ある無名のアトリエ 〜名もなき絵画の錬金術士〜   作:メルヴェイユ市民

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今話は完全なる独自設定のカタマリです。
ネージュちゃんファンの方には申し訳ない。


第七話 虹の絵の具
叶えるもの


———私が塗る、空の色は。

 

 

 

「…マール海」

 

 

 私が好きな色は、夕焼け空の色だ。

 

 

 でも、この絵には、マール海の涙(マール・サファイアス)のような、深く高い蒼穹があって欲しい。

 

 私は、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作業開始から、6時間。

 

 これでも、元の色が分かる分だけ、そして私の筆の速さからして、かなり早い方だと思う。

 

 その間、エドは片時も目を離さないでいてくれた。

 

 そして、アルトさんも、ミレイユさんも、ほとんどの時間をこの画廊で私に付き合ってくれた。

 

 ミレイユさんなんて、色々な業務があって、忙しいだろうに…この日のために、この復旧が未来の王国に価値を持つと信じて、見守ってくれた。

 

 

「…皆さん」

 

「ふむ…」

「ティティちゃん…」

 

「復旧。終わりました」

 

 

 もう、『黒の色彩』はこの世に無い。

 『新たなる四季』…この絵が取り戻した姿が、かつてのものかは分からないけれど。

 

 このキャンバスには、新たな額縁をはめるときが来たのだろう。

 

 そこには、この絵の題名を書き入れることができる。

 もう、名も無き絵画では無いのだから。

 

 

 

「これが、『新たなる四季』…見事だわ」

「あんなにも黒く塗りつぶされた絵が、これほどの彩りを取り戻すのか…」

 

「いいえ、取り戻したんじゃありません」

「なに?…ああ、そうか」

「はい。この絵に相応しい色を得た。それだけです」

 

 

 私は、私の結果に胸を張ろう。

 

 

「ティトラ」

「エド…私、やったよ」

「…誇らしいか?」

「うん」

 

 

「そうか。…頑張ったな。ティティ」

 

 

「っ……!ありがと…」

 

 

 嬉しい、な。

 とても嬉しいよ。…エド。

 

 

 

 

 

 

(…綺麗な、ものね…)

 

 

 あっ…”叶えるもの”。

 良かった。ちゃんといた。

 

 

(良かったあ…)

(何よ…いる、わよ。私は、いつだって…ここに)

 

 あれ…?どうしたんだろう。

 声がなんだか、震えてる。

 

(ね、ねえ。大丈夫?何かまずかった…?)

(違うわ。…泣いてる、のよ。あんまり、綺麗だから)

 

 そっか…。良かった。

 

(泣き顔…みられ、たくない、から。しばらく、絵には…来ないで?)

(ええー?…見たかったのに。中の世界)

(だめ、よ。…見ちゃ、ダメ…)

 

 仕方ないなあ。

 しばらくして、泣き止んだら見に行こうかな。

 

 

 

「ねえ、エド。私、行きたい所があるんだけど」

「行きたい所?どこだ?」

「ネージュのとこ。…全部、片付いたから。洗いざらい話そうと思って」

「そうか…」

 

 『新たなる四季』を持ち上げる。これも、見せに行こうと思う。宝物って言ってたから。

 返せって言われたら、困るけど…それでも、見せておくべきだろう。

 

 

 さっきから、胸のあたりがじんと温かく、きゅうと切ない。

 嫌な感覚じゃない。愛しい感覚。絵を復旧してから、ずっと胸を満たしている。

 

 『黒の色彩』の力に目覚めた時と似た現象だけれど、湧き上がる感情は全く別。

 …『新たなる四季』の復旧で、《黒の絵の具》は色づいた。それによって、力の性質も変化したのかもしれない。

 

 

「画廊に行くと聞いて、《重力牙(グラバイト)》も一応持ってきてる。すぐ行けるぞ」

「じゃあ、行く。…ミレイユさん。今日はこの場を貸して頂いて、ありがとうございました」

「いいのよ。良いものも見れたし、雷神の件で借りもあるし。片付けは城の者にさせておくわ。イーゼルは私が預かっておくから、出て行く時に言って頂戴。…こちらこそ、今日はありがとう。忘れないわ」

 

 

 

 

 

 

 

———————————

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———『凍てし時の宮殿』内、ネージュのアトリエ。

 

 

 私たちが絵の世界に着いた時、それを察知したらしい彼女は既に目の前に居た。

 

 ここに通う生活を経て、初対面でも意気投合した私たちは、すっかり仲良くなった。

 私だけではない。エドにも、心を開いてくれている。私としては、エドのことは好きだし、ここにも一緒に来ることになるから、とても嬉しいことだ。

 

 

 ただ、私が袋から取り出した絵を見た途端…やはり、彼女の表情は変わった。

 

 懐かしみ、それでいてどこか、痛みを覚えた表情をして…ネージュは私たち3人をアトリエへと案内したのだった。

 

 

 

 

 

「その絵…ティティが持っているなんてね」

「…うん。『新たなる四季』、だよね」

「ええ、そうよ」

「なあ。俺たちにこの絵のこと、教えてくれないか。この前の、冬の主題(テーマ)のこととか…」

 

 深く考えているのか、または思い返しているのか。

 静かに目を瞑り…そしてネージュは、諦めたように笑って、頷いた。

 

「わかったわ。…もう、全部見えちゃってるみたいだから」

「…見えてる?」

「その、冬の部分。湖の真ん中にあるでしょ?祭壇と、門が」

 

 そうだ。この謎の造形(オブジェクト)は一体なんなのだろう。

 

 

「この絵は、わたしの宝物だった」

「だった。…今は違うの?」

「ええ…そう、なってしまうわ」

 

 

 

 

 何だろう、この、重みは。

 

 自分の作品を、道具にしたこと…それが話したくない理由だと思っていた。

 でも、違う。それだけじゃない。

 

 ネージュは一体、この絵に何を抱えているの…。

 

 

 

「その絵は、わたしの罪そのもの」

「罪、って…」

 

「わたしが生み出して、それなのに、その存在意義を壊して…使い潰した」

 

 

 ネージュの目が潤む。

 

 けれど、決して溢れることは無い。

 

 自身が、それを拒んでいるからだろうか。

 

 

「告白するわ。全ては、わたしが弱かったせいなのよ」

 

 

 

 

———————————

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 ネージュの告白。

 

 それは、懺悔だった。

 

 絵の世界に囚われて、祈るべき教会も失ったネージュは…私たちを通して、神にそれを懺悔している。

 

 それほど、その独白は、後悔に満ちたものだった。

 

 

 

「その絵は人生を描いたもの。前にも言った通りね」

 

 

 春の『揺籃(ゆりかご)』は『誕生』。

 夏の『草原』は『成長』。

 

「それで、秋の『祝福』は『成人』…」

 

「それは、違うの」

「…え?」

 

 

「あの秋の本当の名は『祝福と()()の森』。主題(テーマ)は…『葬送』」

 

 

「『葬送』…葬る、だって?」

「…。聖櫃が、描かれていたでしょう。実りの中で、祝福されて…一番成長したその時に、刈り取って葬るの」

 

 

 なんなの…?

 

 刈り取る?…葬る?

 

 ネージュは一体…なんの話をしているの?

 

 

「そして…冬、は…」

「……」

 

 

「冬は、『再誕』…。名前は無いわ」

「再誕って…もう一度生まれるのか?秋に死んで…冬に」

「…門を見れば、分かるかもね」

 

 言われて、食い入るように湖の中央を見る。

 

 12人の裸体の男女が、鎖に縛られて、絡み合って楕円になっている、奇怪なチタンの門。

 

 私には分からない。けれど、エドは閃くものがあったようだ。

 

 

「…神話か」

「ええ」

「ここからは少し離れた地方の…じゃあ、この門は…輪廻転生を表しているのか?」*1

「…さすがね。その通りよ」

 

 

 輪廻転生…待って。

 でも、あの絵は《不思議な絵》なんだよ?

 

 ネージュはどうして…これを《不思議な絵》にしたんだろう。

 

 

 

 

「…わたしがこの宮殿を描いて、人々は《不思議な絵》に願いを乗せるようになった」

 

 

 《不思議な絵》は、描かれた世界を実現する。

 そうと聞けば、多くの人が真っ先に考えるだろう。願い事が叶いますように、と。

 

 

「それは、画家たちも同じ。『絶世の美女(ヴィーナス)』、『神の似姿(ガラティア)』、『神話の英雄(ヘーロース)』…大衆とはその嗜好は少し違ったけれど、彼らも《不思議な絵》に、自分の理想を求めた。《不思議な絵》はそれに応えて、彼らの理想を叶え、生み出したわ」

 

 

 美への追究。その道を究めれば究めるほどに、その手が生み出すカタチは理想に近づいていく。

 

 画家ならば、誰でも一度は思ったことがあるはずだ。

 “ああ、ここに描いた私の理想は、どうして現実のものでは無いのだろう”と。

 

 それが辛いから、私は創作を描くのが好きじゃないんだ。

 だから《不思議な絵》という存在を知った時は、とても驚いたし、喉から手が出るほど、その力を自分のものにしたかった。

 けど、私は…自分の望んでいることが、分からなかった。自分を騙していたから。

 

 

「そしてわたしも…この『新たなる四季』に、一つの願いを掛けたの」

「ネージュの、願い」

「そう。わたしの願いは…」

 

 

 後悔と、憧憬と…全てが混沌と入り混じって、ネージュの表情は分からない。

 

 彼女は絞り出すように、願いを告白した。

 

 

 

 

「…わたし、友達が欲しかった」

 

 

 

 

 まさか。そんなことって。

 

 私の中で、全てが繋がって光の線を成す幻像が見える。

 

 

 

「理想の友達。裏切られて突き放して一人きりで引きこもって、人見知りを拗らせたわたしに、ずっと着いてきてくれて、優しくしてくれる、これ以上ない理想の友達」

 

 

 そんな。なんて。

 

 

「理想の、都合の良い、友達」

「……」

 

 

 エドだ。

 直感的にそう思った。

 

 私にとっての、エド。

 こうまで私に尽くしてくれる理由を、私は知らない。

 

 

 

 

 

「あの絵は儀式場なの」

「儀式…再誕の、か?」

 

 言葉は無く、一度頷いて返される。

 

「生まれ、育ち、眠りに就き…水面へと送り出されて…捧げられ、門を通り、転生する」

 

 そうだ。

 そして、その転生の先は。

 

「そして、わたしの元へと現れる。…生き物は、外には持ち出せない。けど、死体なら…そう考えた。考えてしまったのよ」

 

 

 ……なら。

 

 “叶えるもの”とは、何か。

 

 

「そのための素体を…意思だけをもち、儀式の始まりによって、理想の友達の姿を得る、その存在を———」

 

 

 

 

 

 

「———叶えるもの、と。わたしは呼んだわ」

 

 

 

 

 

「そんな…。そんな、そのために…、それだけのために…」

 

 

 待ち続けた。300年、たった一人

 あの絵の中で、侵食を受けながら。

 

 

 その正体は、絵の意思でもレンプライアでもない。

 

 

 

 

 “叶えるもの”もまた、絵の世界の住人だったんだ。

 

 

 

 

 

 

「で、でも!だって、この中には雷神が居たじゃない!」

 

「…そうね。だから、わたしの罪はまだ続くわ」

 

 

 ……。

 

 

 

「雷神ファルギオル。あの暴君が現れて、この地方は大混乱に陥ったわ。大地は焦土となって、天すらも焦がし、魔神は暴れ狂った」

 

 ファルギオルは、何故かは分からないけど人間を滅ぼそうとしていた。

 あの恐るべき力で加減も対策もなく暴れられたら、本当にそうなってもおかしくは無かったのだろう。

 そして事実、それは300年前に起きたことなんだ。

 

「そんな時、わたしは選ばれた。《不思議な絵》という、あまりにも大きな力を生み出したネージュ・シャントルイユなら、きっと…ってね。何のことはないわ、彼らにとって、理想の救世主は願うまでもなく目の前にいたのよ。…でも、わたしにとっての救世主は居なかった」

 

 

 …奇しくも、ミレイユさんがやった事と似ている。

 

 その場にいたから。それだけの理由で、錬金術士は常に人々の希望に塗りつぶされる。

 

 

「因果って、怖いと思ったわ。都合のいい友達を願ったから、都合のいい救世主であることを強いられた。…そして、その時のわたしには時間も無かった。既にファルギオルは地方の大半を破壊し尽くしていたから」

 

「その時、持ち得た手段の中で…唯一の可能性、それが、『新たなる四季』だったのよ」

「ど、どうして!」

 

「…ティティ、落ち着けよ」

「あ…ごめん…」

 

 

「聖櫃よ」

「…?」

「儀式のために、死んだ”叶えるもの”が入るはずだった棺。…せめてもの償いに、その棺は特別なものを描いていたわ。丈夫で、広く、そして全体に、破壊を防ぐ魔法の印が刻まれていた。青く緩やかに明滅していたかしら」

 

 

 でも、その棺にはファルギオルが…。

 

 

「それしか無かったのよ。ファルギオルを封じられる、”檻”になり得るものは」

「あ…そんな…」

「あの門から絵の世界にファルギオルを誘い込んで、どうにか拘束して聖櫃に入れる。…それしか、わたしには…できなかった」

 

 

 …確かに、あのファルギオルの全力を封じられるような「檻」なんて…そうそう、あるわけが無い。

 

 

「そうして…私は、私のために生まれる筈だった、都合の良い友達を捧げて…あの雷神を封印した」

 

「…英雄なんて、とんでもない。”叶えるもの”は何も知らないまま、友達になるって使命だけを抱えて、『新たなる四季』の中で生贄にされたの」

「湖の、落書きみたいなものって…」

「わたしが塗り潰したのよ。ファルギオルが聖櫃を破っても、門から脱出できないように、って。…それも、無駄だったみたいだけれど」

 

 

 

 これが、真実…だなんて。

 

 

 ……。

 

 

 …ネージュは、どれほどの苦しみで、これを打ち明けてくれたんだろう。

 

 

「…わたしには…友達を欲しがる”資格”なんて、本当は無いのよ」

 

 

 

 

 でも…その苦しみは、少しくらいは分かってあげられる。

 

 

 

 

「ねえ。一つ聞かせて」

「何かしら?」

 

「私がこの絵に入った時、この絵は真っ黒に染まってたの」

 

 ネージュが怯えたように体を竦める。

 

「その時、”叶えるもの”はこう言ったわ。”我が(コア)の救いになりたい”って」

「…(コア)?」

「これは、ネージュがそう仕向けたことなの?」

 

 ネージュは黙り込んで、何かを考え、そして答えた。

 

「…いいえ。確かに、友好的な人格をイメージはしたけれど…そうは描いていないわ。無意識に救いを求めていたのを《不思議な絵》が拾い上げた可能性はあるけれど」

「そう…うん」

 

 あの言葉は、”叶えるもの”が300年かけて抱いた願いだった。

 

 それさえ分かれば、もう十分だ。

 

 

「ねえ、これは”叶えるもの”が言ってくれた言葉なんだけどね」

「…っ」

 

 身構えている。

 …分かるよ。怖いよね。誰かが、自分を嫌ってしまうかもしれないってこと。

 

 

 

 

「”愛してくれる誰かがいるなら、愛される理由なんてそれで十分”…らしいよ?」

 

 

「え…?」

「もう、いるでしょ?」

「…そうだな。俺に、ティティに」

 

 リディーと、スール。

 知っているだけでも、4人も居る。

 

 

「そ…そんなこと———」

「あるんだよ。ネージュ。…きっといつか分かるから」

 

 

 それきり、ネージュは黙ってしまった。

 

 

 乗り越えられるだろうか。ネージュは本当は大人だし、私よりずっと長く生きてるし。その分、私よりもずっと根が深いかもしれない。

 

 

 でも…いつかきっと、ネージュも、”友達になって”って言えるようになる日が、来る。

 

 そう、願ってる。

 

 

 

 

 

 

 しんみりとした空気の中で、ネージュはポツリと呟いた。

 

 

「…ひとつ、気になることがあるわ」

「えっ?」

 

「その絵。わたしが塗り潰した祭壇と門が元に戻ってるけど…中の世界では、聖櫃は壊れたままなんじゃないかしら」

 

 そうだ。

 

 森の奥深くに描かれた聖櫃は、今も閉じられている。

 けれど、実際に森にあった聖櫃は、既にファルギオルによって破壊された後だ。

 

「それだと…儀式は成立しないわ。でも、”叶えるもの”が目覚めているなら、儀式は始まっている」

 

 …えっ。

 そ、それってつまり、”叶えるもの”が『新たなる色彩』から出てくるってこと?

 

「え…それ、どうなるんだ?」

「…入るべき棺が無いから、”叶えるもの”は死なず、それで終わり…かしら。やった事が無いから詳しくは分からないけど」

 

 

 …うーん。

 

 “叶えるもの”に、入るなって言われてるし…あっちから何か言ってきたら、確かめてみようかな…。

 

 

 

 

 頬を指で突いて考えごとをしていると、俄に後ろの方が騒がしくなった。

 

 

———はぁっ…はぁっ…!

———ネージュちゃん…ネージュちゃんはどこ…!?

 

 

「この声…リディーとスーね」

「そうみたいだね…もうすぐここに来そう」

「…でも、何か急いで無いか?この感じ…」

 

 

「あ、いた!ネージュ!」

「ネージュちゃん!お願いがあるの!」

 

 

 …どうやら、私たちの姿が目に入らないくらい急いでいるみたいだ。

 

 

「いらっしゃい。またわたしと絵を描きに…来たわけじゃなさそうね」

「うん。ネージュちゃん。教えてもらってもいい?」

 

 

———『黒の絵の具』について。

 

 

 それは、私にとっても他人事ではない質問だった。

 

 

 

*1
ギリシャ神話のティーターン神族及びザグレウスの伝説を参照




以下、“叶えるもの”の設定です。




☆『新たなる四季』と”叶えるもの”の関係
説明:
 『新たなる四季』はネージュが生み出し、ファルギオルを封印した不思議な絵である。本来、この絵は檻ではなく、現実の人間関係に失望したネージュが自分の理想の友を生み出すために作り上げた儀式場であった。
 絵に描かれているのはまさに「人生」そのものである。一般的な観念として死の季節は冬であるが、ネージュはあえて秋を死の季節とし、そして冬を転生のための季節と定めた。実りの祝福の中で眠り、冬の湖水を潜り、そして現実の存在として再誕する。湖の中央の台座には本来なら祭壇と門が描かれており、ネージュはここから、新たな友となる存在を現実へと呼び出すつもりであった。”叶えるもの”とは、その新たな友の素体である。そのため友好的な存在として描かれ、また、外の世界を目指そうとする意思を持っていた。その意思は門に象徴されている。
 しかしファルギオルの出現を受けてネージュはその予定を変更。門、そして再誕の象徴である祭壇を塗りつぶすことでこの絵を出口のない檻として改変し、ファルギオルを聖櫃に閉じ込めて封印した。
 こうして、行き場を失った”叶えるもの”は300年もの間、ずっと友となるべき相手を待ち続け、レンプライアの侵食でその認識を「友」から「核」へと歪められながらも耐え続け、ついに最後の瞬間にティティと出会った。ティティの一番好きな色「夕焼け空の色」を望んだ理由も、友にとって好ましい存在となるための本能である。
 儀式は再誕のプロセスを実行できない状態であるため、”叶えるもの”は未だ形のない存在である。再び門と祭壇が描かれた時、この絵は再び儀式場としての機能を取り戻すが…。
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