マギアレコードRTA noDLC みかづき荘チャートAny% 作:なぁ……相撲しようや……
はーい、よーいスタート。
アイスの味ではバニラが一番おいしいRTA、はーじまーるよー。
ニューゲーム……ではなく、アーカイブに画面を移します。
今回のレギュレーションはDLC無しでのメインストーリークリアまでの時間を競うものです。
なので、いきなりニューゲームを始めるのではなく、アーカイブのDLC一覧でDLC無し或いは無効にしている事を確認してからゲームを始める必要があったんですね。
お待たせしました。それではニューゲーム開始と同時にタイマースタートです。
まずはキャラクタークリエイトです。プレイヤーの分身として神浜を歩く魔法少女を作成します。既にタイマーは動き出しているので素早く各項目を入力していきます。
名前は『虹絵ゆり』。虹絵のゆり……普通だな!
外見はデフォルトの物を使用します。キャラクリにおけるデフォルトの外見は黒羽根用の外見データからランダムで選ばれています。今回は茶髪ショート、四章でいろはちゃんら一行が初遭遇した黒羽根と同じ外見ですね。
割と地味な子ですが、これはRTAなのであまり見た目にこだわっていられません。やっぱりデフォルトでいいな!
性別は女性で固定です。魔法少年は残念ながら作れません。今後のアップデートに期待しておきます。
年齢は中学生の範囲であれば自由に選べるので、十五歳としておきます。魔法少女歴も新米にします。ストーリーの因果の中心に立つ環いろはとの接点を増やしたいがゆえの設定です。
スタート時期は第一章開始と同時にします。これより以前にスタート時期を置いても、DLC無しの都合上、何のイベントも発生せず食っちゃ寝をするしかなくなってしまいます。なので、第一章開始と同時としています。
スタートを第十章にして自分は自宅に引きこもり、その間にチームみかづき荘がストーリーを終わらせてはいタイマーストップ、というのはダメです。レギュレーションにより、第一章開始より以前にスタート時期を置かねばなりません。実質的に第一開始と同時一択じゃないか、たまげたなぁ……
シナリオの導入はいくつかある中から『環いろはと共に神浜市にやってくる』を選びます。これも前述のいろはちゃんとの接点を増やす作戦の一つです。
肝心の願いについては『心の支えになりたい』とします。こう入力すると固有魔法が十中八九の確率で読心能力になります。読心能力があればストーリーの進行に必要なフラグの入手をいくつかスキップ出来るので、その短縮効果を狙っての選択です。
難易度設定はスタンダードモードで行きます。ストーリーの進行に必要なイベントの発生が概ね保証されているのが特徴のゲームモードです。よほどの下手を踏まない限りは詰みの状況には陥らないでしょう。
初期設定が終わったのでいよいよゲームスタートです。運に恵まれるといいなぁ……
第一章 はじまりのいろは
始まりましたメインストーリー第一章です。操作可能になったら即座に固有魔法とステータスを確認します。
固有魔法は想定通り読心でした。次にステータスです。ゆりちゃんはマークスマンライフルを使う火力支援タイプの魔法少女みたいです。ほむほむのように火力不足だから自前で用意した物を使うとかでもなく、魔法少女としてのデフォルトの武器に現代兵器を持つ魔法少女とかこいつすげぇ変態だぜ?
火力関係の能力は高水準、素の速度も中々のものです。精神力に関しては補強の必要はありますがまぁ悪くありません。
軽い確認が終わったので、ストーリーを進めます。
神浜市新西区へ来た環いろはと虹絵ゆり。いろはちゃんの目的はもちろん小さいキュゥべぇ。神浜市に来てから見るようになった夢に出てくる少女について調べる為に、関係のありそうな小さいキュゥべぇを追っている、という感じです。
対してゆりちゃんの方は、建前上はただ遊びに来ただけ、本音ではいろはちゃんの付き添いのようです。いろはちゃんとの関係は今のところただのクラスメイトのようですね。いろはちゃんが神浜市に用があるというのを読心で知って心配になり、遊びに行くという動機をでっち上げて無理矢理付いてきたようです。行動力高いですね……
第一章のクリア条件は一つ。環いろはに妹の事を思い出させる。これだけです。
これを達成するには小さいキュゥべぇを環いろはに触れさせることが必要なので、小さいキュゥべぇを素早く見つけ出し、かつ逃がさないのが重要です。
あ、以下、小さいキュゥべぇの事はモキュと呼びます。
このモキュ、最も早く出会えるタイミングは砂場の魔女の結界内です。秋野かえでが砂場の魔女に絡まれている所を見かけた後でないとモキュは絶対に見つけられません。
これより以前のタイミングだとモキュは七瀬ゆきかと共にいるのですが、この七瀬ゆきかが厄介な仕様をしていまして、DLC無しだと七瀬ゆきかの魔法少女ストーリーがプレイヤー視点では"無いこと"にされており、プレイヤーが関わる事が出来ません。
神浜市内のどこを歩いていても偶然に出会う事は絶対にありませんし、例えば『探し物を視る事が出来る』といったような固有魔法を使ってモキュを視ようとしても、ちょうど探索範囲外である魔女の結界に入っていて見つける事が出来なかったりと、かなりの強制力で七瀬ゆきかとの邂逅が妨害されます。
この妨害でモキュも一緒に隠れてしまうので、早期にモキュを見つける事は出来ないんですね。
このDLC無しにおける挙動を利用したバグもありますがこのレギュレーションでは使用禁止です。ハードウェアにダメージが行くタイプのバグだからね、仕方ないね。
そんな訳で、まずは砂場の魔女の使い魔に絡まれているかえでちゃんを探します。
が、ここでは特にアクションは必要ありません。いろはちゃんに任せていれば自然と砂場の魔女の結界に辿り着きます。
結界の中を覗き込むと、既に先客がいる事が見て取れます。だがしかし苦戦している模様。イグゾー! デッデッデデデデ。
「ひゃああ!」
いました。木の杖ととんがり帽子という古典的な見習い魔女スタイルの彼女こそがマンションイレイザーこと秋野かえでです。
砂場の魔女の使い魔に囲まれており、見るからにピンチです。援護射撃を入れます。変身!
変身したゆりちゃんの姿は……マギウスの翼だコレーッ!? いやどちらかといえば黒江さんだコレーッ!?
へそ出しスタイル、ミニスカート、ケープ。色こそ鼠色ですが、要素が黒江さんの衣装と被っておられる。しかも、マギウスの翼用の外見データをそのままゆりちゃんの外見に使っているから、なんというか、衣装が堂に入っておられる。マギウスの翼の集会に混じっていても一分ぐらいは誰にも気付かれなさそうです。
戦闘に戻ります。跳躍してかえでちゃんの方へと距離を詰めながらライフルで射撃。弾丸の命中した使い魔が一撃で消し飛びました。
いやなんか思ったより火力高いな? かえでちゃん曰く弱い方の使い魔とはいえ、一撃とは思わなかった。これなら今回の戦闘中にモキュ回収だけではなく魔女の撃破も出来そうです。
オートで任せておくとかえでちゃんを連れての撤退を選択するため、いろはちゃんとかえでちゃんに魔女の撃破を狙う事をしっかりと宣言しておきます。
あ、グリーフシード? かえでちゃんにあげるから大丈夫だって安心しろよ〜
かえでちゃんといろはちゃんの形成する前線の一歩後ろから、ライフルを撃って使い魔を撃破していき、少しずつ前線を上げていきます。
前線とは言っても、かえでちゃんは中衛、いろはちゃんは後衛に向いた性能で、耐久力は高くないので、かなり脆い戦線です。一発の攻撃も受けないよう上手く援護してあげる必要があります。
にしてもこの砂場の魔女の使い魔、だんごにしか見えないねんな……
そうして辿り着いた最深部では砂場の魔女が待っていました。めんどくせぇからマギアだマギア! 道中で溜めたMPを全て捧げた一撃。見事に瀕死にまで追い込めたのでもう事故る要素はありません。
とどめを刺してグリーフシード、ゲットだぜ!
砂場の魔女の結界が崩れ、元の場所に戻って参りました。グリーフシードはかえでちゃんにプレゼントです。
え? 受け取れない? いいだろお前成人の日だぞ(意味不明)
ぐぬぅ、かえでちゃんが意地でも受け取らないモードに入りました。あれ君こんなに頑固だったっけ……?
困りました、好感度の為にも受け取って欲しいのですが。うーん……あれ?
確認してみたら、ゆりちゃんのソウルジェム、割と濁ってました。あっそっかぁ、そりゃあ受け取らないはずだぁ(理解)
うーん、ゆりちゃん、想定以上に新米です。
ゲーム上での新米の定義は魔法少女になってから半年経っていない事で、今日契約しましたという新人と半年間魔女を狩り続けて今はもう流れ作業ですという玄人とが同じく新米呼ばわりされているのです。
この熟練度の差は魔力消費量の大小という形で現れます。神浜の魔女相手とはいえこの消費量の多さは……一ヶ月未満、おそらくは契約してから半月ほどでしょう。予定より早めに稼ぎを入れた方がいいかもしれません。
返してもらったグリーフシードで浄化をしていたところで、モキュが現れました。はえーもう来ましたどっかに隠れてたみたいに。
「モキュ! モッキュ!」
モキュがいろはちゃんに飛び付き、いろはちゃんがそれを反射的に受け止めました。
「モキュ」
その一鳴きを合図に、いろはちゃんが全てを知ってしまった猫の顔をし、そして倒れます。
これで第一章クリア条件、環いろはが環ういを思い出すを達成しました。
意識を失ったいろはちゃんを、かえでちゃんの案内で調整屋にまで運びます。
調整屋というのは魔法少女の持つソウルジェムに手を加え入れることで魔法少女の能力を強化する技術を持った人、あるいはその人が営む店の事を指します。その性質上だれもが調整屋には手を出せないので、調整屋のいる場所は絶対に安全な所なんですね。
運んだ後は、みたまさんに容態を見てもらいます。
なんかももこさんが既に調整屋でスタンバってるんですがなんで……?
「アタシは十咎ももこ。それで、そっちの子は大丈夫なのか?」
「問題ないわ。少ししたら起きるはずだから、それまでそっとしておきましょう」
ヨシ!
ついでにみたまさんに調整してもらいたい、という所さんですが、あいにくと持ち合わせのグリーフシードが少ないので、狩りに行ってきます。グリーフシードを現地調達出来るレベルに魔女がいるとか神浜市やはりやばい(再確認)
いろはちゃんが起きるまでの間に他の魔法少女と会話していれば好感度上げにはなります。が、どちらかと言えば今は経験値の方が欲しいので、こちらを優先します。ついでに運が良かったらタイム短縮にもなります。
ただ、ゆりちゃんが魔女相手にひたすら鴨撃ちをする絵面は皆さんには退屈でしょう。ですので、
み〜〜な〜〜さ〜〜ま〜〜の〜〜た〜〜
なんで等速に戻す必要なんかあるんですか。
「あなた、見ない顔ね。他の町の魔法少女?」
来た、来た、来たなぁ! 彼女、七海やちよこそが運が良かった時の短縮要素です。
やちよさんは神浜市の古参魔法少女です。その経歴の長さとカリスマ性から神浜市西側の魔法少女をまとめるリーダー的な役を務めていました。それゆえに責任感が強く、ケガをさせまいと力量不足の魔法少女を魔女の強い神浜市に入れないようにしたり、街に蔓延る噂の調査を行ったりしています。
今はこの場にはいませんが、いろはちゃんだって彼女からすれば街から追い出す対象の一人です。いろはちゃん、弱いですから。ゆりちゃんは素のステータスが高いから対象外のようです。
また、モキュの排除にも積極的です。正体不明の存在がどんな厄災を引っ張ってくるか分からないから、何かが起きる前にターミネイトしようと考えています。
なので、いろはちゃんへの神浜入市許可と同時に、モキュの存在を許容する事への理解も得ねばなりません。
この二つの説得を、いろはちゃんの起床待ちというどうしようもない待ち時間中に行えば、後で発生する説得の会話イベント分タイムが縮みます。
という訳で、まずはモキュに関する話題になるよう誘導します。
おっすおっす。かくかくしかじかで神浜来てるんですよ。なんかいろはちゃんがぁ、小さいキュゥべぇ探してるみたいでぇ。
「……そう。それで、その小さいキュゥべぇは今どこに?」
どこ行っちゃったんですかね(すっとぼけ)
いろはちゃんにとって大事な何かかもしれないから殺るのは待ってくださいオナシャス!
「だめよ。聞いたわ。小さいキュゥべぇに触れた子が、意識を失ったって。こうして実害が生まれた以上、放っておくわけにはいかない」
いろはちゃん起きるまで待ってクレメンス! オナシャス! センセンシャル!
「……分かった。でも、ずっとは待たない。その子が起きなかったら、私は小さいキュゥべぇを——」
間の抜けた着信音が二人の間に響きました。みたまさんからの電話です。いろはちゃんが起きた事を伝えてきました。
話が途中ですが切り上げ、不満オーラを流すやちよさんを連れ、調整屋まで戻ります。
あっほんとにいろはちゃん起きてる! 良かった〜って思うわけ(タイムを見ながら)
「夢に出たあの子は、わたしの妹だったんです。あの子の病気を治すために魔法少女になったんです」
◇◇◇◇◇
「環さん、神浜に行くんだって? 私も連れて行ってよ」
虹絵さんがそう言ってきたのは、金曜日の放課後の事でした。
強く押してくる虹絵さんのその言葉を断りきれず、結局一緒に神浜に行く事になりました。
「一度行ってみたい店があったんだけど、一人で隣町まで行くのも心細くって」
正直に言って、なぜ虹絵さんが私を誘ったのか、全く分かりません。
同じクラスの生徒というだけで今までそれ以外の接点は無かったし、それでも私がクラスで浮いている事ぐらいは知っているはず。なのに、どうして私を誘ったんだろう。
その次の日。虹絵さんと一緒に神浜に来ました。なぜ私を誘ったのかは結局分からずじまいだったけど、私の探し人——夢に出てきたあの子を探すのも手伝ってくれるみたいだから、実のところ渡りに船だったのかも。私一人で手掛かりを探すのは無理かもしれないと思ってたから。
「まだ開店まで時間があるから、市内をぐるっと回ってみない? 土地勘を養えば動きやすいだろうから——」
魔女の反応。ここからそう遠くないけど、虹絵さんを置いていく訳には……
「——環さんも、今の感じた?」
虹絵さんが見せてきた手の中指には指輪がはまっていました。どこかで見たような見た目の、あぁそうだ、魔法少女の指輪だ。
……。
「虹絵さんも魔法少女だったの!?」
まさか同じクラスに魔法少女がいるなんて思ってもいなかったから、とても驚きました。
あ、でも、驚いてる場合じゃないですね。早く魔女を倒しにいかないと。
「その、虹絵さん。魔女退治、手伝ってくれませんか」
「いいよ。せっかくだし、グリーフシードも集めちゃおっか」
反応を辿って結界の入り口を見つけたんですが、どうやら先に入っている魔法少女がいるみたい。テリトリーの事もあるから、手は出さない方がいいかも。
でも、虹絵さんは結界の中が気になるようで、じっと見つめています。
「助けに行かないと」
そう言って結界の中に入っていってしまいました。
変身して後を追いかけてみれば、虹絵さんも既に変身していて、抱えるように持った大きな銃から弾丸を放って使い魔を倒し、先にいた魔法少女の援護をしていました。
「ふ、ふぇっ!?」
その子は驚いた様子で、突然現れた私たちに混乱しているようです。大きな銃から手を離せないらしい虹絵さんの代わりに、私が誘導をする事にします。
「大丈夫、一緒に結界から逃げよう!」
『待って。この結界の中に環さんの探している子に繋がる手掛かりがある』
手を引いて逃げようとして、虹絵さんのその言葉で足を止めました。待てと言われたからだけではなくて。テレパシーで言われた内容が衝撃的だったんです。
虹絵さんが私の神浜に行く予定を知っていたのは疑問には感じませんでした。何人かには予定を話していたので、そこから知ったのだろうと思っていたんだけど、でも、肝心の予定、人探し——夢に出た少女を探す事については本当に誰にも言っていないんです。なのに……
『どうして虹絵さんがそれを——』
『探し物を見れる魔法。今はそういう事にしておいて』
今は。その意味について聞き返そうとして、テレパシーを一方的に切られてしまいました。目の前には使い魔が迫ってきていて、先に魔女を倒してからでないと話の続きは出来そうにないかも。
「ごめん、先に逃げて。魔女は私たちで倒しておくから」
「だ、大丈夫! 二人も魔法少女が助けに来てくれたんだもん、私もやる!」
木製の杖を構え直した姿はどこか頼りないようにも見えたけど、魔法少女が三人もいるなら何事もなく魔女を倒せるはず。
「きっと、大丈夫!」
戦う前の自分へのおまじない。このおまじないをやるだけで体が軽くなるような気がして毎回やってるけど、実際のところはどうなんだろう。
虹絵さんの取り出した巨大な大砲の一撃で魔女が倒され、結界が崩れて、元の住宅地に戻されました。
「落ちたね、グリーフシード。これはあなたにあげる」
「ダメ! ……それは、ええと」
言葉を詰まらせてしどろもどろだ。何を言いたいのか分からないけど、虹絵さんは心を読んだように先回りして自分から名乗りました。
「虹絵ゆり。隣の街から探し物しに神浜に来たんだ。だからここで私が貰うと侵犯だって言われるかも。だからあなたが貰ってくれない?」
「そ、それはゆりさんの物だよ、わたしはほとんど見てるだけだったし……えと……わたしは秋野かえで、です」
「うん、かえでさん。それでも先に入った結界で使い魔を弱らせていたのはあなた。だからあなたが貰うのが一番波風が——」
押し問答を続ける二人。なんだろう。この二人、もう少しいうと虹絵さんを見ていると、なんだか違和感を覚えます。声が疲れているというか、重いというか……
「あの、虹絵さん。ソウルジェム見せてくれませんか?」
もしかしたら濁ってるかも。そう思って見せてもらった虹絵さんのソウルジェムは、想像以上に濁っていました。
「こんなに穢れを溜めてるなら、尚更わたしは貰えないよ……」
「ほら、かえでちゃんもこう言っていますし、穢れの浄化ぐらいはしておきましょうよ」
そう言って押したら渋々という様子でグリーフシードを受け取りました。浄化をして綺麗な白色になったソウルジェムをしまって、いかにも思い出したという顔をして手を叩きました。
「探し物! 小さいキュゥべぇ、さっきの結界にいたはずなんだけど。見た?」
「う、うん。すぐに使い魔が来て、見失っちゃったけど……」
じゃあ今はどこに、そう言葉を続ける虹絵さんの背後に這いよる、小さい影がありました。
「モキュ」
白い猫のような風貌、私たちがキュゥべぇと呼ぶ謎の生き物よりも一回り小さい体。間違いなくそれは、私が探していた——
「小さいキュゥべぇ!」
「モキュ! モッキュ!」
飛びついてきたのを反射的に受け止めると、なぜだか急に意識が遠のいて——
◇◇◇◇◇
「みたまさん! 搬送されてきた!」
「落ち着きなさいな。今すぐ死ぬような状態じゃないんだから」
ももこに呼ばれて応接用の椅子に寝かせられた子を診る。ソウルジェムに異常は無し。外傷も無し。単なる一時的な気絶みたいだから、休ませていればすぐに起きそう。
「問題ないわ。少ししたら起きるはずだから、それまでそっとしておきましょう」
そう伝えると一緒にいた……かえでちゃんと、虹絵ゆりちゃん。二人は安堵の息を漏らした。目の前で倒れられたのだから、心配の一つや二つするでしょうね。
「さて、いろはちゃんが起きるまで暇だから、調整でもしてく? 初めてのお客さんにはサービスもしてるわよ」
「調整かー。うーん、少しの間、環さんを預かっててくれないかな? お代を集めてくる」
お代? 魔女を今から狩ってくるという意味なのかしら?
ゆりちゃんの発言に困惑を挟んでいる間に、ゆりちゃんは出かけていっていってしまった。外の魔法少女らしいけど、神浜の魔女を相手に平気なのかしら。見た感じでは素質のある魔法少女みたいだったし、後れを取るような事は無いはず。放っといても大丈夫そう。
にしても、グリーフシードを現地調達するなんて、そう言う魔法少女も面白いし、それが出来る神浜っていう町も面白……くはないわね。魔女が沢山いるせいで、わたしも外を自由に歩けていないし。
「ところでももこ。あの子、調整の相場って知ってるの? 初めての調整だとグリーフシードの二つや三つないと割りに合わないのだけど……」
「多分知らないと思うよ。かえでもそんなに詳しく教えたりはしてないだろ?」
話を振られたかえでちゃんは、小さいキュゥべぇを膝に抱えながら、少し前の出来事を回想していた。
「う、うん。グリーフシードと引き換えに強くしてくれる人がいて、だからみんな争ったりしないから安全だって、そういう話しかしてないよ」
「……一見さんサービス、本当にやろうかしら」
しばらくして、いろはちゃんが問題なく目覚めた。テレパシーでゆりちゃんを呼ぶと程なく帰ってきて、それからいろはちゃんが自分が気を失っている間に思い出した事を話し始めた。
いろはちゃんは元々、知らない少女の夢について調べるために、神浜にやってきた。唯一の手掛かりである小さなキュゥべぇを見つけて触ってみると、夢の少女の正体を思い出したらしい。
「夢に出たあの子は、わたしの妹だったんです。あの子の病気を治すために魔法少女になったんです」
◇◇◇◇◇
な、なんだってー!?
なんと、いろはちゃんには妹がいるのでした。名前は環うい。なぜか忘れていたその存在をモキュに触れた途端思い出したのでした。
これでモキュがただ昏倒を振りまくような存在ではなかったこと、またいろはちゃんにとって大事な何かである可能性が高いことから、やちよさんはモキュモキュスレイヤーになるのを考え直してくれます。
各人それぞれとの顔合わせも終わり、せっかくですので、調整を受けようと思います。見ろよこのグリーフシードの数を……あ、思ったより少ない……
やちよさんとのエンカウントが思ったより早く、経験値もグリーフシードも想定以下の稼ぎでした。
いろはちゃんの調整分も考えると、手持ちのグリーフシードでは足りません。
リセットかそれとも狩り直しか考えていたら、ももこさんが話しかけて来ました。
え? いろはちゃんの分はももこさんが支払う? いやぁ悪いですよそんな……あざーっす!
というわけでいろはちゃんとゆりちゃん双方が満足いく調整を受ける事が出来ました。これでやちよさんはいろはちゃんとついでにゆりちゃんの神浜での活動を認めてくれます。これで神浜に来ても怒られる事は無くなるぞ。やったね!
宝崎市に一度帰宅、そして次の日に神浜市にもう一度来ると、自動で第二章が始まります。だから後は帰るだけだな!
帰ろうとしたところ、お見送りの皆さんも一緒に駅まで来てくれました。かえでちゃん、ももこさん、やちよさんの三人です。
あれ、なんかみんなの好感度高いっすね。第一章からお見送りに来てくれるほど友好的なのは、初期好感度高めのももこさんぐらいなのが普通なんですが。
もしかして、性格に好感度系の物が入ってるんですかね?
魔法少女には隠しステータスで性格が設定されており、それに応じてオート行動時のAIが変化したり、取得経験値が増減したり、様々な影響があります。
他の魔法少女の好感度がやけに高いため、他者からの好感度が高くなりやすい『親切』や『温和』の存在を疑ったんですね。
クラスメイトが心配だからという理由で隣町まで来るぐらいですし、『親切』っぽいですね。もしかしたら『共感』かも。
今回はチームみかづき荘に入るチャートなので、メンバーの好感度の恩恵が強いです。なので、好感度を上げやすい性格はとても助かります。
今後の予定の共有、モキュの扱いについて、連絡先の交換など、大体の話が終わったので、第一章を終えとうございます。
じゃあな! 風邪には気を付けろよ!
……あれ? 第一章終わりの通知がありません。それにゆりちゃんも動かずに固まっています。どうしたのでしょう。
あら、会話イベントが再開しました。内容を確認しましょう。
……うん? ……え、は? ちょ、ゆりちゃんどうしてくれんのこれ。ここからのリカバリー策なんてないんですケド!
えー、ゆりちゃん、自宅の鍵を部屋の中に置いたまま出てきてしまったらしいです。家の扉はオートロックなのでまぁ要するに部屋に入れません。何やってんだミカァ!(人違い)
で、他の人に鍵を開けてもらうというような事も出来ないみたいです。詰みでは?
リセットボタンへと思わず伸びた手を止めるかのように、やちよさんが助け舟を出してくれました。
今日だけならみかづき荘に泊まっても、いいらしいっすよ? やったぁ!
これならゆりちゃんの鍵忘れのロスは無いに等しいですし、その上、一度でもやちよさんと寝た事があるならばチームみかづき荘への参加ハードルが下がるので、後のみかづき荘に入れるかどうかの運ゲーの分がだいぶ良くなります。もしかしてやちよさんって女神か何か?
もちろんご厚意に甘えきって泊まらせて頂きます。
そんな訳でお泊まり会です。
みかづき荘はやちよさんとその仲間が住んでいた邸宅で、現在は仲間との死別や喧嘩別れなど色々あってやちよさん一人で住んでいます。
今はかなり寂しげな家ですが、四章辺りでいろはちゃんが越して来てからは段々と騒がしくなります。
あ、やちよさんが晩ご飯の用意に取り掛かり出しましたね。ここで手伝いに行くと、料理ミニゲームが発生します。
タァイム的には全失敗が最速ですが、好感度のためにパーフェクト判定を狙います。
工事完了です……
余裕のパーフェクトだ、味が違いますよ。全能力五割増の大バフです。
性格による好感度ブーストもあり、これにはやちよさんもニッコリ。このペースならとりあえずやちよさんの好感度は問題なく足りそうです。
第一章が終わったので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
(11/5 サブタイトルの表記方法を他の話と統一しました)