太陽神のやり直し〜繰り返す世界で友を想う〜 作:ポプラと琥珀
もうすぐ電車が来る。と、腕時計で確認し、英単語帳との睨めっこを止めた。凝った首のマッサージに周囲を見渡すと、ホームで電車を待つ全ての人がスマホと睨めっこしていた。
あんなに長時間首を傾けて、疲れないのだろうか。
その光景が面白くて、暫く観察をしていると、スマホを見ていない人を発見した。間違い探しの難しい問題を解けた様な高揚感がして、その人をじっと見つめていると、向こうもこっちの様子に気がついたらしい。とっさに視線を逸らしたが、今度は向こうから視線を感じた。
気になって一瞬だけその方向を向くと、その男がこっちに向かってきていた。
やがてベンチに座る俺を、見下ろす様な位置まで近づいた。
「初めまして」
警戒心や懐疑心が諸共崩れるような、甘く、無害そうな声で話しかけられた。声の主の顔を見ると、ヨーロッパ系の特徴を押さえた顔立ちをしているのが分かった。
正直言って…超絶イケメンだ。
外人の童顔基準は分からないが、日本人の視点から見れば20歳そこらだろう。広告写真に写っている大学生が着そうな、カジュアルな服装を身に纏っている。髪は明るい茶髪で、同じ色をした瞳は、同性でも魅入られてしまいそうな魔性を孕んでいた。
「あ、あの…何か用すか」
「最後の友よ、ようやく見つけだぞ」
「はい?」
「聞こえなかったか? 我が友よ」
「えっと…何処かで会いました?」
脳内を辿るが、この男の記憶は一切見当たらない。第一、こんなインパクトの強いイケメンをそう簡単に忘れないと思う。
「いや、会うのはこれが初めてだ。しかし、一目見て確信した! 君こそ、私と一心同体になる者だと!」
どうしよう、頭のおかしい人みたいだ。
特に一心同体とか本気でヤバい。俺が見てきたキモい言葉ランキングぶっちぎりの一位だ。
一刻も早くこの場を離脱しようと考えていた矢先、電車が来たことを告げるサイレンが鳴った。
「あっ! 電車来たので失礼しますね」
そう言って、電車待ちの列に並ぶ。やがて、続々と人が集まってくると、こちらからはあの男の姿は見えなくなった。
「マジで何だったんだ…」
生まれて初めて同性に口説かれた。いくらイケメンとはいえ、俺は女性しか好きになれないと思ってるし、あの発言からは恐怖しか感じなかった。
「不審者情報見とくか。」
車両のドアが開くと、一斉に人が押し寄せる。肩がぶつかったり、足を踏まれたりするから、この人混みは苦手なのだが、今はこの人混みが一番安心できる存在だった。