魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter 作:戸礼太
クリスマスイブの前日、高町家にお呼ばれして夕食を共にするフェイト・テスタロッサとアルフ。
フェイトの帰り道、なのはとフェイト、すずか、アリサで、メールのやり取りが行われ、八神はやてにアポ無しでクリスマスプレゼントを持って行って驚かせようと決まる。
その頃、軌道上に浮かぶ時空管理局艦船『アースラ』。
執務官クロノ・ハラオウンは闇の書…いや、夜天の魔道書に関して調べていた。
彼はパネルに浮かぶ情報上の中に出てくる人物に、ギル・グレアム提督があった事に目を付けていた。
「……あれ、どうしたの?クロノくん」
「あ、うん。ちょっと調べ物を…」
エイミィ・リミエッタが入室してきてすぐにデータを消した。
「何だ、言ってくれればやるのに」
「いや、良いんだ。個人的な事だから…」
クロノは何か誤魔化すかのような、取り繕うように言い、そそくさと出て行こうとする。
「ああ…、闇の書についてのユーノのレポート、なのは達に送っておいてくれたか?」
「なのはちゃん達も、闇の書の過去については複雑な気持ちみたい……」
エイミィは心配そうな顔で答える。
「そうか……」
翌日、12月24日午後4時25分。海鳴大学病院。
はやての病室には、シグナム、シャマル、ヴィータがいて、静かに雑談していた。
突然ドアがノックされる。
「こんにちはー」
月村すずかの声。
ハッとするシャマルとシグナム。
はやてと話していたヴィータも振り向き、はやても意外そうな顔をする。
今日は約束を聞いていないのに、と。
「あれ?すずかちゃんや。はい、どーぞー!」
「「「「こんにちはー!」」」」
スライドドアが開き、4人の少女ととばっちりで来た1人の少年が入ってきた。
「わあ、今日は皆さんお揃いですか?」
「こんにちは、初めまして」
部屋に入りながら、すずかが嬉しそうに告げ、アリサが挨拶する。
「あ……ッ!?」
「……ッ!!」
「……、へえ」
2人のすぐ後に入ってきたなのはとフェイト、そしてとばっちりの垣根帝督。
彼女達は目を見開き驚愕に染まる。
凍り付く5人に対し、垣根だけは一瞬驚くもどこか納得したかのように、口許に小さな笑みを浮かべていた。
シグナムは思わず身構え、鋭い眼光を向ける。
ベッドのはやてが、不思議そうになのは達とシグナムをキョロキョロと交互に見ていると、不穏な空気を感じ取ったアリサが、
「あ、すみません。お邪魔でした?」
「あ、いえ…」
シグナムは咄嗟に取り繕うように返事をし、一足早く立ち直ったシャマルが取りなす。
「いらっしゃい、皆さん」
「何だ、良かったぁ。所で、今日は皆どないしたん?」
はやてが尋ねると、すずかとアリサがニッコリと笑って、
「「せーのっ!」」
両手を隠していたコートを一斉に取り、綺麗なプレゼント箱を出して差し出す。
「「サプライズプレゼント!」」
すずかが言う。
「今日はイブだから、はやてちゃんにクリスマスプレゼント♪」
「わぁー、ホンマかー!?ありがとうな~♪」
嬉しそうに声を弾ませ、2人からプレゼントを受け取った。
喜んでもらえて、すずかもアリサも嬉しくなりながら話す。
「皆で選んできたんだよ♪」
「後で開けてみてね」
クリスマスプレゼントをもらってはやては大喜びだが、ヴィータはなのはと素知らぬ態度で飄々としている垣根帝督を睨み続けていた。
「なのはちゃん、フェイトちゃん、帝督くんどないしたん?」
はやては怪訝な顔で尋ねた。
垣根はそっぽ向いてどうでも良さそうに、2人は戸惑いながら取り繕うように答える。
「別に」
「あ、ううん。何でも……」
「ちょっと、ご挨拶を……ですよね?」
フェイトは僅かに苦笑しチラリとシグナムに目を向け、なのはもあははと苦笑いする。
シグナムも話を合わせて、シャマルが場を取りなそうと前に出る。
「皆、コート預かるわ」
「「はーい♪」」
皆のコートを預かり、クローゼットを開けて掛けていくシャマル。
異変に気付いたフェイトが小声でシグナムに話しかけた。
「(……念話が使えない。通信妨害を……?)」
「(……シャマルはバックアップのエキスパートだ。この距離なら、造作もない)」
シグナムが彼女に小声で答えた。
今だになのはと垣根をキッと睨み付けているヴィータ。
垣根は無視しているが、なのはは済まなさそうな表情で言う。
「……そんなに睨まないで……」
「睨んでねーです。こーゆう目付きなんです」
「あぁ……」
むっつりしたままのヴィータに、はやてが咎めるように口を挟む。
「こーらヴィータ、嘘はアカン。悪い子やね」
クリスマスプレゼントを持ってきた友達を睨んだヴィータの鼻を摘まんで、お仕置きする。
鼻を摘ままれてフガフガ言うヴィータに、垣根は場違いを承知で小さく失笑した。
はやてはなのは達の素性も守護騎士達の闇の書に関する動きも知らないのだから、当然なのだが。
「お見舞い、しても良いですか?」
「ああ…」
フェイトがシグナムに尋ね、短く了承した。
また1時間ほど談笑し、帰る事になった。
数十分後、結界の展開された夜の市街地。
その一角の高層ビルの屋上で対峙する、守護騎士達と2人の魔導師と1人の能力者。
シグナム達から、闇の書の主は八神はやてであるという事実を告げられる。
(なるほどな。やっぱ事件がこの街で起き始めたのも、そういう事か)
垣根帝督が1人で納得する中、なのはとフェイトは少なからず驚き困惑している。
「はやてちゃんが…闇の書の主…」
毅然とした視線で佇むシグナムとシャマル。
闇の書を完成させればはやてが助かると信じている彼女達は、邪魔はさせないと告げてくる。
「悲願は、あと僅かで叶う」
「邪魔をするなら、たとえはやてちゃんのお友達でも…」
「待って!ちょっと待って、話を聞いてください!」
慌てるようになのはが言う。
ユーノ・スクライアからの報告を聞いていたなのはは、闇の書が完成するとはやて自身を食い尽くす事を説明しようとしたが、
「ダメなんです、闇の書が完全したら、はやてちゃんは_」
「でやあぁぁ!!」
上から、ヴィータの不意打ちを受けて咄嗟にプロテクションで防御。
話を中断せざるを得なくなる。
直接的な打撃は防ぐも、衝撃吸収まではできず後方へ弾き飛ばされフェンスにガシャンッ!!と激突する。
「ああっ!!」
「なのは!!」
フェイトが声をかけるが、すかさずシグナムが斬りかかってきた。
「たあああぁッ!!」
「ッ!!」
紙一重でかわし、フェイトもバルディッシュを展開し握る。
完全に話ができる状態ではなくなった。
「シグナム…」
「管理局に、我等が主の事を伝えられては困るんだ」
シャマルも告げる。
「私の通信防御範囲から、出す訳にはいかない」
フェンスにぶつかったショックでへたり込んだままなのはは、迫ってくるヴィータを見る。
「ヴィータ、ちゃん……」
戦闘の意志を見せるべく、ヴィータは瞬時に騎士服に切り替えて告げる。
「邪魔…すんなよ。もうあとちょっとで……あと少しで、はやてが元気になって、あたし達のとこに帰ってくるんだ。必死に頑張ってきたんだ」
いつの間にか、彼女の目からは涙が流れていた。
ヴィータは涙の雫を散らしてグラーフアイゼンを振りかぶる。
「もう、あとちょっとなんだから……邪魔すんなぁッ!!」
「あッ!!」
「でえいッ!!」
ドゴォォォォォンッッ!!!!
強烈な一撃が炸裂し、なのはのいた所から火柱が上がる。
ヴィータが肩で息をしていると、攻撃を凌ぎバリアジャケット姿になった高町なのはが、悲しげな表情で炎を突き破って出てきた。
「チッ……悪魔め……」
忌々しそうに、呻くように言ったヴィータに、彼女は悲しげな表情から、レイジングハートを握り意を決して毅然とした顔になりヴィータを見つめる。
「悪魔で……良いよ……。分かってもらえるなら……悪魔でも良い!悪魔らしいやり方で、話を聞いてもらうから!!」
「うう…うあーッ!!」
そのセリフに呼応するかのように、ヴィータは叫びながら再びなのはに襲い掛かる。
一度正面から衝突すると、そこから空中戦へ移行しぶつかり合う。
一方、垣根帝督とフェイト・テスタロッサはシグナムとシャマルの2人と対峙したまま。
「シャマル、お前は離れて通信妨害に集中しろ」
シグナムが告げるが、シャマルは垣根の方を見て答える。
「でも、それじゃあシグナムはニ対一に_「ああ、そこは心配するな」えッ!?」
垣根が小さく笑って口を挟む。
シグナムとシャマルは驚き、訳の分からなさそうな表情になり、彼の少し前に立つフェイトも怪訝な顔で振り向いた。
彼は冷笑を浮かべて構わず言う。
「俺は別にお前等に首を突っ込む気はねえ。俺は元々興味本意で首突っ込んできただけで、お前達自身やら八神はやての命やらには興味ねえんだ。話し合いでも殺し合いでも、やりたきゃ好きなだけやりゃあ良い」
散々な物言いだが、それなら直接的な戦闘が不得意なシャマルと以前彼に思わぬ苦戦を強いられたシグナムにとっては都合が良い。
フェイトも、黙って彼を見て言っている内容はともかく、鷹揚に頷いて了承した。
シャマルは騎士服に切り替えると、悲しげな微笑みを浮かべて垣根に告げる。
「こっちとしては都合が良いけど、それにしても……酷い言われようね?」
垣根は両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、くだらなさそうに口許に小さな笑みを浮かべて答える。
「はん。前に言っただろうが、俺はお前等の主や
「本当に…ね……」
シャマルと垣根のやり取りが終わると、次はフェイトが構えたまま口を開く。
「闇の書は、悪意ある改変を受けて壊れてしまっています。今の状態で完成させたら、はやては……」
「お前達が、あれをどう決め付けようとどう罵ろうと聞く耳は持てん。切り捨てて通るだけだ!」
「そうじゃない、そういう事じゃない」
「聞く耳は無いと言った。我々はある意味で、闇の書の一部だ」
それを理由になのはとフェイトの話を信用しない。
上空で戦うヴィータも、叫ぶ。
「だから当たり前だ!あたし達が一番闇の書の事を知ってんだ!!」
「じゃあ、どうして……ッ!!」
しかし、ヴィータの打撃を受け止めながら、アクセルシューターを展開する。
距離を取り、睨み合うヴィータとなのは。
なのはも彼女に叫ぶ。
「どうして、闇の書なんて呼ぶの!?」
「ッ?」
「何で本当の名前で呼ばないの?」
「本当の……名前?」
ヴィータは戸惑い、怪訝な顔で声を発した。
シグナムも騎士服を纏い、フェイトもバリアジャケットを纏う。
今までとは違う、より装甲の薄いバリアジャケットだった。
その名も、ソニックフォーム。
彼女のスピード重視の思想を体現した姿だった。
「薄い装甲を更に薄くしたか」
「その分、速く動けます」
「緩い攻撃でも、当たれば死ぬぞ。正気か、テスタロッサ」
「あなたに勝つ為です。強いあなたに立ち向かうには、これしかないと思ったから……」
フェイトは毅然と鋭くまっすぐな視線を向ける。
シグナムに勝って話を聞いてもらう為に。
シグナムは悔しそうにうつ向き、そして小さく告げる。
「こんな出逢いをしていなければ、私とお前は……良き友になれていただろうにな」
「まだ、間に合います!」
「止まれん……」
しかし、シグナムは魔方陣を展開し構え、彼女は涙を流しながらも闘志をたたえてフェイトを睨み立ち塞がる。
「我等守護騎士……主の笑顔の為ならば、騎士の誇りさえ捨てると決めた。この身に代えても救うと決めた!こんな所では……止まれんのだ!!」
そう、全ては主であるはやての為、涙しながらも、こんな形の出逢いでなければフェイトと、どれほどの友人になっていたかを想い、それでも……。
だがフェイトも譲れない。譲る訳にはいかない。
「止めます。わたしとバルディッシュが」
同時に斬りかかり、そこから空中での白兵戦に移行する。
空中戦を継続しながらも、なのはがヴィータに呼び掛ける。
「本当の名前が、あったでしょ?」
「闇の書の、本当の名前……」
対峙するなのはとヴィータ。
だが不意にどこからか禍々しい青い色のバインドが複数出現し、なのはの上半身に絡み付いた。
「ッ!!バインド……またッ!?」
それに気付いたフェイトが、鍔迫り合いをしていたシグナムと距離を取りプラズマランサーを発して目を周りに走らせ術者を探す。
そして、
「そこ!!」
虚空に放たれたと思われた雷撃は、何かに衝突し炸裂する。
何も無いはずの空中が僅かにうねる。
「はぁぁーッ!!」
そこへ飛び出し、フェイトが思い切り斬りかかった。
すると、そこから姿を消していた仮面の男が現れる。
フェイトから受けた一太刀で、纏っている服に一筋の傷を入れた。
「こないだみたいには、いかない!!」
「はッ!!」
突如彼女の左側から、
「うわあああッ!?」
不意を突かれ落下していくフェイトにバインドがかけられ拘束する。
「2人!?」
なのはが驚いていると、フェイトを蹴った方の男が突然、巨大な白い物体に叩き落とされた。
「ぐッッ!?」
体制を寸での所で立て直し墜落を阻止すると、白い物体の出所を見る。
仮面で顔は見えないが、横槍を入れられ忌々しそうにしているだろう。
白い物体は、翼だった。
なのはとヴィータ、フェイトとシグナムの戦闘を、やろうと思えばいつでも暴力的に横槍を入れられたり通信妨害中のシャマルを攻撃できたはずなのに、敢えて観覧していたその男。
薄く笑いながら眺めていたはずの垣根帝督の背には、6枚の白い翼が生えていた。
「ナイスだテスタロッサ。いやぁー中々出てこないから、今日はお休みなのかとヒヤヒヤしたよ。しっかしなるほどな、やられたやられた。あの時俺の頭蹴っ飛ばしたのもテメェ等の片方だった訳だ。いやぁー一本取られたぜ」
勝って気ままに言う彼の口調は、軽薄で愉しそうで、場違いだった。
仮面の男はそんな垣根を無視して青い魔方陣を展開、持っていた複数のカードを一斉に放ちなのは達に続いて、ヴォルケンリッター達も垣根帝督もバインドをかけられる。
「ああッ!?」
「なっ!うう…ッ!!」
「うあッ!!」
なのはが、これって一体……?と困惑する。
仮面の男達は、守護騎士達の味方ではなかったのか。
「この人数だと、バインドも通信防御もあまり持たん。早く頼む」
「ああ」
仮面の男の手には、闇の書が。
「ああ!いつの間に!?」
闇の書の残りの空白のページが開き、魔力蒐集を開始する。
蒐集の対象は、
「う!!うわあああッ!?」
「うっうううううッッうあああああッッ!!」
「あッ!!ああ!ああああああッ!?」
3人の守護騎士達から、リンカーコアが露出する。
「最後のページは、不要となった守護騎士自ら差し出す」
ヴィータが叫ぶ。
「何なんだ!!何なんだよテメー等!!!?」
「プログラム風情が、知る必要も無い」
彼女達の魔力が根こそぎ吸収され、そうされる事で跡形もなく消滅してしまう。
そうなるはずだった。
だが、
ドッ!!
と、突如この場に正体不明の重圧が、全員に負荷と苦痛を与えた。
何が起きているのか誰にも分からない。
しかしこの横槍が原因で、闇の書の魔力蒐集が中断され無理矢理引きずり出されたリンカーコアが戻っていき、闇の書の発光も止まってしまった。
「く……何が_ッ!?」
バギンッ!!という何かが割れるような奇妙な音が聞こえた。
パキパキ、バキバキと段々音が大きくなっていく。
全員が音源の方を向くと、同じように拘束されている垣根が笑いながら佇んでいた。
怪しく発光する白い翼を構え、とてもバインドをかけられている状況とは思えないほど余裕そうだ。
いや、違う。拘束など、されていない。
彼に絡み付くバインドは、まるでガラス細工や陶磁器が割れるように亀裂だらけになって次の瞬間、バリンッ!と粉々に砕け散った。
「この俺が、こんなもので止められるとでも思ったのか?全く同じ手が2度も通用するかよ」
シャッ!!
と6枚の翼が一斉に伸びて2人の男に襲い掛かる。
「「クッ!!」」
質量を変え、長さを変え、その性質さえも変えて殺人兵器と化した白い翼の直撃を、それぞれギリギリの所で回避するも肩口や袖口、仮面の端を削り取り手傷を負わせる。
翼を引っ込めたと思うと彼はいつの間にか、重力を無視して空中に浮いている。
6枚の翼が引き絞られた弓のようにしなり、一気に放たれた。
ズァ!!
肉薄してくる片方を烈風で押さえ付け、魔方陣を展開している方には羽ばたいた翼から散った無数の羽が硬化変質し、1枚1枚が矢尻か砲弾のように凶器のシャワーとなって迫る。
男はやむを得ず一度魔方陣を解除し高速移動で回避する。
羽は1枚も直撃しなかった。
だが、
ドドドドドッッッッ!!!!!!!!
「ッ!?」
羽は男の体に接近しただけで炸裂した。
1枚の炸裂が他の羽へ誘爆し、夜空が爆煙で包まれる。
「ははっ!このまま半殺しか、それともクリスマスにちなんでターキーの丸焼きみてえにでもしてやるか?」
煙を逆手に取って垣根の背後に回り、すでに拘束したなのはとフェイト同様に4重のバインドとクリスタルケージに閉じ込めようとする。
「同じ手は食わねえっつったよな」
「「ッ!!」」
ドバァッ!!
彼を拘束しようとしたバインドは、クリスタルケージ諸とも垣根を中心に巻き起こされた正体不明の爆発で、粉々に吹き飛ばされてしまう。
爆煙を突き破って、白い翼が槍のように伸びてきた。
仮面の男の1人が、強固な防御障壁を展開し防ぐが、
ドンッ!!
「ぐっ!?」
「がッ!!」
障壁に翼がぶつかった瞬間大爆発し弾き飛ばされ、もう1人は突き上げられるかのようにまともに食らい、落下していく。
「魔法のバリアブレイクっつーのを真似させてもらった」
その時の衝撃で男の手から、闇の書が離れてどこかへ行ってしまう。
垣根は逆算して作り出した、バインドブレイクの機能を模倣した
拘束が解けても一体何がどうなっているのか分からず、守護騎士達はその場に立ち尽くし、なのはとフェイトはクリスタルケージの破壊に腐心している。
槍のようにランダムに翼を突き出しながら、次第に仮面の男2人を追い詰めていく。
「さあ、知ってる事全部吐いてもらおうか。そうしたら今すぐ攻撃を止めてやる。できねえなら、片方にゃ死ぬか最低でも半殺しにして無理矢理聞き出してやる!」
仮面の男2人は、直撃こそ避けているが細かい被弾を繰り返し、仮面や衣服がボロボロになっていた。
互いに援護し合いながら退避し、
「……やむを得ない」
「……ここは一度、体勢を立て直す」
ゴバッッ!!!!
広範囲に閃光炸裂弾を放つ。
「んなもん効かねえっつってん……_クソッ!!」
一瞬だった。一瞬の隙で、転移魔法で姿を消し、見失う。
垣根は鋭い舌打ちの音を立てた。
彼が守護騎士達やなのは達から離れている間に、新たな異変が起こっていた。
「闇の書……?」
ヴィータの目の前には、仮面の男達の片割れが持っていたはずの闇の書が宙に浮いていた。
闇の書は怪しい紫色の光を放ち、不意に光同色の無数の黒紫色に赤い目をした蛇が、本体に絡み付いて覆い尽くす。
「ッ!!」
「あれは……?」
なのはが呟く。
「ナハトヴァール!何故!?」
「まさか……!」
シグナムとシャマルが何かに気付いたようだったが、それを確かめる間も無く蛇の包まれた闇の書から、ベルカ語で機械的な音声が発せられた。
『
シグナムはその意味を理解しているらしく、否定するように叫ぶ。
「待て!今は違う。我等はまだ戦える!!」
ヴィータも、目を見開いて禍々しい物体を見て、何かを思い出したように呟く。
「こいつ……、そうだ、こいつがいたから!」
『守護騎士システムの維持を破棄、
ナハトヴァールは、闇の書の防衛プログラムが実体化したもの。
その思考は『闇の書の完成』と『蒐集された力の行使』のみに向いていて、あらゆる犠牲を厭わずひたすらに闇の書本体の存続を行う。
全員が驚愕に染まる中、6枚の翼を羽ばたかせて、垣根帝督がなのはとヴィータの間の空中に合流し、禍々しい物体と化した闇の書を睥睨する。
「……おい、こりゃ一体どういう事だ?あれは闇の書…、なのか……?」
つまり、こういう事だ。
守護騎士や闇の書の意志、現在の主である八神はやての事は『闇の書の完成と能力の行使』において必要であれば比護するが、機能として必要が無くなれば排除するか、自由を奪って自身の完全制御下に置こうとするという挙動を取る。
ヴィータはそれに答えず、ブルブルと震えながら闇の書を睨んで忌々しそうに、呻くように言う。
「ふざ…けん…な……。ふざけんなあッ!!」
グラーフアイゼンを振りかぶって襲い掛かる。
迎撃するように向かってきた蛇を叩き落とそうとするが、効かない所か愛機を粉々に破壊されそのまま弾き飛ばされた。
「ヴィータちゃん!!」
なのはが彼女を助けようと飛翔する。
だがその間に、自動防衛システムを稼働させた闇の書は、淡々と作業を進めていく。
『敵対勢力排除、蒐集対象より、コアの蒐集』
一斉に、黒々としたバインドが全員を捕縛し締め上げる。
他の者達が苦悶の表情を浮かべる中、垣根は再び能力で自身のバインドの破壊を試みるが、
(く……ッ!!計算式が違う!?逆算に……時間が……ッ!!)
『開始』
再び、シャマル、シグナム、ヴィータの3人の守護騎士達からリンカーコアが抽出されていく。
「うっ……ううっ……!!」
「ううっ……!!」
「ううっ……ああッ!!」
彼女達の魔力が、今度は闇の書自らの機能で吸収されていった。
「うあ……ッ!!」
「うっ…ああッ……!!」
「シャマル!!シグナム!!…うあああああッ!!」
そこへ、
「でやあああああッ!!てやあッ!!」
遅れて現れたザフィーラが、渾身の力を込めて変わり果てた姿の闇の書へ拳を叩き込む。
しかし、ダメージを与える事は叶わず自身の拳から血を舞わすだけだった。
「ううっ……!!」
『残存システムの確認』
今度は彼のリンカーコアが抽出されていく。
「うおぁッ!!……うおぉッ!!」
苦痛を無視して再び拳を突き刺そうとするが、
『蒐集』
「てええぃッ!!」
ドバン!!
易々と防御され、ついに守護騎士ヴォルケンリッターは全員、捕縛された。
その頃、なのはとフェイト、垣根は黒紫色の繭のような物体の中に閉じ込められ張り付けのようなポーズで捕縛されていた。
「うう……ッ!!」
「くぅ……ッ!!」
「クソが……ッ!!」
バインドからはスパークが走り、それが彼女達に苦痛を与えている。
垣根帝督は、自身の能力『
「_ッ!?」
彼の頭を雷撃のような激痛が貫いた。
それだけではない。彼の視界が数瞬の閃光に支配され、強烈な目眩に教われる。
(くそったれが!サーチや解析さえ簡単にはさせねえってのか!?)
意識が吹き飛びそうになり、自分の存在すら自覚できなくなる。
まるで精神への直接攻撃。
逆算を行い、この魔法へ干渉するたびに何度も閃光と目眩に襲われ、彼は挫折を余儀なくされた。
「うううううッ!!……うあああああッッ!!」
固く両目を閉じ、彼は苦悶に体を仰け反らせる。
激痛と閃光と目眩の不協和音が、彼の脳を激しく乱打している。
それでも、彼はサーチを止めない。この程度でへばっていられない。
なのは達も苦痛に表情を歪めながらも、バインドと空間破壊を試みようとしている。
バガンッ!!
時間をかけながらも捕縛空間を破壊し、何とか外に出た3人が見たのは、何故かビルの屋上に召喚されていた八神はやて。
そして彼女の目の前でイバラで吊し上げられ、ツルで体を刺し貫かれ消滅していく守護騎士達。
その姿を見て泣き叫ぶはやて。
その衝撃が引き金となり、ついに闇の書の封印が解放されてしまう。
「はやてちゃん!!」
「はやて!!」
「あれは……?」
『管制ユニット 融合』
ゴッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!
黒紫色の光をたたえ、空中で大爆発し覚醒したその姿は、もはや八神はやてではない。
長い銀髪の、若い成人程度の外見をした女。闇の書の意志とも言うべき存在だった。
彼女の右側には例の蛇の塊が、左側には闇の書が浮遊している。
漆黒の羽を舞い散らせて佇む女は何故か、両目から一筋の涙を流して静かに告げる。
「また……全てが終わってしまった。我は魔導書。我が力の全ては……」
右手を掲げ、破壊の為の魔法を行使する。
『Diabolic emission.』
黒々とした巨大な球体が手のひらに出現。
空間砲撃を射出し明らかになのは達所か、この場一帯を粉砕するつもりだ。
「忌まわしき敵を、打ち砕く為に」
しばらく状況を確認する為に見ていたが、敵の意図に気付きフェイトが呟く。
「空間攻撃…!」
次の瞬間、大規模な
「闇に……沈め」
辺り一帯を禍々しい、漆黒とも黒紫色ともとれる暗闇の魔法が放たれた。
全てを破壊し無に帰す為に。