ЯeinCarnation   作:酉鳥

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4:23『vs スキュラC』

 真の姿を露にしたスキュラ。

 私は逆手持ちしていた剣を振り上げ、女の頭部を正面から叩き切る。横目でナタリアを確認してみれば、同じように剣を振り回して正面から迎え撃っていた。

 

「今度こそスキュラの心臓を狙えば倒せる! アレクシアは迂回しながら本体に近づける機会を探すんだ!」

「……機会を窺えということか」

「クリスはスキュラの近くにいる頭部を狙ってくれ!」

「分かった」

「そんでナタリアは……」

 

 私とクリスに指示を出し最後にナタリアの方へ視線を移せば、キリサメに向けて「はい?」と威圧を掛ける。

 

「……とにかく暴れろ!」

「はいはい、分かりやすい指示ですねぇ!」

 

 女の頭部を勢いよく蹴り上げ、果敢にスキュラへ立ち向かおうとするナタリア。私はキリサメに指示された通り、スキュラを囲むように作られた陸を迂回した。

 

「グルッ、ナッ……」

(当然だが、私への警戒を解く気はないな……)

「キャアァアァアァアァッ!!?」

 

 しかしスキュラの死角へ回り込んだところで、接近させまいと女の頭部が前に立ち塞がる。私はルクスαを女の頭部の額へと突き刺し、蒼色の獄炎を纏わせて炎上させる。

 

「今のスキュラは肉体の再生が早い! 再生速度が落ちるまでとにかく"生命力"を削るんだ!」

(早く倒せるかどうかは狐の女次第か……)

 

 カリブディスの相手をしているであろうティア・トレヴァー。あの狐の女がカリブディスの生命力を削れているか。私たちがスキュラを迅速に始末できるかは狐の女に懸かっている。

 

(……いや、向こうも同じことを考えているだろうな)

 

 恐らくあの女も私たちに懸けているに違いない。そもそもお互いの生死すら不明の状態。もし片方が野垂れ死んでいれば、残された側はどう足掻こうが"詰み"だ。

 

「ワタクシの永遠の美貌は崩せないわ。アナタたちは惨めに、汚らわしく、血塗れになって……這いつくばることしかできないの」

「……っ」

 

 スキュラの耳障りな高笑いと共に女の頭部から一斉に地面へ頭突きをし、私たちが立っていた陸の部分を没落させ、足元まで海水を侵食させる。

 

(私たちの足場を崩すつもりか)

 

 海中に引きずり込まれれば最期。私は最悪の事態を避けるために壁際まで後退する。

 

(……あの男は何をしている?)

 

 私はキリサメへ視線を一瞬だけ移せば、他所を向きながら険しい表情を浮かべていた。まるで隣に立つ誰かと話しているかのような素振り。

 

「オイ、ジソウッ……」

「チッ……」

 

 上から迫りくる女の頭部がこちらへと喰らいつく。私は残された左腕で上歯(うわば)を、右脚で下歯(したば)を押さえ、噛み潰されないように口を無理やり開かせる。

 

「アレクシア!」

「……?」

「血涙の力を合わせて、スキュラの体内から……!」

「……なるほど」

 

 キリサメの言葉だけで意図を汲み取り私は欠損した右肩を止血していた蔓を、女の頭部の喉の奥まで忍ばせた。そして(たこ)の形状をした下半身の隅々まで蔓を巡らせる。 

 

「試してみる価値はあるな」

 

 以前から血涙の力は別々の用途としてそれぞれ扱ってきた。力の様々な使い方を思いついてきたが、たった一つだけ私でも思い付かなかったことがある。

 

「──インフェルノ」

「キャアァアァアァアァアァアァアッーー!?!」

 

 それは力と力を組み合わせること。私は下半身に巡らせたフラクタルの蔓に、インフェルノの獄炎を纏わせれば、触手に繋がった女の頭部の口から蒼色の炎が噴き出す。スキュラは体内を駆け回る炎に悶えながら悲鳴を上げる。

 

「痛覚が戻ったようだな」

「アナタ、よくもワタクシの美貌を焦がしてくれたわねぇえぇッ!?」

「……代わりに冷静さを失ったか」

 

 右肩から伸びた蔓を女の頭部が噛み千切り、スキュラは私の方へと身体の向きを変えた。私は余裕の表情でスキュラを見上げる。

 

「これはこれは、クソ熱い炎ですねぇ!」

 

 女の頭部から距離を置いていたナタリアは私を見つめると、自身に背を向けているスキュラに気が付き「おやおやぁ?」首を傾げ、キリサメの方へ視線を移した。

 

「なるほどなるほどぉ! ハルサメ・カイトさんは私にこのクソ野郎を殺してほしかったんですかぁ!」

 

 女の頭部とスキュラからの視線が私に集中している。ナタリアの位置は私と間反対の位置かつクリスが援護射撃を行っていた位置。つまり本体へ近づくための壁は薄い状態となり、

 

「後ろから失礼しますねぇ!」

「カハ──ッ!?!」

 

 ナタリアは二体の女の頭部を蹴散らしながら、スキュラの背後から二本の剣を突き刺した。右手に握りしめていた剣は心臓を貫いたようで、スキュラは思わず青色の血を吐き出す。

 

「あ、卑怯なんて文句は受け付けませんよぉ? これは勝つか負けるかの勝負なんですからねぇ!」

「アァアァアァーーッ!?」

「ではではぁ、第一ラウンドはこれで終わりにしましょうかぁ!」

 

 その場で暴れ回るスキュラは女の頭部を操って引き剥がそうとしたが、ナタリアは剣を突き刺したままスキュラの本体を馬鹿力で斬り裂き、後方へと飛び退いた。

 

「「「キァアァアァアァアァアァッーー?!!」」」

 

 スキュラの上半身が真っ二つに肉塊として崩れ落ちると、共鳴するように皮に浮かび上がる女の顔や女の頭部が耳を劈くような悲鳴を上げる。

 

「おやおやぁ? このクソうるさい声は第二ラウンド開始の合図ですかぁ?」

「よくもッ、ワタクシの美貌にキズをッ……!!」

 

 私は片耳を塞ぎながらスキュラを見上げてみればキリサメから聞いていた通り、共有している生命力とやらで、肉体が先ほどの状態へとあっという間に再生していく。

 

「"あの時"のようにッ、またワタクシの、邪魔をするのねッ……!?」

「はいはい、お前と会うのは初対面ですよぉ?」

「黙れぇッ! このッ、汚らわしい──」

 

 上半身の白い肌に青筋を立てたスキュラは、陸の上で何食わぬ顔で二本の剣を振り回しているナタリアを睨みつけ、 

 

「──レインズ家の女がぁあぁぁあッ!!!」

 

 女の頭部を操作し、周囲に転がる岩石を手当たり次第に投擲した。ナタリアは怖気づかず岩石を寸前で回避しつつ、スキュラの正面から立ち向かおうとする。

 

「止まれナタリア! スキュラの様子がおかしい! まずは様子見をして……」

「ダメだ。今のナタリアはお前さんの声なんて聞こえていない」

 

 キリサメがそう呼び掛けるが、ナタリアは足を止める気配を見せない。むしろ女の頭部に囲まれていることなど関係なしに、スキュラへとあっという間に距離を詰めていく。

 

「ではではぁ、もう一回ぶっ殺してあげますよぉ!」

 

 そしてナタリアはその場で飛び上がり、スキュラの上半身に向けて二本の剣を全力で振り下ろす。

 

「……おやおやぁ?」

 

 しかしスキュラはナタリアが振り下ろした二本の剣を掴むと、

 

「アナタの粗暴な剣技は──」

 

 青筋を発光させながら刀身を容易く真っ二つにへし折り、

 

「──見飽きたのよぉッ!!」

「……!」

 

 その脇腹に折れた刀身を深々と突き刺すとスキュラ自身で頭突きを放ち、ナタリアを固い陸へと叩きつけた。

 

「ナタリア……!」

「ちっ……あの怪物、さっきよりも動きが速くなってないか?!」

 

 女の頭部が先ほどよりも機敏な動きでキリサメたちへ襲い掛かり、スキュラは次の目標を私へと定め、

 

「アナタはもう、ワタクシの肉体には必要ない……!」

 

 両腕を烏賊(イカ)触腕(しょくわん)へと変化させると、

 

「だからアナタの残った四肢を綺麗に引き千切って……ッ」

 

 うねらせながら勢いよく振り上げ、

 

「今晩のディナーにしてあげるわ……ッ!!」

 

 殺意を込めて振り下ろしてきた。ラミアの蔓による鞭打ちにも似ている……が、明らかに違うのは私がどれだけ距離を取ろうと延々と追尾してくる点。

 

(……斬りかかるのは愚策か)

 

 加えてスキュラが両腕から伸ばした烏賊(イカ)の触腕には吸盤が付いている。あの吸盤は岩壁や陸に少しでも付着した途端、その大部分を容易く引き剥がせるほどの吸引力があるようだ。

 

(あの触手を警戒しながら趣味の悪い頭部を捌いて、スキュラの心臓を狙う策を考えるしかないが……)

 

 しつこく付きまとう二本の触手。回避を続けても岩盤が次々と削られ、足場が不安定になっていくばかり。だからといってスキュラ本体に一撃すらも与える隙は無い。

 

(現状では無理難題だ) 

 

 最善策はスキュラから直接狙われていない他の誰かが心臓を狙うこと。私はキリサメたちへ視線を向けるが、

 

「カイト、このままだと弾が尽きるぞ!」

「分かってる! くそっ、何か打開策を思いつかないと……!!」

(……そんな余裕はないか)

 再生力の増した女の頭部が次々と二人へ襲い掛かり、クリスは自身とキリサメの護衛で手一杯の様子だった。キリサメは周囲を見渡しながら打開策を思いつこうと必死になっている。

 

(あの暴走女は仮眠中か……)

 

 次に視線を向けたのは向かい側の陸。スキュラの頭突きによって吹き飛ばされたナタリアは左右の脇腹に折れた刀身を突き刺され、未だに仰向けで倒れていた。あの様子では目を覚ますのに時間が掛かる。

 

(なら──)

 

 私は背後から追ってきた烏賊(イカ)の触腕を岩壁を蹴りながら回避し、後方へ宙で回転する最中、左手に握りしめていたルクスαを口に咥え、

 

(──私一人で相手をするだけだ)

「──!」

 

 右肩と左腕から血涙の力で何重にも重ねた蔓を伸ばし、左右から迫りくる烏賊(イカ)の触腕を一斉に弾き返した。

 

「薄々勘づいていたけど……アナタ、ただの人間じゃないわね?」

「……」

 

 私は伸ばした蔓に獄炎を纏わせ、足元で何度か打ち付ける。軽く叩きつけただけでも、固い岩の地面にはヒビが入った。

 

「加護でも災禍でもないその力で、ケルベロスの獄炎やラミアの蔓を操る……。あぁそう、アナタが話に聞いていた子ね」

(……吸血鬼共に私の情報が出回っているのか)

「ストーカー卿から生け捕りにするよう言われていたけど……」

 

 スキュラは触腕に変化させた両腕をうねらせながら、私へ冷めた視線を向けつつ鼻で笑うと上半身の青筋を発光させ、

 

「ワタクシを拒んだアナタに──生きる価値はないわ!」

 

 両腕の触腕を高速で振るってきた。私は両腕の蔓ですぐさま弾き返し、女の頭部へと飛び乗る。

 

(……普通の鞭とは勝手が違うな)

 

 植物の蔓と烏賊の触腕による攻防。スキュラは両腕自体を触腕へと変化させているが、私の場合は血管を蔓へと変化。鞭打ちの威力や身体への負担。それらを考えれば、優劣の差が露骨に表れている。

 

「……っ」

「そんな力でワタクシを超えるなんて無謀なのよ」

 

 しばらく続いた植物の蔓と烏賊(イカ)の触腕による攻防。私が本体へ一撃叩き込もうと右肩の蔓を振るったが、スキュラの左腕の触腕に掴まれ吸盤を引っ付けられる。

 

「アナタとワタクシ、どちらが力強いのか……競ってみましょう?」

 

 そして私の左腕の蔓もスキュラの右腕の触腕に掴まれ、お互いに綱引き状態となった。何とか陸の上で踏ん張ってはみるが、そもそも私とスキュラとでは個体の質量が違い過ぎるため、ジリジリとブーツの底を削らせながら海上へ引きずられる。

 

(一度、フラクタルを解除して──)

「あぁ、そんなことはさせないわよ」

「チッ……」

 

 私の考えを読んでいたスキュラは喉の奥からワームのような丸い口をこちらへ伸ばし、牙を立てて左肩へと嚙みついた。その影響で両脚から力が抜け、そのままスキュラの前まで一気に引き寄せられる。

 

「フフッ、捕まえたわ」

 

 両腕の蔓をブチブチと引き千切られ、スキュラの左腕の烏賊の触腕が、脚と脚の間を潜るようにして全身へ巻き付けられた。吸盤が皮膚に吸引し、僅かでも身動きを取ることができない。

 

「……っ!」

「その綺麗な肌を肉ごとを抉ってあげるわ」

 

 左肩に噛みついたワームの丸い口が私の肉を貪っていく。私は胃の底から込み上げる気分の悪さに、ルクスαを口に咥えながら思わず吐血する。

 

「惜しかったわね。カリブディスにアナタを生かすよう命令していたのに……素直にワタクシの一部ならないからこうなるのよ」

(……私たちの船を襲わなかったのは、それが理由か)

 

 カリブディスと遭遇したとき、私たちの船だけが無事だった。それはスキュラが私を生かした状態で、この場へ辿り着くように仕向けたから。私は抱いていた疑問が一つ解消し、左肩の肉を貪られながら苦笑する。

 

「げほっ、がふっ……」

「そう、それでいいの。もう身体から力を抜いて、すべてを放り出して、楽になればいいのよ。ワタクシにその身体を委ねなさい」 

 

 咥えていた剣を放し烏賊(イカ)の触腕に身体を委ね、前を向いていた顔をゆっくりと俯かせた。スキュラはもう片方の触腕で私の首へと巻き付け、強引に顔を上げさせたが、

 

「最後に、私の美学を教えてやる」

「……?」

 

 私は勝利を確信したスキュラに向け、嘲笑うような笑みを浮かべ、

 

「私にとっての美学は──」

 

 左肩を貪るワームのような丸い口を蔓で頑丈に巻き付けると、

 

「──貴様のような愚者(ぐしゃ)を始末することだ」

「ガッ……!?!」

 

 落としていたはずの剣をスキュラの顎から脳天にかけて突き刺した。私は全身を蒼色の獄炎で炎上させ、肌の皮ごと吸盤から無理やり引き剥がし、スキュラの顎に刺さった剣を左手で握る。

 

「どうして、剣を……ッ!?」

「視野が狭いのか?」

 

 口に咥えていた剣を落とした際、気が付かれないよう左脚から蔓を伸ばし剣を回収していた。そしてそのまま蔓越しに剣を操り、スキュラの下顎に突き刺したのだ。

 

「なら近づいてやる」

「アナタ、何をッ……!」

 

 私は自身の肉体とスキュラの上半身を蔓で何重にも巻き付け、剣の持ち手を握りしめると、

 

「──インフェルノ」

「キャアァアァァアァアアァッーー!!?」

 

 蒼色の獄炎でスキュラごと炎上させる。悲鳴を上げてのたうち回るが、私は追い討ちをかけるため剣を強引に動かし、心臓部分までスキュラの肉を斬り裂きながら、刀身を移動させた。 

 

「グガッ、ヒギィッ……ど、どうして、この蔓はッ、剥がせないのよぉッ……!!?」

 

 女の頭部が蔓へと噛みつくが何度噛みついても千切れない。

 

「貴様を殺すことに命を懸けただけだ」

 

 細い血管を蔓へと変化させる力。これで対抗できないとなれば、最も太い血管である"大動脈"を蔓へ変化させればいい。

 

「私が死ぬか、貴様が死ぬかの我慢比べだが──」

 

 大動脈を噛み千切られれば私の命が尽き、このまま生命力を削りきればスキュラが尽きる。少しでも判断を誤れば、容易く死を伴う我慢比べ。

 

「──先に死ぬつもりはない」

「キィヤャアァアァアァアァァアッッーー!!!」

 

 耳を劈くような悲鳴を間近に聞き、私は再生をし続ける心臓を何度も何度も潰した。いずれは殺せる……と、考えていたのだが、

 

「……!」

 

 瞬間、スキュラの上半身が青色の血を散らしながら破裂すると、巻き付かせていた蔓が緩む隙を狙い、女の頭部が頭突きを放ち、私を陸まで突き飛ばした。 

 

「アレクシア!」

「お前さん、大丈夫か……!?」

 

 先ほどまで女の頭部を相手にしていたキリサメとクリスが私の側まで駆け寄る。スキュラを見上げてみれば、先ほどと同じように肉体を再生させていたが、

 

「ワタクシの永遠の美貌に必要なッ……生命力をッ……よくもここまでッ……」

 

 呼吸を荒げながら額から血を流していた。肉体をすべては再生し切れていないのか、全身に焦げ跡が垣間見える。

 

「スキュラの生命力はもう底を尽きている! 倒すタイミングは今しかない!」

「……見れば分かる」

 

 キリサメの声にそう返答すると、左手に握ったルクスαを逆手持ちへと切り替えた。クリスも私の様子を窺い、片腕で銃を構える。

 

「こっちへッ、来るなぁあぁッ……!!」

 

 私がその場から駆け出すとスキュラは私へ近づかせまいと女の頭部を向かわせる。

 

「生命力がないとあの頭も再生できない! クリス、同じように目を潰すんだ!」

「オーケー」

 

 しかしクリスの援護射撃によって女の頭部は眼球を撃ち抜かれ、視界を奪われたことで辺りをキョロキョロと見渡すのみ。

 

「……っ」

「ちッ、弾切れか……!」

 

 更に立ち塞がる女の頭部。クリスは再度援護しようとしたが弾切れのようで、舌打ちすると仰向けに倒れたナタリアの方を向き、

 

「起きろ、レインズッ!!」

 

 洞窟内に響くほどの大声を上げた。するとナタリアはその場に飛び起き、

 

「はいはい、もう第三ラウンドが始まってるようですかぁ?」

 

 脇腹に刺さっている刀身を躊躇せずに引き抜く。そして私の前に立ち塞がる女の頭部の眼球へと全力投球し、瞬く間に刺し潰した。

 

「また、レインズ家の女がッ……ワタクシの邪魔をッ……!」

 

 距離を詰めていくと今度はスキュラが烏賊(イカ)の触腕で振り回す。私はホルスターに入った銅の杭を、周囲に漂う女の頭部の眼球へ投擲しつつ、ルクスαに蒼色の獄炎を纏わせた。

 

「ガグ……ッ!?」

 

 暴れ狂うスキュラが喉の奥から、目にも止まらぬ速度でワームの口をこちらへ吐き出すが、スキュラの下顎に何かが激突し、ワームの口はスキュラの閉じた口によって噛み千切れる。

 

「なるほどなるほどぉ! やっぱり撃つよりも"投げた方"が威力ありますねぇ!」

「ナイスだナタリア!」

 

 その犯人はディスラプターαを全力で投擲したナタリア。もう一丁も投げる構えをし、私の向かう先に漂う女の頭部へ衝突させ、数秒間だけ怯ませた。

 

「終幕の時だ」

 

 私は右肩から伸ばした蔓で片方の触腕を弾き、身体を捻じらせてもう片方の触腕を回避する。

 

「終われない、終わるわけにはいかないわッ……!!」

「……」 

「ワタクシはッ……あの人と、約束したのッ……!! 美しく、美しくなるってッ……美しくなって、あの人を、待ち続けるってッ……!!」

 

 声を荒げるスキュラの触腕を避けながら、私はルクスαの刀身に細い蔓を纏わせれば、

 

「だからワタクシはッ、ワタクシはッ……あの人の為に、永遠にッ──」

 

 スキュラは青筋を二度三度ほど点滅させ、

 

「──美しく在り続けなければならないのよぉおぉッ!!」

 

 眩しいほどに全身を青色に発光させた。私は目を細めつつ、着実にスキュラへと接近していく。

 

「この世に永遠の美しさなど存在しない」

「ウグッ……!?!」

「もし存在するとすれば自己満足の美学に過ぎん」

 

 私は右から迫りくる烏賊(イカ)の触腕を蔓で弾き返すと、逆手持ちしていたルクスαを投擲し、スキュラの上半身へと突き刺す。

 

「黙りなさいッ……!!」

「なら黙らせてみろ」

 

 次に左から迫りくる烏賊(イカ)の触腕。私は剣に纏わせていた蔓を手繰り寄せ、触手を避けながらスキュラの元まで一気に詰めると、

 

「だが今更、貴様が抵抗したところで──」

「カハッ……?!!」

「──すでに散り際だ」

 

 剣を一度引き抜き、スキュラの心臓へ深々と突き刺した。

 

「その美学に引導を渡してやる」

「ま、待ちなさいッ!!」

「未来永劫、この世に生まれることなく――」

「ダ、ダメよッ!! ワタクシの、ワタクシのッ、永遠の美貌が……ッ!!」

 

 私は剣の持ち手を左手で強く握りしめると、冷たい視線でスキュラを見下ろし、

 

「──永久(とわ)に眠れ」

「ア"ァア"ァア"ァア"ァア"ァアッッーー!!!」

 

 刀身を捻じり真っ青な心臓を潰した。

 

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