マギアレコードRTA noDLC みかづき荘チャートAny%   作:なぁ……相撲しようや……

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Part11 : わたし達にも相談してよ

 風が吹いた。その風に乗った雪が体を叩き、確実に熱を奪ってゆく。背負ったいろはから感じられる熱も同じように弱くなっていっており、このままだと二人揃って凍え死んでしまう事は明らかだった。

 

「やちよ、さん……わた、私なんだか、暖かくなってきました……」

 

 いろはが縁起でもない事を話す。寒い中暖かく感じてきたら、それは息絶えてしまう兆候なのだというのを以前に聞いたことがある。

 

「しっかりして……! こんな所で眠りなんかしたら、これから毎日マグカップに唐辛子塗ってやるわよ……!」

「普通に、嫌ですねそれ……大丈夫ですよ……勝手にいなくなったりしませんから……グゥ……」

「言った側から寝ないでよぉ!?」

 

 いろはの顔を直接見ようとして振り向き、そのせいで積もった雪に足を取られ、私は背負ったいろはごと転んでしまった。怪我こそしなかったものの、転んだ際の衝撃で私達の体に纏わりついた雪が、無慈悲に体温を奪っていく。

 一体どうしてこんな事になったのかしら。数十分前か、数時間前か。とにかく今より以前の事を思い出す。

 

 あれは、ゆりさんを助け出した後の事だった。みかづき荘に帰宅して、みんな疲労困憊だったからそのまま眠ろうとして……ゆりさんの一言で、二葉さんとフェリシアの救出がまだな事を思い出した。

 幸い、居場所についてはゆりさんが知っていた。なんでも、みふゆの手引きで白羽根が身柄を預かっている状態なのだとか。

 

「里見メディカルセンターの近くでウワサ守護の任に就いているはずだよ。あそこはウワサが密集していて、七海さん達がウワサを消して回っているのなら絶対に来るはずだから、って事であの付近に配属したのだとか。結果はコレだったみたいだけどね」

 

 そう、ウワサが集中している箇所がある事自体には気付いていた。でも工匠区北のウワサの空白地帯にばかり目が行っていて、密集地の方は実際に調査を行う事さえしなかった。だから、みふゆの思惑通りに二葉さんとフェリシアと合流する事は叶わなかった……

 場所が分かっているのなら今すぐ助けに行こうと全員が思ったけれど、ゆりさんはウワサから剥がした時のダメージが今更来たのか時間差でダウン、鶴乃は明日も万々歳のシフトがあるので辞退、という訳で、動けるのは私といろはだけだった。

 もう日付も変わろうかというぐらいの遅い時間だったから私一人で行こうとしたのだけれど、そんな私の考えをいろはは断固拒絶して無理矢理に付いてきた。この時のいろはの断固拒絶を逆に断固拒絶してやはり一人で行くべきだったと今は後悔してる。

 

 何があったかといえば……里見メディカルセンターの近くまで来た時、不意に現れたウワサの中へと引き摺り込まれてしまった。

 そのウワサの中は吹雪吹き荒れる極寒の地で、ぽつりぽつりと生えた針葉樹以外には何もない所だった。シベリアかどこかかしら。

 

 ウワサの本体を倒せば元の神浜市に戻れるはずだと考えて、私といろはは互いにはぐれないようにしながらも、本体を探す為に吹雪の中を移動し始めた。

 でも歩けど歩けど景色にはなんの変化もなく、何かを見つけるよりも先に体を冷やし過ぎたいろはがダウンしてしまった。

 だけど針葉樹以外に雪を防げるような場所も道具もないため、私はいろはを連れながらずっと歩くしかなかった。……その結果が、これよ。いろははこの極寒の中ほぼ気を失い、私は……いま転んだ時に、足を挫いていたみたい。

 ほんと馬鹿ね。怪我はしなかったって思ってたんだけど、体が冷たすぎて痛みに気付かなかっただけだった。立とうとして足が動かなくてまた転んで、そこでさっき挫いたんだなという理解が追いついた。こうなってしまったら、もう歩けない。

 

 積もった雪に身を委ねたまま、私は考えた。

 魔法少女って、お腹に銃弾を受けても、手首より先が無くなっても、魔法をかけて少し安静にしてれば治るぐらいには頑丈なのよね。なら、寒さにはどうなの?

 この吹雪の中をたかが冬服でしばらく動けた以上、一般人より強いのは間違いない。でも、いろはを見る限り、ずっと平気でいられるほどではないらしい。つまり、魔法少女は寒さで死ぬ。

 その考えに至って、体の芯の冷えが、一層酷くなったような気がした。ここで死ぬんだという考えが心のどこかで確信を帯びてしまったのだろう。あぁ、こんな事ならみかづき荘に帰った時、マフラーの一枚でも追加で持ってくるんだった。それでこの吹雪がどうにかなったとは思えないけれど、過去の行動の一つ一つに後悔をしたくなったのだから仕方ない。

 いろはの体を手繰り寄せる。目は閉じていて、そしてピクリとも動かない。死んだように眠る彼女を抱きしめる。当然ながら、冷え切った体からは体温のかけらも感じ取る事が出来なかった。

 

「いろは……」

 

 名前を呼んでも当然ながら返事はなかった。……私も眠くなってきた。ごめんなさいいろは、こんな事になってしまって。やっと妹さんの行方が分かったというのに……

 

 目を閉じようとして、視界の端に映るそれに気付いた。明らかに人工的な……ランタンか何かの光が、空中を漂っているのが見える。私達の他に誰かがいるのかと思ったけれど、即座にそれを自分で否定した。

 神浜市ぐらいの気温の所から突然こんな極寒の地に放り込まれて、満足に行動のできる一般人などまずいないだろう。しかもランタンなんて携行している確率は更に低いはず。どちらかと言えば……そう、ウワサの使い魔がやってきたと考えた方がまだ納得が行く。弱った私達に止めを刺しに来たのだ。

 抵抗は出来ない。指の一本も動かないし、魔力も働かせられない。ここで殺される他に出来る事なんて、何も無い。

 せめて最期が安らかな物になりますように。そう願いながら、私は運命を受け入れ、目を閉じた。

 

 

 

 ——なにか、周りが騒がしいような……

 

「おーい。いろは、やちよ、起きろ。メシだぞ」

「あまり揺らさんといたげんでよ、低体温症やったんやから」

 

 目を開けてみる。景色が一変しており、眠っていた間にどこかに運ばれたのだろう事が想像できる。体を覆う雪は無く、代わりに毛布で包まれているようだった。

 

「えーでもせっかくのメシが冷めちゃうぞ?」

「ええのええの。そん時はまた温めればええって」

 

 暖炉付きのログハウス、だろうか。その床に敷かれた毛布を布団代わりに、私は寝かされていた。隣にはいろはもいて、同じように毛布に包まれている。

 部屋の中央にはフェリシアと、二葉さんと……白羽根がいた。彼女が二人の身柄を預かっていたという人物だろう。しかし、どうしてここに……? 

 フェリシアがこちらにやってきて、そのまま私の顔を覗いた。その手にはスプーンと缶詰が握られている。

 

「なんだ、起きてんじゃん」

 

 未だ痺れたように動かしにくい体から、情報を得る為に言葉を絞り出した。

 

「ここは、どこなの……?」

「あ、ここか? ウワサの中だよ。電波塔の近くの、路地裏とか……そんな感じの目につきにくい所を歩いてると、ここに放り込まれちまうんだ。四六時中雪が降ってて、寒いったらありゃしねぇ」

 

 そんなフェリシアの言葉に更に続けて、白羽根が補足をした。彼女がウワサの担当なのだろう。

 

「そうして吹雪の中を力尽きたらエネルギーを貰うってウワサなんだけど、最近新しい事が分かってん。死にかけの人助けた方がより多くのエネルギーが取れたんよ。だからこのセーフハウスを作って、倒れた人を運ぶようにしてるんだ」

 

 そのまま命を奪うより、生き残らせた方がエネルギー回収量の多いウワサ、か。今までエネルギーの回収量という観点からウワサを見た事は無かったけれど、このウワサが特異な物であるというのはこのセーフハウスの存在から理解できる。他のウワサには死にかけてから助けるなんて構造は無かったからだ。

 どこの地域のだかよく分からない方言の混じる彼女は、二葉さんとフェリシアを指して、心底呆れたような声色で話を続けた。

 

「それで、あんたが梓さんの言うてた七海さんって人でしょ? この二人連れてってよ。大食いでいくら食べ物持ってきても一晩で食い切りやがるんよ」

「んだとー? 大食いなのはオマエもだろ、てか缶詰の一個一個が小せぇんだよ。もっと大きいの持ってこいよ、ほら、ケバブ屋が店に持ってるでけぇ肉みたいな」

「無茶言わんといて」

 

 ここにある食べ物、缶詰やらカップ麺やらはみふゆに頼んで外から持ってきているのだそう。管理上ウワサの中に籠る必要があり、考えて食べないと途中で飢えてしまうのにこいつはと呆れたように言う白羽根に、フェリシアが更に噛み付いた。

 そんな騒ぎの中、私の隣で新しい物音が鳴った。いろはの毛布が擦れる音だ。うるさいから起きてしまったのかしら。

 

「う、うーん……ゆりちゃんいないの……? じゃあ私がご飯作るから待ってて……」

 

 いろはは寝ぼけた様子で毛布から這い出て、周りを見渡し……そこで目が覚めたのか、驚愕の表情を浮かべた。

 

「ここ……もしかして天国!?」

「違うわよ」

 

 まぁ、でも、いろはがそんな突飛な発想に至るのも仕方ないのかもしれないわ。さっきまで確かに絶体絶命の状況だったんだもの。いきなり暖房の効いたログハウスに入れられたら、天国と勘違いしてしまうのも分かる気がする。

 

「ほら、食べんさいな。トマトリゾットと余りのツナ缶と、あとマシュマロもあるよ」

 

 白羽根の出したそれに、いろはは怪訝な目を向けて、その後に私に顔を向けた。記憶ミュージアムの事があって、疑わずにそのまま口にしていいものか悩んでるみたい。そこで私に判断を委ねる辺りが、なんだかおかしくって。自然と口から笑いが零れ出した。

 

「ちょ、なんで笑うんですかやちよさん!」

「うふふ、うふっ、ごめんなさい。この白羽根は信頼していいわよ。頂きましょう」

 

 毛布から出て、暖炉の近くで乾かしていた私たちの制服を返してもらって、食卓についた。

 みかづき荘の食事当番はゆりさんが一手に担っていて、毎日おいしいご飯を食べていたせいで舌が肥えていたのだけど、そんな私の目から見てもこの料理は美味しそうに見える。部屋は暖かいし、隅にある棚にはボードゲームの類が詰まっている。これは、あれね。

 

「心配して損したかも」

「なにを〜? これでもここに来た初日の頃には寂しいーってうるさかったんだぞーさなが」

「えっ、私ですか……うるさかったのはフェリシアもじゃないですか、素直に寂しかったって言えないんですかあなたは」

 

 私たちのいない間に二人も仲良くなったみたいで、以前にあった他人行儀のよそよそしさは完全に消えていた。なんならちょっと当たりが強くなってないかしら。

 

 ご馳走様。最初の印象に見合った美味しいご飯だったわ。

 ……ああそうだ、みかづき荘にいる皆に連絡を入れておかないと。しばらく帰れてなかったから、心配してるはずだわ。そう思ってスマホを取り出したのだけど、無線LANもLTEも反応なし。電話一つかける事さえ出来ないぐらいここには電波が皆無だった。

 

「あ、ワイファイならねぇぞ。てかあるならオレがまずみかづき荘に連絡入れるだろ」

 

 確かにそうね、今までウワサの中で電話をしようなんて考えたことも無かったから気づかなかったけど、ウワサの中にまで基地局からの電波は届かないわよね、さすがに……

 そして状況が落ち着いて、その中でふと思い浮かんだ事を質問した。

 

「そういえば、二人はそのまま帰ってはこれなかったの? そっちの白羽根の人も事情は知ってるんでしょ?」

「あ、それは自分から。あくまでもみかづき荘の人らに奪われたってポーズを取りたいから、直接そっちには帰せなかったんよ」

「それで代わりに私達と顔を合わせる可能性が高いウワサの防衛に就かせた、と」

「そう。で、エネルギー回収方法の都合上ウワサの中に常在するから他の羽根と関わる機会がほとんど無くて、かつ担当の羽根がマギウスではなくあくまで解放にのみ忠誠を払っている自分である、このどこでも遭難のウワサに二人が配属された、って話」

 

 ど、どこでも遭難のウワサ……? その名前はどうにかならなかったのかしら……

 

「ウワサの外へはいつでも行けるから、もう少し休んだら帰るとええよ。エネルギーは回収済みだから、ウワサの方もパッパと帰してくれるだろうし」

 

 食べたばかりですぐには動きたくなかったし、その言葉に甘えて、羽休めといく事にしようかしら。あぁ、でも、講義があるのが後の方の私はともかく、中学のいろははあまりゆっくり出来ないわね。二葉さんとフェリシアもそうだし。

 ゆりさんと鶴乃に事情を話す時間も考えたら……ウワサから出る為の移動時間もあるし、今から動いた方がいいかもしれないわ。白羽根の人の厚意には申し訳ないけど休憩は終わり。

 

「二葉さんとフェリシアも準備して。学校遅れるわよ」

「オレは構わねーけどよ、いろはの方は大丈夫なのか?」

「私も大丈夫。もう動けるよ」

 

 少し眠そうな顔ではあったけど、問題はないみたい。さて、出発しましょうか。

 

「ごめんなさいね、しばらく面倒を見てくれてたみたいで」

「構へんよ。梓さんに受けた恩の一端をこういう形で返した、それだけやし」

「それでもいいの。ありがとう」

 

 ログハウスを出て、はぐれないよう互いに手を繋ぎ合い、横一列になって吹雪の中を進む。ここを出たいという意思さえ持っていれば、どのように歩いてもウワサから出る事が出来るのだそうだ。

 

「……あの。このウワサは、消さなくても良いんでしょうか?」

「いいのよ。そりゃあ多少怖い目には遭うけれど、それでもあの白羽根の人がいる限りは、ここで犠牲者は出ない。だから放っておいてもいいのよ。そもそも本体が見つからないから消しようが無いってのもあるけれどね」

「そういうものなのでしょうか」

「そういうものなのよ」

 

 ところでものすごい寒いのだけどいい加減ここから出られないかしら……?

 そう思った頃に吹雪が止み、瞬きを挟むとそこは里見メディカルセンターの目前だった。さっきまで見ていたのが幻だったのではないか、そう思えるぐらい雪が綺麗さっぱり消えており、気温も神浜市のこの時期の平均ぐらいに落ち着いている。

 さて、帰りましょうか。ゆりさんと鶴乃は流石に寝てる、わよね。こんな時間まで起きて待っているなんてのは無いはず……

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 寝て起きたら二人とも帰ってきてました。これにて第七章クリアです。

 いやぁ、すぐ戻ってくるかなと思って待機してたんですが、中々帰らないので時間スキップの為に就寝しました。これならもっと早く寝てよかったですね。今度同じ状況になったらその時は即座に寝るようチャートにちゃーんと書き込んでおきます。

 

 第八章 偽りに彩られ神浜

 

 放課後までスキップして、操作再開です。前日に約束していた情報交換会に出向きます。会場はなぎたんの働いているメイドカフェです。イクゾー!

 

「これが当店自慢の一品、はぁとふるオムライスだ」

「は、hurtful……?」

「違うぞ。heartfulだ」

「違いが分かんねーぞ」

 

 ゆりちゃんがフェントホープへの潜入捜査をして得た情報、エンブリオ・イブの実在とワルプルギスの夜を呼ぶプランの存在をここで話しておきます。

 この話に対する反応はそれぞれですね。ベテラン組は舞台装置の魔女の脅威を知っているが為に恐れ、新人組はなにそれと頭上にハテナを浮かべ……

 ……え? なんでほむらちゃんもいる……まどかちゃんとさやかちゃんもいるー!?

 あ、これあれだ。アナザーストーリーでアリナの結界に足止めされるはずが、巡り合わせが良くて神浜市に直接来たんだ。こうやって会談に参加している理由は分かりませんけど……多分ワルプルギス関連ですかね……

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「……えと、鹿目さんまでいるけどそっちは大丈夫なの」

 

 虹絵さんにまず言われたのはそんな心配でした。私の時間遡行に関してですけど、正直、鹿目さんには誤魔化す事が出来ないほどのミスをやらかしてしまったので、もう良いかな、って思ってます。

 

「はい。大丈夫です」

「そっか。……その、ごめんね。メールの文面もうちょっと考えればよかった」

 

 鹿目さんには虹絵さんから送られたメールの内容を、そのまま見られてしまったんです。私はあなたが時間遡行をしている事を知っている、ワルプルギスの夜を倒せるかもしれないので情報提供を願えないか、と、そんな感じの内容でした。

 私宛てのそのメールを偶然見てしまった鹿目さんは、一体どういう意味かと私に詰め寄って来ました。そんな彼女に、この会談の場で話すからと言ってしまったので、鹿目さんはついて来てしまったのです。美樹さんもいるのはついでです。

 でも、この事……鹿目さんにメールを見られた事についてはまだ話していません。なのになぜ虹絵さんの口からメールについての事が出て来たのでしょうか。そんな私の疑問に答えるかのように、虹絵さんが話を続けました。

 

「じゃあまず先に私について話そうかな。私の固有魔法は読心。その時々に人が考えている事が読める。暁美さんの事情についても、この固有魔法で知ったんだ」

「「「「「えぇーっ!?」」」」」

 

 虹絵さんのカミングアウトに五人、鹿目さん美樹さんと、それから十咎さんとそのチームメイト二人が驚愕の声を上げました。その他の環さん達はもう虹絵さんの固有魔法を知っていたようで、特に反応は上げませんでした。

 

「ど、読心って事は、テストしてる時も簡単にカンニング出来ちゃうって事!?」

「さやかちゃんその使い方はあんまりだよ……でも凄いな、読心って。それって他の人に打ち明けられないような深い悩みを持っている子がいたとして、その子の事を理解してあげられるって事なんだよね?」

「え、レナ初めて会った時ゆりの事邪魔とか思っちゃったんだけど」

 

 心の内を読めるというのなら、私の時間遡行について知っていたというのも頷けます。口には出さなかったけど考える事は平気でやってたから。

 

「そう。だから、暁美さんの秘密についても知り得た。……その秘密を、他の人にも話して貰えないかな? もしもワルプルギスの夜がやって来てしまった時の対応は、暁美さんじゃないと出来ないと思うから」

「もちろん。その為にここに来たんです」

 

 私は、以前の出来事について話しました。見滝原にワルプルギスの夜がやってきた事。街を壊滅させられ親友を失ったという結末を変える為に、契約を交わした事。そして時間を巻き戻した後の二週目の時間軸では、ワルプルギスの夜は倒せたものの、代わりに鹿目さんが魔女になってしまったので、もう一度時間を巻き戻した事。なので、現在は私にとって三週目の時間軸である事。

 

「だから、今度こそワルプルギスの夜を倒したいと思っています。街が文字通り吹き飛んでいくのを見るのも、鹿目さんやみなさんが死ぬのを見るのも、もうたくさんですから」

 

 そこまで話し終えた時、鹿目さんが私に抱きついてきました。……泣いてる?

 

「ごめんね、今まで気づかなくって……そんな大変なことを一人で抱えてたなんて」

 

 鹿目さんは私の事に私よりも悲しんでいました。私自身は鹿目さんの為に過去に戻った事を大変だとは思わないし、後悔もしていなくて、障害についてだって既に決意を固めているんですが……

 そんな私に美樹さんが声をかけてきました。もしかして鹿目さんを落ち着かせる為の助け舟を出して貰える……?

 

「いやぁ、まさかタイムトラベラーだったとは。以前の時間軸でもあたしと会った事ある? 前のあたし、どんな感じだった?」

 

 助け舟じゃなかった。まぁ、でも、気になりますよね。そこは。前世とは違いますけど、違う世界の自分がどんな事をしたのかは知りたくなるのも分かります。

 

「そもそも魔法少女にはなってませんでした。ただの同級生の友達だったのが、この時間軸では契約していると知った時は驚きました」

「そっか。一般中学生さやかちゃんだったかー」

 

 それより、鹿目さんをどうにかしてほしいです。泣きつかれるなんて経験無くて、どうしたら良いのか分かりません……

 

「知らない。存分に泣きつかれるといいよ」

「え、えぇ〜?」

 

 エスパーみたいな事しないで、そのまま助けてくれてもいいじゃないですか。確かに私は鹿目さんを守る私になりたいと願いはしましたけど、こういう事じゃないんです。

 私の戸惑いに気付いたのか、鹿目さんは泣くのをやめて、顔を上げました。でも抱きつくのはやめてくれません。

 

「困らせちゃったね、ごめん。ほむらちゃんや他のみんなが死んで、でもまたこうして顔を見る事が叶ったって考えてみたら、悲しくて嬉しくて心の中が訳分かんなくて……今度はその悲しい事が起きないようにするんだよね。……もっと早くわたし達にも相談してよぉ!」

「あわ、あわわわわわ……」

 

 今度は怒り始めました。どうしたらいいの。教えて鹿目さん……あ、いや、その鹿目さんが怒ってるんでした。

 とりあえず、今はもっと大事な事を話さないといけないので……鹿目さんの事については、先延ばしにしてしまいます。

 

「鹿目さん、その話は後でしましょう。今は、ワルプルギスの夜について考えないと」

「うん、そだね……みんな、その為に集まっているんだもんね」

 

 まずは、ワルプルギスの夜というのがどういう存在なのかを知らない人に向けて説明しました。長く魔法少女をやっていれば自然と耳にする、伝説級の魔女。自然災害のように、向かって来たら逃げるしかない存在。

 

「だけど、ここにいる魔法少女達が全員協力すれば、たとえ自然災害が相手でも逃げる必要はありません。立ち向かう事も出来るし、打ち勝つ事だって出来るはずです」

「ふんふん。最終的に魔女化してしまいはしたけど、一応は鹿目さん一人でも倒せはしたんだもんね。だったらみんながいるなら負ける筈が無いよ! なんなら街の被害だって出さずに済むかも!」

「いや。戦いすらせず、そもそも現れないように出来るんだから、確実な方を選ぼう」

 

 次に、虹絵さんからマギウスのやろうとしているワルプルギスの夜の招待についての概要が話されました。

 

「マギウスは、神浜市内にある基地局を乗っ取って、1420.4……いくつだっけ。まぁ、要するに魔女を呼び寄せる電波を発しようとしてる。これを止める事が出来れば、そもそもワルプルギスの夜はやって来ない」

 

 もしも仮に、妨害に失敗してワルプルギスの夜が来てしまった時は。誰かが挙げた疑問の声に、私が返答をしました。

 

「その時は巴さんのような、強力な魔法を使える魔法少女が必要になります。私の時間停止を使って絶え間ない攻撃を行い、速攻撃破を目指します。出来なければ神浜市は壊滅します」

 

 私の言葉に場の空気が冷えました。失敗した時の事が重くのしかかって来たのでしょう。代償が街の破滅というのは、あまりに重すぎる。だからこそ確実な対策を施す為に話し合いが続けられました。

 

「失敗を想定しない訳にはいかないな。でもその巴マミさんの魔法って、鶴乃が言うにマジの弾幕が作れるぐらい強いんだろ? そんな魔法が使える魔法少女っていうと……あ、ゆりの魔法はどうなんだ? ほら、長物使うじゃん」

「私のライフルだとワルプルギスの夜に対する有効打にはなりづらいかも。細い弾頭と高い飛翔速度からなる貫通力で誤魔化してるだけで、威力そのものは巴さんに比べるとどうも、ね」

「ならばマギウスに捕らわれている巴君の救出も視野に入れるべきだな。この場には十三人もの魔法少女がいる。ワルプルギスの夜の招待の妨害も結構だが、数名は巴君の捜索を行った方がいい」

「そうね。各地で羽根から基地局を守りながら、同時に巴さんも探すようにしましょう。彼女は今はマギウスの翼所属だから、戦っていれば自然とどこかで出会うはず。もしも出会ったら見滝原の子かもしくはゆりさんを呼んで。洗脳が解ければ、巴さんは私たちの味方になってくれるはずよ」

「えーと、で、まとめるとオレ達はどうすりゃいいんだ?」

「神浜市内にある基地局の支配権を巡ってコンクエスト。勝利条件はマギウスの翼より多くの基地局を抑え続けるか、もしくは巴マミってやつを見つけて洗脳を解く。フェリシア、ちゃんと理解できた? 失敗したら街が地図から消えるんだから、しっかりしてよね」

「レナちゃんがしっかりしてる……珍しいなぁ」

 

 やいのやいのと騒ぎ出した人は放っておいて、これで話は終わりました。行動開始です。街の命運がかかっているからか、誰もが表情を強張らせていました。もちろん、私もその一人です。なんだかんだで今まで魔女と戦ってきましたが、魔法少女と戦うのなんて初めてです。どうしても緊張してしまいます。

 そんな私たちの様子を見かねたのか、虹絵さんがある事をしました。

 

「いろはちゃん! 音頭を取って!」

「え、えぇ〜?!」

 

 そう、無茶振りです。環さんはどう見ても音頭を取れる性格はしていません。なのに虹絵さんは環さんを指名しました。

 

「ほら、十三人なんて大所帯だから、リーダーが必要でしょ? だからお願い!」

「えと、やちよさんとか、十七夜さんとか、他に私より適任がいるんじゃ……」

「あぁ、私がリーダーになったら、仲間がみんな死んでしまうかもしれないわ。私は怖いわ〜」

「なんだ七海、その感情の一切が抜けたような声は」

「いや言ってないで十七夜もやんなさいよ、ほら……」

「む……む? そうだな、自分がリーダーになったらみんなマギウスの翼になってしまうかもしれないな」

 

 そんな七海さんと和泉さんの言葉に、環さんはなんだかショックを受けているようでした。そんなに私をリーダーにしたいんですかとか小声で呟いてました。大丈夫かなこの人たち。

 

「分かりましたよ、私がやりますよ! ……音頭をとるって、何すればいいんですか?」

「ふんふん! 何か一言あればいいんだよ! 何かお願い! 五、四、三——」

「え? えええぇぇぇ!? え、えと、その……チ、チームみかづき荘ー! が、頑張るぞー!」

「「「おーーーー!」」」

 

 声を上げたのは難題をけしかけた七海さんと虹絵さんと、あと途中から乗っかった由比さんだけでした。みかづき荘住まいだという深月さんと二葉さんは、チームメイトの様子に困惑している様子。

 

「なんだあれ」

「さ、さぁ……」

 

 あと、私たちはみかづき荘関係ないんですけど、チームみかづき荘という命名で本当にいいんでしょうか……? 疑問は絶えませんが、緊張が解けたのは確かです。さぁ、あっちの騒がしいのは放っておいて今度こそ行動開始です。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 ワルプルギスの夜招来の可能性を共有する事により、これの妨害を実施可能になります。妨害に成功すれば決戦にワルプルギスの夜が現れないという大幅なアドバンテージを得る事が出来ますが、失敗した場合はこの世界線を無為にする他無くなります。得られるはずだった大幅なアドバンテージが得られない事になったら当たり前だよなぁ?

 

 会談はこれで終了です。この後帰ろうとすると、そこの道端で洗脳状態の巴マミと再会しま……待って、そのゴーグルなに。巴マミはウワサのゆりが付けていたものと同型のゴーグルを装着していました。

 ……あぁ、読心魔法がブロックされてます。使用するだけで自動的に心が通じ合っているという判定が発生する、融合ウワサキラーな読心魔法の性質への対策で付けているようです。

 予想はしてたけどやりやがったな里見灯花。正攻法で剥がすか、もしくはゴーグルを先に取るか、いずれにしても手間を増やしやがりました。

 

 ここで出会ったマミさんは開口一番に宣戦布告を行ってきます。貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ。パパパパパウワードドン。

 マギウスの代理で行われたマミさんの宣戦布告の後、マギウス達は自重を捨てます。羽根達を死兵として使い捨て、魔女をまきびしの如くばらまきまくりやがります。

 で、マミさんですが、あくまで宣言をしにきただけでここで本格的に戦うつもりは無いらしく、そのまま立ち去りました。まどかちゃん達を見ても、あ、こっち来てたんだ、ぐらいの反応しか返しません。洗脳が強化されているのでしょう。

 この場で戦ってしまうと、運が悪ければワルプルギスの夜の方が手付かずになってしまいます。なのでこの場は大人しく見逃し、後でゴーグルを確実に奪えるような戦力が集まったタイミングで戦う事にします。

 

 で、ここから決戦まで休まる暇は無いので、事前にトイレには行っておいた方がいいです。戦闘中に尿意をもよおしたらRTA終わります。という訳でトイレに行ってきます。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




実は最近になってクッキークリッカーにはまりました。現在は秒に百澗枚のクッキーを焼く為に奮闘しております。目指せクッキー総生産量一那由多枚。

「僕と契約して、もっとクッキーを作ってよ!」
「えぇ、もちろん!」
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