インフィニット・ストラトスー異世界のツバサー   作:上空の三本線

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プロローグ

「んぅ……?」

 

照りつける太陽の眩しさで、目を覚ます。

視界に広がるのは広い空と1枚の大きな多機能型ディスプレイ──見慣れた愛機(CFAー44)のコックピットだ……ゑ?

 

「どうなってるの、これ。」

 

困惑のあまり口に出した言葉も、いつもより高く感じる。よくよく考えてみれば、視界もいつもより少し低い。

そのまましばらく飛んでいると、コックピットの中に耳障りな警告音が鳴り響き始めた。

多機能型ディスプレイを覗くと、画面の端に表示されている燃料計が4分の1を切っていた。

 

「燃料切れ……こんな時に……」

 

なんとか着陸できる場所はないかとマップをタッチして切り替えるも、《No Signal》の表示と共に暗転したままだった。ならば肉眼で、と辺りを見回しても視界に入るのは青い海だけ──否、小さい島が幾つか眼下を通りすぎていた。

 

「あそこなら……いけるか?」

 

先程上空を通過した時にある程度の平地があったように見えた島のひとつに向かって高度を落としながら旋回していく。

 

頼むから何もありませんように……と祈りながら高度と速度を落とし続け、車輪が地面に接した軽い衝撃を感じると、一気にエンジン出力を落とし、機体が完全に停止したのを確認する。

前後輪共にブレーキを掛け、キャノピーを開いてコックピットの中のラジオとサバイバルキットをひっつかんで主翼を足場にしながら飛び下りる。

 

近くの木陰まで移動し、耐Gスーツとパイロットスーツを上半身だけ脱ぎ、ヘルメットを外す。

 

「まぁ、まずは寝床と……こいつも隠すか?」

 

そう言って明るい日に照らされる白と群青の機体を見やる。

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間。

 

「クソ不味い……」

 

イチカは焚き火の前に座り込み、エストバキア軍で支給されるバータイプのレーション(軍用糧食)をかじっていた。

これの味は敵であるエメリア兵が「食い物じゃないナニカ」「こんなもん食ったら士気が下がる」などと噂するレベルであると言えばその酷さがわかるだろう。

現に食べ慣れているはずのイチカですら軽く吐き気が襲ってきていた。

そんなものをなんとか食べきると、パッケージを丸めてフライトジャケットのポケットにねじ込む。

そして地面に身を横たえようとしたところで、何かを聞きつけた。

明らかに自然に発生する音では無く、もっと高い音──具体的に言うなら高速で飛ぶときの風切り音だ。

だんだんと近づいてくるそれはちょうどこの島の上空で方向を変え、そのまま平地に着陸してくる。

その音が聞こえてくる方向にある茂みに隠れて非常用の拳銃を引き抜き、音がしないように安全装置を解除して薬室に初弾を送り込む。

着陸した謎の物体の一部が開き、人影が降りてくる。そしてちょうど隠れている茂みに近づいてくると、こう呼び掛けた。「ひさしぶりだねいっくん……いや、いっちゃん」と。

 

その人物とは自身も姉と慕い、妹の円夏を失踪するまで面倒をよく見てくれていた人物ーー篠ノ乃束であった。

 

 

「たばね…さん…?」

「いっちゃーん!」

 

構えていた拳銃を下ろし安全装置をかけ直す。

そして飛び付いてきた束を体を軽く反らして避ける。

顔面から固い地面にダイブする形になった束はしばらく顔面スキーを楽しんだ後、進行方向にある茂みに頭から突っ込んだ。

 

「なにするのさ、いっちゃん!」

 

と顔面に土をつけたまま束が抗議してくるが、イチカは目をそらす。

 

「んんっ、そういえば束さんは何しにここに?」

 

「明らかに話題そらしたよね今!?まあいいや。それで、用事なんだけど……これ。」

 

その言葉と共に束がポケットから取り出したのは中央に『001』と刻まれた仄かに明滅する薄紫色の結晶。

 

「これは……ISコア?しかも001ってまさか……」

 

「そう、そのコアは元々白騎士のコなんだけど、2年前のいっくんが行方不明になった頃にどのISとも反応しなくなっちゃったの。でもいっちゃんがこの世界へ戻ってきた時間くらいにまたこの子が光り始めたから、もしかしていっくんが帰ってきたんじゃないかって思って探してたらビンゴってなったの……まさか女の子になってるとは思わなかったけど。ねぇいっちゃん、私と一緒に来ない?」

 

「……そうするよ。オレがいなかった間にこの世界がどれだけ変わったのかも知りたいし。何より、1度シャワーを浴びたい。」

 

そう言って束に着いていこうとしたところでふと足を止めた。

 

「束さん。」と呼びかけると、間延びした返事が帰ってくる。

 

「こいつを置いてきたくないんだが、どうすればいい?」

 

そう言って葉や枝でカムフラージュされた白と群青の機体を親指で指さす。

 

「んー……拡張領域(パススロット)に入れちゃおうか。いっちゃん、さっき渡したコアを持ちながらその戦闘機に触ってみて?」

 

「こ…こう?」

 

イチカの手が恐々と機体に触れると、CFAー44『ノスフェラト』が光の粒子となって溶けるように消えた。

 

「まずい……そろそろ急がないと……」

 

急に束がイチカの手を取り、ロケットに走る。

 

「な、何「理由は後!」……分かった。」

 

そのままロケットに乗り込み、束のアジトへ一気に移動する。

 

 

 

 

 

 

 

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