタモン   作:西渡学

5 / 7
この作品は飽くまで二次創作であり、実在のメタモンとは関係ありません。
また、本作は残酷かつ不快な表現を含んでおります。


本領発揮!恐ろしきメタモンの力!

メタモンは未だ発展途上だった。

一部のメタモンを除いて、言語を解する知性はなく。

また、意志も微弱だった。

 

人類への復讐。

それは一部の高性能メタモンが始めただけのもの。

メタモン全体の総意ではない。

 

メタモンは確かに虐げられた。

野生のメタモンを見つければ、追いかけ回し。

捕まえられたメタモンは他のポケモンのように可愛がられることなく、『育て屋』送り。

 

さらに風俗店『スライムパブ』の流行によってメタモンに対する認識は『一匹のポケモン』から『ただの欲望の捌け口』となった。

そこではメタモンはサンドバックであり、空気嫁であり、バイブであった。

 

しかし、メタモンはその所業に対して反抗しなかった。

それは人間が好きだから―――ではない。

親に対して子が反乱できないように倫理観や保身が働いたからでも―――もちろん、ない。

ただ、メタモンは考えられなかった。

 

メタモンやベトベターなどの半流体ポケモンの脳がどこにあるかは未だ判明していないが、一般的な見解として半流体ポケモンは総じて『頭が悪い』とされる。

そして、この見解は間違っていなかった。

 

メタモンはその『頭の悪さ』のために、人間が自分たちに行っている行為がどれほど非情で非人間的なのかを理解できていなかった。

自分達がどれだけ可哀想な生き物なのかを理解できなかった。

 

人間は言った。

『辛いと思っていないのならば、別に良いじゃないか』と。

メタモンの反乱の始まりとなる一言だった。

 

再度になるが、メタモンは別に人間を憎んでなどいない。

別に殺されている訳ではない。自分達は生きている。

それだけでいい。

そう考えていた。

いや、思考などという表面的な部分的ではなく、本能からそう思っていた。

メタモンの生物的本能は生存さえできればいい、という結論を出していた。

 

故に今回の○○○市占拠事件は一部のメタモン以外は消極的だった。

あの事件では、自衛隊(にんげん)が攻撃されはしたが、全滅という訳ではなく、全体から見れば5%しか殉職(死亡)していない。

あれだけの惨劇すら、局所の悲劇だったのだ。

 

他のメタモンは積極的なメタモンの単純な命令を聞くだけだった。

別に人間に従順なわけではないメタモンは命令に対する忌避はなかった。

なんとなく従ってみよう。

そんな軽い気分だった。日和見といってもいい。

しかし、その意識は覆る。

 

P4投下。

それは多くのメタモンにとって手痛い裏切りだった。

人間が自分達を攻撃するなどあり得ない。

たとえ、自分達をよく分からないピンクの部屋に連れていって、人間の女性体に『へんしん』させて、胸部や股を触ってきても。

男性体の股にある棒に『へんしん』させられても。

メタモンはなんとも思わなかった。

 

だからこそ、メタモンはなんとも思っていなかった。

たとえ、それが自分達から仕掛けたことであっても。

人間を大量虐殺していようと。

そんなことは関係ない。

人間はポケモンを殺したりしない。

そう思っていたメタモンはP4の投下を手痛い裏切りだと感じていた。

 

身勝手だ。

人間はそう非難するだろう。

しかし、彼らはメタモン。そして、ポケモン。

精神構造が同じなどというのは人間の傲慢だ。

 

やられたらやり返す。人間は声高に叫ぶだろう。

やられてもやり返さない。メタモンは表にも出さないだろう。

 

これが違い。圧倒的な違い。

しかし、間違ってなどいない。

今までメタモンを虐げていた人間は、肝心なことは理解できていなかった。

 

結局のところ、メタモンの倫理観は赤ん坊のそれと同じだ。

無垢なる心では善悪の判別などできない。

善悪の判別が出来ていれば、人間の行いに反抗しているはずだ。

そういう意味では人間は今までラッキーだった。

 

『やられてもやり返さない』とは裏を返せば『やってもやり返されない』という意識のことに他ならないのだ。

メタモンは自分達が攻撃しても、反撃されることなど考えもしなかった。

 

しかし、P4は投下された。

それはメタモンに生命の危機を与えるには充分な殺戮兵器。

生存本能に従い、メタモンは当然のようにこれを防衛する。

すなわち、人間の排除。

 

これはP4がもたらした唯一のデメリットであり、最大の呪いだ。

虐げるだけなら、怒らない。

貶めるだけなら、気にしない。

利用するだけなら、無抵抗。

 

そのメタモンを本気にさせた。

 

これからが本当の戦争の始まりだ。

人間の知らぬところでメタモンは攻撃体制に入っていた。

 

生存本能を刺激されたメタモンは止まらない。

結局のところ、P4は小数のメタモンを殺戮し、大多数のメタモンを本気にさせてしまっただけだった。

 

 

 

 

 

 

 

~○○○市跡地~

 

P4投下から数時間後。

そこには自衛隊の姿があった。

 

P4は効力通り、ポケモンを大虐殺するに充分な威力を発揮し、○○○市にメタモンの死骸を産み出していた。

それは人間にとって、初めての勝利だ。

しかし、そこには勝利の余韻などない。

それはメタモンに対して恐れを抱いているからではない。

メタモンの死骸を見た回収班たちの懺悔や後悔のためだ。

 

『ああ、なんという恐ろしいことをしたのか』

 

『ポケモンを虐殺するなんておぞましいことをするなんて』

 

回収班は初めてだった。

かつて、自衛隊がこの街の人命救助のためにやって来たが、この回収班は全く別の人員で組まれていた。

つまり、回収班はかつての惨劇を知らない。

 

故に生じるメタモンへの同情と懺悔の念。

同族(なかま)を殺されてもなお、メタモン()への思いは人類の甘さを如実に語っていた。

地球最強。ただし、慢心王(ギルガメッシュ)

栄え過ぎた代償なのかもしれない。

 

○○○市中心部には。

メタモンの死骸が236体。

人間の死体が0体。

保護された人間が約1万人。

市街地のいくつかのエリアでは、ぽつぽつと人の殺された場所もあり、その犠牲者は100数名。

 

○○○市中心部で、保護された人々はビルに集められていた。

皆、縛られており、事件のショックで記憶が曖昧になっていた。

今は自衛隊保護の下、検査を受けている。

そう、検査。

メタモン判別検査だ。

1万人のメタモン判別検査。まだまだ人間はメタモンから逃げられていないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

○○○市奪還会議の間、国会では自衛法案の審議がされ始めていた。

いうまでもなく、対メタモンのための法案だ。

政治家たちのトップも、このメタモンには脅威を感じていた、ということだ。

 

そして、○○○市奪還会議の行われた第一会議室は―――。

 

『メッタァア』

『くそ! なんでこいつがいやがる!?』

 

―――地獄を再現しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

会議終了後。

P4投下を完了させた後の事後処理に集まっていた政治家たち。

異変はいきなり起きた。

 

バタリッと何かが倒れたような音がする。

その時点で何人かは嫌な予感がしていた。

だが、扉に走ることはできなかった。本能的に振り返ってしまう。

そして、見てしまう。その異形の姿を。

 

議員が倒れている。

そして、倒れている議員のそばにいる男の名前は山田カイという。

政治家としては積極的ではなく、同じ派閥の者の支援に徹するタイプだ。

温厚で笑うといい笑顔を作っていた。

 

―――そして、今も笑っていた。しかし、以前と違う凄惨な笑みだ。身体はもはや、以前の面影を残していない。

 

手は半透明な触手と化していた。

肩からは大砲が生えている。

足は緑色になり、指は3本となっている。

胸と腹は赤く爛れたようになっており、異様に膨らんでいる。

頭部は日本人特有の丸型から角張ったフォルムになっている。

 

全身余すところなく、異形。

服や靴などの装着物はほとんど破れており、残っているのは腰と腹部だけで、もはや腰巻きとなっていた。

 

誰もが分かっていて、認めたくなかったこと。

―――こいつ、メタモンだっ!!

 

そして、次に視線が吸い寄せられるのは変化した山田カイの触手の先。

倒れた議員とは別の議員が触手に捕らわれている。

足をバタつかせており、苦しそうにもがいている。

が、その抵抗も弱まり、そして―――。

 

他の議員が静観していられたのは、そこまでだった。

叫び声を挙げて、扉へとおしかける政治家たち。

だが、それを黙って見過ごすほど山田カイ―――メタモンは甘くない。

 

肩に生えた二門の大砲が微調整の後に水を噴射する。

たかが水だと侮るなかれ、その威力は消防車備え付けの消火水と遜色のないほどの勢いを持っている。

 

まとめて数人を吹き飛ばす。壁に痛烈に叩きつけられた議員らは気絶してしまう。

だが、叩きつけられた議員らとは反対方向でも、ドンッと叩きつけられたような音がする。

メタモンだ。

メタモンが己の発射した水大砲(ハイドロポンプ)の反動に負けて壁に叩きつけられたのだ。

メタモンは何が起きたのか理解できていなかったようで、少しもがいた後、立ち上がる。

 

議員はただただ混乱するしかなかった。

こいつはなんなのかと。

一方的に蹂躙するかと思えば、ミスをする。

チャンスと思うべきかどうか。

 

チャンスだ。今のうちに扉へ。

そう考え、扉へと走っていった議員は再び発射された水大砲(ハイドロポンプ)の前に崩れ落ちた。

今度は、壁にしっかり背を付けているメタモンは反動こそ受けているようだが、その身体を固定されているようで水大砲(ハイドロポンプ)を発射し続け、目標(にんげん)を逃がさない。

 

陸で溺れ死ぬ。

滑稽だが、笑えない攻撃だ。実際に受けている本人は息も出来ずに「あばばばばば」というしかない。

だが、その水圧に頭を叩き割られることを心配した方がいいかもしれない。壁に叩きつけられ、水大砲を当てられ続けるのだ、苦行どころではない。

どちらにしても、笑えない。

 

その隙に他の議員は逃げ出そうとするが、この惨事は扉のすぐ近くの壁で行われているのだ。行きにくい。

しかし、行きにくいだけで行けないわけではない。

 

扉の右側へ水大砲は放たれているので、左側は空いている。

左側から扉へと手を伸ばす者が現れた。

 

だが、水大砲の砲口は二門ある。

つまり、

 

「あばばばばば」

 

結局、こうなる訳である。

そして、最悪なことにこれで扉の両サイドが水大砲で封じられてしまう。

そこからはただの作業だった。

 

水大砲を溺死するまでぶつけ続け、死んだら他の議員を狙っていたが、やがて、扉に水大砲を放ち、水圧によって開かないようにしてしまった。

扉が内開きだったのが、最大の不幸だった。

これでは助けが来ても扉が開かない。

 

何気に扉が壊れないように微調整するというテクニカルな技を披露しながら、人間を虐殺するメタモン。

 

余ったもう一門の水大砲で一人一人、議員を殺していく。

議員に抵抗する(すべ)はない。

警察部ですら、この会議には武器の持ち込みは禁止だった。

そして、表の警護は―――何をやっている?

こんな時に対処するのが彼らに役目だというのに、全く入ってこない。

いや、すでに扉は水大砲で封鎖されてしまっているのだから、入れないのは当たり前だが、壁で叩きつけられたりしているのだ。

音で気づくべきだろうに。

 

もはや、議員はパニック状態だった。

思考する時間も与えられずにに虐殺されるのならば、考えられるシチュエーションだろう。

だが、これはなんだ?

溺死によって殺しているため、一人を殺すのに必要な時間が長すぎる。

そして、抵抗できない。

ここまで無力を思い知らされることはないだろう。

 

一人の議員がパニック状態らしくメタモンに特攻を仕掛ける。

そして、触手の餌食となる。

水大砲で溺死させられる。

 

この繰り返しだ。

そして―――

 

「―――へえ、俺を残したか」

 

残り一人になってしまった。

 

「つうか、そもそもがおかしいんだよ、ったく。あの自衛隊隊員の証言には重大なヒントがあった。なのに誰も気づかねえとは………。嘆かわしいねえ」

 

彼の名前は萩荻(はぎおぎ)シュウグン。

現代日本では珍しい軍事主義的な考え方の持ち主で、所属の防衛省でも浮きまくっている政治家だ。

 

しかし、今ここにおいては。

彼のその考え方は最適だ。

頭よりも理性よりも倫理観よりも。

原始的な暴力が支配するこの場所では。

彼はまさに最適な人物だ。

 

「カメックス。ドククラゲ」

 

萩荻シュウグンは静かに言う。

 

二門の砲口の正体はカメックス。最初に貰える一匹の最終形態。その破壊力は既に実証済みだ。本物は足の筋力が異様に発達しており、水大砲(ハイドロポンプ)の発射にも耐えられる設計となっている。

 

触手の正体はドククラゲ。広範囲に生息し、非常に強力な毒を有する。しかし、触手の毒は弱く、本物は口と鼻の間に生えている毒針を用いて狩りをする。また、触手には解毒用の毒を出す種類があり、補食の際はそれを用いる。

 

このメタモンの、この異形の姿はこの二体を(ベース)にしている。

そう萩荻シュウグンは見抜いていた。

 

「また、ピーキーなポケモンをベースにしたなあ。どちらもさして話題にならないポケモンだ。そして、なにより特性を生かし切れていない。殺人カメックスの研究をしたことはあるが、水大砲(ハイドロポンプ)は全身が筋力の塊だから出来る芸当なんだよ。大砲だけをコピっても意味はねえ」

 

滔々と。

違法行為の告白を行うシュウグン。

全身からは余裕オーラを放っている。

 

「ドククラゲもだよ。ドククラゲのミソは毒針と毒吹き。触手なんぞは解毒と捕獲だけだ。戦闘には向かねえ」

 

そう言い終えるとシュウグンは手に持っていた楕円形(だえんけい)の物体をメタモンに投げる。

それに対して何もしないメタモン。いや、正確には観察を優先しているのだ。

しかし、それは仇となる。

 

プシャッ

 

良い音をたてながら、物体は白い粉のような物を噴射する。

それを面白そうに見つめるシュウグンとは対照的に、メタモンは一気に目を見開き、回避行動をとろうとして―――背後が壁であることを思い出す。

 

次の行動は迅速だった。

メタモンの緑色の足が血管を浮き上がらせながら膨張する。

そして、跳躍。

その瞬発力は凄まじくすぐに部屋の端まで移動する。

本来ならば、その俊足を以て、シュウグンを捻り殺すところだが、それを見越したシュウグンは自分の足元にも楕円形の物体を起き、周りを白い粉で固めている。

 

その粉の名前はP4。

本来ならば、大山タケル議員が所持・管理しているはずの物をシュウグンは少しばかり失敬し、手榴弾方式にした対ポケモン用新兵器。

ちなみの持ち主である大山タケル議員は、物言わぬ床のオブジェクトと化しているので、文句を言う者はいない。

 

「………今の瞬発力。緑の足」

 

冷静に余裕に。

シュウグンは観察を続ける。

 

「ジュピトルかジュカインか、その足」

 

シュウグンの予想は当たっており、メタモンの緑色の足の正体はジュカイン。

最初に貰える一匹の最終形態だ。

最高速度、平均速度、瞬発力。

どの分野においても一位ではないものの、平均的に高い移動性能を持ち、何より立体的な移動を可能とする。

足の特徴的な形と足裏の刺のようなギミックは、大手靴メーカー『ジャランドゥ』の靴にも流用されている。

 

これに関してはシュウグンも唸った。

 

「ほう。なかなかに良い選択だな。狭い会議室ではその足は驚異的な性能を発揮するだろうな」

 

シュウグンは喋りながらも追撃の手を緩めない。

第二投目となるP4弾を投げる。

これに対して、メタモンもやられっぱなしではない。

 

赤く爛れた異様の胸を膨らませ、赤い炎弾を口から発射する。

その攻撃の名前は存在しない。既存の技ではない。

 

ただ、『かえんほうしゃ』という技を凝縮し、弾という形にしただけのもの。

しかし、それはシュウグンの想定を越えた。

 

バリンッ

 

空中でP4弾は貫かれる。

仕掛け自体に火薬などは使用していないので、派手な爆発こそしないが、電気回路は焼け焦げ、粉は噴射されずに塊となって飛び散る。

それは床に撒き散らされるが、空中に散布されないため、メタモンにとって驚異にはならない。

これにはシュウグンも目を見張る。

 

「…………」

 

余裕は消え、警戒心を露にするシュウグン。

だが、彼のやることは変わりはない。

 

P4弾を四個。投げつける。

これをメタモンは、炎弾で一つを潰し、肩の水大砲で二つを弾き飛ばす。

しかし、まだ一つ残っている。そのうえ、水大砲を撃っている間はメタモンはろくに動けない。

シュウグンも勝利を確信したのだが。

 

 

ピタッ

 

 

メタモンは容易く期待を裏切る。

空中で静止し、起動しないP4弾を見て、シュウグンは自分の見通しが甘かったことを知る。

このメタモンはいったい、何体のポケモンに『へんしん』しているんだ?

 

カメックス、ドククラゲ、ジュカインは確定している。

シュウグンは、炎弾を吐き出したことからベースが炎タイプのポケモンであると予想していた。

だが、この能力はなんだ?

 

空中で物体を静止させるなど、どう考えても『エスパー』タイプのポケモンの技だ。

計五体。

メタモンはそれだけの数のポケモンに『へんしん』し、技を使える。

シュウグンは焦りはしなかったが、舌打ちは止められない。

予想以上にメタモンは進化している。

 

だが、思考してばかりもいられない。

もはや、ここは安全圏ではなくなった。

水大砲の砲口が2門。

炎弾を発射する口が1門。

そして、エスパータイプの技。

 

シュウグンの周りにはP4が漂っているため、近距離に踏み込まれることはないが、遠距離攻撃がここまで揃っているのだ。

このままでは溺死か焼死か。

それとも、エスパー技による未知の殺害か。

どれにしても殺される。

 

さらに言えば、シュウグンの手持ちのP4弾は残り2個しかない。

非戦地帯の会議室にP4弾を大量に持ち込むのは難しかった。銃も同様だが、銃は一丁も持ち込むことはできなかった。

 

だが、シュウグンは焦らない。

確実に殺せるプランを練り、前準備をしているならば、勝てない敵はいない。

ここがシュウグンとメタモンの違いだ。

前準備の有無。

シュウグンが知ることはないが、メタモンは突発的に感情的にこの惨劇を引き起こした。

故に前準備なんてものはしていない。

 

シュウグンは床に落ちている、自分の身を守っているP4弾を拾い上げる。防御用に周りに散布してしまったが、まだ残量はある。

これで残弾は3発。

手持ちのと合わせて、3つのP4弾を投げつける。

 

忘れらているかもしれないが、空中では未だに静止させられているP4弾がある。いや、別にそれがどうしたという訳ではないのだが。

 

メタモンは3つのP4弾を水大砲2つと炎弾1つで弾き飛ばす。

水大砲の反動で壁に固定されるメタモン。

同時にシュウグンは走り出す。

不自然に設置された消火器の入っているあの箱へと。

しかし、中に入っているのは消火器ではないし、備え付けの物でない。

シュウグンが予め設置させておいた武器入れだ。

 

P4弾入り拳銃(M92F)

投擲タイプのP4弾は野球ボールサイズだったが、この拳銃に込められている弾は9mm弾(ルガー)と全く同じサイズの特殊弾。

いわば、対ポケモン用銃殺弾(ポケモンキラー)

銃殺ではあるが、実際の死因はP4による薬物死なので、名前に訂正は入る。

 

しかし、そんなことは重要ではない。

重要なのはメタモンを屠るだけの威力がこの兵器にはあるということだ。

 

狭い会議室で得をするのは、ジュカインの足だけではない。

交戦距離7~9mの銃にとっては、この会議室は独壇場と言える。

 

そして、銃が発射される。

 

 

一発 二発 三発 四発

敵の抵抗 すり抜けて

異形の身体へ迫り行く

無駄な抵抗続けるも 鉄の意志は逃がさない

一発躱せた 二発目躱す

三発四発 避けれない

 

 

アメリカで銃最強神話があるのも納得である。

遠距離攻撃。亜音速の破壊力。

なにせ、異形の化け物、ポケモンの混合体に対しても、その優位は覆らなかったのだから。

 

当たった二発の内、一発は触手に当たったが、すぐに触手は切り離されてしまった。

だが、もう一発は致命傷だった。

胴体にクリティカルヒット。これはすぐには切り離せない。

 

『メタメタギャイィィメタグゥマタギャコタギィイイ………ッ!!』

 

メタモンの鳴き声でも、人の悲鳴でもない叫び声をあげるメタモン。それは初めて見せた感情的な一面だった。

 

対して無傷なシュウグン。

彼自身も自信を持って、このメタモンに挑んだのだが、手足の負傷は覚悟していた。

だが、意外にあっさりと勝ててしまって拍子抜けだった。

科学の圧倒的勝利という訳だ。

 

部屋にもP4が満たされつつある。

本来ならば、P4弾を部屋にばらまいて、P4を充満させて殺す作戦だったのだが、意外な反撃のために最終手段である拳銃を使うことになった。

 

なにはともあれ、これでシュウグンの勝利だ。

P4が部屋に満たされた以上、メタモンに勝ち目はないし、体内に入ったP4弾がメタモンの身体を蝕んでいく。

 

シュウグン自身も勝利を確信したため、銃の乱射は控えた。

 

『……………』

 

感情的な叫びを止め、座り込むような体勢のまま動かないメタモン。

しかし、変化はすぐに訪れる。

 

―――バサッ

 

シュウグンはその翼を知っている。

彼がずっと前から注目しているポケモンの翼だったからだ。

しかし、その希少性からポケモン大好きクラブから保護指定となった最古のドラゴンタイプポケモン。

 

バサッ!!

 

―――カイリュー!

 

その翼はカイリュー本体の大きさが規格外なため、小さく見えてしまうが、その実、人間と同サイズはあり、人間には解析できない構造をしている。

そして、大昔の研究者の言によれば。

カイリューは地球を約16時間で一周すると言われている。

 

地球一周の長さはおよそ4万km。

それを16時間で回るのならば、その時速は約2500km。

 

およそマッハ2である。

もはや、生物の移動速度の単位ではない。

 

そんな超速兵器を出してきたメタモンに対して、流石のシュウグンも焦りを隠せない。

もし、あの翼を全力で一回でも羽ばたかせれば、マッハ2とは言わないまでも、マッハ1の速度はでる。

それはもはや、拳銃など比にならない兵器だ。

シュウグンの頬を汗が伝う。

 

しかし、シュウグンの心配は杞憂に終わる。

もとより使う気はなかったのかは定かではないが、メタモンは目を見開き―――消えていた。

おそらく、ポケモンの技『テレポート』だろう。

瞬間移動で逃げ去ったのだ。

 

「ケイシィ、か」

 

地面にはピンク色のどろどろに溶けた物体と銃弾型のP4弾が計2つ落ちており、壁に2発めり込んでいる。

どうやら、翼を出したのは時間稼ぎだったらしい。

シュウグンが怯んでいる隙に自身の体内からP4弾を摘出したようだ。

 

シュウグンは慎重にP4弾を拾い集める。

そして、疑問を解決しようとしていた。

 

(何故、P4弾で死ななかった?)

 

本来、P4を食らったポケモンは時間を置かずに死亡する。即効性の高い毒がP4なのだ。

現にP4弾を受けた触手は当たってから数秒で溶けた。

なのに何故、胴体に当たったP4弾でメタモンは溶けなかった?

 

prrrrrri

 

思考は電子音で中断される。

おそらく、部下からの電話だろう。

 

『性的嗜好』

「ロリータコンプレックス」

 

一応言っておくと、合言葉である。

 

『ご無事ですか、萩荻(はぎおぎ)さん』

「ああ、無傷だ。ターゲットは逃がした」

『ご無事で何よりです。サンプルは?』

「ああ、そっちは大丈夫だ。切れっ端だが、一部は手にいれた」

 

しばらくしてから、シュウグンの部下がやって来る。

非常事態に備えて、常備させておいた優秀な部下である。

 

「ご無事ですか、萩荻殿」

「ああ、だから無事だって。見りゃわかんだろ? それより事後処理を頼むぞ」

「はっ!」

 

そう言って部下は去っていく。

シュウグンは倒れている議員の一人、大山タケル議員の元へと歩いていく。

 

「………残念だったよ。生きてりゃ、お前も俺の派閥に誘おうと思ってたのによ」

 

密かに哀愁を感じさせる声で語りかけるシュウグン。

もちろん、大山タケル議員は死んでいる。

溺死体となっている。

 

大山タケル議員の胸元を探るシュウグン。

もしかしたら、こいつはP4に関する何かを持っているかもしれない、という淡い希望を抱いたからだ。

メタモンは謎に包まれ過ぎている。

シュウグンの目指す未来に利用するには、まずメタモンのことを知らなければならない。

 

結果は、収穫なし。

どうやら、大山タケル議員は持ち歩くタイプではないようだ。

シュウグンは大して落胆しなかった。次は家でも調べるか、と目標を設定して。

そのまま会議室を後にした。

 

 

 




とりあえず、メタモン第一章はここまでです。

また、本作におけるポケモンの設定は創作と公式設定を織り混ぜたものになっております。

表現で分かりにくい所がありましたら、御指摘ください。
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