転生したら愛の重い魔女に囲まれた件について(白目) 作:トロロ将軍
戦闘描写が難しい・・・。
「爆撃術式!」
放たれた銃弾が地面に着弾し爆発を起こし、着弾地点にいた小型の地上型ネウロイが数機吹き飛ぶ。生き残ったネウロイを地上部隊が掃討していくのが見える。
第1ウィッチ大隊から魔導士3名が引き抜かれて3日が経過したが、今だダイナモ作戦発動の報は聞こえてこない。余程船舶が集まらないのか、もしくは別の事情があるのか・・・。
「タカシマ中尉、友軍の爆撃が始まります。」
ルマール軍曹の示す方向を確認すると、中型の双発爆撃機が6機編隊を組んで爆撃をおこなうところだった。
『ウェリントン爆撃機』
ブリタニア空軍が派遣した欧州連合軍への支援戦力だ。どうせなら爆撃機よりもウィッチを送ってほしいと思うところだが、ブリタニアにとって欧州大陸は最早沈みかけの船。そんな船に貴重なウィッチなど派遣しないだろう。寧ろ爆撃機を派遣してくれたことに感謝すべきだろうか・・・。
ウェリントンは中高度から爆弾を投下すると機首を返して帰路に就く。地上では爆発に巻き込まれたネウロイが多数撃破され、残ったネウロイも傷だらけだった。現在は地上部隊が重機関銃と対戦車砲で掃討を開始している。
(終わったな。)
そう思った瞬間、最後尾を飛んでいたウェリントンの左発動機が赤い光線によって撃ち抜かれた。
「爆撃機上空に小型ネウロイ12機!」
そう叫ぶと同時に俺とルマール軍曹はネウロイに向かう。攻撃を受けたウェリントンは何とか飛行しようと操舵するも、やはり片肺では苦しいのかどんどん高度が下がっていく。
「軍曹!奴らの狙いは爆撃機です!」
4機の小型ネウロイを撃破するも、奴らは俺達を無視し被弾したウェリントンに群がろうとしている。余程先ほどの爆撃を脅威に感じたのだろう。しかしこれは好機だ。敵がこちらを攻撃してこないのであれば一方的に撃墜できる。ウェリントンの搭乗員には申し訳ないがこのままネウロイを引き付けてもらおう。それに敵を早く殲滅すればその分乗員の生存率も上がる。残り8機、俺とルマール軍曹ならばすぐに撃墜できる。
しかし、予想外なことはいつも突然訪れるものだ。
「駄目です!」
「ルマール軍曹!?」
突然俺の横を飛んでいたルマール軍曹が前に出て、ウェリントンを守るようにシールドを張り出したのだ。
「ルマール軍曹、何を!?」
「爆撃機の搭乗員を守らなくちゃ!」
そう叫ぶルマール軍曹だが、連日の出撃で魔法力が回復しきっていないのか、攻撃を受けるルマール軍曹の表情は苦しそうだった。
ルマール軍曹も馬鹿ではない、この好機とウェリントンの搭乗員数名の命を天秤に賭け、ネウロイ撃墜に天秤が傾いたはずだ。しかし彼女の優しい心が身体を動かした。否、動かしてしまったのだろう。現状の軍人としての正しい答えは、早急に小型ネウロイを排除し、制空任務に就くことだ。いつまた増援のネウロイが現れるかわからない。だから俺はウェリントンの搭乗員を見捨てる判断をした。
だからこそ俺は、他者を見捨てない心優しいジョーゼット・ルマールという少女の行動を微笑ましく感じ、軍人としてのルマール軍曹の行動に苛立ちを感じた。
今ここでルマール軍曹を失えばブレストの防空は崩壊する。恥ずかしい話だがウィッチである彼女ただ1人を失うだけでブレストの航空戦力は半減してしまうのだ。
(早期殲滅の好機は失ったが、まだ一方的に攻撃はできる。)
三八式歩兵銃はボルトアクションゆえに連射がきかない。ルマール軍曹の機関銃を失った今、即座に全機の撃墜は不可能だが、一方的な撃墜は今だ可能だ。俺は三八式歩兵銃を構えると近くのネウロイに照準を合わせる。
射撃・・・命中。
着弾と同時に砕けるネウロイ。俺は最後まで見届けることなく次の目標に照準を向ける。
射撃・・・命中。
ただひたすらに射撃をおこなう。制限時間はルマール軍曹のシールドが持つまで。
残りネウロイは3機。俺は新たな弾を込める為腰の弾薬入れを開ける。しかし、ここでも問題は発生する。
(弾切れ?)
弾薬入れの中は空っぽだった。扶桑陸軍航空魔導士の小銃弾の携行数は120発。しかし度重なる撤退戦における物資の損失。そして補給状況の悪化により、魔導士の携行弾数は120発から半数の60発まで減らされていた。そうした中での爆撃術式による対地支援任務。携行弾を全て使い果たしていたのだ。
俺は腰のホルスターから一四年式拳銃を取り出す。歩兵銃が使用できない際の予備装備。歩兵銃と違い命中精度が心もとないので今まで使用していなかったが贅沢は言えない。俺は少しでも命中率を上げるため、最高速度でネウロイに肉薄する。
手を伸ばせば触れれそうな距離。引き金を引きネウロイへ向け拳銃弾を3発放つ。銃弾を受け砕けるネウロイ。急げ、ルマール軍曹はもう持たない。近くにいたもう1機にも3発喰らわせる。残り1機。
最後の1機はルマール軍曹のすぐ正面。俺は持てる速度を発揮してルマール軍曹とネウロイの間に割り込み、銃弾を叩きこむ。しかしネウロイが砕ける前に一四年式拳銃のボルトが解放状態になる。ホールドオープン、弾切れだ。予備弾倉はない。だがまだ手はある!
俺は左腰に下げている三十年式銃剣を抜くと、刀身に魔力を流す。
「くたばれ糞野郎!」
魔力を纏い輝く銃剣を拳銃弾で傷つけたネウロイの装甲に突き立てる。強い抵抗を感じるが力で押し切る。そして刀身を全てネウロイに埋め込むと足の裏に魔力を込め、力いっぱい蹴り飛ばした。銃剣が突き刺さり砕けるネウロイ。歩兵銃と拳銃を撃ちきり銃剣を失った。これで看板だ。
「ルマール軍曹、ご無事ですか?」
振り向いてルマール軍曹を見るととても疲弊しているのがわかる。ネウロイの攻撃を一身に受け、シールドを全開にしていたのだ。当然だろう。
「タカシマ中尉、その・・・私・・・」
「ルマール軍曹。ウェリントンが着陸するみたいですよ」
俺はルマール軍曹の言葉を遮りウェリントンを指さした。どうやら上手く滑空飛行をおこない着地を成功させたらしい。着陸したウェリントンに地上部隊が駆け寄り救助活動をおこなっているのが見える。
「あなたが守った命です。軍曹。」
「でもタカシマ中尉。私は・・・」
今にも泣きそうなルマール軍曹の言葉を手で制す。
「続きは帰ってからにしましょう。もうクタクタです」
おどけた口調で言った言葉が面白かったのか、笑ったルマール軍曹が頷き、帰還指示を出す。
焦ったが何とかルマール軍曹とウェリントンを守ることができた。今回は二兎を得ることができたが、こんなことは本当に奇跡なんだろなぁ・・・。
そうなことを考えながらルマール軍曹の後ろを飛んでいると、ふと太陽から影が近づいてくるのが見えた。友軍?いや・・・あれは!?
「軍曹!」
俺は速度を上げ、ルマール軍曹を背にかばい防殻術式を展開する。既に大量の魔力を消費しているルマール軍曹にシールドは厳しい。その点俺はまだ魔力残量に若干余裕がある。光線ならば防殻術式で防ぐことが出来る。
そう・・・光線ならば。
「自爆型!?」
太陽を背に迫ってきた小型ネウロイは光線を放つことなく防殻術式に体当たりし、爆発した。
防殻術式では防ぎきれなかった爆風が身体を焼き、腹部に激痛を感じる。見るとネウロイの破片が刺さっていた。
ルマール軍曹の安否を確認しようにも声が出ない。顔を向けると必死な形相で俺に向かって手を伸ばす軍曹が見える。怪我はなさそうだ。
(あぁ、ルマール軍曹・・・よかった。)
それが俺の見た最後の光景だった。