非常に励みになっております。
本編なんですけど、気が付いたら1万文字余裕で超えてたので2つに分けました。
なので終わり方ちょっち不自然ですがご容赦を。
ではどうぞ
ある休日の昼下がり、リツコさんに呼ばれて
「ストレス耐久テスト…ですか」
「そう、今からシンジ君にはエントリープラグ内で様々な条件でのストレスのシミュレーションを受けてもらうわ。もちろん無理はさせないから安心して」
もう名前と説明だけで嫌な予感しかしない。今まで短い期間ながら様々な実験を行ってきたが、リツコさんが饒舌な時は基本しんどいことがほとんどだった。
「この実験を行う目的は…?」
「過去二回の戦闘で分かってると思うけど、エヴァが受けたダメージはフィードバックとしてあなた自身に跳ね返ってくるわ。初戦のように限度を超えれば気絶するし、かといってフィードバックを下げるためにシンクロ率をこちらでカットしても動きが鈍くなって結局やられてしまう」
「そうならないために、僕の耐久力をあらかじめ知っておく必要がある…ですか」
「そういうことね、何か質問は?」
残念ながら嫌な予感は当たってしまったらしい。こうなると断ることは出来ないだろう。
せっかくの休日だというのに…リツコさんはそんなこと思わないだろうが…
「…無いです」
「なら早速始めましょう、時間も押しているから」
「分かりました…」
今から始まるであろう出来事を想像してナイーヴな気持ちになりながら、実験場に歩き出す。
「あ、そうそう1つ言い忘れてたわ」
「ん、なんですか?」
「今から実験終了までの約4時間ほどかしら、
「…は?」
いきなりの
事前に言ったら文句言われるから、後出しで…?
「リツコさんの性悪ぅ!!」
シンジの叫びはNERV内に虚しく響いた。
そんな件の彼女はすまし顔、仮にもNERVの技術部長がそんなことでは怒らないのである。
(…あんなこと言われても怒らないなんて、センパイかっこいい…!)
『そんなんだから美人なのに結婚できないんですよ!』
「…マヤ」
「はいセンパイなんですか?」
「実験の強度、全て15%アップに設定して」
「…えっ?」
青筋を浮かべたリツコはそう言ってコーヒーをすする。
技術部長といえども年頃の女性の逆鱗は普通と変わらないのである…
シンジは身をもってそれを実感するのであった。
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タール5:依存するものたち
「…てなことがあったんだよ、酷いと思わない?」
「いやー、そのー、なんちゅうか…お前が悪いとしか」
「そうね、碇君が悪いわね」
「なんでそうなるのさ?!」
あれから数日後、例の件(機密情報以外)の不満を屋上でともに弁当を囲むようになったトウジと委員長に漏らしていたが、反応が良くない。
それどころか、僕が悪いとまで…理解できずに聞き返した。
「あのね、碇君…まずそもそも未成年喫煙は禁止よ」
「そーいうこっちゃ」
委員長はお茶をコップに注ぎながらそう答え、それに同調するように頷く。
「ひどいよ…前のやつでわかってくれると思ったのに」
「それはそれ、これはこれよ。オマケに女性に対して、性悪とか結婚できないとかいうもんじゃないわよ」
「そーやそーや、委員長の言う通り」
過去の話を軽く受け流してさらにリツコさんへの言葉も注意される。
トウジも目をそらしながらさっきと同じように肯定するだけ…ちょっとムカつく。
「ねえ委員長、おしらせがあるんだけど」
「なに?」
「そういやこの前トウジから『1回だけ煙草吸わしてくれ』って頼まれたんだよね」
「ちょっ、センセ!それは言わん約束やがな!」
「す~ず~は~ら~?」
私と吸わない約束したわよね?
カンニン!カンニンや!
こら逃げるな!
委員長に追いかけられ逃げていくトウジがこちらを見てくるが、向こうが悪いのだから無視する。
こんの裏切りもんが~!と聞こえる気もしなくもないが、おそらく気のせいだろう。
そうして誰もいなくなった屋上で煙草を取り出す。昼休み終了間際の屋上も数少ない喫煙スポットである。
箱から取り出した煙草に手で覆いながら火をつけ、口に咥え、吸い、煙を吐き出す。もう目を瞑っても出来ると言えるほど、身に染みたルーティーンだ。
煙を顔に浴びないように校庭の方を向くと、木陰で本を読む白い肌の少女が目に入る。
(…綾波レイか、いまいち分からないんだよなあ、あの子)
何度か本部や学校で話しかけたことがあるが、そのどれも返答が『ええ』とか『分からない』と一言で終わるのでとても話が弾んだとはとても言えず、それ以降は会話する機会から離れていた。
最初は人見知りかと思ったがトウジや委員長、ミサトさんやリツコさん曰く学校や本部で誰に対しても同じらしい。
…ただ何事にも例外というものは存在して、それというのが…。
「父さんなんだよなあ…」
風でなびく髪と煙を払いながら言葉が漏れる。
この前倒した使徒の調査が行われていた現場に父さんと綾波が一緒に居た。それ自体は何とも思わなかったが、少しだけ話しているタイミングがあり、2人とも普段の仏頂面から想像できないくらいに穏やかな笑顔だった。
それを見た時は正直”良からぬ関係”ではないかと疑ったりしたが、ミサトさんには爆笑しながら、リツコさんにはため息をつきながら否定された。
どうやら零号機の起動実験が失敗した際に、真っ先に飛び出して行って高熱のエントリープラグで火傷しながらも助け出したらしい。
その話をミサトさんから聞いたときは爆笑したが、どうやらホントらしい…。
父さんのそんな姿ちっとも想像出来ないが、そうでないとあの綾波のなつき具合は説明できないのだから信じるしかないのだ。
ふと気づくと綾波がこちらを見上げている。その紅い瞳は、見る人によっては180度印象が異なる…らしい、ケンスケ曰く。
そんなことを考えていたらもう姿は見えなくなっていた…目と目が合っていたのは数瞬なのにも関わらず、綾波の顔が頭から離れない。
整った顔、光を弾く白い肌、透き通った水色の髪、そして紅い瞳…平凡から程遠いはずの見た目のはずなのに、何故か懐かしさを感じた気がした。
「また馬鹿な事考えてたな…」
悪い癖だと溢しながら煙草の火を消す。丁度いいと言わんばかりにチャイムが鳴り響く。
今から走ればギリギリ授業開始までに間に合うだろう。
頭の中身を父さんと綾波から学校のことに切り替えて走り出した。
そんな昼下がりの光景が見れた日、その次の日は2回目の零号機起動実験日である。
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シンジがそんなことを考えていた時、ゲンドウはゼーレの面々に囲まれていた。
ただの会議というにはあまりにも空気が重い…常人なら耐えられないだろうが、サングラスをかけて腕を組んだゲンドウも負けて劣らずの風格だった。
「あれほど前回言ったにも関わらず、今度もエヴァ初号機を破損かね」
「結局のところ、あれは君の息子には使いこなせないのではないのか?」
煽るような口調で話す老人達。
「いえ、前回に比べれば今回の損害は軽微と言えるでしょう」
「口を慎め碇、最終的にほとんどの金を出しているのは我々ゼーレではないか」
「左様、詰まる所もう少し賢く殲滅しろということだ」
「…と申しますと」
「単純な話だ、早急に零号機を使えるようにして2機で戦えばいい」
…簡単に言ってくれるよまったく、と冬月は心の中で呟く。
「ご安心ください。零号機の再起動実験は明日行う予定です」
「成功するといいがね…あともう1つ」
「何でしょうか…?」
「初号機パイロットである君の息子が、何やら煙草を吸っていると聞いているが」
ゲンドウはその言葉に返答することなく、姿勢を崩さない。
老人達はそれに気にすることなく言葉を続ける。
「エヴァに乗り込んだ際、肺に直接LCLを取り込むそうじゃないか。それの影響がこの被害に繋がっているのではないか?」
「赤木博士からは特に影響無しと、そう聞いています」
「だとしたらもう少し責任感を持つよう伝えたまえ、お遊びではないのだと」
「左様、思春期の子供も操れんようでは人類補完計画など夢のまた夢だよ」
「…あれの面倒を見るのは部下に一任しているので、ではこれで失礼します」
ガチャンと音を立てて部屋に明かりが灯る。
「ふう…ついに煙草のことにまで口をはさんできたか、影響は無いと言っているのに」
「金のことでイライラして俺に当たっているんだろう…所詮は老人達の道楽に過ぎんよ」
「だが思春期の我が子を操れんのも事実だ」
「…」
そういうとゲンドウは黙る。それが都合の悪いことを言われた時のクセであることは、長い付き合いから理解していた。
「いざという時に歯向かってきたらどうするつもりかね?」
「…子供の癇癪など、やりようによってはどうにでもなる」
そういうと直ぐに部屋から出て行ってしまった。
その姿を見て冬月は思わずため息をつく。
「あれが親では反抗もしたくなる…いやもうそういう領域からすでに出ているのかもしれんな…」
1人になった部屋を埋めるにはあまりに力ない言葉どりだった。
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「はいお待たせしました」
「わ~美味しそう!いっただっきまーす!」
ウマーい!と言いながら食卓に並べられた料理を、何故かもう3本目のビール片手に食らっていくミサトさん。
最近体重が気になりだしたとのことでお酒は控えているらしいがとてもそうは思えない…そんなこと言うと後が怖いからいわないが…
「ええ美味しいわ、シンジ君また腕上げたわね」
「ありがとうございますリツコさん」
そう、今日はリツコさんも来ているのだ。
あの食事会から定期的に訪れているが、食事代出してくれるし毎回料理褒めてくれるからそこそこうれしいイベントとなっている。
「あ、そういや明日って零号機の再起動実験の日ですよね」
「あらーシンちゃんよく覚えてるわね。この前レイの話を聞いたからかしら?あ、ちょっと!」
フフフと笑うミサトさんから5本目となるビールを奪い取り冷蔵庫にしまう。
1日4本までって約束したのに目を離したらこれである。
「ええ、今回こそは技術部の威信にかけて必ず成功させるわ。またパイロットにケガさせたらたまらないもの」
ワイングラスを置きながら自信ありげにそう言った。
「流石ですリツコさん」
「なによ~リツコばっかに構って~」
「ハイハイミサトさんも頑張ってますよ、なのであと1本ビール飲んでいいですよ」
やったーシンちゃん大好き!と言いながら冷蔵庫に飛んでいった。
「…これじゃあどっちが保護者か分からないわね…」
「ははは…」
眉間を揉みながらそういうリツコさんに笑うしかない。
また2人にケンカされたらたまらないので違う話題をふることにした。
「その、この前綾波の話を聞いたじゃないですか。2人から見た綾波の印象ってどんなです?」
「んーレイの印象か…ちょっちムズカシイわね…」
冷蔵庫からビールを調達してきたミサトさんがそう答える。
「じゃあミサトさんからお願いします」
「そーね…基本的に命令には従順で仕事上はいいけど年頃らしくないって感じかしら。それに感情が薄いのとあの見た目から、お人形さんとか高性能ロボットってイメージはあるわね」
お酒が入っているときのミサトさんにしては、真面目な顔と口調で答えたのだから…本当にそう感じているのだろう。
確かに同級生よりもロボットだというほうがしっくりくる。
「じゃあ次はリツコさん」
「…ある意味、純朴な少女…といったところかしら」
「純朴ですか?」
「その心は?」
リツコさんもミサトさんと似たようなことを言うと思っていたので思わず聞き返す。
ミサトさんも同じように理由を尋ねる。
「例えば『命令に従順』というのも、命令に背くということを知らないとも言えるでしょう?」
「まあ、言えなくもない…か?」
ミサトさんは首をひねる。
それを受けてリツコさんは言葉を続ける。
「この前シンジ君が聞いてきた、レイが碇司令にだけ笑顔を見せるのも助けられた恩を感じているからと思えば理解できるのではなくて?」
そういって1息ついたリツコさんのコップに水を灌ぐ。
「思い当たる節はあります…初めて会ったときに『仲よくしよう』って言ったら『それって命令?命令ならそうする』って言われました」
あの時は言葉の意味が良く分からなかったが、リツコさんの話でしっくりきたかもしれない。
「ありがとうございますリツコさん。おかげで腑に落ちました」
「ふふ、どういたしまして」
シンジの感謝の言葉に、笑いながらそう返す。
(…まあ、
だからこそリツコがそんなことを考えているとは、夢にも思わなかった。
「あ、そうそう私もシンジ君に頼みたいことがあるのよ」
そう言って綾波の写真が写ったカードを手渡してきた。
「それを明日の朝、レイの家に届けてほしいのよ。それがないと本部に入れないから。住所のメモも後で渡すわ」
「分かりました…」
「あらーん?シンちゃん見とれてるの?レイ可愛いもんね!」
カードにある綾波の写真を見ていると、またミサトさんが茶化しながら肩を組んでくる。
懲りないミサトさんをシバこうかと思ったが、腕に当たっているたわわに免じて許してあげよう。
「そんなんじゃないですよ。確かに綾波は顔整ってるけど…なんていうか、安心のほうが近いんですよね」
学校でのことを思い出してそう言った。
「あのねシンちゃん、男の人ってのは女性に安心を求めるもんなのよ。だからよく母親に似た女性を…」
そこで言葉が止まった。明らかにやっちまったという顔をしている。
「ごめんなさいシンジ君…そういうつもりじゃ…」
「いえいいんですよ、どうせ覚えてないですし。ちょっと一服してきますね」
ミサトさんの腕をどけて、ベランダに向かうシンジ。
そんな様子を見てリツコはため息をついた。
「呆れた…あなたそれでも保護者?パイロットの過去を知りながら軽々しく触れるなんて」
「分かってる…口が過ぎたわ…」
「喫煙者の立場から言わせてもらうと2本は吸いたくなるから、しばらく戻ってこないわね」
そう言ってリツコも煙草に火をつける。
「シンジ君が離席するならちょうどいいわ。あの資料目を通した?」
「ええ一応…いったい何なのよあれは」
「書いてある通りよ、この前のストレス耐久テストの真の目的、『シンジ君の煙草依存度』のそのデータ」
そういうと明らかにミサトは機嫌が悪くなった。
当然だろう…自分が面倒を見ている中学生が煙草に重度の依存を示しているなんて、彼女からしたら知りたくなかっただろう。
「黙ってても何も変わらないのよ。このままでは戦闘に影響が出る…いやもう出ていると言えるわね」
思い出されるのは過去二回の使徒戦、戦いの最中にありもしない左ポケットをまさぐる姿。
「何か止めさせる手立てはあるの…まさか私にとか言わないでしょうね」
「そのまさかよ葛城一尉、これは碇司令からの直接の命令と思ってもらって構わないわ」
上司からの命令、軍人上がりの彼女にとってそれは何よりも絶対である…それを加味してこう言った。
「ムリ…ね」
「何故?この命令の重さが分からないあなたではないと思っていたけど」
「命令に従わないとかそうじゃないのよ。ただ単にそれを遂行できる力がアタシにないだけ…」
ミサトは俯いたまま言葉を続ける。
「依存てのは甘いもんじゃない…アタシもお酒に依存してるし、アンタも煙草に依存してる…大きく言えば人なんて何かに依存して生きてるわ」
「自分がしているから他人に偉そうに言えない…そう言いたいの?」
長年の付き合いを持つ友人が訝しげに見つめる。
「確かに…以前のアタシならそう言ってたかもね…ただ今はそうじゃない」
顔をあげ、しっかりとした目でこっちを見る。
「言いたいのはタイミング…嫌なことがあった、忘れたいことが起きた、そんなときに心の隙間に入り込んで抜け出さない…それが依存。大人ならそういうこともあるでしょうが彼はまだ中学生2年生…おまけにあの慣れ方は吸い始めて結構経ってる…1年2年、下手すればそれ以上よ。」
「…続けて」
「だとしたらもう彼は煙草を支えに生きててもおかしくないわ。認めたくはないけど…」
「…学生時代のあなたと”加持君”のように?」
「っ!…ええそうね…そういうことよ」
そう言い切ると残っていたビールを呷り、顔をしかめた。
(私もミサトの煙草とビールはあくまで趣味嗜好の域で、依存は物ではなく人…そう考えるとシンジ君も依存してるのは煙草ではなくて…)
その時、ガラリとベランダの扉が開く。
「ただいまーってどうしたんですかそんな2人して暗い顔で。またケンカでもしました?」
「んーん!何ではないわ❤」
「ならいいんですけど…じゃあそろそろ片づけだしますね」
そういうとシンジはカチャカチャと食器を洗い始め、ミサトも手伝い始めた。
そんな2人の様子にまるで”〇〇”みたいだと思ったが、口に出すほどでもない。
ご馳走様と、レイの住所のメモを残して家を出た。
扉を開いて受けた夜風は、夏以外なくなった世界では一層肌寒く感じた。
またリツコ視点で終わってるよコイツ…リツコでの思考シーンつかいやすいからしかたないね。
あと、次回ようやく煙草の謎に触れられそうですので…よろしくお願いします。
オマケ:補足
ストレス耐久テストは完全にオリジナルです。普通にありそうだなと思い採用、まあ本来の用途とは違う使われ方をしていましたが…次回に諸々のデータやら結果を載せたいと思います。
ケンスケと別でご飯食べてましたが、別に仲悪くはないです。
原作と違うのは委員長と仲良いことでしょうか…。
ミサトとリツコの衝突が増えているのは、片方が成長を見せるのにもう片方は停滞しているからです。どちらがどちらかは言うまでもないでしょう。
使徒との戦闘描写について ご協力をお願いします。
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増やしてほしい
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そのままでいい
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どっちでもいい