魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter 作:戸礼太
戦闘魔法少女達が魔法の杖を手に空を舞い、空戦したり心を通じ合わせたりする、そんな物語である!
そしてこれは、そんな作品に登場する人物達の愛と勇気の記録である!
では『with Dark_Matter』とは!?
そんな愛と勇気の記録の物語に、ドブみたいな目をした魔導師ならざる者、学園都市第二位の
プレシア・テスタロッサ事件。
ミッドチルダの魔導師プレシア・テスタロッサが起こした指定捜索
担当は時空管理局巡航八番艦『アースラ』とそのスタッフ。
実行役として活動していたプレシアの「娘」フェイト・テスタロッサの魔導師資質は高く、捜査は一時難航。
しかし現地の民間協力者、高町なのはの協力と戦闘の中での説得により、フェイトは真実に近付き始め、
絶望と痛みと涙、
それでも少女達は、立ち上がる事を、立ち向かう事を続け、
結末は事件の規模と比較すればごく静かなものだった。
プレシアは愛娘の遺骸と共に帰る道無き死地へと旅立ち、
事件は終焉を迎え、
友達になりたい事を伝えた少女と、まっすぐな瞳と言葉に向き合う事を決めた少女。
二人の少女の時間は、出逢ってから初めて互いに名前を呼び合う事で、始まりを迎えた。
そして、この事件に関与していたとされるもう一人の現地民間協力者で非魔導師の人物。
現地世界における最先端科学技術の粋を集め、超能力開発を進めている学園都市という特殊な街から秘密裏に派遣されていた、突出し魔法ならざる
平凡な小学三年生兼魔導師、高町なのはの朝は早い。
午前四時三十分に起床。
これが毎日の習慣。
フェレット形態のユーノ・スクライアはまだ寝ている。
彼女はボーッとした寝ぼけ
『Good morning my master』
「うん…おはよ、レイジングハート」
待機状態の愛機、レイジングハートが告げ、眠そうにしながらも笑顔で返事するなのは。
午前五時にはユーノと一緒にこっそり家を出て桜台 登山道にまで行く。
朝は野外で魔法の練習。
なのはの友人、そして魔法の師でもあるユーノとレイジングハート。
指導者見学の元で心身共に充実した時間を過ごす。
朝食までの約二時間のトレーニングを行い、帰宅後は家族と朝食。
両親と兄、姉の四人の家族には魔法については内緒にしている。
談笑しながらハムエッグやトーストを食べている、絵に描いたような家族団らんの様子。
友人兼師匠の
しかし、この一見のんびりした朝食中も実は、身に付けたレイジングハートがなのはの魔力に強い負荷をかけている。
それにより、日常の一挙手一投足に魔力を消費するという、いわば『魔導師養成ギプス』的な効果を発揮。
並の魔導師であれば立ち上がる事すら困難な負荷の中、彼女は平然と日常生活を送っている。
本人曰くは、
「最初はちょっと辛かったけど、今はそんなには」
との事で、通学や体育の時間等は大抵この状態。
なのはの通う私立聖祥大附属小学校では、なのはもごくごく普通の女の子。親友のアリサ・バニングス、月村すずかといつも通りに挨拶を交わす。
授業中はもちろん真面目に聞いているが、実はこの間も訓練をしている。
二つ以上の事を同時に思考・進行させるマルチタスクは、戦闘魔導師には必須スキルで高速移動・回避をしながらの攻撃防御をしつつ次の魔法の発動。これ等は日頃の訓練量な明確に現れる。
レイジングハートが送信する仮想戦闘データを元に、心の中でイメージファイト。
飛翔・索敵・攻撃・防御の各魔法を使用しての空戦は、高度な戦略と高速な思考を必要とする。
なのはの戦闘スタイルは多方向から襲撃する誘導操作弾と一撃必殺の魔力砲撃の二種類。
レイジングハートからのイメージは限り無く実戦に近い経験をなのはに与え、彼女はそれを胸に日々戦闘経験を積んでゆく。
友達や家族との一時は流石に休憩するが、それ以外の時間は暇さえあればこの訓練を彼女は続けている。
放課後も塾や家の手伝いが無い日は夕方も練習。
ユーノ・スクライアに広域結界を展開してもらう。
魔法の防護服バリアジャケットを装備して上空で魔法の実践使用。
レイジングハートをシューティングモードにして構え、直射砲撃魔法の『ディバインバスター』等の各種砲射撃魔法を放つ。
砲撃の実射は疲労もするが重要なトレーニングでもある。
帰宅後宿題を終えたら夕食後もまた練習。
夜間の訓練は主に高速機動。
高火力・重装甲タイプのなのはは機動系が重い為、効果的な機動戦略を日々研究している。
グッタリするまで練習し、帰ったら風呂に入って午後八時半にはベッドにダイブして就寝。
全力での睡眠から覚めれば体力も魔力も完全回復している。
このサイクルを日曜日以外は毎日これを繰り返している。
「いや……流石にそれは、やり過ぎじゃないのか?」
顔をしかめ、引き気味に言ったのは、黒い制服に黒髪の少年。
年齢より幼くも見えるが十四歳となのはよりも年上。
時空管理局執務官、クロノ・ハラオウン。
ユーノがレイジングハートを通して『アースラ』へ通信を行っている。
『そうは思うんだけど、なのははどうも魔法の練習が楽しいみたいでさ。レイジングハートもなのはの成長に協力するのに燃えてるみたいだし』
「よく体が持つねえ…流石はなのはちゃんだ。ユーノくんが持たないでしょ?」
『それは…まあ、何とか…』
クロノとは対照的に感心しているのは、茶色い短めの髪の少女。クロノより二つ年上の十六歳。
アースラの通信主任兼時空管理局執務官補佐官、エイミィ・リミエッタ。
年若いが事務員兼通信士として優秀で、チームからの信頼が厚い。クロノとは学生時代からの友人で、卒業後も概ね同じような進路を辿っている。
彼女にとってクロノは気の合う友人で、ボケとツッコミの間尺の合う可愛い弟分であり同時に職場の上司でもあるという複雑な関係だが、持ち前の気楽さで上手くやっている。
「まあ、やり過ぎは良くないと一応伝えてくれ」
『ああ…それじゃ』
通信が終了する。
「若い子達は元気で良いねえ…」
とエイミィがのんびりと呑気に言った。
そこへ、自動ドアがプシュッと駆動し開く。
「お邪魔します…。お茶、持ってきたよ」
三つのマグカップとポットを乗せたお盆を抱えて、落ち着いた声色の金髪に黒い服装の、端正な容貌の少女が入ってきた。
高町なのはの友人でミッドチルダ式魔導師の、フェイト・テスタロッサ。
「ユーノと通信してた?なのは、元気かな」
「元気一杯だって。毎日毎日、魔法訓練に明け暮れてるってさ」
エイミィが楽しげな雰囲気で答える。
「そっか…なのは、また強くなっちゃうのかな」
なのはの顔を思い浮かべて懐かしそうにゆったりと微笑んだフェイトはふと、クロノの方を向いて告げる。
「クロノ、後でトレーニング付き合ってね」
「ああ」
後日、
「……でね、スターライトブレイカーの発射シークエンスを少し変えてみたんだ。試射してみたいんだけど、良いかな?」
弾んだ声で、既にバリアジャケット姿で魔方陣を展開しているなのははユーノに尋ねた。
「うん!でもブレイカーは目立つから、強い結界を用意するね」
「あ、そうだね。お願い」
スターライトブレイカーとは周辺魔力を集束して放つなのは最大の放射系魔法の事。
ユーノは前にそれで失敗してるし、と言いなのはもそうだよねえ、と苦笑いする。
ユーノはなのはの左肩に乗ったまま、尋ねる。
「発射法変更ってどんな風に変えたの?」
「うん…あれって発射が遅くて高速戦では使えないから…」
「やっぱり高速化?」
「ううん、逆!チャージタイムを増やして威力を大幅アップ!」
彼女は首を横に振ってやる気たっぷりに拳を握った。
「最大威力の強化を最優先してみたの」
「そ…そう……」
ユーノは驚き半分に苦笑し、なのはの肩から降りて広域結界を展開する。
「広域結界展開ッ!…良いよなのは!」
広域結界とは、周辺の空域を付近の空間から切り抜き、相互干渉できないようにする結界魔法の事。
「うん!」
返事と同時に魔法を展開しチャージを開始する。
『Starlight Breaker Standby Ready』
シューティングモードのレイジングハートがカウントダウンを開始。
『count 9、8、7、6_』
その様子を、時空管理局艦船『アースラ』が監視していた。
というのも、以前に現地の民間協力者という建前で管理局に関わっていた学園都市出身の人間、垣根帝督に忠告された事があったのだ。
彼曰く、
「魔法の事については俺は適当に誤魔化したりはぐらかしたりしとくが、今後も
との事だった。
そんな訳で、なのはとユーノの様子を見ていた時空管理局提督アースラ艦長のリンディ・ハラオウンは、同じく監視していたクロノが何か別の作業をしている事に気付いた。
「あらクロノ、どうしたの?何か調べ物?」
二人は実の親子でもあるが、同時に上司と部下でもある為、クロノはもちろん部下として受け答える。
「いえ…、なのはに教導メニューを送ろうと思ったんですが、結界内でトレーニング中みたいで」
「なのはさん、訓練に夢中みたいね。実力を付けるのは良い事なんだけど」
リンディは少しだけ気掛かりなようだ。
「…………?あれ、何だろこの反応」
同じように監視していたエイミィ・リミエッタが何かに気付いて怪訝そうにしている。
一方、結界内のなのはとユーノ達の所は、魔力の集束が進み周辺の大気が渦巻き風が吹いている。
「むむ…!これは結構スゴいかも!ユーノくん、ガツンと来るから気を付けてね!」
「う…うんっ!」
『4、3、2、1_』
「スターライトぉ…ブレイカーッ!!」
『Starlight Breaker』
ゴアッッッッッ!!!!!!!!
瞬間、桜色の閃光がなのはとユーノだけばかりか、結界内全体を覆った。
「「……ッ!!」」
リンディもクロノも口をあんぐりと開け、絶句する。
エイミィが驚きながらもコンソールを叩いて解析結果を報告する。
「結界、内側から破壊…。えーと…なのはちゃん達は…」
「なのは!ユーノ!大丈夫か?生きてるかー?」
閃光と爆煙が晴れてくると、なのはとユーノが揃って仲良く目を回して引っくり返っていた。
バリアジャケットも煤汚れてボロボロになっている。
「ふええ…、な…何とかー…」
『Sorry my master』
「_単純魔力砲撃で広域結界を破壊?『貫通』じゃなくて?」
「『結界機能の完全破壊』だよ」
クロノに件の事を後から聞いてフェイトは目を丸くしている。
彼は驚きと呆れを織り混ぜたような調子で語る。
「威力を高めようと改良した結果、付加効果が付いたらしい。全く、理論でなくて感覚で魔法を組む子は何とも恐ろしい」
「でも、凄いよね」
わたしも負けてらんないなー、とニコニコしているフェイトを見て、
「…まあな」
そういう君も結構凄いんだがな、とクロノは目を僅かに細めた。
その頃なのはは自室のベッドにうつ伏せでへばっていた。
彼女は自爆により魔力エンプティ、全治一日半となった。
「うう…失敗したー…」
「まあ、今日はゆっくり休んで…」
こんな風に時々転んだり迷ったりしながらも、高町なのはの日々は過ぎてゆく。
親友との再会に向けて、昨日よりもっと強い自分でいる為に。
後日、リンディの推薦でフェイト・テスタロッサと使い魔アルフは時空管理局嘱託魔導師認定試験を受けていた。
これに合格すると異世界での行動制限がグッと少なくなり、フェイトにとってはリンディやクロノの手伝いもできるようになるのだった。
P・T事件の重要参考人で裁判中の嘱託試験は異例ではある。
しかし嘱託資格が有ると本局での行動制限も減る上、本人達が局の業務協力に前向きだった。
管理局側からしても、優秀な人材なら過去や出自に文句は無く、大切なのは現在の意志と能力なのだから。
彼女は一発合格を目標に意気込んだ。
筆記試験はほぼ満点、魔法知識も戦闘関連に関しては修士生クラス。
儀式魔法も天候操作に長距離転送フィールド形成等の、儀式魔法四種を発動し儀式実践をパスし休憩を挟んで最終試験の実戦訓練を受ける。
驚いた事に試験官はクロノ・ハラオウンだった。
というのも、AAAクラス魔導師の戦闘試験をできる試験官となると中々手の空いている者がいなかったからだ。
フェイトの単身戦闘力を見る為なのでアルフは見学、彼女の試験や連携戦はまた後ほどとなる。
クロノ・ハラオウンはフェイト・テスタロッサより格上のAAA+ランクで訓練でも殆ど勝てた事は無い。
それでも彼女は勝たなきゃ!とより一層意気込み気合いを入れる。
_あの時とはもう違う。
迷わない、負けない!と。
……互角の戦いを演じたが、戦術戦略で一枚上手のクロノに惜敗した。
エイミィ曰く「結構本気モードでした」との事。
フェイトは初め、『負けたら不合格』と勘違いしへたり込んでしまったが、クロノとエイミィが戦闘技術を見るだけだから、別に勝敗は関係無いと説明し驚いた。
それに先ほどの戦闘も得点は低くなく、試験は続行される。
次からアルフとの連携戦の試験が始まった。
…フェイトの魔法技術も使い魔との連携もほぼ完璧、戦闘も攻撃に傾倒し過ぎだが合格点。
嘱託魔導師としては申し分無し。
せいぜいウッカリ屋な所は今後気を付けてもらうとして、これをもってめでたくAAAランク嘱託魔導師認定がなされた。
認定証の交付の時に面接があるから後はそれだけ、となった。
フェイト・テスタロッサ
時空管理局認定AAAランク魔導師
本日付を持って嘱託職員として非常勤勤務を開始。