ЯeinCarnation   作:酉鳥

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第25話『リゾート大作戦:閉幕編』

 

「ティア、そっちに行ったよ!」

「ええ、分かっています!」

 

 すべてを(さら)け出せた翌日。

 私たちは残り少ない長期休暇を『ビーチバレー』と呼ばれるスポーツで遊んでいた。教えてくれたのはティアで、対戦形式は女性陣と男性陣の五対五。

 

「おい、お前ら! このまま押し切るぞ!」

「賛成だ。僕らが勝利するという結果を確定させる」

「うん、そうだね。みんなで頑張ろう!」

 

 男子メンバーはカミル、パーシー、レクス、ニコラス、ジーノ。

 女子メンバーは私、ティアナ、フローラ、ティア、ルーナ。

 公平な試合のためエレナとエリザは審判を務めていた。

 

(今はお互いに四点ずつ取っている。一度のミスも許されないな)

 

 相手の地面にボールを五回へばりつかせれば勝利。点数はお互いに同じだが、どちらかが一度でも点数を取れば決着がつく状態だ。

 

「……っ! フローラ、そのままあげてください!」

「は、はいっ!」

 

 コートの隅ギリギリに落下しかけたボールを、地面擦れ擦れでティアが上に弾く。だがまったく高さが足りない。

 ティアはボールが飛んでいく位置に立っていたフローラへ、攻撃の一手へ変えるための指示を出す。

 

「ソ、ソーメェンっ!」

「あげすぎです!」

「ご、ごめんなさぁい!」

 

 あまりにも天高くトスされたボール。 

 このまま落下すればコート外で失点。カミルたちは勝利を確信した様子でボールを見上げ、フローラたちは冷や汗を掻いていた。

 

「……私の番」

 

 だがたった一人だけボールに喰らい付く少女がいた。そう、ルーナ・レインズだ。ボールの軌道修正をするために砂埃をあげて勢いよく跳躍する。

 

「しゃあーくちぇすと」

 

 そしてよく分からない技名を呟くと、ボールを相手のコートに向けて打ち込む。狙いはカバーしきれない左隅、勢いも十分だったが、

 

「ルーナさんの狙いはコートの左隅だ!」

「ナイスだぜジーノちゃん! ……よっとっ!」

 

 ジーノは行動を先読みしていたらしく、パーシーによってボールは弾き上げられた。

  

「読まれた……?」

「ごめんね、簡単に終わらせるつもりはないよっ……!」

 

 ジーノはそう言いながら飛んできたボールをカミルに向けてトスする。カミルが立っている位置は相手とこちら側の境目となるネットの前だ。 

 

「てめぇらが失点しなけりゃなぁッ……!」

「来ますよ!」

 

 点を取るための攻撃が来る。

 飛び上がったカミルが右手を勢いよく振り上げ、鋭い視線をこちらのコートに向けてきた。

 

「死ねぇえぇーーッ!!」

「し、死ね……?」

 

 振り下ろしながら暴言を吐くカミル。ティアナがその発言に眉をひそめた瞬間、ボールは凄まじい勢いでコート中央の奥を射貫こうとする。

 

「ルーナ、私たちで止め切りますよ!」

「……止めてみせる」

 

 ボールを挟み込む形で滑り込むティアとルーナ。

 必死に伸ばした二人の腕がギリギリでボールに触れ、

 

「「──っ!」」

「なっ、止めやがったか……!」

 

 地面に触れることなく上へと弾かれた。

 ボールはフローラの元へ曲線を描いて飛んでいく。

 

「フローラ、今度こそあげてください! ただしあげすぎないように!」

「は、はい! あげすぎないように、あげすぎないようにっ……」

 

 ふよふよ飛んでくるボールを見つめ、両腕をゆっくりと構えるフローラ。誰がどう見ても身体に力が入りすぎているのが分かる。

 

「フローラ! ティアが顔に付けてるものはなに……!?」

「へっ? えーっと、えーっとですね……」

 

 そこでティアナは彼女へそう問いかけた。

 敢えて考えさせることで力を抑えさせる作戦らしい。結果としてフローラは色々と考えながら落下してくるボールを見つめ、

 

「おーめんっ!」

 

 適度な力量でボールをトスした。

 ボールは丁度いい高さでネットの前に立っているティアナの元まで飛んでいく。 

 

「あとは私に任せて!」

 

 ティアナはタイミングを図ってネットの前で飛び上がり、ボールを視線で捉えながらどこに打ち込むかを考える。 

 

「ちッ、させるかよっ……! おい、おっさん共!」

「オーケー、ブロッキングだな!」

「あとカミルちゃん、おっさん呼びはちと心に来るぜ?」

 

 向かい側に来たのはボールを弾こうとするカミル、パーシー、レクスの三人。互いの位置を踏まえれば九割の確率で防がれるだろう。それでもティアナは手を振り上げ、ボールを打ち込む体勢に入った。

 

「はっ、力で押し通れると思うなよ」

「ふふっ、押し通るって何のことかな?」

「は?」

 

 大きく振り下ろされる腕はボールに触れない。

 そう、これはあくまでもフェイクだ。前方で防がれないよう、決定的な一打を与えるためのフェイク。

 

「ヘレン!」

「ああ、ここで決める」

 

 後続にいた私はティアナと入れ替わるように跳躍する。

 地面へ足を付けなければならないカミルたちはもう何もできないだろう。私は前方に広がる相手のコートを観察する。

 

「あいつら、ブラフかけやがった……!」 

「こうなったら……お二人さん、頼んだぜ!」

 

 私から見て左側にニコラス、右側にジーノ、中央には誰もいない。配置を考えれば中央を狙うのが定石(じょうせき)だ。

 

(あの二人、私を誘っているな……)

 

 しかし敢えて中央をがら空きにしている。

 狙いやすい箇所を空けておけばボールが来ると。餌に釣られて獲物が寄ってくると。だから私は左側に立っているニコラスへ顔を向け、

 

「ニコラス」

「……!」

 

 彼の名前を呼んだ。

 初めて名前を呼ばれたこと。私が名前を覚えていたこと。あらゆる衝撃が彼に伝わると一瞬だけ表情を呆然とさせる。

 

「君の負けだ」

「──」

「おい眼鏡、何をぼーっとして……!!」

 

 その隙を狙い、満面の笑みでボールを打ち込んだ。

 ニコラスは呆然としたまま身体を動かさない。どこか頬が赤いような気もしたが、打ち込まれたボールは無慈悲にもコートの角を射貫き、

 

「か、かか、勝ちましたたぁあぁーー!!」

 

 フローラの歓喜の声と共に私たちの勝利を告げた。ティアナたちは一斉に私の元まで駆け寄ってくると、

 

「さっすがヘレン! すっごくかっこよかったよ!」

「これで男子より女子が優秀であると証明できましたね」

「……ぐっじょぶ」

 

 各々が和気あいあいとした様子で褒め称えてきた。どこか気恥ずかしさもあったがティアナたちの喜ぶ顔を見て、悪くはないと自然に表情がほころんだ。 

 

「おい、何をしてやがる眼鏡!? せめて取る努力ぐらいはしろッ!」

「カミル」

「あ? 何だよ?」

「僕はヘレンのことが好きなようだ」

 

 喜んでいるヘレンたちを他所に、カミルは彼の言葉に唖然とする。ニコラスは足元に転がったボールを拾い上げた。

 

「てめぇ、何を言ってやがる……?」 

「初めての経験だ。気に入らない女性の笑顔があんなにも眩しくて、心を射貫かれるような感覚を覚えたのは」

「ああそうかよ。んならてめぇは、あの皇女に目を奪われて失点したってことか──」

「まーまー、いいじゃないのカミルちゃん」

 

 淡々と語り続けるニコラスに苛立ったカミル。パーシーは苛立つ彼を静止させ、はしゃいでいるヘレンたちの方を見るよう促した。 

 

「ヘレン嬢ちゃんがあんなに楽しそうにする姿、カミルちゃんも初めて見るだろ?」

「そりゃあそうだが……」

「おじさんたちの目的、もう達成できたのよ。今は勝ち負けより、楽しむことを考えようじゃないの」

「……あぁ、ごもっともだな」 

 

 パーシーの説得によって落ち着きを取り戻したカミル。

 そう、男子たちは既に本命の勝利を収めていた。その勝利とはヘレンが変わったこと。カミルたちは遠目で、歳相応に楽しむヘレンたちを眺め、静かに微笑んだ。

 

 

────────────────

 

 

「あー、楽しかったねぇ」

「そうですねぇ。楽しかったし美味しかったですぅ」

 

 満足そうな表情を浮かべるティアナとフローラ。

 あっという間にリパ島の休暇が終わり、私たちはイーストテーゼの正門前に集合していた。時間帯は二十時。辺りも既に暗闇に包まれている。

 

「もう遅い時間だ。ここらで解散としよう」

「あぁそうだな。変に疲れちまった」

「私も限界が近いわ……」

「ふぁあ~、私も眠いぞ……」

 

 時刻を確認したニコラスとカミルに、賛成するのは伸びをするエリザと欠伸をするエレナ。解散の時が近づいている最中、私は一人だけ俯いていた。

 

「どうしたのヘレン?」

 

 その様子に気が付いたティアナはこちらへ声をかけてくる。

 言おうか言わないか。しばし迷う素振りを見せた後、私はゆっくりと顔を上げてからティアナたちを見て、

 

「また、集まれるだろうか」

「「「……」」」

「こ、こんなに楽しかったのは初めてだったから。また集まってくれるのかと、気になって……」

 

 恐る恐るそう尋ねた。

 アメリアの時のように拒まれるのが怖くて、とても小さな声で、私らしくもない弱気な声で、全員の顔を何度も見渡した。

 

愚問(ぐもん)ですよ、ヘレン」

「……ぐもんだと思う」

「そ、そうなのか?」

「うんうん、そうだよヘレン」

 

 答えは分かり切っている。そう言わんばかりの反応をされ狼狽えていると、ティアナが私のそばまで歩み寄った。

 

「ぜぇっ~たいに集まってくれるよ。ねっ、みんな?」

 

 ティアナの問いかけに全員が微笑みながら頷く。私は不安に思っていたのが馬鹿らしくなって自然と両頬が緩んだ。

 

「ほら、卒業試験の後とかどうかな? 卒業旅行みたいなの!」

「ナイスアイデアだぜ、ティアナっち!」

「はっ、俺たち全員がなんかしらの機関に所属できればの話だけどな」

 

 ガヤガヤと盛り上がるティアナたち。その光景を目にし、改めて『私にも友人ができた』という感覚を実感し、どこか胸中が温かくなっていた。

 

「──それじゃあ、みんなありがとね! 楽しかったよ!」

「うん、僕たちも楽しかった」 

「ええ、お疲れさまでした」

 

 各々が散り散りに去っていく。

 私は一人、また一人と後ろ姿が見えなくなる友人たちを見送った。最後に残ったのはティアナと私だ。

 

「ヘレン、私もそろそろ帰るね?」

「ああ」

 

 ティアナは手を振ると家の方角へ歩いていく。

 距離が離れれば離れるほど、心の隙間が増える感覚。別れを惜しむ、という言葉の意味をこのとき初めて知った。

 

「……あっ、そうだヘレン!」 

「どうした?」

  

 何かを思い出し立ち止まるティアナ。

 彼女は二メートル先で勢いよく振り返ると、こちらに向かって両手を振りながら、

 

「またアカデミーでねーー!」

「──! ……ふふっ」

 

 大声でそう叫んだ。

 私は乾いた笑い声を漏らすと右手を大きく振り返す。

 

「ああ、またアカデミーで」

 

 またアカデミーで。

 この言葉で孤独になりかけた心が救われた。この言葉でまた会った時の楽しみが増えた。私はティアナとしばらく手を振り合うと、アルケミス行きの馬車に乗り込む。

 

「……」

 

 カバンから取り出したのは一枚の絵。

 いや、ティアによれば『写真』と呼ばれる記録媒体だったか。そこに映るのは別荘の前に並んだ私とティアナたち。

 

「……楽しかったな」

 

 その写真を眺めて思い出に浸っていればアルケミスに到着する。私は足早に降りるととある場所まで向かうことにした。 

 

「私も覚悟を決めなけれならない」

 

 街中を歩き城内を歩いて、私が向かうのは両親の元。この時間帯ならば二人とも寝室にいるはずだ。

 

「ねえ、ヘレン様がなぜここへ……?」

「珍しいわ。エゴン様たちとは距離を置いていたはずなのに……」

 

 使用人たちの注目を浴びるが気にしない。 

 私は寝室の前に辿り着くと歩みを止め、大きく深呼吸を二度だけノックをした。

 

「おぉ、入っていいぞ」

 

 聞こえてくる父上の声。

 私は扉に手をかけるとゆっくりと開いて、その先に座っていた私の両親を見る。何か大事な話をしていたようで机の上には書類がいくつも置かれていた。

 

「父上、母上」

「──! お前、ヘレンか……!?」

「あなた、なぜここへ……?」

 

 驚かれて当然だろう。

 今まで距離を置いていた娘が急に訪ねてきたのだから。父上と母上は席を立つと私のそばまで急いで駆け寄る。

 

「……ごめんなさい」

「ヘレン? 何を謝っているのですか?」

「父上と母上は今まで色々と手を尽くしてくれました。ですが私だけずっと逃げて続けて、話も聞こうとしなくて……」

 

 私はきっと怖かっただけなんだ。

 アメリアに突きつけられた『化け物』という言葉が。だから自分から塞ぎ込んで、もう二度とあんな思いはしたくない一心で人を避けていた。

 

「違うぞヘレン。謝るのは私たちの方だ」

「父上?」

「ええ、その通りです。私たちの方こそあなたをまた傷つけてしまうかもしれない……それが怖くて、向き合おうとしなかった」

「母上……」

 

 父上と母上が私を包み込むようにして抱きしめる。

 ああ、何年振りに両親の温もりに触れただろうか。夏場だというのに、身体の芯が少しだけ温かくなるのを感じた。

 

「父上、母上、私は今からでも皇女に相応しい器になれますか?」 

「……聞いてくれヘレン。私たちは、皇女になってほしいと本心で望んでいるわけでは──」

「分かっています。私を皇女にしなければならないのは、加護の継承が理由だと」

「──! ヘレン、どこでそれを?」

 

 私はすべてを話した。

 女神へメラと地下で出会ったこと。加護を継承したのが私であること。語れば語るほど二人は納得する素振りを見せ、どこか表情を曇らせていく。

 

「ヘレン、本当にすまなかった。私たちは加護の継承について黙っていたんだ」

「父上、どうして教えてくれなかったんですか……?」

「知っていたのは『加護が継承された事実』だけだったのです。まさかその性質があなたを傷つけることになるとは……」

 

 父上と母上が知っていたのは加護が私に継承されたという事実だけ。性質までは分からなかったらしい。その言葉に嘘はないようで、二人の表情はとても暗いものだった。

 

「なら私にその事実すらも黙っていたのはどうして……?」

「お前に背負わせたくなかったのだ」

「背負わせたく、なかった……?」

 

 父上が初めて見せる苦渋な顔。私は理解が及ばずに立ち尽くしていると、代わりに母上が私の肩に手を乗せてすべての経緯を話してくれた。

 

「かつてこの国を守るために、セリーナは加護を持たずとも勇敢に戦いました。ですがその命を落としてしまい、私たちはこう考えるようになったのです」

 

 母上は私と視線を交わす。

 そのアーネット家特有の真っ赤な瞳。私は見つめ返していると、母上は空いている手でこちらの頭を撫で、

 

「次に産まれてくる子には──普通の女の子(・・・・・・)として生きて欲しいと」

「……!」

「なので私たちは何も言わなかったのです。アーネット家の天命など、早く忘れてほしくて」

 

 静かに親としての想いを告げた。

 父上も賛同するように強い眼差しを私へ送りながらも頷く。思い返してみれば父上や母上からアーネット家としての自覚を持てなど一度も言われたことはなかった。

 

「でもその想いが、あなたを苦しめてしまいましたね」

「うむ、私たちが中途半端だったのだ……。加護の継承を受けたお前を皇女にしなければならない天命と……お前をアーネット家の天命から遠ざけたいという親としての想いが」

 

 何世代ものアーネット家が託した天命。

 平和な日常を過ごしてほしいという親の想い。

 父上と母上は激しい葛藤を繰り返し、考えに考え抜いてきた末の決断だと吐露(とろ)する。私はそんな二人を交互に見てから、ゆっくりと深呼吸をした。

 

「父上、母上、聞いてください。私はアーネット家としてこの国を治める皇女になります」

「ヘレン、なぜ皇女になろうと……?」

「それは守りたい友人が……いえ、守りたいものが出来たからです」

 

 今までなら化け物として吸血鬼を始末することが使命。

 だが今の私は人間として吸血鬼から誰かを守ることが使命だと考えていた。脳裏に浮かぶのは砂浜で見たティアナの横顔。

 

「そうだな、私たちが敗戦したときは皇女になることを許そう」

「……? 父上、それはどういう意味ですか?」

 

 敗戦したとき。

 父上はハッキリと明言した後、机の上に置かれた一枚の地図を見せてきた。その地図はロストベア大陸のもの。灰の裂け目に赤い丸がついていた。

 

「ヘレン、私たちは十戒と共にロストベアへ渡り、最北端にある灰の裂け目まで吸血鬼共を押し退け……ランドロス大陸へ侵攻しようと考えているのだ」

「総出で……。つまり戦争ですか?」

「ええ、そうですね。十戒と私たちが表舞台に出てくるとなれば、公爵も黙ってみてるわけにはいきません。恐らく原罪も動き出し、激しい死闘となるでしょう」

 

 ランドロス大陸は公爵が統治する領地。

 そこへ攻め込むとなればもはや戦争。私はその話を聞いて様々な考えが過り、様々な想いが込み上げてきた。

 

「ヘレン、私たちの世代で吸血鬼との長き戦いに終止符を打ちます。そうすれば名家は天命を背負う必要はありません」

「勝算は……」

「うむ? どうしたのだヘレン?」

「勝算はあるのですか? もし、もし父上や母上の身に何かあったら……」

 

 一番最初に抱いたのは不安。

 父上や母上が戦死してしまうかもしれない。そんな私の両肩へ二人はゆっくりと手を置いた。

 

「がっはは、心配するなヘレン! お前の父上はハチャメチャに強いのだぞ!」

「父上……」

「私たちは必ずあなたの元へ帰ってきます。もう独りにはさせません」

 

 自信に満ち溢れた言葉。

 それが虚栄なのか真実なのか。探ってしまえば分かってしまうような気がして、私はただそんな父上たちを信じることにした。

 

「そうだそうだ! ヘレン、リパ島へ行ったのだろう?」

「は、はい、そうですが……」

「それではあなたのお話を聞かせてください。あなたのお友達の話、とか」

「……分かりました」

 

 私たちはベッドの上に腰を下ろす。

 右隣に父上、左隣に母上がいる。私は懐かしい感覚に緊張がほぐれ、二人に土産話を少しずつ語ることにした。

 

 

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