マギアレコードRTA noDLC みかづき荘チャートAny% 作:なぁ……相撲しようや……
「久しいな七海! 十咎に由比君まで一緒とは! それに懐かしいな……む? 誰だ?!」
周囲にいる人が全員知り合いだったからか、私にまで旧友に向けるそれと同じ目を向けて、直後に違和感に気づき、それはそれは綺麗なノリツッコミを……って漫才やってる場合じゃないです……
「環いろはです。最近神浜に引っ越してきました。今はやちよさんにお世話になっています」
「そうか、道理で知らない顔な訳だ。自分は和泉十七夜という。神浜市の東側の取り纏め役を担っている。そこの七海とは友人の仲だ。よろしく頼む」
自己紹介は程々にして早めに本題に入ろうか、そう話す十七夜さんに連れられ、工匠区の喫茶店に皆で入りました。
「さて、ソフトドリンクの一杯ぐらいなら奢ろう。何か好きなものを頼むといい」
十七夜さんの言葉に、鶴乃ちゃんはやちよさんの方を見ました。何かあったのかと思いながら様子を窺ってると、鶴乃ちゃんの視線に気付いたやちよさんが、手元のメニュー表から顔を上げました。
「……何よ。もしかして私のこと何でもかんでも会計を持とうとする人だと思ってる?」
「違うの?」
「語弊しかないわよ。二葉さんの歓迎会の時は私がそういう役割だったからじゃない」
「じゃあ今回の支払いは十七夜に任せる?」
「払った金額分あとで懐に突っ込んでおく」
「やっぱり払いたがりじゃん」
「いや、借りを作りたくないだけよ……!」
「聞こえてるぞ。で、注文は決まったか」
鶴乃ちゃんとやちよさんは内緒話のような声色で会話をしていましたが、声量そのものは机の対角線側に座っている私にも聞こえる程度にはあったので、結果としてこの席に座る全員に会話の内容が筒抜けになっていました。
それでこの話は横に置いておいて、各々が注文を終えたので本題に入る事になりました。
「……なるほど。あえて目立つ行動を取り、マギウスの翼を釣るのだな」
「そう。西だけでなく、東でも同じ事をしたいの。助力が無理なら、せめて東でウワサを消す為に動く許可だけでも……」
「許可だけなんて水臭いぞ。もちろん助太刀するさ。ちょうど自分は相手の心の内を覗き込む魔法を持っている。大物が釣れた際には、確実に得られる物があるだろう」
覗き込む……それってゆりちゃんと同じ!
「十七夜さんもそういう魔法が使えるんですか!?」
「使える。変身した上でかなり近付かなければならないがな」
多少特性は異なるけれど、ゆりちゃんと同じ系統の魔法。魔法少女の固有魔法って千差万別だと思っていたけど、意外と被る物なんですね。
「珍しい反応だな。食い付きが良いと思えば、畏怖するでも羨望するでもない。自分の固有魔法がどうかしたのか?」
「あ、いえ、マギウスの翼に連れていかれた仲間の中に、十七夜さんと同じような魔法を使える人がいたので……」
「なるほど、だとすれば思うところもあるか。うむ。環君の言う人物と個人的に一度顔を合わせてみたくなった。今回の件が片付いたら、会いに行っても構わないだろうか?」
「私の許可なんて要らないわよ。会いたいと思ったのなら、来れば良いじゃない」
やちよさんの返事に、それもそうかと十七夜さんは返しました。
次の話題に移り、どのウワサが未だ健在であり、どのウワサが既に消去済みであるかの情報を共有する事になりました。
「これが西側のウワサ事情よ」
そう言ってやちよさんは昨日に作った地図を卓上に広げました。
「ふむ。工匠区の辺りだけ妙にウワサが薄いな」
「なぜかここだけ全くウワサが無いのよね。東側のウワサも調査して、これが本当に円になるのかも確かめたいわ」
「了解した。マギウスの翼釣りと並行して、こちらの調査も進める事にする。ウワサらしき噂については何件か聞いた事がある。まずはそれらを当たってみよう」
早速ウワサを消しに行く事になり、慌ててグラスの底に残ったジュースを飲み切り、喫茶店を出るみんなの後を付いて行きました。
◇◇◇◇◇
第七章 楽園行き覚醒前夜
最近はサブタイトルコールと動画の頭が全く揃わないRTAの続き、やっていきます。
十七夜さんと合流、お互いの情報を共有し、早速ウワサを消すツアーを開始しました。
今まで消したウワサは絶好ルール、口寄せ神社、ミザリーウォーター、名無しさん、記憶ミュージアムの五つです。この他にも神浜に存在するウワサは多数存在し、フラグを立てた事でそれらとの遭遇が可能になっています。
その他のウワサはサブクエストのような扱いであり、工匠区の北端に噂の無い地域がある事を発見さえしていれば、全てスキップしていく事も可能です。
が、以前にお話しした通り、ウワサは一定数消しておかないと里見灯花が攻略不可能な強さのまま弱体化しないので、ウワサを一体も倒さず即スキップというような事はしません。某英傑のように中ボス全スルーで大ボス攻略というのは無理なのだよ。
という訳で、とりあえず十七夜さんが既に手掛かりを知っているウワサから消していきます。サブクエストのウワサは消した後に操作キャラ、現在はいろはちゃんですね。いろはちゃんからウワサについて一言コメントを貰えます。
まずはミックスドリンクバーのウワサ。任意のファミレスのドリンクバーで、特定の手順でミックスジュースを作成し、それを飲み干さなかったらどこかへと連れ去られてしまうという内容のウワサです。
ウワサの示した手順通りに作ったミックスジュースは飲むと心情デバフです。少しも口にしてはいけません。作ったらそのまま捨ててウワサを出現させます。
「ウワサを消す為とはいえ、飲み物をそのまま捨てるというのは精神的にきつかったです」
続いて枕投げのウワサ。窓の外へと枕を投げ捨てると、その枕はどこかへと消え、二度と見つける事が出来なくなるが、すぐにその後を追って自身が窓から外に出れば、枕は返してもらえる代わりに自分がどこかへと消えてしまうというウワサです。
ウワサの言う通りに枕を投げた後にそれを追いかけて窓から外に出れば、そのままスムーズにウワサの結界に侵入出来ます。
「枕を窓から投げ捨てるなんて状況、普段の生活の中で起きるんですか?」
墓荒らしのウワサ。特定の墓を斧を使って掘ろうとすると、怒った霊に腕を掴まれて、あの世に引き摺り込まれてしまうというウワサ。
人が寄り付かないような深夜の時間帯に墓に行きます。一般人に見られると言い訳できない状況なので、誰にも見られないよう慎重に周囲を警戒しながら行動します。
「これがウワサじゃなかったらただの犯罪者だったのでウワサでむしろ助かりました」
と、こんな風に細々とした物をひたすら潰していくだけの地味……でもないけど単調な画面が続きますので、み〜〜な〜〜さ〜〜ま〜〜の〜〜た〜〜め〜〜に〜〜
(BGMのイントロ)
(ぷはぁ、今日もいいペンキ☆)
◇◇◇◇◇
「これは……驚いた。見事に口を開いている」
「えぇ、予想通りね」
数日をかけて東側のウワサを消して回り、その情報を地図に書き足したら……なんとびっくり、工匠区にあったウワサの無い地域が、まん丸な円になったのです!
「どうしてここだけウワサが何も無いんだ?」
「何かがあるのは間違いない!」
「こうまで綺麗に空白地帯な以上、意図してウワサを配置していないとしか考えられないものね」
問題は、どうしてウワサが無いのか。何かウワサを近づけたくない、守りたいものがある? でも、マギウスの翼について調べれば、ウワサの分布については比較的耳に入りやすいはず。ウワサが全く無いとなれば、マギウスの翼について調べている人はここも調査しに行くはずで、そうなると物を隠すにはあまり向いていないし……
「……この空白地帯さ、もしかして罠なんじゃない?」
「あまりにも露骨すぎる、か」
「うん。わたしにはウワサについて知りすぎた人を釣るための罠に見えるよ」
わたしの出した予想はこれ。マギウスの翼の行動方針は全体的に秘密結社っぽい。拠点の周りにウワサを置かないなんて目立つ事はしないはず。なら、むしろ逆。釣り餌である可能性が高い!
「ウワサの防人たる黒羽根達は、連れ去られた七海の仲間達について何も知らなかった。彼らを取り纏める管理役である白羽根でもなければ情報は得られないと見ていいだろう。こうまで大掛かりな戦略規模で張られた罠であれば、白羽根が担当している可能性が高い。担当の白羽根を釣る為にあえてこの罠を踏んでみるという手もあるが……どうする、七海」
「うーん、私、鶴乃、ももこ、いろは、十七夜でしょ。あと一人か二人ぐらい戦力が欲しいわ。白羽根の中には実力者もいる。トラブルの芽は少しでも潰しておきたい、のだけれど……考えてみたら、呼べそうな人は全員この場にいるんだったわ……」
わたしも知り合いの名前を浮かべて、呼べそうか考えてみる。
美雨先生……はダメだ! わたし達の問題なのに、先生に迷惑はかけられないよ。同じ理由であきら先生もダメ。
うーん? 知り合いの魔法少女の名前を脳内で挙げてみるけど、どれも迷惑をかけたくないという理由で脳内会議で却下されてしまう。知り合いも数だけならそれなりにいるんだけどね……
「あっ! まどかちゃん達に助けを求めてみるのはどうですか?」
「彼女たち、市外の魔法少女じゃない。私達の都合に巻き込めないわよ……」
「自分からも人員は出せない。顔見知りはほとんどマギウスの翼になってしまったからな。連れ去られたという深月君、二葉君、虹絵君の知り合いの中には魔法少女はいないのか? そちらであれば、救援の要請にも応えてくれそうだが……」
「フェリシアは常盤さんに雇われていた時期があった事ぐらいしか分からなくて、二葉さんは水名女学園の魔法少女に日常生活を助けてもらってるらしいのだけど、前者については常盤さん達が了承してくれるか分からないし、後者に至ってはそもそも連絡先が分からないわ。ゆりさんについてはいろは、どうなの?」
「私も分かりません。ごく最近に契約をしたらしいので、私達以外の魔法少女の知り合いというと……とりあえずまなかさんは浮かびましたけど、それ以外はなんとも……」
こう見ていると、仲間の事ですら実は表面しか知らないというのを分からされる。それはそうなんだけどね。誰と誰が知り合いかなんて、それこそ一心同体でもないと分からないもん。
ともかく、これで増援は来ない事が確定してしまった。このメンバーで最大限戦って、欠員が出ないよう、わたしが頑張らなくちゃ!
「あぁ、とりあえずレナは来れるって。道中でかえでにも声をかけるって言ってたけど、こっちは来れるかどうかまだ分からない」
そんな空気の中のももこの鶴の一声! レナちゃんが来てくれるなんて頼もしいよ!
……かえでちゃんは大丈夫なのかな。ももこは魔法少女の真実を二人に話したらしくて、レナちゃんは真実を受け入れられたけど、かえでちゃんの方はまだ現実を受け止めきれていないって聞いたけど……
「レナなら実力の方も知ってるだろ?」
「えぇ。でも……いいの? 危ない目に遭う事になるかもしれないのよ?」
「チームメイトを頼れなくて、他に誰を頼れるんだよ。やちよさんは一人で抱え込む癖みたいなのがあるぞ」
ももこの指摘、確かにそうかも。固有魔法の思い込みで以前のチームを解散したのを一昨日までずっと黙ってたし、メルの事については未だに黙ったままだし。みふゆの記憶を見たからとっくに最期は知ってるけど、それでもやちよからも何か一言あってもいいんじゃないの。
レナちゃんが来るならそれで追加の人員はいいだろうという事で、レナちゃんの到着を待つ事になったよ。
◇◇◇◇◇
数日かけてノルマ分のウワサ消去が完了したので、次のステップに移ります。ゆりちゃんの救出の為の情報収集です。
ウワサの空白地帯の中心にある旧車両基地に行くと、天音姉妹が罠を張って待っています。これを返り討ちにして十七夜さんに天音姉妹からゆりちゃんに関する情報を抜き取ってもらおう、という計画です。
この計画を実行する前に、パーティにもう一人追加して戦力を増強します。鶴乃ちゃんやちよさん十七夜さんの三人がいるならそこで既に過剰戦力ではないのかという指摘が聞こえてきますが、これでは足りません。
今回はさなちゃんがいないので、天音姉妹の笛花共鳴の妨害が難しいです。この場に有用な状態異常を使える魔法少女は一人たりともいないので、天音姉妹には一瞬の隙も与えぬ連続攻撃をしなければならないのですが、その場合は取り巻きの黒羽根が厄介で、意識外からノックバック付きの攻撃してきたりしてこちらの行動を妨害して隙を作られてしまいます。
だから黒羽根を抑える役の人を追加で用意する必要があったんですね。
今回は、ウワサ狩りに出ていたメンバーに、レナちゃんとかえでちゃんを追加した布陣で行きます。みかづき荘フルメンバーの時より多い計七人の編成です。
いろはちゃん、やちよさん、鶴乃ちゃん、レナちゃん、かえでちゃん、ももこさん、十七夜さん。これだけいたらたとえ笛花共鳴が発動しても問題なく圧勝できるな!
やってきました、旧車両基地。ここの探索を一定時間以上行うことでイベントが発生します。なので時間経過の大きい選択肢を選んでとっとと発生させてしまいましょう。
「静かに燃える魔力の炎、飛び込んだのは五月蠅い羽根虫」
「もしも燃えてくれぬなら、我らの音色で……」
いたぞッ!! やれッ!!
なんか言ってますがそれには構わず、現れた天音姉妹に火力を叩きこみます。
「な、名乗り出てる最中に攻撃するなんて反則でございますよ!」
「礼儀って物を知らないの!?」
「え、えっと……ごめんなさい……?」
不意打ちから戦闘が始まったので短時間の間スタンです。やったぜ。畳みかけろ畳みかけろ!
動けるようになった頃にはとっくにダメージが蓄積しており、このままダメージレースを行えば問題なく無力化が可能! 時間差で黒羽根達が出てきましたがそっちは他の人が押さえ込んでいるのでこっちには来れません! 観念してとっとと情報を差し出すんだな、ピーヒョロ姉妹!
「ど、どうしましょう!」
「どうしようも無いよ! もう失敗は出来ないんだから!」
隔絶のドッペル。その姿はテラリウム。
この感情の主は、自身の機嫌や感情に囚われず、理解者たる自らの半身に依存する。
無縁のドッペル。その姿はアクアリウム。
この感情の主は、自身の環境や境遇に囚われず、理解者たる自らの半身に溺れる。
ダメージを穢れに変換してドッペルを出してきました。元は笛花共鳴対策に集めた戦力ですが、これだけの戦力があればドッペルだって速攻撃破が可能です。
いろはちゃんにも穢れを溜めさせて……おっと、私が指示を出すまでもなく、いろはちゃんはドッペル発現を待機していました。まだ三度目ですが、既にドッペルを使いこなしているみたいです。同じようにやちよさんと鶴乃ちゃんも待機状態。
沈黙のドッペル。その姿は呼小鳥。
この感情の主は、自身のドッペルの情けなさに気が付きつつも、その姿を直視できないでいる。
モギリのドッペル。その姿は切符鋏。
この感情の主は、やがては自分も今まで見送った友を追って旅に出る日のことを夢想する。
団欒のドッペル。その姿は金華。
この感情の主は、このドッペルの容姿に関してかなり不満を抱いている。
ドッペル発現中のいろはちゃんは防御力と火力がドッペルによって強化されており、かつ飛行能力によるモビリティも備えているため格闘戦への適性が高く、前線で戦えるようになっています。
この格闘戦性能を活かし、無縁のドッペルに肉薄。沈黙のドッペルの布で絡めとり、そこを団欒のドッペルに焼いてもらいます。無縁のドッペルの外殻は攻撃は防げるものの熱は通すので、このまま中にいる感情の主を蒸し焼きに出来ます。こうなればもう無力化したも当然ですね。
まだ隔絶のドッペルが残っていますが、こちらはモギリのドッペルに任せれば無問題です。隔絶のドッペルの外殻はモギリのドッペルの幻影を防げないので、感情の主に適当な夢でも見せてれば無力化出来ます。
前回の記憶ミュージアムの際にはドッペル初使用で能力を把握出来ていなかったのと巴マミとの実力差から鳴りを潜めていたモギリのドッペルの幻影ですが、同格以下の相手なら一睨みで無力化できる強力な魔法なので今回は頼りました。
天音姉妹両名の無力化に成功、黒羽根にももう立ち上がってくる者はいません。十七夜さんを読んで、早速情報を抜き取ってもらえます。
「この二人は何も知らない。この車両基地で自分達を待ち受けているだけの、ただのコマのようだ」
情報を得られなかったと口では言っていますが、この後に天音姉妹のプライバシーを暴露した場合は、本人がいる手前言い出せないだけで、本当は情報を得ています。
「以前に服を取っ替えてみたらサイズが合わなかったので、試しに靴を交換してみたら、今度はサイズがピッタリ合ったらしい」
暴露したので情報持ってますね。
この十七夜さんの暴露に天音姉妹は悪態を吐きながら黒羽根を連れて退いていきました。名無しさんの時から数えて二回目だからか撤退の仕方がなんだか小慣れてますね、瞬く間にマギウスの翼が全員いなくなってました。
では、こちらも一度帰りましょう。旧車両基地も一応は立ち入り禁止の場所なので、あまり長居しすぎて誰かにバレると面倒な事になります。
「あの双子が居た手前離せなかったのだが、他に読み取ることもできた」
十七夜さんが盗った情報は……ん? え?
えっと……ゆりちゃんは今、ウワサを守るために、ウワサの一部になっている、らしいです……
……はぁぁぁぁぁぉあああああああ!?!??!!???
ガッデム、マジかよ。原作における鶴乃ちゃんのポジションに綺麗に収まってるじゃないですか。
キレーションランドのウワサの方の情報は持っていませんが、場所さえ分かっていれば構いません。直ちに観覧車草原へと向かいます。
観覧車草原では、幹部である梓みふゆと、マギウスの里見灯花、アリナ・グレイの二人、それから取り巻きの黒羽根が防衛を行なっていました。当然ながらウワサの消滅及びゆりちゃんの奪還を狙ういろはちゃん一行と衝突しない訳が無く、戦闘開始です。
このメンバーでキレーションランドのウワサの攻略を行う事を想定しておらず、チャートの用意がない為、完全アドリブで指示を出していきます。
黒羽根一行はかもれトライアングルの三人に任せて、みふゆさんにはやちよさんを、アリナには十七夜さんと鶴乃ちゃんの二人をぶつけて、里見灯花はいろはちゃんがタイマンで抑えます。
肝心のウワサ攻略の為の戦力が用意できていませんが、そこはかもれが黒羽根をあらかた倒し終わった後に再編を行ない、ウワサ攻略の戦力を捻出します。先程の旧車両基地の戦いで黒羽根の数が減っているので、数分もすれば再編可能になるでしょう。
里見灯花をいろはちゃん単騎で抑えるのはそう難しくはありません。エンブリオ・イブから遠い位置にいるので魔力供給線が比較的薄く、そもそもの供給量もウワサの数が減った事により減少しており、彼女を絶対的な強者に仕立て上げていた圧倒的な魔力量という要素が、この場では欠落してしまっています。素の状態の里見灯花であれば、いろはちゃんでもドッペルを使えば抑え込めます。
沈黙のドッペル。その姿は呼小鳥。
この感情の主は、自身のドッペルの情けなさに気が付きつつも、その姿を直視できないでいる。
今は魔法少女としての頑健な体を持つ里見灯花ですが、契約以前は病弱でした。どれぐらいかと言うと、未だに魔法少女の動ける身体に順応できず格闘戦ができないぐらいですかねぇ!
とにかくインファイトを仕掛けていけば、里見灯花は絶対に攻勢に移れません。先手を取って取って取りまくって、決して策を練らせる時間を与えないように戦えば、ひたすら楽して時間が稼げます。
ついでに精神攻撃をするのも忘れません。灯花ちゃんは病室でういちゃんとも親友だったんだよぉ……?
「うるさーい! そんなのわたくしの記憶には無いって、何度言えば分かるのー?!」
白昼夢のドッペル。その姿はマッチ売り。
この感情の主は、魔法少女になった後もさらなる願いを成就するためちからを欲する。
ゲェッ!? それ使ってくるの!? 白昼夢のドッペルは能力の使用回数に制限があるので、こんな所では切ってこないだろうと高を括っていました。追い込みすぎたか……?
しかし! 判断が遅かったな! とっくにかもれは黒羽根を殲滅済み! つまりこの白昼夢のドッペルはそのままかもれへ押し付ける事が出来るという事だァーッ!
このタイミングで再編を行います。アリナはとっくに弱っているので十七夜さん一人に任せ、みふゆさんは既に戦闘不能(のフリをしている)ので放置、白昼夢のドッペルはかもれに抑えてもらい、残りのいろはちゃんやちよさん鶴乃ちゃんの三人でウワサの中に突入します。
◇◇◇◇◇
「こっちよ!」
やちよさんの後に付いて、ゴンドラの中に入りました。すると辺りの景色が変わって……まるで遊園地のような場所に来ました。ここがウワサの結界内のようです。
なんだか、意識がぼんやりしてきました。……なるほど、ここはそういう空間なんですね。しっかりと気を張っていないと、気力が持っていかれます。
「ようこそ、キレーションランドへ」
ここしばらく耳にする事が叶わなかった声。それが聞こえてきて、聞こえてきた方を反射的に振り向きました。そこにいたのは間違いなく……間違いなく? うーん? 多分、ゆりちゃんです。髪色がネオンのような青緑色に変わっていて、目元を大きなゴーグルで覆っていて、雰囲気が全く違うけど……多分、ゆりちゃんです。
「……とは言ったけど、開園してないのに来られるとすごい困る。まだ清掃も終わってないのに」
「ご、ごめんなさい……?」
ウワサの遊園地にも開園時間という概念はあるんですね。今のゆりちゃんは完全にウワサの遊園地の職員として振る舞っています。十七夜さんの言っていた、ウワサの一部になっているという言葉の意味が、今更ながらに理解できました。
聞きたい事が出て来なくて、かけたい言葉も浮かばなくて、しどろもどろにしている内に先に鶴乃ちゃんがゆりちゃんに話しかけました。
「あれ、ゆりちゃん、フェリシアとさなはどこ? 一緒じゃないの?」
「え? 梓さんがみかづき荘へ帰すって言って連れてったけど、まだ会ってなかったの? あー、困ったなぁ……二人の配属先ってここから遠いんだよねぇ……」
梓……みふゆさんが? うちに帰す為に、連れて行った? えと、みふゆさんってマギウスの翼の幹部なんでしたよね。でも、私たちの味方をしてくれた……という認識でいいんですか? 鶴乃ちゃんもよく分からなかったのか、追加の質問を続けました。
「洗脳はどうしたの? 記憶ミュージアムのウワサを消した時に解けたの?」
「その時には解けてなかったよ? 後で梓さんが解いてくれたんだ。私達の洗脳は梓さんには許容できない行為だったみたい。だから逃がしてくれようとしてた」
「今のゆりちゃんを見るに逃げられてないみたいだけど……」
「まだ調べたい物があって、それで残っちゃったからね。調べ物そのものは出来たんだけど、途中でマギウスに見つかって、これを付けられちゃった」
ゆりちゃんはそう言って、ゴーグルをコンコンと叩きました。
「固有魔法を封じた上でより強力な洗脳を施す為の装置、って言ってた。そういう訳で私はいま洗脳状態。このままキレーションランドに染まるか、今すぐここから出ていくか、選んで。戦ったら手加減できないよ」
辺りにメリーゴーランドの馬が現れて、私達を取り囲みました。でも出口の方向は塞がっていなくて、ゆりちゃんは私達に帰らせたいんだろうなという事が窺えます。でも、帰るわけにはいかない。
「ゆりちゃん、一緒に行こう! こんな所にいちゃいけない。無理矢理引っ張ってでも連れて行くから!」
「ふーん。そっか。……鶴乃ちゃんと七海さんも、同じ意見?」
二人とも頷いて、そして得物を構えました。やっぱり、衝突は避けられないんですね。
「みんな、遊園地の運営を邪魔するんだね。だったら排除しない訳にはいかない」
◇◇◇◇◇
ウワサのゆり戦です。ゆりちゃんは現在ウワサと融合している状態にあり、まずはウワサを剥がす必要があります。剥がさないままウワサを消してしまうとゆりちゃんも一緒に消えてしまう為ですね。
ウワサを剥がす手段は一つ。心を通じ合わせる事。
……抽象的で全く分からない? ふふっ。私もよく分かってません。
多分ですが一定以上の好感度があればいけます。が、具体的にどの程度の好感度が必要なのかは知りません。まぁでもチームみかづき荘の仲間だし好感度は大丈夫やろ(謎の信頼)
ともかく、心を通じ合わせた状態で、多量の魔力をぶつければ、ウワサは剥がれてくれます。まずは魔力をぶつけられる状態にする為に、動きを止めていきましょう。
相手の動きを制限させるような攻撃は鶴乃ちゃんが最も得意です。なのでウワサの使い魔の縦横無尽な攻撃から特に優先して守ります。単純な威力が高い上に追加効果まで発生するので一発でも喰らったらやばいです。
私が取り巻きの相手をしている間にやちよさん鶴乃ちゃんの両名がウワサのゆりに肉薄……出来ていませんね。素の速度が高い上に、一撃即死級の威力を持つ銃撃を行ってくるというプレッシャーがあるので、中々思い通りの戦いができていないようです。
銃撃戦であれば少し前に一度やった事がありましたね。巴マミの時とは異なり、精神的動揺によるミスは無いと思って頂こう!
沈黙のドッペル。その姿は呼小鳥。
この感情の主は、自身のドッペルの情けなさに気が付きつつも、その姿を直視できないでいる。
モギリのドッペル。その姿は切符鋏。
この感情の主は、やがては自分も今まで見送った友を追って旅に出る日のことを夢想する。
団欒のドッペル。その姿は金華。
この感情の主は、このドッペルの容姿に関してかなり不満を抱いている。
まずは団欒のドッペルに炎を撒いて貰います。これにより視界を制限、格闘戦のレンジまで容易に近付けるようになりました。モギリのドッペルと沈黙のドッペルのツートップでウワサのゆりに肉薄。攻撃をしかけていきますが……
回避率高いですね。ひらりひらりと宙を舞う葉っぱのように攻撃を避けてきます。物理ではなく精神攻撃ならどうかというと、ウワサのゆりの付けてるバイザーに遮断結界の働きがあるようで、モギリのドッペルの幻影も効果なしです。
つまり団欒のドッペルの範囲攻撃以外に有効打がありません。通常の状態であればやちよさんが回避率無視のアビリティを持っているんですけど、ドッペルの発現時にはアビリティが適用されず、結果的に団欒のドッペルが一番になるんですよね……
最初から最後まで鶴乃ちゃんに頼るしかないじゃねぇかよお前のパーティどうなってんだよ!
◇◇◇◇◇
自分の撒いた炎の壁を利用して戦いながら、わたしは考える。
やちよは言った。ゆりちゃんと心を通じ合わせて、その上で強力な一撃を叩き込めばウワサとの融合が解除されると。でもゆりちゃんは常識外れなほど素早く、やちよといろはちゃんの攻撃はただの一度もゆりちゃんには当たらなかった。そんな彼女に強力な一撃を叩き込むなんて夢のまた夢。
だから、まずは機動力を削がないといけない。わたしの炎ならそれが出来る。一度でも命中すれば、纏わりついた炎の魔力で、ゆりちゃんの動きが鈍くなるはず。そこを狙えば問題なく強力な一撃というのを叩き込む事ができる、はず。希望的観測が多いけど、わたしは強いからなんとかなる!
「ゆりちゃん! ウワサを剥がす為にはまず心を通じ合わせる必要があるんだって! わたし達の心、本当に通じ合ってるかな!」
「ハッ、通じ合う心なんて幻想だよ、それこそ心を覗く魔法でも無かったら人を理解する事は出来ないよ」
キャラじゃない感じの吐き捨てるような言い方をしながら、ゆりちゃんはゴーグルをトントンと叩いた。……もしかして、ウワサを剥がすより先に、これを外せって事? テレパシーでやちよといろはちゃんに情報を伝達する。先にゴーグルを狙うよ!
『それは分かったけれど……彼女、洗脳されてるのよね?』
『言いたい事は分かる。この情報が本当にわたし達に利する情報なのか疑わしいんだよね? でもこれはゆりちゃんが心の奥底で洗脳に逆らいながら渡してくれた情報なんだよ!』
『そう、ですね。私はゆりちゃんを信じたいです』
油と炎でどんどん足の踏み場を奪っていく。いくら動きが素早くても、そもそも動ける場所が少なければ機動力は活かせない。そうして制限をかけて……とうとう炎にかかった。
「今ッ!」
炎によって一瞬動きの鈍った隙に、やちよが槍でゆりちゃんを捕まえた。数多の槍で関節を固められたゆりちゃんは少しの身動きも取れていない。
この隙にゆりちゃんの元まで行って、ゴーグルを思いっきり手で引っこ抜いて、そのまま三人分の魔力を集めて——
「戻って来なよ——!」
ゆりちゃんに、思いっきりぶつけた。
◇◇◇◇◇
——ウワサの分離に成功しました。後はキレートビッグフェリスのウワサを消せば、第七章は終了です。
ウワサを消すより先に、まずはゆりちゃんに操作を戻しましょうか。
「は、早く、早く止めないと……! 災厄が神浜市に……神浜市にワルプルギスの夜が来る!」
いや、パニック起こしてて移せないやん。ダメージを受けるとパニックは解除されるので、いろはちゃんにビンタさせて解除します。ヨシ!
ゆりちゃんが戻ってきた所で今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
いろはちゃんさりげなく三連ドッペルやってるけど大丈夫だろうか