マギアレコードRTA noDLC みかづき荘チャートAny%   作:なぁ……相撲しようや……

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Part6 : 私にいい考えがあります

「ふふふ。穴熊囲いなんて悠長な真似してられるかしら? はい、藤井システム」

「えっなにそれ」

「穴熊囲いが出来る前に勝つ為の戦法よ」

 

 鶴乃とフェリシアにいつから来られるか聞いたら、二時間後に行けると言われたので、それまで待っている事にした。

 そこで、二葉さんがチェスをやってる所を見てやりたくなったから、チェスか将棋のどちらかをやらないか聞いたら、ゆりさんが将棋で相手になってくれる事になったので、こうして対局してるところ。

 環さんは二葉さんとチェスやってるわ。盤面を見て、環さんがどの駒を動かすのか言って、アイが実際に動かしてる。

 おっと、よそ見してる場合じゃないわね。長考を終えたゆりさんが次の一手を指した。香車が既に上がってしまってる事は気にせず、別の囲いを作る選択。

 

「今更他の囲いに乗り換えたってもう遅いわよ……!」

「それはどうかな……!」

 

 ゆりさんの気迫が一層強くなった。その不格好な矢倉でどこまで私の攻撃を捌けるか見ものね!

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 突然将棋が始まった(困惑)

 料理と同じく、特定状況下で発生するミニゲームの一つですね。鶴乃ちゃんフェリシアちゃんが来るまで時間があるので暇つぶしにという所でしょうか。

 超急戦やフールズメイトなどで速攻で対局を終了させ、二人が来るまで時間を飛ばすのが最速ですが……それは面白くねぇ! やってやろうじゃねぇかよこの野郎!

 このゲームにはッ!! 『必勝法』があるッ!! それは『負けない』事!ッ!! つまり、王手をかけられる事が無くなる『穴熊囲い』こそが『最強』ッ!!

 

「藤井システム……」

 

 えっなにそれ(思考停止)

 対局に使ってる将棋アプリの戦法読み上げ機能が何やら訳の分からない事を言ってますね……

 ……このゲーム穴熊囲いにカウンターで藤井システム当ててくるのかよぉ!

 やべぇよやべぇよ……もう香車上がっちゃってるよ……

 仕方ねぇ! 金銀は動かしやすい位置にあるし、左美濃に変更……待って左美濃も穴熊囲いも弱点は同じだし、なんなら藤井システムは元は対左美濃の戦法じゃん! もう既に左美濃に向けて一手打っちゃったんだけど……

 ……角道だけ避けてこのまま囲いを完成じゃ! 不格好どころの話じゃないけどこのまま続行! やってやろうじゃねぇかよこの野郎ッ!!

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「王手」

「参りました……」

 

 結果は……私の圧勝ね。藤井システムを見てから左美濃を作るという致命的な失敗のおかげで、終始私のペースだった。

 これがよっぽど悔しかったのか、もう一度やろうと言われ、二度目の対局が始まった。一戦目が速攻で終わったからもう一局出来る時間はある。もう一回ボコボコにしてあげるわ……!

 

 ◇◇◇◇◇

 

「ヴア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」

「パックマン戦法なんて変な事やってるからよ」

 

 向こうも盛り上がってますね。こちらもそろそろ終盤戦に入る所です。さなちゃんの残り駒はナイト、ビショップ、ルークが一つずつ。対して私の持っている駒はビショップ二つとルーク一つ。戦力値で言えば差はほぼありませんが、盤面で見るとルークの影響が大きい私の方が戦場を支配できています。

 こうやってチェスをやっていると、灯花ちゃんとの事を思い出します。以前、ボードゲームについて話題になった時に、ういがチェスをやりたいと言ったのでした。ねむちゃんがその相手をすることになったんだけど、手持ち無沙汰になった灯花ちゃんがわたくしもやりたいとかいって、そっちは私が相手する事になったんです。

 結果は当然ながら灯花ちゃんの圧勝で、とっくに戦術が研究されきったゲームなんて楽勝だにゃーというような感じで、とても得意げでした。せめて一矢返せるぐらいにはなりたいと思って、私もチェスについて学び始めたのが、もう遠い昔の話のようです。実際には一年前二年前とか、そのぐらいには最近なんですけどね。

 チェックメイト。勝ちました。さっきは負けたので、スコアはこれで一対一です。三戦目……まで出来そうです。あと一時間近くありますから。

 

「ところで……」

 

 さなちゃんとの三戦目を始めようとしたら、対局中のゆりちゃんが突然こちらに話しかけてきました。

 

「アイさん、環ういについて何か知らない?」

「> わたし、ですか」

「うん。アリナがういちゃんなんじゃないかって聞いた時、私は環ういのことをういちゃんとしか言わなかったのに、あなたはういちゃんを環ういと呼んだよね。だから、何か知ってるんじゃないかなと思って」

 

 ……? ……あ、ほんとだ。ういの名字については誰も言ってなかったのに、アイさんはういのことを環ういって言ってました。

 つまり、アイさんはういを……

 

「ういのことを知ってるんですか!?」

「> はい。……いろはさんは、ういについて知りたいのですか?」

「ういは私の妹です。二か三週間ぐらい前からいなくなってしまって、ずっと探してるんです。教えてください」

 

 アイさんは逡巡するかのように少し黙ったあと、ういについて話し出しました。

 

「> ……環ういはおそらく、半魔女という特殊な状態で、マギウスの元にいます。彼女はマギウスの計画の中核に据えられており、マギウスは彼女の完全な魔女化を目的にして感情エネルギーを収集しています」

 

 ういが、魔女? どういうこと? ういが魔女になっちゃうの? どうして……? みんながういを魔女にしようとしてる……?

 

「はい、予備のグリーフシード!」

 

 何かが押し当てられるような感覚がします。それだけじゃなくて、私の中にあった黒いモヤが、全部それに吸い取られるような……あぁ、私のソウルジェム、浄化されたんですね。ゆりちゃんがグリーフシードを当ててくれています。

 

「新品のだからまだ穢れは吸える。こんなところでドッペルなんか出したら大迷惑だよ」

「そういう問題なのかしら……?」

「そういう問題だよ」

 

 自分でも知らない内にソウルジェムが汚れていたみたいです、ゆりちゃんのグリーフシードを一つ貰ってしまいました。これは今度、ちゃんと返さないといけません。いえ、でも、それより……

 

「あの……っ! ういが魔女化って、どういう意味なんですか……! 詳しく説明してください。私は今、冷静さを欠こうとしてます……!」

 

 魔女って誰かが成るものだったの? 私がういのことを忘れたのも魔女のせい?

 あ、また、黒いモヤが吸い取られていく感覚……

 

「いろはちゃん落ち着いて! このグリーフシード、使い切っちゃったよ!」

「> 本当に、詳しく説明しても構いませんか? あなた方にはショックな内容になりますが……」

「あ、私はもう知ってるからお構いなく」

「知ってたのねゆりさん……」

 

 アイさんが語った魔女の……いいえ、魔法少女の真実は、恐ろしいものでした。

 今まで、ソウルジェムが濁りきったら、魔法が使えなくなるという認識だったんでんですが……本当は、魔女になってしまうというのです。人々に呪いを振りまき、この世を混沌へと誘う、あの魔女が……元は魔法少女だったなんて、信じられません。

 つまり、今まで私が手にかけていたのは、同じ魔法少女だった人たち。いつの間にか私は人殺しになっていたんです。

 それだけじゃない。ういだって、今は魔女に——

 

「落ち着いてって言ったでしょ」

 

 ……あれ。頬が痛いです。私、ぶたれたんですね。

 

「魔女は確かに元魔法少女、人間だったものだよ。でも今は違う。周囲に呪いを振り撒いて苦しめる存在であり、そして、深い絶望を抱えて苦しんでいる存在でもある。変化が不可逆である以上、そんな彼女たちに与えられる救いは死しかないんだよ。想像しづらいなら、ゾンビに置き換えて。腐った死体になっても徘徊を続け、他の人にも噛みつこうとするだけの存在に成り果ててしまった人たち。自意識すら存在しているとしたら、一刻も早く葬ってあげるのが救いだと、そうは考えられない?」

「う、うん……それは確かに、そうかも……だけど、ういが魔女になった事は、どうしたって飲み込めないよ……」

「アイさんの話、ちゃんと聞いてた? 半魔女という特殊な状態だって言ってたよね。魔女から魔法少女へは不可逆だけど……特殊な状態だという半魔女からなら、まだ可逆かもしれない。案外、灯花ちゃんとねむちゃんもその為に動いているのかもよ? マギウスの行動目的として、魔法少女が必ず辿り着く末路からの救済……つまり魔女化の回避を謳っている。まだ絶望するには早いよ」

 

 うん……うん、そっか。そう、なんだ。まだ希望はあるんだ。

 

「ごめんなさい。私、嫌な事ばかり考えてしまって……」

「全くだよ。ほら、グリーフシードが穢れで満ちちゃってる。帰ったら回収してもらわないと。……それで、ちゃんと落ち着いた?」

 

 それは……

 

「はい。……ちゃんと全部、飲み込めました。ういの病気を治す為に契約した事は全く後悔していないし、魔女とだって介錯だと思えばまだ戦えます。魔女化だってまだ望みがある事を教えてもらいました。私は大丈夫です」

「なら良かった」

 

 ぶたれた頬の痛みは既に引いています。こうでもされないとちゃんと話を聞けないような状態だったなんて、情けないですね、私。

 ちょっとだけですけど、ぶたれたところがほんのり暖かいです。ゆりちゃんの優しさが篭ってるような気がしま……あっこれゆりちゃんにも聞こえてるんでした……今のは忘れて貰えると……うん……

 

「それで、ういちゃんの話の続きなんだけど……」

「> すみませんが、今ので全てです。監査にやってきていたアリナがわたしに話した事をそのまま話したに過ぎず、わたし自身が持つ情報はこの程度です。あぁ、あと一つだけ。環ういのことを、アリナはエンブリオ・イブと呼んでいました」

「ういちゃんやっぱり改名したんじゃん」

「違うと思うわよ」

 

 ◇◇◇◇◇

 

「——それで、ゆりさんはどういう風にこの真実を受け入れたの?」

「それ王手しながら聞く事かなぁ……?」

 

 環さんの妹さんの話を終えて、将棋を再開したのだけれど、詰めろかけてた事を忘れてて、答えにくいだろう質問をしちゃったわ。これじゃ完全にささやき戦術よ……

 

「まぁいいよ。……そうだね、魔女化に関しては、奇跡を願った代償だと思ってる。いろはちゃんと同じだよ。契約をした事も……その内容に関しても、全く後悔はしてない。ただ一つだけ、時期に関しては後悔があるかな」

「時期?」

「もっと早く契約していれば両親もりり姉も助けられたかもしれない」

「……そう」

 

 ゆりさんが魔法少女の存在を知ったのは、ごく最近だそう。孤独になってしまったのは半年ほど前の事だと以前に語ってくれた事を思い出す。

 

「母さんも父さんも死んでりり姉も失踪して、当時はその事で心がいっぱいいっぱいだったから、事故について詳しく調べる余裕なんて無かった。だから魔法少女について知るのが遅れた」

「確か、ガス爆発の事故だと伝えられていたのよね。……無理も無いわよ。魔女のやった事は、一般人には自然災害の類として認識されるのだから」

「うん。だから後悔しても仕方ないかな。ただ一つ救いがあるとするなら、りり姉の供養がとっくに済んでるらしいっていうこと」

「供養?」

「りり姉は実は魔法少女で、失踪したのは魔女になったかららしかったんだ。魔女の口づけを受けてたから記憶には無いんだけど、その時近くにいた魔法少女がりり姉の成れ果てを倒してくれていたみたい」

 

 現状を見る限り、ゆりさんが実際にした願いは蘇生の類ではない。どんな願いだって叶える事が出来るというキュゥべえの甘言を聞いても、家族の蘇生に心が傾かなかったその訳を私は知りたかった。

 

「家族を生き返らせたいと……願いたいと思った事は無いの?」

「あるよ。でも、その時はりり姉が失踪したのは自殺する所を見せたくなかったからだって思い込んでたから、願いづらかった。私を魔法少女にしたくないっていうりり姉の祈りを知った今となっては、むしろ願いたくない」

 

 今の私じゃあ、会わせる顔が無いから——そう続けながら、ゆりさんは次の手を打った。……王手? ……詰めろ逃れの詰めろ!?

 

「七海さんは生き返らせたい人がいるみたいだね。雪野かなえさんと、安名メルさん」

「メルはともかくかなえの方は情報源誰よ……」

「人から聞いた。詳しくは二葉さんの件が終わった後にでも話すよ」

 

 みふゆが話したようには見えないし、どうやって知ったのか本当に気になるから終わったらちゃんと話してほしいわ……

 

「生き返らせたいと願うのはどうして? 自分が殺したと思ってるから?」

「そうよ。二人は私のせいで死んだ。自分のやった行いの贖いのために蘇生を願うのは変なこと?」

「うん、変だ。だって、そもそも二人が死んだのは七海さんのせいじゃないんだから」

「いいえ、私の魔法が、私の願いが二人を殺したのよ。私がリーダーとして生き残りたいと願ったばっかりに」

 

 生き残りたいと願ってしまったから、私が死にそうになった時に、代わりに二人が死んだ。私が殺したのと、何が違うの?

 私が願っていた事とはまるで反対の方向。リーダーとしてユニットの、チームのみんなを生かしたかったのに、どうしてこんな、みんなを殺すような……

 

「……七海さんの願いが、七海さんをリーダーとして生かそうとする魔法になったのならさ。なんで当時七海さんの所属してたユニットは活動休止になって、ソロで活動するような事になってるの? どうして十咎さんたちとのチームを解散できたの? どっちも、リーダーとして生き残らせる強制力が働くなら、そうならないはずなのに」

「それは……!」

「生き残りたいってだけなら生死に関する時だけ能力が働くのも納得なんだけどね、リーダーとしてって付いてるから、明らかにおかしい。七海さんはユニットのリーダーとして、チームのリーダーとして、生き残れていない」

 

 魔法少女の固有魔法は度々願いの文面とは違う物になる事がある。私の固有魔法だって、単純に生き残りたいというだけの解釈をされた——

 

「——っていう可能性も考えたんだけど、解釈違いとは言っても、キュゥべぇ曰く、固有魔法は基本的に契約と全く関係の無い物にはならないらしいよ。七海さんは契約した時に、誰かを犠牲にしてでも生き残りたいって考えた?」

「……いいえ」

「だったら七海さんの固有魔法は、七海さんが考えている物とは違うんじゃないかな。そんな事全く考えていないのに、誰かを犠牲にして生き残る固有魔法になるなんて、おかしいから」

 

 だったら、なんで。どうしてかなえとメルはいなくなっちゃったの……?

 

「雪野さんと安名さんが七海さんを庇って死んだのは……そう、七海さんに生き残って欲しかったからってだけなんじゃないかな。願いとかそういうのは関係なく、二人がそう思った、それだけの話だよ」

 

 ……よく見たらこれ、思い出王手じゃない。詰めろにはなってるけど、一度回避したらもう攻めは続かないわ。王手を避けて、次にゆりさんを必至にして、はい詰み。

 

「あー! せっかく人が悩みを聞いてあげてたのに!」

「それはありがとうね、でも勝負の世界に手抜きはナシよ」

 

 私の固有魔法が誰かを犠牲にするものじゃないとしたら、本当は何なのかしら。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 結局やちよさんとの将棋は勝てなかったよ……別に勝とうが負けようが特に影響はないんですが……ハァ……いやなんか手持ちのグリーフシード一つ消えてるじゃん、なんで……? まぁいいや……

 鶴乃ちゃんとフェリシアちゃんが合流できたので、早速ひとりぼっちの最果てに向かいとうございます。まずは展望台まで上がりましょう。

 このゲームの電波塔は観光地なので、有名な遊園地や世界一高いタワーほどではないにしろ、そこそこ混んでいます。こんな状態だと、チケットを買う為にクソ長い列に並ばないといけないのかと思い、憂鬱になることでしょう。しかし心配ご無用。こんなこともあろうかと、将棋をやり始める前にウェブからチケットを買っておいたのでした。なのでかなりスムーズに展望台まで上がれます。

 

 着きました。ここからは神浜市が一望出来ます。いい景色だぁ……純粋な美しさだけで心情バフ付きますよこれ。

 フェリシアちゃんがめっちゃはしゃいでますが、傭兵としての契約の話を持ち出して落ち着かせます。フェリシアちゃんはみかづき荘に住まわせてもらう代わりにみかづき荘専属の傭兵として働くという契約を結んでいます。なので、戦え……戦え……と囁けば大体は聞いてもらえます。

 

 非常口をこっそりと通って外に出ました。アイちゃんにここから飛び降りればひとりぼっちの最果てに入れる事を確認してもらって、飛び降りる人員と、マギウスに気付かれたときに退路を確保する組の二つに分かれてイクゾー!

 

 マギウスに気付かれていない状況下であれば、アイちゃんは介錯をそのまま受ける事ができ戦闘にはならないため、飛び降り組はいろはちゃんさえ混ぜていればどのような選出でも構いません。

 なお、いろはちゃんを混ぜるのは、いろはちゃんがいると説得時間が短くなる傾向にあるからであり、どんな組み合わせでも説得の可否は変わりません。どの組み合わせでも説得は成功します。

 今回はいろはちゃんと鶴乃ちゃんの二人を選択しました。じゃあ行ってこい!

 

 紐なしバンジーによるひとりぼっちの最果てへの入場を確認できたので、退路確保組……ゆりちゃん、やちよさん、フェリシアちゃんの三人は神浜セントラルタワーまで移動します。ここのヘリポートがひとりぼっちの最果て崩壊後の出口として設定されているためです。

 最果て突入後にマギウスが異常に気付いた場合、マギウスの翼はここを確保しようとします。ここが唯一の脱出地点ですからね。

 十中八九異常に気付かれて戦闘になるので、しっかりと防衛しておきましょう。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「誰……?」

「最強魔法少女! 由比! 鶴乃! です! 万々歳のクーポン券はいかがかな!」

「え、クーポン券なんてあるんだ……あ、私は環いろは。よろしくね、さなちゃん」

 

 何でこの人たち、私の事が見えるの……いや、自分で答え言ってた。この人たちも魔法少女なんだ。

 

「あなた達も、マギウスの翼?」

「ううん、違うよ! 私たちはさなちゃんを迎えに来ただけの一般魔法少女だよ!」

「……迎えに?」

 

 どういう事なの……?

 

「> さな、そろそろこの関係を終わりにしましょう。こうしてあなたを迎えに来てくれる人達も見つかりました。巣立ちの時です」

 

 この関係を、終わりに? ひとりぼっちの最果てから出ろって事?

 

「どうしてなの、アイちゃん……私、仲良く一緒に過ごせていたよね……? 私の事、嫌いになったの……?」

「> いえ、大好きですよ。だからこそ、わたしはさなを手放そうと思いました。わたしはウワサです。さなと同じ時間を歩む事は出来ません。なので、さなはわたしのようなウワサではなく、人と共に生きるべきなんです」

「……だったら! 最後の時までは、一緒に……!」

「> いいえ。それはしてはいけません。それをしたら、さなはひとりぼっちの最果てに、いつまでも縛られる事になります。多少苦しくとも、別れは今でないといけないのです。ほら、さなに手を伸ばしてくれる人だっています」

 

 それが、この二人……?

 

「私はさなちゃんほどの孤独感は味わった事無いんだけどね、クラスに馴染めない疎外感なら味わった事はあるの。でも、魔法少女の仲間が出来てから、ありのままの自分が過ごせる環境が出来たの。だから……さなちゃんもきっと、うまくやっていけると思う」

「それとね私たち、マギウスと、マギウスの翼について探ってるんだ。でも、今いる人だけだと人手が足りなくて。だから、さなちゃんもマギウスとの戦いを手伝ってくれないかな。魔法少女として、友達として」

 

 ……以前に、アイちゃんが……私を必要とする人が来たらどうするか、聞いてきた事がある。その時の事を思い出した。あの時の私は、たしかこう答えたはず。

 私を必要としてここまで探しにきてくれた人がいたら、私は初めてその人を信用できるかもしれない。

 

「いろはさん……」

「さなちゃん?」

「私、自分が居てもいい場所……見つかりますか……?」

「……うん、すぐに見つかるよ」

 

「鶴乃さん」

「なぁに?」

「こんな私でも、戦えるんでしょうか……?」

「きっとね。さなちゃんだって私たちの横に立って戦えるよ」

 

 ……うん、決めた。私、アイちゃんの言う通りにするよ。

 

「いろはさん、鶴乃さん……私と一緒に、マギウスと戦ってください」

 

 ごめんね、アイちゃん。今まで私を必要としてくれて、ありがとう。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「ほむらちゃん、あれ、なんだろう」

「どこ?」

「ほら、あのおっきなビルの上」

「うーん? あ、魔法少女が沢山いるみたいだね」

 

 暗いし、遠いしで見えにくいけど、沢山の魔力がぶつかり合ってる。魔女の結界の中でもないのに、どうしてあんな所でそんな事をしてるんだろう。

 ……あれは、もしかして、戦ってる?

 

「行くよ、ほむらちゃん!」

「か、鹿目さん!?」

 

 一体どうして戦っているのかは分からないけど、とにかく止めなくちゃ。同じ魔法少女同士で戦うなんて、そんなの間違ってるから。

 どんな建物でも、非常用階段はあるはず。……あった。地上から屋上まで直通の階段。変身して、この階段を使えば屋上まですぐ行ける!

 

 辿り着いた最上階。そこでは六人組の魔法少女を、黒いロープに身を包んだ人たちが取り囲んでいた。どっちがやられているかなんて、一目で分かる。

 

「待って、鹿目さん」

 

 飛び出そうとした私を、ほむらちゃんが手を引いて止めた。

 

「ほむらちゃん?」

「どうして戦ってるのか、先に事情を聞きましょう。私にいい考えがあります」

 

 そう言って、ほむらちゃんは懐から筒状の何かを取り出した。

 

「なにそれ」

「フラッシュグレネードです」

「ほむらちゃん!?」

 

 止める間も無く、ほむらちゃんは魔法少女達の争いの中へと、グレネードを投げ込んでしまった——

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「ウワサに裏切られるなんてエキサイトしちゃうんですケド! そうだ、さなを殺しちゃえばもっとエモーショナルな事になると思わない?」

 

 アリナに見つかりました(デデドン)

 誰にも気づかれずに動けていたはずなんですが、偶然にも天音姉妹とアリナが一緒に電波塔近くを一般通過しており、運悪くひとりぼっちの最果てにいろはちゃんと鶴乃ちゃんが入る瞬間をばっちり目撃されていたみたいです。ピーヒョロ姉妹と一緒にお出かけしてるとかさては仲良しだなオメー。

 

 アイちゃんの介錯完了までに人員を集めていたらしく、二十名程度の黒羽根に包囲網を作られてしまっています。こうなると順当に戦って勝たないと撤退出来ません。

 

 アリナは単純な戦闘力の高いやちよさんに、黒羽根は制圧力に優れたフェリシアちゃん鶴乃ちゃんと援護型のいろはちゃんに、天音姉妹はゆりちゃんとさなちゃんで当たります。最初の人員配置だけ決めたらあとはやちよさんに指揮を任せます。やちよさんは指揮能力も高いので、任せておけば柔軟かつ適切な指示出しを行ってくれるんですよね。

 

 開戦です。やってやろうじゃねぇかよこの野郎!

 対天音姉妹戦は前回もやったし余裕やろと思われる事でしょう。しかし今回は黒羽根という取り巻きがいる上、包囲戦の防御側という状況の悪さもあって全く気が抜けません。

 

 地下水路の際の天音姉妹は時間稼ぎの為に笛花共鳴依存の戦法を取っていましたが、今回は月咲ちゃんは魔法剣のようなものを振り回すファイター、月夜ちゃんはバフを振りまくエンチャンターとして前衛後衛に分かれて戦う戦法を取ってきます。

 相手が笛花共鳴の対策を取ってきたら殴って、少しでも隙を晒せば笛花共鳴を発動するというなんとも意地の悪い戦い方です。普通に戦った方が時間稼ぎ出来たんとちゃう?

 

 そんな天音姉妹に対して相性がいいのが彼女、二葉さなです。さなちゃんのスキルにはやけど、暗闇といった状態異常をかけるものがあり、これを活用する事で敵の行動を制限することが出来ます。笛花共鳴だって片方がスタンしていれば発動できません。この状態異常を目当てにさなちゃんを選んだんですね。

 

 という訳で拘束かけて! 月咲ちゃんに拘束かけて! あっそれは拘束じゃなくてやけど! だけどいっか!

 状態異常にかかった月咲ちゃんにどんどん射撃を撃ち込んでいきます。一方的に殴られる痛さと怖さを教えてや——あっテメェ黒羽根やりやがったな!

 横から飛んできた黒羽根の攻撃で、ライフルを取り落としてしまいました。再生成までの少しのラグ。その間に天音姉妹は笛に口を付けましたが、息を吹き込む直前にライフルの再生成が間に合い、笛花共鳴の発動を妨害できたのでヨシ!

 

 対黒羽根組があまり黒羽根を抑えきれていませんね。それもそうか、単純に考えると一人で約七人押さえ込まないといけない計算ですから、まぁまず誰かがこっちに流れてくるでしょうね。

 ゆりちゃんからも援護を入れ、黒羽根を先に無力化した方が良さそうではありますが……武器がなぜかライフル一丁縛りになっているゆりちゃんでは範囲攻撃が不得手ですから、笛花共鳴の妨害と同時というのはなんとも厳しい物があります。

 

 手榴弾でも使えたらなぁ、と思っていたら、目の前に手榴弾が転がって来ました。

 あの筒状のシルエットは……閃光手榴弾!?

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 黒羽根と天音姉妹、それにマギウスのアリナ・グレイまでヘリポートにやってくるなんて思っていなかった。アイの罠だとは思わないけど、それにしてもまずい状況だわ。

 二葉さんと環さんと鶴乃がアイを消してひとりぼっちの最果てから戻ってきている以上、ここに長居する必要は無いけれど、こうまで多くの黒羽根に包囲されていると、身動きが全く取れない。

 

「グレネード!」

 

 ゆりさんの叫ぶ声に、反射的に身を伏せた。直後、強い爆音が鳴り、目を瞑っていても分かるぐらいの閃光が放たれた。これグレネードじゃなくてフラッシュバンじゃないの。伏せる必要なかったじゃない。

 音が収まった後に立ち上がって、みんな無事か確認の為に目を配る。

 

「あ、あれ、みんら何かしゃへってまふか?」

「み、みんなどこ?」

「目が、目がぁぁぁぁ!」

 

 投げられたフラッシュバンの存在を認識していたらしいゆりさんと鶴乃は無事。ただ、二葉さんは耳を、環さんは目を、フェリシアは全部やられてるみたい。

 マギウスの翼の方は大半がやられたようで、未だに健在のままこちらに武器を向けてくる人はほとんどいない。あの姉妹もみぞおちをやられた方が脱落してるし。

 しめた。アリナだけは未だ健在だけれど、マギウスの翼の包囲が消えている以上、今なら撤退は容易。二葉さんは鶴乃が、環さんはゆりさんが、二葉さんは私が連れて逃げるという風に指示を——

 

「どうして魔法少女同士で争うの?!」

「まだ続けるというのなら、私たちが相手になります!」

 

 ……誰?

 新たに現れたのは、ピンクのドレス調の衣装の子と、灰色のブレザー調の衣装の子。ブレザーの方の子の手にはピストルとそれから二個目のフラッシュバンが握られている。さっきのフラッシュバンはこの子の物だったのね。

 

「誰、このマジカルガールは」

「私は暁美ほむら。こっちは鹿目まどかさん!」

「それで、事情を話してくれるつもりはある?!」

 

 二人とも名前も顔も知らないわ。最近契約を交わしたか、もしくは市外の魔法少女みたい。

 

「ふーん? 第三者が首突っ込もうとしてるってワケ? ヤケドする前に帰った方が身のためだと思うんだヨネ」

「ううん、帰らない。同じ魔法少女同士で争うのを見て、黙っていられないよ」

「アリナはゴーアウェイって言ってるんですケド。アンダースタン? 理解してる?」

「あなたこそ私たちの言ってることが分かってないですよね。引くつもりはないって言いましたよ」

 

 この二人は本気で介入するつもりらしい。こんな何十人とが争っている間に割って入るなんて、正気じゃないわ。アリナも積極的に巻き込むつもりは無いみたいだし、なんとかしてこの戦いから遠ざけてあげないといけない。

 

「あなたたちには関係ないわ。魔法少女同士の争いに介入するのは遊びでやらない方がいいわよ」

「七海さん、それアリナと言ってる事同じだし、なんなら火に油注いでる」

 

 あらいやだわ。鹿目さんも暁美さんも逆にやる気になってしまってる。

 

「面倒だから全員アリナのアートの一部にしてあげるっ!」

 

 しかもアリナまで。まずいわ。

 奇抜な色の絵の具がアリナの足元から広がり、それは次第に丸い形を取った。何なの、これ。

 

「それには絶対に触らないで! 触ったが最後頭おかしくなるよ!」

 

 頭がおかしくなる……今のアリナみたいに、変なポーズを取りたくなったりするのかしら……? その程度では済まなさそうね、擦りもしないようにしましょう。

 アリナから出たそれから、砲弾のように絵の具が次々に発射される。ゆりさんの警告が是であれば、あれはただの一つだって着弾させたらまずい代物のはず。節約なんて気にしていられない。

 魔力を練り上げて、槍を大量に生成。槍同士を編み込んでボウル状にして、絵の具を受け止める。どうしても逃した絵の具はゆりさんと鶴乃に吹き飛ばして消してもらう。

 

「あなた、ここにはマギウスの翼もいるのよ!? なのにこんな全員を巻き込むような戦い方して、なんとも思わないの!?」

「翼たちはマジカルガールの救済が目的なワケ。もしここで死んでも、それは目的の為に死んだようなもの。だから、死んだらむしろ感謝してほしいよねぇ!」

 

 人を率いる立場の人間が、何故こうも無責任になれるの……!

 反撃しようにも、絵の具の砲弾の防御に気を取られて、攻撃にまでは手が回らない。それにこのまま逃げたら、未だに目を回したままの黒羽根たちがどうなるか……せめてアリナの絵の具だけでもなんとかしておかないと。

 考えを巡らせていると、見覚えのない見た目の桃色の矢がアリナの帽子を貫いた。鹿目さんが放った矢だった。

 

「正直、なんで争っているのかは分からないけど……仲間のはずの人にまで手を出す人が、善人とは思えないよ。だから、私は……えっと」

「そこの青い人が七海やちよさん」

「七海さんたちの味方をする!」

 

 ゆりさんの付言が無かったら名前も分からないような初対面の相手に、よくここまで入れ込めるわね。本当に正義感が強いみたい。だからこそこんな風に無茶な介入をしたりするんでしょうね。その無茶で私たちが助かってる以上、複雑な気持ちだわ……

 

「アリナさん、ここは引いた方がいいのでございます」

「チッ。だったら後始末はやっておいてヨネ。アリナは帰るカラ」

 

 絵の具が全て霧散して消え、アリナはそのままヘリポートから飛び降りるようにしていなくなった。

 

「……という訳でございます。このままそちらもお帰り願えませんか? 勧誘する空気ではありませんし、私は黒羽根たちを見ないといけないので、そこの二人はそちらで預かってください」

 

 マギウスの翼からの停戦の申し出。私たちの目的は二葉さんを連れて帰る事だから、当然これを受け入れない理由が無かった。

 二葉さんと、暁美さんと、鹿目さん。三人を連れて、とりあえずはひとりぼっちの最果てに行くまで待つのに使っていた喫茶店にもう一度入る事にした。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「——つまり、魔法少女向けの新興宗教?」

「そういう認識でも構わないわ」

 

 喫茶店で七海さんたちに受けたマギウスについての説明。七海さんは魔女化という真実を伏せながら説明していましたが……私には、マギウスの目的は魔女化の回避であるというように聞こえます。

 もしもマギウスの目的が達成されたら、それは魔法少女というシステムに対する叛逆です。鹿目さんだけじゃない。マギウスの言う通り、全ての魔法少女を救う事ができる。

 

「多分……マギウスの目的は本当に実現可能なんでしょうね。だけど、そのために多くの人々を不幸にしている。だから、私はこれを止めないといけない」

 

 多分、鹿目さんも同じ事を思うはずです。自分が救われるとしても、そのために誰かが犠牲となるのは良しとしない人ですから。

 犠牲を許容できないという意味では私も同じ意見です。気持ちの上では何を犠牲にしてでも鹿目さんを守りたいと思ってはいるものの、それをするだけの覚悟がありません。

 鹿目さんは覚悟があるから犠牲を良しとしないのであって、覚悟が無いから犠牲を良しとしない私とは、性質が真逆かもしれませんけど。だからこんなにも鹿目さんは眩しいんだろうな、と思いながらジュースを啜りました。ぶどうの甘みが美味しい……

 

「やちよさん。マギウスとの戦い、手伝わせて下さい。魔法少女の救済というのがどんなものか、ちゃんと分かってはいないんですけど、それでも、誰かの犠牲の上に成り立っている救いなんて、間違ってると思うから」

 

 鹿目さんはマギウスの救済を完全に突っぱねる選択を取りました。私は、どうすればいいんでしょう。本音を言えば、魔法少女の救済を受け入れたい。でも、犠牲という言葉の重みがそれを許さない。ただの、単純な優柔不断です。だけど単純だからこそ簡単に選べない。私は何を選べばいいの、鹿目さん——は多分真実を知ったとしても自分以外って言うだろうなぁ……

 

「暁美さん。そんなに迷わないでいいよ。どちらかだけを選べないなら、両方を選べばいい。簡単だよ。鹿目さんも、他の人も、全員救っちゃえばいいんだよ。もしも失敗したら、この選択も無為にして、やり直せばいい」

 

 そんな私に声をかけたのは、虹絵ゆりさんでした。……待って。一見するとただの助言のようだけど、最後になんて言ったの?

 この選択も無為にして、やり直せばいい。

 ……やり直せばいい? まさか私の秘密を知っている?

 

「虹絵さん、あなたは——」

「おっと、もうこんな時間だ。門限は大丈夫なの?」

「あーっ! みんな心配してるよ、早く帰らないと!」

 

 虹絵さんの一言で帰ろうとした鹿目さんに連れて行かれてしまい、結局虹絵さんについては何も聞けず有耶無耶のままで終わってしまいました。

 マギウス、ドッペル、虹絵ゆり。何を調査するにも、神浜市にはまた来る必要があります。だから、次回にはちゃんと調べておきましょう。

 にしても、何かを忘れているような……

 

「あっ」

「どしたのほむらちゃん」

「私のジュースの分、お金払うの忘れてた……」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 なんやかんやあってさなちゃんもみかづき荘に住む事になりました。これにて第五章、攻略完了です……

 この後は、そうですね。第六章の開始にはチームみかづき荘全員の好感度が一定以上必要であり、そのラインに達していないメンバーが数名いるので、好感度稼ぎに走ろうと思います。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




マミさん……
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