銘柄はエヴァンゲリオン   作:もちダイフク

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に、日間ランキング94位ってマジですか…?

本当に皆様が応援してくれるおかげです!

これからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!




タール9:ヒトがつくりし”モノ”

 

 NERV本部司令室…そこには2人の影があった。

 

 『サードチルドレン:碇シンジの煙草の検査及び調査結果 Vol.3』

 

 そう綴られた書類の束が机の上に散らばっている。

 その表紙には大きく≪緊急≫と書かれている。

 

「何かしら出てくるだろうとは思っとったが、まさか全てダミーとはな…どうするつもりだ碇?」

「…ダミーの情報が走らせてある以上、裏を返せばそこに何者かの影があると同義だ」

「そうだな…だがこれ以上の深入りは、うちの諜報部では不可能だろうな…。日本重化の”オモチャ”の話があるというのに…」

 

 まったく…頭が痛いよ、と冬月は眉間を揉む。

 

「問題ない…先ほど奴から、弐号機と例のものを持ってドイツを出発したとあった。オモチャの方も赤木博士が当たっている…問題はないだろう」

「結局は彼に頼らざるをえんというわけか…。加持リョウジ…そんなに信用に足る人物かね?」

 

 そう返すと、ゲンドウはいつもの姿勢のまま押し黙った。

 言わなくても分かる…そういうことだろう。

 

(蛇の道は蛇…というわけか。つくづく救えんなワシらも…)

 

 その無言が指す意味を察せる辺り…自分も同類だと実感した。

 

「それで…調査は彼に任せるとして、彼…シンジ君の処遇はどうするつもりだね?現状限りなく黒に近いぞ。拘束しても何ら可笑しくない」

「…サードチルドレンは葛城一尉と保安部に監視させている。今は放っておいていい。それにアレは…大して何も出来んよ」

 

(息子を()()()()()()()()と言っておいて、扱いは()()として…か)

 

 ゲンドウを見るが、顔をサングラスと手で覆い表情を隠している。

 長い付き合い…しかし今日はこの男がどんな感情なのかは想像できなかった。

 

「冬月…」

 

 ゲンドウがおもむろに口を開いた。

 

「いざとなればサードチルドレンを切る選択肢もある。お前が心配するようなことは起こらん」

 

 サングラスをくいと上げる。

 あくまで計画が優先だとの発言。

 

 …だがそれは大きく的外れであり、何故この男が自信有り気なのか分からない。

 冬月は気付かれぬように、小さくため息をついた。

 

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 タール9:ヒトがつくりし”モノ”

 

 数日前の使徒戦から早くも復旧しつつある第3新東京市…

 その街中を歩く制服の影が3つ…眼鏡とジャージ姿2人は楽しそうに歩いていた。

 

「いやぁー朝っぱらからあんなべっぴんさんの声聞けるなんて最高やな!」

「まったくだよ!惜しむらくは顔見れなかったことだけど、今日来るんだろ?」

 

 なあシンジ!と呼ばれた少年は対照的に気だるげな表情だ。

 

「まあ…そだね、うん」

「なんやセンセ、テンション低いやないか。腹でも痛いんか?」

「そんなとこかな…」

 

 主に精神の…と心の中で毒づくが2人に届くはずもなく。

 確かにミサトさんは美人だが、本当に”それだけ”だ…この歳になっても独り身なのが、それを如実に表している。

 それを本人に伝えたところ、朝からきついボディを貰ったが…。

 

「楽しみだなぁホント!なあトウジ?」

「そらそうよ!目の保養保養♪」

「それが()なんだよ…」

 

 相変わらずハイテンションな2人…今ここで『実はズボラの極みなんだ』と言っても無駄だろう。

 

(どーせもの凄いカッコで来るんだろな…)

 

 派手好きで騒ぎたがりの同居人を想像して、思わずため息が出た。

 

============

 

 キキィ!!と大きなブレーキ音を響かせながらルノーが駐車した。

 そこから降りてきたのは、予想通りバッチリ決め込んできているミサトさん。

 ミサトさんがサングラスを外すとおお…!と多くの生徒(主に男子)が歓声ともつかぬ声を漏らす。

 

 自分でも顔がピクピクと動いているのが分かる。

 大変ね…と委員長が苦笑しながら、僕の肩に手を置いた。

 

 その瞬間また大きな歓声が上がった。

 おい…あんな美人と碇は同棲してるのか?!、とか色々聞こえるがもう無視だ。

 

 ふと時計を見ると、昼休み終了まであと5分近くあった。

 …気晴らしに一服しに行こう、と立ち上がった瞬間両サイドから腕を掴まれた。

 委員長と何故か隣にいた綾波に…。

 

『碇君…どこに行くの?』

「ええっと…綾波、委員長?どうしたの?」

 

 声をそろえて聞いてくるのに圧倒される。

 委員長のはきはきした声もだが、綾波の淡々とした感じも威圧感がある。

 

「聞いているのはこっちよ。どーせまた煙草吸いに行くつもりだったんでしょう?」

「そ、そんなこと…ないよ?」

「顔背けながら言っても説得力ないわよ…」

 

 まったくもう…と言いながらも右腕を解放してくれる委員長。

 あの一件から、煙草を吸いに行くのを見つかると注意してくるのだ。

 

(最終的には行かせてくれるんだけど、あの目が怖いんだよなあ…何故かトウジもそれを見てくるし)

 

 とは言え今回もそこまで止めはしないみたいだ。

 あとは何故か無言のまま腕をロックしている綾波だが…。 

 

「綾波?出来れば離してほしいんだけど…」

「それは出来ない…ヒカリさんにお願いされたから」

 

 顔を伏せながら答える綾波。

 バッと振り返ると、したり顔の委員長…まさか。

 

「ふふん、残念ながらレイさんは私の味方よ!」

「そう…味方。友達や仲間のことを指す言葉…」

「そ、そうよ!私じゃ止められないからお願いしたの!」

 

 綾波の天然めいた発言に口を歪めるが、あくまで口調は自信げだ。

 …確かに学校が再開してから委員長と綾波が喋ってるとこよく見たけど、ここまで仲が良いとは思っていなかった。

 

 すると図ったかのように昼休み終了のチャイムが鳴る。

 どうやら話をしているうちに5分経ってしまったらしい。

 

「もうこれから煙草なんて吸っちゃ駄目よ!」

「…そう、駄目。何故なら身体に悪影響を及ぼすから…」

「…だからねレイさん、そういうことじゃないのよ」

 

 煙草を吸えなかったストレスも、2人の掛け合いを見ているとすっかり毒気を抜かれてしまった。

 今日はもう我慢するとして、綾波が僕の腕を掴んだままなのはマズイ。

 明らかに注目を浴びている。

 

「はあ…分かったからとりあえず手離してほしいんだけど…」

 

 もうミサトさんは行ってしまったのか、男子がこっちを見ている。

 その目には涙を浮かべて歯嚙みしている者もいた。

 その恨みのこもった視線に冷や汗が出る。

 

(クラス中の視線が痛い…)

 

 そんな目で見られても、ミサトさんにしても綾波にしても誤解なのだからどうしようもない。

 

「レイさんもう良いから離してあげて?」

 

 流石に見かねた委員長が助け舟を出してくれた。

 

「それは…命令…?」

「命令じゃあないけど…その、ね?」

 

 だが綾波の『それって命令?』発言にはまだ慣れていないのかタジタジだ。

 綾波はそんなつもりないだろうが…。

 

「なら…嫌」

 

『…は?!』

 

 綾波の爆弾発言に思わずハモって、それに合わせたようにクラスがざわつく。

 周りから男子生徒がにじり寄ってくる。

 その先頭はトウジとケンスケだ。

 

「おいセンセ…いや碇君。どういう事や?」

「ちゃんと説明してくれるよねえ?!」

「い、いや誤解!誤解だから!」

 

 あ、逃げた!

 くそっあんな美人の保護者もいるのに…!

 男の敵だ!!

 なんであんな煙草吸ってるような…!

 

 そんな悲鳴や罵声を背中に浴びながら逃げるように教室を出た。

 

 

 

 

「はあ…ここまでくれば大丈夫だろ…」

 

 教室から少し離れたとこに座ると一息ついた。

 煙草を吸いたくなるがグッと我慢する。

 

(しかしさっきの綾波は駄目だろ…)

 

 思い出されるのは、腕を掴んで離すのを拒否する姿…あの普段無口の綾波だからこそその行動が余計に目立つのだ。

 オマケにミサトさんのことで注目されてたし、当分教室に戻れないなあ…。

 

「しっかし最近、何か綾波の様子がおかしいんだよなあ…」

 

 さっきのもそうだが距離感がやけに近い気がする…。

 それも使徒戦というよりも、あの一緒に買い物行ってから…ということはつまり…。

 

「あらシンちゃん?なんでこんなとこにいるわけ?サボりは駄目よサボりは」

 

 噂をすれば(してない)元凶が現れた。

 当の本人はなんで僕がここにいるかもつゆ知らず、吞気そのものだ。

 

「ミサトさん…今日から1週間ビール禁止です!!」

「ええ~!?なーんでいきなりそうなんのよ~!」

「理由は自分で考えてください」

 

 今日の出来事全ての責任を取ってもらわないのだ…これくらいしてもらわないと気がすまない。

 

(ミサトさんもこれで少しは反省するだろ…)

 

 しかしそのあとミサトさんが騒ぎわめいたので一緒に怒られた…。

 なんで僕も…。

 

 その日はミサトさんのせいで最悪な日になった…。

 

-----------------------

 

 ある朝、何時ものように起きてこないミサトさんは放っておいてペンペンと朝食を食べていた。

 ガラリと扉が空いてミサトさんが出てくる。

 

「おはよ…ふっ、何ですかその恰好?そんなお堅い服装ミサトさんには似合わないですよ」

 

 何か真面目な顔をしているが、正直笑える。

 いつもの髪の毛ぼさぼさで大きな欠伸をかますミサトさんが黒い礼服を着ているだけで面白いのだから仕方ない。

 

「そんな悪いことを言うのはこのお口かしらぁ~?」

「いでででで!ひっひゃらにゃいで!!」

「ならレディにそんなこと言っちゃダメよん❤分かった?」

「ひゃ、ひゃい…」

 

 そういうとほっぺたから手を離してくれた。

 顔こそ笑っているが、あの力の込め方はマジ切れ一歩手前だろう…。

 赤くなっているだろう右頬をさする。

 

「…普段からズボラな自分が悪いのに…」

「何か言ったかしら?」

「いいえ何も?」

 

 ホント~?と訝しげに見てくる。

 地獄耳ってまさにこのことなんだな。

 

「シンちゃんコーヒーお願い!ご飯はいらないわ」

「ハイハイ」

 

 洗面所から飛んできた声に、仕方なく動き出す。

 少し濃いめのコーヒーを入れるとメイクを施したミサトさんが戻ってきた。

 

「確か今日旧東京に行くんでしたっけ?」

 

 コーヒーを出して、残っていた食パンを齧る。

 急いでいるのか熱いコーヒーを一生懸命冷ましている。

 

「そうよ、日本重化にね。ホントは行きたくないんだけど…」

 

 そう言ってコーヒーをすする。 

 苦い顔をしているのはどうやらコーヒーのせいではないらしい。

 

「じゃあ帰り遅くなりそうですか?」

「そうね、だから晩ご飯は要らないわ」

「分かりました。…その、ミサトさん行くの嫌なことでもあるんですか?」

「あら、分かっちゃった?」

 

 恥ずかしそうに頭を掻くミサトさん。

 思った通り、今から行くところではどうやらNERVは歓迎されていないらしい、しかもかなり。

 それならあの硬い表情も納得がいく。

 

「じゃあ僕も行ってい『駄目よ』…何でですか?」

「そんな大人同士の醜い争いなんて見ても、得なんて無いからよ…あなたは学校でしょう?あ!時間だわ、行くわね!」

「行ってらっしゃい…」

 

 そそくさと家を出るミサトさんを見送った。

 

「大人同士の醜い争いか…確かに僕にはわかんないや…」

 

 まあそんなことを考えても仕方ない…部屋に戻って学校の用意を…しなくちゃ…。

 何だか体がだるい…あれ…しかいが…ぼやけ…て…。

 

 ードサッ…ー

 

『サードチルドレンの気絶を確認』

『では今から180秒間で部屋を調べる。証拠は決して残すな』

『…隊長、部屋を調べるだけなら外出後に出来たのでは?』

『上からのお達しにサードチルドレンを一四:〇〇まで通信断絶(ロスト)しろともあった。分かったら黙って手を動かせ』

『イエッサ…』

 

-----------------------

 

「はああ?!初号機パイロットが気絶ぅ?!」

 

 受話器に吠えるミサトの絶叫に耳を抑えた。 

 

「落ち着きなさいよミサト…どうしたの?シンジ君に何かあったの?」

「どーしたもこーしたもないわよ!シンジ君が家で何者かに薬品で眠らされてまだ意識が戻らないですって!あんの役立たずのクソ諜報部員全員クビよ!…てか何でアンタはそんなに落ち着いてんのよ!」

「焦っても仕方ないからよ。それで、どうするの?まだなにかするつもり?」

「初号機が無理なら零号機で…」

「ムリよ。零号機はまだ修理しきれていない。空挺降下なんてしたらバラバラになるわ。文字通り打つ手なし…よ。」

 

 ミサトは歯嚙みする。

 ただでさえジェットアローンが暴走して都市部に進行しているのに、シンジ君まで何かに攻撃を受けたのだ。

 零号機も出せない以上、リツコの言う通り何も出来ることはない。

 自然停止する0.00002%という天文学的な確率を信じて待つことなどミサトには出来ない…だからこそ冷静な同僚が癪に障る。

 腕を組んで壁にもたれたままのリツコの襟首を掴む。

 

「止めてちょうだい。私に当たったところで何も解決しないわ」

「分かってるわよそんなの!けどこのままだと何十万人という人が死ぬのよ!」

「けど私達の責任ではないわ…分かったら大人しく祈ってなさい」

 

 リツコが手を払いのける。

 そのままミサトは力なく地面に崩れ落ちた。

 

()()()()ことは分かってた…事前に手を打っておいて良かったわ)

 

 聞かれていたらミサトに殺されていたであろう小さな呟きは、周りの職員達の声でかき消された。

 

============

 

 NERV本部司令室 

 

「全てシナリオ通りです。それでは」

「ああ…ご苦労だった」

 

 リツコは短く言葉を交わして、部屋を後にした。

 部屋に残されたのは冬月とゲンドウのみ。

 

 冬月は懐疑的な目でゲンドウを見る。

 

「碇、これは少しやり過ぎではないのか」

「…葛城一尉の行動を初号機パイロットをロストさせることで封殺し、日本重化学工業の株価は暴落しJ.A.計画は破綻。監視していた諜報部員は能力が低いとされていた者たちで行い、他の職員に納得させる形でクビにできた。オマケに初号機パイロットに直接手を出すことで、後ろにいる『何者』かにけん制も出来た。冬月、いったいこれの何が不満なのだ?」

「そんなやり方では敵を作るだけだと言っとるんだこの馬鹿者め!」

 

 理外の大声に驚いたのか、身をたじろいだ。

 

 それを見て大きくため息をつく。

 …ただでさえ最近ストレスになる出来事が多いのに…この男は全てがいいように動くとしか考えていない。

 人事にしても、葛城くんやシンジ君への説明にしても、結局はワシ任せだからたちが悪い。

 

「ふ、冬月…どこに行くんだ」

「頭痛薬を取りにだ。一体誰のせいだと思うとる…」

 

 近頃慢性的な頭痛のために薬を服用している。

 医者からはストレスを避けろと言われてるが、この分だと増える一方だ。

 

「焦る気持ちも分かるが…やり方を考えろ。そんなことでは誰もついていかん…職員も、ワシもな。少し頭を冷やせ」

 

 返答を待たずに部屋を出る。

 これ以上同じ部屋にいたら、恐らく手が出ていただろう。

 

「ユイ君…君がいたらアイツになんていうんだろうな…」

 

 冬月は苦笑しながら呟く。

 遠く、しかし鮮明な記憶にある白衣の女性に思いを馳せた。

 

-----------------------

 

 オマケ:シンジ君お目覚め後…

 

 目を開けると見慣れた白い天井…。

 あれ…学校に行こうとして…あれ、思い出せない。 

 

「気が付いた?あー良かった!ゴメンねホントに!」

 

 声の方を向くとミサトさんが申し訳なさそうにこちらを見ている。

 目元には大きな隈が出来ていた。

 

「あれ…僕なんで病院に…?」

「それがね…」

 

  〇〇

 

「へ?何者かに眠らされた、なんで?」

「それが…()()()()()けど、とにかくこんなことが起きたのはこちらのミスよ。ごめんなさい…」

「…頭あげて下さいよ。ミサトさんが悪いわけじゃないんですから」

 

 深く頭を下げるミサトさんに申し訳なく感じる。

 仕事で出かけていたのだから仕方ないことだろう。

 

「それでもひとつ聞きたいんですけど…」

「何かしら?」

「…どうして綾波がここで寝ているんですか?」

 

 目線を落とすとそこにはベットに頭を預けて寝ている綾波が。

 すうすう…と穏やかに寝息を立てている。

 

「レイがね…シンちゃんのこと心配だからって、ずっとここで待ってたのよ」

「綾波が…ですか?」

 

 タイミング悪く少し前に寝ちゃったけどね…と小さく笑う。

 時計の針はそろそろ午前2時を回りそうだった。

 

(綾波…こんな遅くまで、心配してくれたのか)

 

 寝息を立てる綾波を起こさぬようにそっと頭を触る。

 珍しい水色の髪は、他の人と何ら変わらない…サラサラの髪の毛だった。

 ハッ…!と気付くとミサトさんがニマニマして見ていた。

 

「レイ、かわいいでしょ?」

「まあ…そうですね…」

 

 ミサトさんの問いに、正直に答える。

 そして月の光が照らす綾波を確かめるように、もう一度だけ髪に触れた。

 




ハイ、ということで今回は初めて原作と大きくずれました。

しかしジェットアローンは勝手に止まったのでヨシ!(現場猫)

綾波との距離感もいい感じに近づいてきてヨシ!(LRS派)

…次回からアスカ来るんですけど、どうしてヨシって言ったんですか?(LAS派)

これは…荒れるやろなあ…。

使徒との戦闘描写について ご協力をお願いします。

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