魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter   作:戸礼太

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思い付きで書いてみました。

これも行間みたいなものです。


オマケ劇場 ある日の音楽の授業

冬休み明けの聖祥小学校。

なのはのクラスは今、音楽の授業で全員が音楽室にいた。

今日は授業は、教科書の中に載っている歌を合唱しようという内容だった。

音楽科教師と児童達が教科書を捲り、話し合いながら候補を選んでいる。

なのは達も同様にしているが、アリサだけは若干かったるそうだった。

別に合唱が嫌という訳ではなく、教科書に載っている楽曲も別に特別これといって好きでも嫌いでもない為、やるなら早くやりたいから、早く決まれば良いなという程度の事だった。

しばらくして、女性の音楽教師が告げる。

 

「はい、皆さん。合唱の歌が決まりました。曲名は『翼をください』です。音楽を流すので、皆さんまずは教科書を見ながら歌ってみましょう」

 

ピクッ。

 

それを聞いた瞬間、約1名が静かに小さな反応を示した。

具体的には、その子の眉と口許が、僅かに歪んだ。

しかし教師は勿論、教科書に目を向けている他のクラスメイトも、誰もその子の反応には気付かないし知る由も無い。

 

「では始めます。…さん、はい_」

 

同時に児童全員が歌い始めた。

笑顔でゆったり歌ったり、元気良く声を出して歌ったり、特に表情を作らず淡々と歌ったりと様々だったが、1人だけ様子のおかしい子がいた。

表情が強張り、口許が不自然に歪み、発する歌詞も妙に途切れ気味、歌声も段々小さくなっていく。

それは歌が進むにつれて目に見えて悪化していく。

具体的に誰がどうなっているかというと、高町なのはが必死の形相で何かを我慢していた。

 

が、サビでコーラスの部分の歌詞の歌い出しで限界を迎え、

 

「_フフッ!」

 

ダムが決壊するように吹き出してしまった。

なのはの両隣の子が、歌いながら怪訝そうな顔で見てくる。

そう、彼女が我慢していたのは、笑う事。

笑いを我慢していた事と吹き出して視線を集めた事による恥ずかしさで、顔を真っ赤にしてうつ向き手に持つ教科書で顔を隠すなのは。

その様子を後ろの方から見えていたフェイトが、怪訝そうな顔で少し首を傾げていた。

 

〈……、なのは。大丈夫?〉

 

フェイトは念話でこっそり話しかけてみた。

なのはは少し焦った様子で答える。

 

〈ふ、フェイトちゃん!……だ、大丈夫。何でも、ないから……〉

 

〈本当に?後ろからだと、何か辛そうに見えるけど……〉

 

実際、端から見れば、何か苦痛を我慢しているようにも見えるし、アリサとすずかも心配半分、疑問半分みたいな視線を向けている。

何でもないはずがない。

 

〈どこか痛むとか、苦しいとか無い?〉

 

〈だ、大丈夫……。そ、そういうのじゃ、ない、から……ッ!〉

 

と言いつつ、なのはの体はプルプルと震えている。

余裕が無いのは明白だった。

フェイトは見ていて余計に心配になる。

 

〈大丈夫に見えないよ。理由くらい言って?助けになれるかは分からないけど……〉

 

〈でも、……ホントに、大した、理由じゃ……ない、から……。ホントに……、馬鹿馬鹿しい理由だし、話したら話したで……、フェイトちゃんに、迷惑かけちゃう…ッ〉

 

〈え、どういう事……?〉

 

意味が分からず、眉をひそめる。

言われた事を、しばらく頭の中で反芻してみる。

その時なのはは、こう思っていた。

 

(フェイトちゃんの…気持ちは嬉しい……けど、だから……尚更、巻き込みたくない……!)

 

そう、確かにフェイトの優しさや思いやりの気持ちは素直に嬉しい。

だが、だからこそ、そんな優しい彼女を道連れにしたくない(、、、、、、、、、)

事情を話せば確かに手っ取り早いのだが、最悪の場合、今自分が味わっているこの地獄に引き込んでしまう。

だが、

 

〈……分かった。なのは、話して?〉

 

〈フェイトちゃん!?〉

 

〈大丈夫、仮に理由を聞いたせいで、わたしに何かあったとしても、迷惑だとか思わないから。だからお願い、理由を話して?〉

 

フェイトは覚悟を決め、敢えて尋ねる。

それを感じ取りなのはも渋々、こちらも覚悟を決め、答える事にした。

 

〈フェイトちゃん……。……分かった、話すよ。でも、気を付けて。うっかり吹き出したりしないように、顔に力を入れて、冷静に、聞いてね……〉

 

〈え……?〉

 

ようやく、なのはは事の原因を説明し始める。

その間も、笑いを我慢してプルプルと震えていた。

 

〈えっと、ね。……実は、…………笑うのを、我慢……してたの……〉

 

〈えっ……?〉

 

〈というのもね、合唱の歌が、『翼をください』に決まった時から、……その……、歌詞を見る度に、か……、〉

 

〈か?〉

 

〈か……、垣根、くん、の……事、思い出しちゃって……。歌詞と歌を見聞きする度に、あの白い翼を……広げて空飛んでるの、想像、しちゃって……ッ!〉

 

〈……ッ!!〉

 

フェイトの全身が緊張で固まり、表情が強張る。

眉と口許が、にやけるのを我慢する為に不自然に歪んだ。

聞かなければ良かった。等と後悔してももう遅い。

つまり、件の経緯はこうだ。

合唱曲が『翼をください』に決まった瞬間、おそらく偶々なのだろうが、咄嗟になのはの脳裏に垣根帝督の姿が浮かんだのだ。

原因は単純に、歌詞にある『翼』や『背中』等だろう。

最悪だったのは、教科書の歌詞を見ながら歌っていくにつれて、ガラの悪そうな風体の垣根が『未元物質(ダークマター)』の天使のような6枚の白い翼を背中から生やし、羽ばたかせて空を飛び回るという、余計で不要な想像が膨らみ、それが笑いを誘う結果となった。

余計な事を考えちゃいけない、笑っちゃいけない、そう思えば思うほど、逆に妄想が捗ってしまい、ドツボに嵌まっていく。

 

〈な、なのは……!じゃ、じゃあ……我慢してたのって、笑う事、だったの……ッ?〉

 

〈一回、思い付いたら……、止まんなく、なっちゃって……!〉

 

うつ向いて教科書で顔を隠し、プルプルと震えて必死で笑いを我慢する、なのはとフェイト。

垣根帝督が6枚の翼を広げ大空を舞うという、無駄に妄想が広がり、巻き起こる笑いを我慢しているうちに、腹筋が痛くなってくる。

まさに生き地獄だった。

ちなみに、当の本人である垣根帝督は、既に聖祥小学校を退校手続き済みで、今はリモートカメラすら無い。

 

「……はい、では、次は教科書を閉じて歌ってみましょう」

 

音楽教師の言葉に、なのはとフェイトは目を剥き、胸中で絶叫した。

 

((もう勘弁してくださーいッ!!))

 

ピンと背筋を伸ばし、両手をギュッと握り締めて下ろして固まり、不自然に強張る顔をうつ向かせて、自然と小さくなっていく歌声。

流石に先生も気付いてきて、怪訝な顔になる。

だが、それを気にして取り繕う余裕は、今の2人には無かった。

それ所か、妄想は悪化の一途を辿る。

現実の、本来の彼では絶対にあり得ない、満面の笑み浮かべて両手を広げ、背中の白い翼をはためかせて無数の羽を散らし、

 

『アハハー♪ミンナオイデー♪♪』

 

本当にあり得ない、二重の意味でファンタジーで、メルヘンチックで気持ち悪いビジョンがなのはとフェイトの2人の頭の上に浮かぶ。

 

「「ブプフッ!!」」

 

限界だった。

もはや歌う事もできず、震えながらただただうつ向いている。

 

「高町さん、テスタロッサさん、大丈夫ですか?具合が悪ければ、保健室に……」

 

様子が変に見えた2人に音楽教師も心配になり、そう言ったが根が真面目な2人は、

 

「い……いえ……」

 

「だ、大丈夫…、です……」

 

別に体調が悪い訳でもないので、慎んで辞退した。

 

「そ、そう……?」

 

様子がおかしい事に変わりはないが、2人とも真面目で普段の授業態度や素行に問題のある児童ではない為、本人達を信じその意思を尊重する事にした。

そして合唱は再開されたが、絶えず襲い掛かる笑いの津波、感情抑制の苦痛、ある意味で魔法戦闘よりも困難であり苦戦を強いられ、すぐに限界を迎えた。

 

(く、苦しいよ~ッ!!もー無理だよ帰りたい!!)

 

(お腹痛い!!お腹痛い!!お腹痛いッ!!逃げ出したい!!)

 

顔を真っ赤に染めて涙目になり、お腹を押さえ、悶絶する。

まさに、授業という名の苦行であり地獄であった。

 

(誰か助けて!!死んじゃう!!おかし過ぎて死んじゃう!!)

 

(もうダメ!!頭もお腹もおかしくなっちゃう!!わたし壊れちゃう!!)

 

もはや、普通の女子児童がしてはいけないような、瞳孔が開き、上気して恍惚とした表情になっていたなのはとフェイト。

見る人によっては、卑猥な妄想にかき立てられるようなある意味酷い顔になっている。

そんな2人を見るに見かねたアリサ・バニングスと月村すずかが、行動を起こす。

 

「先生!やっぱりなのはとフェイト、調子が悪そうなので」

 

「私達で保健室に連れて行きます」

 

「そ、そう……ですか。では、お願いします」

 

戸惑いながらも音楽教師は頷き、後は2人に任せる事にした。

と同時に、アリサはなのはの、すずかはフェイトの、手首を掴んで歩き出し足早に音楽室を出て保健室へ直行した。

 

 

……そして、保健室に着くと、養護教諭がいなかった為仕方なく無断でベッドを利用する事にし、手を引っ張られている間に我に帰ったなのはとフェイトは、2人とも同時にベッドの枕に顔を押し付け、声だけを押し殺して今の今まで我慢していた笑いを一気に発散すべく、吐き出した。

事情や理由を知らないアリサとすずかは、その様子をドン引きして眺める。

数分後、笑いに笑ってスッキリしたなのはとフェイトは、恥ずかしがりながらアリサとすずかに謝り、事情を話した。

アリサもすずかも、垣根帝督が能力を行使している所を見た事が無い。

そこで、コッソリとレイジングハートとバルディッシュから記録映像のホログラムで垣根帝督の戦闘シーンを2人に見せ、その上で今回の出来事を改めて説明した。

初めて垣根の6枚の翼を見たアリサとすずか。

白い翼は綺麗だが似合わない、というのが率直な感想だった。

そして、今日の一件と組み合わせて考えると……、

 

「「……、フフッ」」

 

確かに笑えた。

とにかく、今度はアリサとすずかも加え、しばらくはフラッシュバックによる思い出し笑いの我慢を強いられたが、この後の授業は事なきを得た。

 

そしてその日の夜、なのははレイジングハート経由の有視界通信で今日の一件をユーノ・スクライアに、フェイトはエイミィ・リミエッタとクロノ・ハラオウンにそれぞれ愚痴り、消化する。

なのははついでに、携帯電話で垣根に八つ当たり同然の、今日の事に関する抗議メールを送り付けた。

 

ちなみに、垣根帝督からの返信はこうだった。

 

to 垣根くん

 

sub Re:今日は大変だったんだよ!!

 

ばーか死ね

 

           -END-

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