魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter   作:戸礼太

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魔導師襲撃事件

12月1日、深夜。

 

前回の事件から半年あまり。魔法の練習を続けつつも平穏に暮らし、フェイトとの再会を待つなのは。

だが、そんな高町なのはの前に、突如謎の襲撃者が現れる。「闇の書」という謎の書物を手に魔導師の魔力を集める少女。

救援に訪れたフェイト・テスタロッサと使い魔アルフ、ユーノ・スクライアは、襲撃者ヴィータを何とか退けるが、その仲間の守護騎士シグナムとザフィーラの加勢を受ける。圧倒的な戦力差にピンチの一同。

レイジングハートは中破、バルディッシュも大破され、そしてフェイトもアルフも、ユーノも押し切られてしまった。

管理局員が現着した時には襲撃者の姿は無かった。

回収保護されたなのはは時空管理局本局内の医療セクションに収容される。

相手も非殺傷設定だった為か、全員大した負傷は無く、なのはも眠っているだけだった。

 

ただし不審点が1つ。

 

魔力の源リンカーコアの異常な萎縮による、一時的な魔力閉塞。

要するに魔力が奪われていた。

 

 

次元航行艦船『アースラ』がメンテナンスで現状使用不可能の中、『闇の書事件』解決の為、アースラクルー一同は、海鳴市に臨時駐屯所を設置し、対策本部を設立。

その後フェイトはリンディと共に、なのはの保護を理由に海鳴市内で高町家の近所のマンションに引っ越してきた。

余談だが、この時にフェイトはなのはの親友2人に初対面。

フェイトは私立聖祥大附属小学校の、なのはと同じクラスに編入した。

闇の書事件解決の為に活動する一方で、学校そのものが初体験なフェイトの色々と危なっかしいスクールデイズが始まった。なのはもすずかもアリサも、何だかんだで目が離せない日々を送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12月2日、昼頃。

 

「……そーいや、もう半年ぐらい経つんだったな。あの面白事件から」

 

学園都市の第17学区。ここは自動化された施設の多い工業区で、他学区に比べて人口が極端に少ない。

そこに存在する1棟のビル。

大半はデコイの施設で、実態は暗部組織『スクール』のアジトだった。

そのアジトにリーダーの学園都市第二位の超能力者(レベル5)、『未元物質(ダークマター)』の垣根帝督がいた。

彼は別のアジトに移動する為に手持ちの荷物を纏めていた所、収納箱から使っていない見覚えのある通信用端末が出てきた。

学園都市製のものではない。かといって外部のローテクな端末でもない。

およそ半年前に時空管理局から、より厳密にはクロノ・ハラオウンから借りたままの連絡用通信端末。

意図して借りパクした訳ではなかったが、電源を切ったまま長らく仕舞っていた為、何だか逆に面倒臭くなってきてそのまま放置した。

 

「……、」

 

今更になって返すとなると、わざわざ自分の居場所の学区を教えて取りに来させるか、暗部としての用事でもない為外出許可を受け取るのに申請書類や発信器付のナノデバイスの注射等を受けなければならない。

しかし、このままというのも色々な意味で良くない。

 

「……面倒臭せえな」

 

やむ得ず、端末の電源を入れた。

問題無く起動して数分、特に着信等は無い。履歴はびっしりだったが。

 

「流石に今更かけては来ないか_ッ!?」

 

ピピピッ!と、言い終える前に着信音が響き渡る。

発信者通知欄にはもちろん、クロノ・ハラオウンの名前が。

それを見て、ありゃりゃと小さく笑って回線を開いた。

 

『良かった、繋がった』

 

有視界通信の立体画面に映っているのは、黒のスーツに白のスラックスという執務官服姿のクロノ・ハラオウン。

 

「よお、久しぶりだな」

 

『全く、今の今まで音信不通にして……』

 

「悪かったよ。俺も電源切ったまま忘れちまってさ、ついさっき思い出した訳だ」

 

軽い調子で謝る垣根に、ハァと溜め息を吐くも、すぐに切り換えて真面目な表情で少し急いだ雰囲気で告げる。

 

『…いや、今はとりあえずどうでも良い。それより、ここ最近何か無かったか?』

 

彼がそこはかと無く焦っているようにも感じ取れた垣根は、意図を汲み取ろうと受け答える。

 

「魔法絡みでか?…いや、学園都市では特には。せいぜい6月頃と最近…ここ数日で1回くらい海鳴市(あっち)でアンノウンが検出されたぐらいだな。学園都市はあんまり注目してないみてえだけど」

 

もちろん正確には、検査チームを派遣して調べたい所ではあるが、今の学園都市にとっては『超能力者(レベル5)』等の能力開発やその他各種の技術実験・開発が最優先事項なので後回しになっている。

半年前のように空振りに終わる(ように垣根帝督が仕向けた)かもしれない可能性が高いからだ。

 

『そうか…君自身は?』

 

「あん?いや別に。少なくとも魔法絡みは無いな。……海鳴市(あっち)で何か有ったか?」

 

通信端末借りパクの件を棚上げしてまで、自分の近況を尋ねてきた事に疑問を感じ、目を細める。

クロノは垣根の様子を見て件の事について話し始めた。

 

『理解が速くて助かる。…早速本題なんだが、なのはが昨夜に何者かに襲撃を受けた。救援にフェイトとアルフとユーノが向かったんだが…』

 

「へえ、あいつが。殺されたのか?」

 

垣根は意外そうな顔で目を丸くするが、動揺した様子は無い。

まるでそういう事に慣れている(・・・・・・・・・・・)かのように、自然な態度だった。

 

『…いいや。身体的ダメージは大した事無いんだ。今は本局の医療セクションで眠っている。ただ、これが1番重要な事なんだが…魔力が奪われていた』

 

「魔力が?つーか、魔力って抜いたりできるんだ?」

 

『やり方やスキルにもよるが、可能ではある。そして他の管理内外世界でも、現地の民間魔導師や魔力を有した大型の生物等が襲われて、同様に魔力が強奪されていた』

 

「同一犯の可能性が高い訳か。…で、俺は何を?」

 

『ああ、しかも複数犯で、レイジングハートとバルディッシュからの記録を見る限り、相当な手練れだ』

 

声変わりもしていない幼さの残る2人の少年。クロノ・ハラオウンと垣根帝督は、互いを見据えて意図を読み、腹の内を探ろうとしている。

 

数秒の沈黙。

 

先に口を開いたのはクロノだった。

 

『その襲撃者が学園都市に侵入して、君を襲うかもしれないから、気を付けて置いてくれ。申し訳ないが流石に管理外世界で学園都市(そちら)まで出向いて大っぴらに介入する事は難しい。君なら簡単には倒される心配は無いだろうが……』

 

なのは達はもちろん、クロノや武装局員よりも少ない魔力しか有していない垣根だが、襲撃対象にならないとは限らず、警戒し備えておくように注意を促す。

犯人側はなりふり構わないだろうが、基本的に管理外世界で学園都市側とは相互的に関係を持っていない為、存在が表沙汰になりそうなほど必要以上に干渉して現地世界に混乱をもたらす訳にはいかないのだ。

 

「それだけか?」

 

『ああ。端末はこの件が済んでからでも良い』

 

「ふうん……」

 

垣根の口元が段々つり上がっていく。クロノもそれに気付いて僅かに顔を渋らせた。

彼が何を考えてこれから何をしようとしているのか勘づいたからだ。しかも自分から動き出す時の行動力は馬鹿にできない。

 

「お前、今は海鳴市か?」

 

『今は任務中になるから答えられない』

 

「つまりソコにいるんだな」

 

『…いいや』

 

「まあ仮に?いなくても前の件で高町の家は特定済みだから、そっちに訪ねてみても良いんだが」

 

垣根もクロノの意図を読み、その上で言っている。

 

『………君はこちらからしたら、民間人で魔導師ですらない。ましてこちらからは_』

 

彼のセリフを途中で遮って、まるで心底楽しみなように笑いながら垣根帝督は告げる。

 

「だから俺から頼み込んでいるんだよ。この俺、垣根帝督が管理局に、自己責任で身勝手に協力と魔力強奪阻止に身柄の保護を申し出ているんだ。もちろん自己責任が前提だから実際保護はしなくて良い。まあ端末返却ついでに合流させてくれよ。どーせ海鳴市にいるんだろ?背景が思い切り生活感丸出しの住宅の部屋じゃねえか」

 

『そんな所も見て……。要するに面白そうだから首を突っ込ませろって事だな?』

 

「そういう事。まあアンタ等の邪魔する気は無いし指示には従うよ」

 

『拒否したら?』

 

「それなら勝手に出向いて好きに動き回る。もちろんお前等の言う事は聞かねえし邪魔もするかもしれねえし、何なら犯人側に回っちゃうかも?」

 

『それはもはや犯行予告にもなりかねないんだが……』

 

クロノはこめかみを押さえて思案する。

非魔導師だが実力者で、前回の現地での協力実績があるとはいえ、やはり民間人を不用意に事件に巻き込む事は本意ではない。

もちろん有能な駒は多い方が良いだろうし、少なくとも邪魔はしないと言っている。しかし本人が自らの意思で関わろうとしているとはいえ、やはりクロノには抵抗感があった。

だが、逆に頑なに拒絶したらしたで好き勝手に暴れに行くと予告し宣言した。

本当にそうするかは測りかねるが、満更嘘とも思えない。実際にそうなったらなったでより厄介な事になる。

早い話、興味本意で好き勝手に動き回られて、邪魔にならないよう制御下に置け。そうしたら加勢する。

答えが意図的に提示されていた。

 

『…学園都市から許可は出るのか?』

 

「出るさ。何せ魔力がアンノウンとしてまた観測されてはいるんだから。単にこの街が抱えてる案件の中では優先順位が低いだけ」

 

『…………、分かった。だが僕の一存では決められない。艦長(うえ)に掛け合って、許可が出たらで良いか?』

 

「ああ、良いぜ。まあ返事を待たずに明日には向かうから、その時また連絡くれ。俺も市内にまで着いたら一報入れるから」

 

『……分かった』

 

予防線を張られた。たとえリンディが却下しても、これでは意味が無い。

なまじ垣根帝督が超能力者(レベル5)の実力者だからこそ始末が悪い。彼が魔力も弱小だったら最悪放置しても良いのだが、中途半端に敵にサーチされそうな魔力は有していて、高い戦闘能力を有しているからこそできる恫喝に近い交渉。

垣根はそれを理解して、悪知恵を働かせてクロノに持ち掛けていた。簡単に相手の口車に乗らないばかりか、逆に口車に乗せるような悪どさ。

それをクロノも分かっていたからこそ気が進まなかったのだ。

 

『…じゃ、その時はよろしく頼むよん。執務官♪』

 

そう言うと垣根から有視界通信が切られた。

ここは海鳴市でのハラオウン家、そこのクロノ・ハラオウンの自室。彼は深い溜め息を吐いた。答えが確定している約束を取り付けられてしまったからだ。

 

自分より5歳も年下の少年に。

 

就業している訳でもない児童学生に。

 

背中から天使の羽みたいな似合わない翼を生やす悪人面のメルヘン野郎に。

 

公務員でありその道のプロである自分が言いくるめられた。

 

クロノ・ハラオウンは沈んだ表情で椅子から立ち上がり、重い足取りでリビングにいるだろう上司兼母に今のやり取りを報告しに向かう。

 

「余計に厄介な事にならなければ良いんだが……」

 

『闇の書事件』に垣根帝督という怪物が関わる事で、火に油を注ぐ結果にならないように祈って。

 

 

 

一方、垣根も『スクール』のエージェントに連絡を入れ、秘密裏に学園都市から外出する準備に取り掛かる。

サーチや解析用の機材は彼が自ら手配し用意し始めた。所詮研究解析は口実でデコイでしかない為、上に頼むまでもない。むしろ、学園都市側に何かしら自分の意図を勘づかれて機材に細工等されるかもしれない。そうなったら却って困る。

自分で準備した方が都合が良い。

準備にしながら、垣根帝督はゆったりと笑う。

 

「ここ半年暇で退屈してたんだ。せいぜい面白いものが見れりゃあ良いがな」

 

 

_そして翌日12月3日早朝、用意した1台のミニバンに乗り込んで、学園都市外周の陸路最大の搬入口となっている第11学区から出発して海鳴市へ向かった。

 

 

同日、昼間には海鳴市内に到着し、クロノに連絡を入れた。

一度アジトとして借り入れている半年前と同じ高級マンションに到着し、下部組織の運転手に待機を命じて機材等を搬入し、その後歩いてハラオウン家のマンションへ向かう事にした。

 

「高町家の近くか。普通のマンションだな」

 

垣根帝督は、紺色のカジュアルジャケットに黒いコートを纏って立っていた。

借りパク中の通信端末からクロノへメールを送っておき、ゆっくり階段を上がっていく。

到着してインターホンを押すとすぐにドアが開いた。

 

「いらっしゃい、待ってたわよ」

 

「うっす」

 

エプロン姿のリンディ・ハラオウンが出迎えた。

すぐ後ろには私服姿のクロノ・ハラオウンがいる。

 

「久しぶりね。寒かったでしょう?上がって」

 

「どうも」

 

挨拶もそこそこに、垣根は迎え入れられた。

コートを脱いでリビングに座り、軽くもてなしを受けながら件の『闇の書事件』の説明を受ける事になった。

 

「…その様子から察するに、どうやらオーケー出たみたいだな?」

 

「オーケーしなかったら別の意味で大変な事になりかねないからな。というか、殆ど恫喝だったし」

 

ニヤッとする垣根にクロノはジト目を向ける。

 

「まあそう言うな。あ、そうそう、借りパクしてた端末(これ)今返そうか?」

 

と言って、肩に掛けていた小さめのショルダーバッグから通信端末を取り出した。しかしクロノは首を振る。

 

「いや、今は良い。僕達との通信手段として事件解決までは持っていてくれ。……というか、借りパクの自覚あったんだな?」

 

「いやいや。返し忘れたのに気付いたのは学園都市に帰ってからだよ。まあ、面倒臭くなって黙ってたのも事実だけど」

 

「確信犯じゃないか」

 

とクロノが鋭くツッコミを入れた所で、お盆を持ってきたリンディが腰を下ろした。

差し出されたのは、リンディお気に入りのお茶セット。

寿司屋に置いてある湯呑みで抹茶が注がれている。ご丁寧に急須とシュガーポットにミルクポットがもある。いわばセルフ抹茶ラテのキット。

 

「……、」

 

それを見て、僅かに目を細める。垣根は他人の趣味嗜好にケチを付ける気は無いが、まさか自分にこれを差し出されるとは思わなかった。

リンディは構わず慣れた手つきで笑顔のまま、抹茶に角砂糖数個とミルクを注ぐ。

 

「はい、どうぞ♪」

 

「え」

 

「美味しいわよ♪」

 

「え」

 

ニコニコと柔和な笑顔でリンディは自身の特製抹茶ラテ擬きを勧めてきた。

垣根帝督はしばし押し黙った。別に甘いものが嫌いな訳ではない。むしろどちらかといえば好きな方だ。ラテの種類は多種多様で抹茶系も学園都市でも珍しくないのだが、わざわざ自分でしかも目分量で調合して作る人はほぼいないのではないか。

クロノやリンディ達には一切明かしていないが、垣根は他人の敵意や悪意には肌で分かるほど敏感で、自分に向けられていたらすぐに気付ける。しかしこのリンディ・ハラオウンという女からは一切それを感じられない。彼女はやり手のベテラン管理局員である一方で、垣根帝督には存在そのものが珍しいと思えるほど性根が善良な女性だった。故に、悪意やイタズラ心で抹茶ラテ擬きを勧められたらアッサリ突き返す所だが、それが無い。何と無く無下にしづらい。

彼はチラリとクロノに目を向ける。クロノは無言で、しかし目で「飲め」と語っていた。

 

「……、」

 

垣根は観念して湯呑みを手に取り、一口飲んだ。

 

「どう?結構美味しいでしょう?」

 

「……まあ、確かに。抹茶ラテの類いだと思えば」

 

特別に美味しいという訳でもないが、不味くはない。有り体に言うと想像通りだった。ただ、甘党のリンディが好んでいるのも理解できた。

 

「さて、それじゃあそろそろ本題を話そう」

 

クロノがようやく口を開いた。垣根が特製抹茶ラテを飲んだ時に何を思ったのか分からないが、一瞬フッと笑ったのがムカついたがとりあえず無視する事にした。

 

「今、僕達が追い掛けてるのは古代ベルカ発祥の第一種危険指定遺産。ロストロギア『闇の書』。古代ベルカの時代から4人の守護騎士と共に、様々な主の元を渡ってきたって言われてる。魔法も僕やなのは達のとは違うタイプなんだ」

 

リビングにホログラムの映像が映し出された。なのはと戦っているのは、赤い服装の密編みの髪型でなのは達と同年か少し年下に見える小柄な赤髪の少女。喜怒哀楽が激しそうな雰囲気で、ハンマー形のデバイスを振り回している。

 

フェイトと戦っているのは桃色を基調とした服装で刀剣形のデバイスを操る、騎士服と同色の長いポニーテールの髪型をした20代前半程度の見た目の、毅然とした表情の女性。

 

アルフと肉弾戦を演じているのは、紺色基調の服装の筋骨隆々の青白い無造作な髪型の浅黒い青年。使い魔の類いの存在なのか、アルフと同じように獣の耳と尻尾を生やしている。

 

そして、後半にスターライトブレイカーを撃とうとしている高町なのはから不意を突いてリンカーコアを掴んで魔力を蒐集した、緑基調の騎士服の金髪ボブヘアの、刀剣形の騎士と同年代に見える若い女性。一見丸腰に見えるが4つのリング指輪のように装着していたり振り子(ペンデュラム)のようなデバイスを操っていた。

 

リンディが説明を引き継ぐ。

 

「エンシェント・ベルカ…ベルカ式と言って、遠い時代の純粋な戦闘魔法。一流の術者は騎士って呼ばれる。魔方陣もミッドチルダ式とは違う形ね」

 

垣根が映像を見る。ミッドチルダ式魔方陣は二重の正方形を中心に配置した真円形なのに対し、ベルカ式と呼ばれる方の魔方陣は各頂点で小さい円が回転している正三角形をしている。

更に戦闘中にデバイスの中で何か爆発させて、一時的に出力アップさせた攻撃をしている。

 

「あのボルトアクションとリボルバー、あとあの弾丸は何だ?」

 

垣根帝督は初めて見るものに目を丸くした。

クロノが説明する。

 

「魔力カートリッジシステム。圧縮魔力の弾丸をデバイス内で炸裂させて、爆発的な破壊力を得る。頑丈な機体と優秀な術者、その両方が揃わなければ、単なる自爆装置になりかねない、危険で物騒なシステムだ」

 

「へえー」

 

彼は素直に感心した様子で聞いている。

 

「じゃあ高町達はそれのブースト攻撃で不意を突かれたってとこか」

 

「大体はそんな感じだな。なのはは一時的に魔法が使えなくなっているが、回復さえすれば大丈夫。だけど、レイジングハートもバルディッシュも修理中で、それが済むまでは2人とも戦闘不能だな」

 

「それまではあいつ等抜きで犯人探しか」

 

「そうなる」

 

「ふーん……」

 

記録映像を閉じ、ホログラムが消える。

垣根はしばらく黙って思案し、クロノとリンディに告げる。

 

「……なあ、改めて聞くが今まで例の事件て殆どこの街で起きてたんだよな?」

 

クロノが答える。

 

「ああ。もっとも、管理局が感知した以上は、追跡を避ける為に今後は狩り場を変えるかもしれない」

 

「だが、当初この街に集中しがちだったっつー事は、市内かその周辺地域に潜伏してるかもしれねえよな」

 

「そうね。その可能性はあると思うわ」

 

リンディが垣根の仮説に同意し頷く。彼は続ける。

 

「それで、俺は敵のサーチに引っ掛かる程度は魔力あるんだな?」

 

「まあ、一応は。ただなのはやフェイト所か、一般の武装対応の局員よりも小さいから、必ず感知されるかは分からない」

 

「でも可能性はあるんだよな?なら、ちょっと試してみてえ事を思い付いたんだけど、協力してくれるか?何でも良いから記録用と敵に俺が魔導師だと思わせる為に、ストレージデバイスを借りたいんだけど」

 

「ああ、それくらいなら大丈夫だと思うが……何をする気だ?」

 

「帝督く「垣根で良い」…ふふっ、相変わらずね。…あなたは魔法が行使できない体なのよね?」

 

クロノとリンディは、怪訝な顔で声を発した。そんな2人に、垣根帝督は年不相応な悪どい笑顔で告げる。

 

「まあ要するに、俺自身をエサに連中を誘ってみるんだよ。誰か1人でも俺というルアーに食い付いたらラッキー、何も無しでもまあ、サーチの基準が分かるだろうし満更ムダじゃねえ。どの道高町達の復帰は必要だろうしな。ダメ元でやってみようぜ」

 

「しかし、君の安全は?」

 

「そんなの分かってんだろ執務官。自己防衛ぐらいするし、たとえやられても自己責任だから良いんだよ」

 

少なくとも、負けないだけの自信はある。垣根はそう余裕の表情で語った。

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