陰キャに異世界転生は酷な件について   作:涅兎

1 / 1
再投稿で初投稿()です。
お察しの通り作者はちょっとアレなので、危機を感じた方はお逃げ下さい。


0. 終わり(ハジマリ)の話

 水溜まりに映る虚像のような、そんな景色が脳いっぱいに流れ込む。

 

《──確認しました。『体内外異常耐性ex』獲得……成功しました。続いて、『痛覚無効』獲得……成功しました》

 

 広がる世界は一面が同じ色で染められていて、端の方ではチカチカとナニカが光っていた。

 

《確認しました。血液が不要な身体を作成します……成功しました》

 

 周囲の音は壊れたスピーカーのようにガサつきながら耳に届き、思考には触れず通り過ぎる。

 しかし、脳内に直接響く無機質な声は鮮明に意識に触れた。

 

《これより、()()()()を開始します。

 確認しました。『××××』を獲得……何者かの阻害により失敗しました。代行措置を講じます……情報遮断により実行不能、この件は保留になります》

 

 次の刹那、景色が変わる。

 

『嘘だろ……なァ、嘘だと言えよ!!』

 

 声を荒らげる男が一人、そこにいた。

 

『お前は、俺を置いていくのか!?』

 

 怒りや絶望、様々な感情を秘めた瞳をこちらに向けて。

 迷子のような、縋るような、そんな顔をして。

 

『××××××××は! ×××や××××は!! お前が大切にしていた人間たちや他の奴らは、どうするんだ……!!』

 

 震える拳を握りしめて、頬を歪める程に奥歯を噛み締めて。

 

『っ……わかってる、わかってるんだよ! でもなァ、全てが憎くて仕方ない!! お前が助けたあのガキも、お前がやってきたことも! お前も、俺も、アイツらも、この世界も! 俺から! 俺たちから!! お前を奪う全てが、何もかもが! っ、……許せねぇんだよ』

 

 そうやって彼は、世の不幸を嘆く詩人のように言の葉を紡いだ。

 

『……ごめんね、××』

 

 気づけば全てが薄れていった。

 声が遠くに、遠くに……もう、何も聞こえない。

 彼が何を言っているのかわからない。彼の顔が、見えない。

 残るはただ一つの想いだけ。じんわりと広がる、ただ一つの願いだけ。

 

 ──愛する者達に神の御加護があらんことを

 

《──確認しました。ユニークスキル『贖罪者(ツグナウモノ)』を獲得……成功しました。続けて、ユニークスキル『祈願者(ネガウモノ)』を獲得……成功しました》

 

 もう、彼らが悲しむことのないように。

 

《警告します。セイヤクにより、能力を使用する際に魔素を利用することが出来ません。代わりに、生命エネルギーを利用することになります。また、能力使用後に痛覚無効を無視しそれに比例した痛みが生じます。

 勧告します。他者のために自身を犠牲・代償にするならば、奇跡を起こすことが出来るでしょう》

 

 感覚などとうに無くなってしまったと思っていたのに、頬に何かが伝ったような気がした。

 胸が張り裂けそうで、息苦しい。思い出せそうで思い出せない。

 脳裏を掠めたあの人たちは誰だったのだろうか。赤で染る前に一緒にいた人たちはどんな顔だっただろうか。

 記憶に点々と穴が空いたみたいに、虫に食われた葉のように、欠けている。足りない。

 

(ねぇ、誰か……教えてよ)

 

《確認しました。神々からの贈り物(ギフト)です。『××××』より、ちゅ……つ、記…………を、か、……し、た》

 

 顔が、思い出せない。愛した者達の顔が、靄がかる。

 

《…………に、よ、……を───》

 

 そして、幕が下りるように視界が暗くなった。




更新はぼちぼち(クッソ遅いですが)していきます。

過去に投稿した内容と少し(いや大分)変わってます。
諸事情により自分勝手ですが前回のものを削除し、少々書き直して再投稿させていただきました。前回、お気に入りなどをしてくださった方、申し訳ございません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。