魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter   作:戸礼太

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基本設定は書き直し前と同様の、所謂、リリカルなのはシリーズの二次創作でよくあるA'sとStrikerSの空白期間の話になります。


とある魔法と科学の群奏活劇(アンサンブル)
5years Later


高町なのはが魔法に出逢ってから5年が経った5月。

 

皆それぞれ成長し、見た目にも変化が見られていったが、この期間にも、彼女自身やその周りでは様々な出来事が起きていた。

主な事と言えば、なのはの負傷。それも相当な重傷を負った。

常人離れのハードなトレーニングや頻繁な実戦参加等の無理や無茶を続けていた為、身体に負担が溜まっていき、カートリッジシステムや身体的負荷を無視して無理矢理限界値を引き出すエクセリオンモードの使用等の様々な条件が拍車をかけた。

普通の魔導師ではできないレベルの事をこなせてしまう天性の才能が仇になり、なのは自身だけでなく周囲の認識をも甘くさせてしまっていた。

そして時空管理局入局2年目の11歳の冬に、それまで溜め込んできた無茶と疲労のツケが回り、僅かな油断と反応の遅れで瀕死の重傷を負った。

一時は空を飛ぶ事はおろか、歩く事さえ不可能になる危険性すらあった。

しかし、半年間に渡る過酷なリハビリにより回復し、復帰。

今ではすっかり快調になっている。

新任局員への戦技教導の傍ら、捜査官としても活躍し優秀な成績を残している。

余談だが、同時期にこういう事が影響したせいか、フェイト・T・ハラオウンは執務官の試験を2回ほどスベった為、今は無事に執務官になれたものの、彼女には禁句と化している。

現在は執務官として第一線で活躍し始めている。

一方、八神はやては猛勉強の甲斐あり、上級キャリア試験一発合格し、順調にしているがレアスキル保有者とかスタンドアロンで優秀な魔導師は結局、便利アイテム扱いで、適材適所に配置されないというのが悩み事だった。

色々先の事を考えて準備や計画はしており、とりあえず今は特別捜査官として色々な部署を渡り歩いている。

ちなみに、3年前の11歳の時に初代リインフォースの名を受け継いだ、小さな融合騎リインフォース(ツヴァイ)がはやてによって生み出された。

「ツヴァイ」と呼ぶのがあまり似合わない可愛らしい外見から、いつしか「リイン」と呼ばれるようになり、それが正式名称のようになってしまった。

八神家一同の愛情と薫陶を受けて育った小さな彼女は、かつて主と共に空を飛んだ自分と同名の融合騎を深く、静かに尊敬している。

クロノ・ハラオウンは現在、管理局提督となりアースラの艦長に就任。

エイミィ・リミエッタは管制指令になり、各々昇進後もコンビとして健在で、クロノを公私共に支え合う仲に。

ユーノ・スクライアは無限書庫の司書長になり、なのは達とはちょくちょく会ってはいるが、日々忙しくしている。

リンディ・ハラオウンは艦長職は退き、平穏な本局勤務となった。

 

……そして、学園都市第二位の超能力者(レベル5)、垣根帝督はというと、なのはが負傷した時期当たりから、皆が多忙になったりとやむを得ない事情が重なっていき、やり取りが疎遠になりまた垣根から連絡をする事が皆無だった為、今では音信不通の状態になっていた。

 

 

 

 

私立聖祥大学付属中学校。

なのは達が通っていた小学校と同じ聖祥大学の付属校で、小学校の時とは大分変わり、茶系統のブレザーに男子はスラックス、女子はスカートの制服で、中学以降は男女別の学校『だった』。

というのも、少子化等による生徒数の減少を理由に去年から普通の共学体制へ移行した。

しかし、それが彼女達の平凡なスクールライフに思わぬ影響を与えているとは、初めは思いもしなかった。

 

 

某日放課後。

校舎の屋上には、男女2人の生徒が相対していた。

黒髪短髪の、清潔感のある端整な容貌で物腰柔らかそうな、いかにも好青年的な雰囲気の男子生徒は緊張のせいか、顔が少し赤らんでいた。

対するのは、明るめの茶色く長い髪を左側のサイドテールにした、これまた端整な容貌の優しそうな雰囲気の美少女が、両手を後ろに回して僅かに申し訳なさそうな雰囲気の微笑を浮かべていた。

まるでこれから言われる事を予想し、もう既に答えを用意しているかのように。

顔を赤らめてうつ向いている男子生徒の彼が、彼女を彼女の友達を通じて呼び出したのだ。

彼は意を決し、顔を上げて口を開く。

 

「あの……来てくれて、ありがとう」

 

「うん。それで、お話って何かな?」

 

「えっと、うん……。それで、用事っていうのは……その、だから……」

 

顔を赤らめ、つっかえながらも勇気を振り絞って声をあげる。

普段の彼は品行方正で、学校内でも男女問わず人気がある。

そんな彼が、こんな雰囲気で人気の無い所に呼び出した行為が示す事は、あまりにも明白だった。

ついに彼は覚悟を決めて、告げる。

 

「あの……だから、た、た……高町さん!その、ぼ……ぼ……ぼ……、僕!小学校の時から、た、高町さんの事が!ずっと好きでした!!……だから、その、友達からでも良いので、僕と付き合ってください!!」

 

切実さがこもった彼の叫びに、告白された高町なのははたっぷりと時間を置いてから、答える。

 

「……その、気持ちはありがとうございます。嬉しいです」

 

「じゃ、じゃあ……ッ!!」

 

「でも、……ごめんなさい。あなたの気持ちには、答える事はできません」

 

「ええ!?」

 

丁重に断られてしまい、彼は露骨に狼狽えだした。

 

「も、もしかして、他に好きな人が!?」

 

「あ、ううん。そういう人は_」

 

一瞬、脳裏にとある人物の顔が過ったが、無い無い。絶対無い。と頭の中で振り払うように手をバタつかせた。

 

「まさか、やっぱり、魅神と付き合ってるの!?」

 

「え!?あ、いや、違うよ?あの人の、魅神君が勝手に言っているだけだから!それだけは絶対違うからね!」

 

今度はなのはが焦り始めてキッパリと告げる。

彼女は念を押すように言う。

 

「と……とにかく、お気持ちはありがたいけど、お付き合いはできません。今好きな人もお付き合いしている人もいませんから」

 

「そ、そっか……。分かった。時間を取らせて悪かったよ。じゃあ…………」

 

「うん……」

 

フラれて彼は意気消沈しながら、ノロノロとした足取りで去って行った。

しばらく立ち尽くすなのはに、彼女の親友4人が現れてきた。

長い髪を中学生になってからバッサリと短くして、雰囲気やイメージが少し変わったアリサ・バニングスと八神はやてがニヤニヤと悪戯っぽくにやけながらなのはに告げる。

 

「また振ったの?これで何人目よ?」

 

「まー小忙しいからしゃーない所あるけど、去年から3ヶ月に1人か2人のペースやからな。このままやと卒業までに15か20人斬りできるんちゃう?」

 

「もう、アリサちゃんもはやてちゃんも。からかわないでよー」

 

なのはが少し不貞腐れた表情で言った。

月村すずかとフェイト・T・ハラオウンは苦笑いを浮かべている。

 

「なのはも大変だね」

 

「なのはちゃん、優しいし可愛いからね」

 

「もー、そう言う皆だって、去年からわたしと同じような目にあってるでしょ?」

 

そう、この5人、なまじ容姿端麗な上、品行方正で性質や思考の違いはあれど全員中身の性格も基本的に良い善人という事もあり、学内だけでも同級生、先輩後輩問わず、相当な好印象を持たれており、異性からも同性からも人気が高かった。

しかし不思議と5人とも思春期真っ只中の中学生になっても、浮いた話が全く無く、一時はあの仲で例えばなのはとフェイトが、またアリサとすずかが、あるいはすずかとはやてが、という具合でデキてるんじゃないかと噂された程だ。

もちろんそんなのは事実無根なのだが。

 

(なのはちゃんが誰かとくっつくとしたら、ユーノくんやと思っとったけど、お互いがお互いを親友以上にみてへんし、2人ともワーカホリックと化しとるしなー。クロノくんはエイミィさんと仲良しやし、あとわたし達の共通の知り合いでくっつく余地のありそうな男の子は……)

 

はやてはそう思いながら、脳内で残った共通の知り合いの男子をピックアップしてみた。

1人は自分と兄妹みたいに仲良しではあるがなのはとはそこまで親しくはない。

もう1人は学校と管理局両面で関わり合いがあるが、露骨過ぎる下心と大して仲良くもないのに気安く頭を撫でようとしてきたりと馴れ馴れしく鬱陶しい上、自分の友達にも家族にも見境無くそういう態度で、同性には逆に不躾なので好感を持っていない。

苦手なタイプではあるが悪人ではないのが救いだ。

そして最後。ある意味漫才チックなやり取りをしていて、互いに砕けた態度で接していた。

何だかんだ言って互いに嫌い合う事もなく、そういう意味では自分を含めて一番仲良しになった気がする。

なのは本人は意地でも否定するだろうし『彼』は友人関係すら否定してくるだろうけど。

ただ残念なのは、その彼とは普段の関わりが著しく乏しい上、2年ほど前から音信不通になってしまった。

そんな事を考えながら皆で歩いて下校していると、なのは、フェイト、すずか、はやての告白連続斬りダービーみたいな話になっていた。

アリサがこんな事を言ってくる。

 

「……でも、なのは達も以前ほど忙しくもないんでしょ?仕事に学業に勤しむのも良いけど、華の中学生なんだし、恋愛や青春の一つしたってバチは当たらないわ。あんた達可愛いし性格も良いんだから選り取りみどりじゃない」

 

「うーん……そうは言ってもねぇ……」

 

「わたしもなのはも、今までそういう事をあんまり考えた事がないから、いざってなるとよく分からなくて……」

 

「わたしは家族の面倒含めていっぱいいっぱいやな」

 

といっても、実際の所時間を作ろうと思えば作る事はできる訳だが。

すずかがアリサに言う。

 

「そう言うアリサちゃんはどうなの?」

 

「そりゃあたしだって、人並みにそういう事に興味はあるわよ…」

 

と言った所でセリフを切り、どんよりとした表情で拳を握り怒りと気疲れを滲ませる。

 

「……でも、今はどっかの顔だけの鬱陶しいストーカー馬鹿の対策で精一杯なのよ……ッ!」

 

彼女のその一言で、全員の表情が曇る。

 

「「「「ああ……」」」」

 

何もその被害に遭っているのは、アリサ1人ではなく、この5人全員なのだから。

ちなみに、翌日はフェイト、更に翌日にはすずか、更に更に翌日にははやてが、そして更に翌日にはアリサが、それぞれ同級生や先輩に告白されては、全員見事に丁重に撃沈していったのだった。

 

そして更に翌日、今日は土曜日で学校はお休み。

しかし、クロノ艦長から召集指示が出た為、普段は部署等が違う為一緒の任務になる事が殆ど無くなっていたなのは、フェイト、はやての3人の他に守護騎士の4人、そして_、

 

「よし、召集呼び掛けた面子は揃ったな」

 

アースラのミーティングルーム。

クロノ・ハラオウンの言葉に、銀髪で碧眼の端整な容貌の少年が口を開いた。

 

「おいクロノ、折角久しぶりにアースラでなのは達に会えたってのに何なんだよ。まあなのは達と一緒で護衛任務とかなら別に良いけどよ。オレと一緒なら、なのは達も安心だろうし」

 

と言いながら馴れ馴れしく、なのはの頭を撫でようとしてヒラリと避けられたこの少年。

名前は魅神聖(みかみこうき)

両親が日系のミッドチルダ出身の良家の子息にして、フェイトと同様の形で中学から留学生として転校し、同級生となった。

成績優秀で運動神経も抜群、容姿端麗、莫大な魔力を有し魔導師としても優秀と、一見非の打ち所が無さそうなのだが、性格に難があり女好きの上素行もあまり良くなく、特に女性関係のスキャンダルも少なくなかった。

そんな好色家は転校初日に見かけたなのは達を気に入り、一方的に囲おうと彼女呼ばわりまでしていったのだった。

アリサには特に邪険に扱われているがめげない上、根っからの悪人でもない為、ある意味余計に厄介(むやみに邪険にできない)で彼女達は苦手に思っているが無下に邪険にできずにいる。

 

「好色家の君にそんな事は頼まん」

 

ピシャリと言い放つクロノ。

この男、エイミィにまでナンパした事もあった為、クロノも魔導師としてはともかく、人としてはあまり快く思っていなかった。

 

「何だとお前_」

 

「それより「おい!!」早速本題に入るから、皆資料とホログラムを見てくれ」

 

デバイスや端末に送られた件のデータとホログラムに目を向ける一同。

魅神もぶつぶつ文句を垂れながらも従う。

 

「今、局員なら特に知らない者はいないだろう。……有人管理世界での連続無差別テロ」

 

「うん、もちろん」

 

クロノの言葉にフェイトが険しい表情になって答えた。

無差別テロ、とだけ言えば単純に施設爆破等の破壊活動が真っ先に思い付くものだろう。

だが、この連続テロはそういう事以外にも金融機関等の強襲、強盗、単純な意味での無差別殺人や猟奇殺人、拉致誘拐、強姦等の性犯罪と……、およそ筆舌しがたいほどの凶悪犯罪と呼べる代物は全て犯されていた。

驚いた事に、被害者達も映像記録に残っていた加害者達も、老若男女問わず多種多様だった。

大規模な組織犯罪と本局は断定し対策本部を設置、また各有人管理世界の地上本部にも支部や武装隊を派遣し追跡調査を行っていたのだが、いまだに対象組織の規模や尻尾を掴めずじまいだった。

 

「その今まで不明だった事が調査隊の文字通り命懸けの任務により、判明してきた」

 

『ッ!!』

 

一同の顔が強張り、クロノに注目が集まる。

彼は構わず、努めて冷静に告げる。

 

「判明した組織は2つ。組織名は次元重犯罪者集団の『ワイルドハント』、もう一つは数年前から過剰な取り調べや不必要な容疑者殺害等の違反行為の累積で管理局を懲戒免職されたり、犯罪者として逮捕された後脱走をした者達が集まって結成された『Disciplinary Action(ディシプナリー・アクション)』通称DA」

 

資料やホログラムにはまず、『ワイルドハント』の正規メンバーの写真が映し出された。

メンバー数は6人程と少なく、それ以外の大勢は下部組織や末端の雇われ要員だった訳だ。

恐ろしい事に正規メンバーは全員が高い魔力と資質を有し、いずれも手練れと言えるレベルだと数値が表していた。

クロノが説明を続ける。

 

「それだけじゃない。彼等は手練れな上、全員が特殊形状のデバイスを持っている。詳細はまだ不明だが、ベースは通常のストレージデバイスだがそれぞれ独創的なカスタマイズを施されていて、見た目は原形を留めていない。その上、デバイスに格納する事ができる宝石状のロストロギアを全員が保有し、素の状態でも高い魔力が更に底上げされている。推定ランクは現状でもオーバーS」

 

息を呑む一同。

対象のテロリスト達は、凶悪な上決して楽な相手ではない。

先行派遣された武装隊が全滅させられた報告を受けた時も唖然としたが、それほどの敵だと首肯せざるを得ない。

 

「_次に、DAの方についてだが、」

 

とクロノが言った所で、退屈そうにイライラと足を動かしていた魅神聖が口を挟む。

 

「おい、話長げえよ。もう良いだろ?要はオレ達でそのテロリスト共をぶっ潰して片っ端から逮捕すれば良いんだろ。だったらさっさと動こうぜ。どんな相手だろーが、悪党にオレが負ける訳ねーんだ。全員一網打尽にしてやるぜ!」

 

「まあ気持ちは分かるが、最後まで聞いてくれ。確かに話は長くなるが、本当に重要な事なんだ」

 

「ちぇっ」

 

露骨に不機嫌な彼を諌めるようにクロノが言う。

正直、能書きが長くなっている自覚はあるが、全て説明すべき内容なので省く訳にもいかなかった。

 

「DAって、構成員が元局員だけなんだね」

 

フェイトが呟く。

資料によると組織名通り、懲戒処分を受けた『時空管理局員同士の互助組織』を建前として掲げているが、裏では『完全なる正義を実現する』という歪んだ信念の元に運営される秘密結社と化している。

その信念や理想に共感した局員や元局員、強大な権力者や不採用に終わった防衛企業等、シンパやスポンサーから資金・情報・技術の供与を受けて大規模化していった。

その内情は決して統制されたものではなく、武装カルト集団のようなイメージを受ける。

 

「しかも、禁止されてる質量兵器の銃火器の使用に、AMF(アンチマギリングフィールド)を出現させる未確認の機械兵器の運用て……」

 

「それ等を運用する事で、魔法資質の低い者達でも魔法に対抗できているのも、頷けますね」

 

はやてが呻くように声を発し、傍らのシグナムが相槌を打つ。

アンチマギリングフィールド、通称AMFはその名の通り、対魔法用の無効化ジャマーフィールドの事を指す。

平たく言うと、魔力結合を分解し打ち消すような効果で、魔法による攻撃を通さなくする機能で特に魔力素というエネルギーで構成し撃ち出したり刃等を作り出して戦闘に使うミッドチルダ式の魔法にとっては特に効果が高い。

ただし、物理攻撃に近い古代ベルカ式にはあまり効果的にはならない。

また、対処法が無い訳ではなく、魔力が消されて通用しなくても『発生した効果』の方をぶつける等の崩し方もある。

 

「……で、結局あたし達は何をすりゃ良いんだ?いつもみてえに皆それぞれの部署や隊に合流捜査や追跡とかに加わんのか?」

 

「いいや」

 

ヴィータの疑問に首を横に振り、クロノは否定した。

そして彼は予想外の事を告げる。

 

「今ここにいる君達で隊を編成し、チームで海鳴市やその周辺で警戒、待機をする。場合によっては現場に僕も出る」

 

「ッ!!それって……まさか……!」

 

息を呑みながら小さく口を開いたシャマルに、クロノは頷く。

一気に緊迫感がこの場を支配する。

彼が示している事は、明白だった。

 

「つまり、海鳴市周辺に、ワイルドハントかDA……もしくは両方が潜伏している、と……?」

 

守護獣形態で、静かに佇んでいたザフィーラの質問に、クロノはまた頷いて説明を再開する。

 

「ああ。しかも、諜報部隊の報告によると、ワイルドハントとDAは一時的に手を結びこの街での協力関係になった」

 

「おいおい、そいつはおかしいんじゃねーのか。両方とも腐れ外道のゴミクズ集団って事に変わりはねーけど、DAは腐っても『正義』を名乗ってんだろ?何でそんな自称正義の味方が悪虐非道の糞共と組んでんだよ」

 

魅神聖がウンザリするほど顔を歪ませて、吐き捨てるように言う。

正義というものには、彼も人一倍執着心があり、やや独り善がりな所が強い正義感を持ち、犯罪者や典型的な悪人を憎む事にはDAにも心のどこかで共感している節があった。

しかし、だからこそ、魅神は憤る。

正義が悪と組むなどあり得ない。

あってはならない、と。

 

「おそらくだが、呉越同舟みたいな理由だろう。君の言う通り、ワイルドハントとDAでは目的も思想も価値観も違う。唯一の共通点は、僕達時空管理局を邪魔に思っている所だけ。あくまで共通の敵に対抗する為に、今回だけという建前で組んでいるんだろう」

 

クロノの推測を聞き、余計に腹を立て怒りを滲ませる。

心の奥底で感じていた、必要悪的なDAに対する共感の念が消え失せた。

ある意味ワイルドハントより許せないと彼は思い、拳を握る。

 

「何が完全なる正義だ。悪党と組んでる時点でその風上にも置けねえ。このオレが纏めて粛正してやる!」

 

と魅神が息巻いていると、なのはが僅かに首を傾げた。

 

「……でも、そんなに多人数で管理外世界に潜伏するのって、簡単じゃないよね?管理局も大っぴらに介入しにくいのと同じで、現地側の協力が無いと色々と難しいんじゃ……」

 

言いかけて、彼女は言葉を切った。

 

「まさか……」

 

「ああ。未確定情報だが、それを裏付けるような報告も入った。これを見てくれ」

 

クロノ・ハラオウン艦長のセリフに呼応するように、エイミィ・リミエッタ管制指令がコンソールを叩きホログラムにとある場所の衛星写真が映し出された。

そこは日本の関東地区。

そこは内陸都市で海には全く面しておらず、基本的に平坦な地形で緑地は少なく、外周は高さ5メートル以上・厚さ3メートルの壁に囲まれ、完全に外部と隔離されている。

東京都西部の多摩地域の位置、東京都の他、神奈川県、埼玉県、山梨県に面する完全な円形の都市。

日本の国内外でも異彩を放つ、完全独立教育研究機関。

すなわち、

 

「Science Worship ……つまり、学園都市だ」

 

『ッ!!!?』

 

魅神聖以外の面々の表情が、驚愕に染まり絶句する。

彼女達の頭には、その街に今いるであろう、1人の超能力者(レベル5)の顔が思い浮かぶ。

クロノはそれを理解した上で、続きを言う。

 

「なのは達は覚えがあるだろう。だが、今は落ち着いて聞いて欲しい。続けるが、もちろん学園都市そのものが秘密裏にワイルドハント等に協力していると決まった訳じゃない。言うなれば、『学園都市出身のDAが彼等と協力関係を築いている』という事だ」

 

「ちち、ちょい待ち!どういう事や!?学園都市のDAて!?」

 

「DAって、元局員だけのはずじゃ……?」

 

「その協力組織も、DAを名乗っているって事……?」

 

はやて、なのは、フェイトの順に疑問を口に出す。

今度はエイミィが答える。

 

「うん。簡単に言うとね、資料の通り学園都市には志願学生から選抜される『風紀委員(ジャッジメント)』と教員有志の『警備員(アンチスキル)』という、2つの警察組織で基本的に治安維持を行っているの。それで、そこも同じく平たく言うと、元警備員(アンチスキル)Disciplinary Action(ディシプナリー・アクション)って訳。学園都市の内情は分からないし知りようもないけど、状況証拠から見て、管理局出身か学園都市出身かの違いはあるけど、思想ややっている事は同じと見て良いね」

 

学園都市側のDAが管理局出身のDAに協力している。

そしてDAを経由してワイルドハントも潜伏の協力を得ている。

追加説明すると、学園都市側のDAは動機こそ不明だが、学園都市の外へ離脱・逃亡を謀っていたらしく、いずれは次元世界への逃亡に元局側のDAに協力を頼んでいるらしい。

つまり、利害の一致で相互協力を行っている関係という訳だ。

しかし、そうなると、どうしても腑に落ちない事がある。

 

「……でも、どうやって関係を結んだのかしら。普通なら、お互いに存在すら知らないし知り得ないはずだし、知られたくもないはずなのに……」

 

シャマルが顎に手を当て、怪訝な声を発した。

そう、地球は管理外世界。

たとえ偶然、同じような事情で同じような名前の組織が別々に生まれたとしても、普通は関係を持つ所か関知する事すら難しい。

協力関係になるのは尚更困難なはずだ。

なのは達やかつてのギル・グレアム提督の場合は例外中の例外。

普通は両者が結び付く事などあり得ないのだ。

 

「ごめんね。肝心のそこがまだ、分かってないんだ。一番重要な事のはずなのに……」

 

エイミィが申し訳なさそうに告げた。

クロノが言う。

 

「……あくまで僕の推測だが、学園都市側のDAと元管理局側のDA、2つの間にそれぞれの事情や知識を持った仲介役……ネゴシエーターがいるんじゃないかと睨んでいる。逆にそういう存在がいれば、今の状況に引き込む事も不可能じゃない」

 

あくまでクロノ個人の仮説に過ぎないが、満更あり得ない話でもない。

だが、同時にその通りなら脅威でしかない。

 

「フン、元局員だろーが元ガクエントシだかワイルドハントだろーがどーでも良い。全部オレが監獄送りにして極刑にしてやる」

 

と魅神が鼻を鳴らしてつまらなさそうに告げる。

自信家で女好きのプレイボーイの彼は、犯罪者を1人残らず一網打尽にしてしまいたいのと同時に、なのは達の前で良いカッコをしたいという下心もあった。

そう考える事自体は別に悪い訳でもないのだが、自他共に認めるほど女性に対して非常にだらしない。

そういう理由で、なのは達は異口同音で同僚としてはそうでもないが、少なくとも男としては無理。というのが正直な所だった。

ともあれ、説明事項は終了。

後は各自、デバイスや携帯端末に転送された資料データを参考にし、小隊規模で分散し警戒、巡回を行い、隠密活動中の調査隊から対象の居場所特定次第、または敵から仕掛けられた場合は即時戦闘体勢に移行し、最低でも管理局側のDAとワイルドハントは全員逮捕、可能であれば学園都市側も捕縛する。

両方不可能でも最低限自衛と街の防衛は死守する……というプランとなっていた。

 

「……所で、学園都市側からは何か動きは?」

 

「自分とこのDA追っかけに、その警備員(アンチスキル)か何かが出てきたりとかねえの?」

 

シグナムとヴィータが尋ねる。

クロノは首を振った。

 

「いや、表立ってそのような動きは確認されていない。……ただ、所属が分からない護送車らしき車が、学園都市の陸路最大の玄関口である第11学区から複数台確認された。しかしDAに関する事も何も、学園都市側の公の広報等での発表も無い。もしかしたら、学園都市ではDAは裏社会の闇組織扱いで、仮に出発した護送車が学園都市の外へ出たDAの追っ手だとしたら、同じ闇組織の可能性がある。そこも留意しておいてくれ」

 

追っ手の可能性もあるが、逆に追加支援の可能性もある。

最悪の場合、学園都市そのものが加勢している可能性もまだ捨て切れない。

もしそうなら、こちらが敵の情報を集めているように、学園都市側含めてDAとワイルドハント側にも、こちらの情報が漏れている可能性すらある。

分かった事も少なくないが、不確定要素も多いので、仮説を立てているとキリがない。

これ以上野放しにして指を咥えて見ている訳にもいかないのだ。

 

 

「……よし、では解散。各自チーム別に任務へ」

 

『了解!』

 

言葉と同時に一同は散っていく。

と、その時魅神聖がなのはに声をかける。

 

「話長かったな~。……あ、良い時間だし、巡回ついでに一緒にランチ行こーぜ」

 

「あ、いや、魅神君、チーム違うよね?」

 

「そうだったか?まあ良いじゃんか。合同って事で。何か起きてもオレがなのは達を守ってやるからよ♪」

 

「そんないい加減な事……」

 

一度ミーティングが終わるとこれだ。

任務は毎度々問題なくこなすのだが、隙や暇さえあればなのは、フェイト、はやてを主に口説いてくる。

3人がいなければシグナムやシャマル、ヴィータ等々。

彼女達もいなければ他の女性局員に口説いたりとちょっかいをかけている女好きぶり。

しかし当然だが、DAのように違反行為等はもちろん犯さない。

最低限の上下関係は守るなど、一切やらかしをしないのが唯一の救いか。

 

「生憎だが、魅神三尉。君は『僕達』とだ」

 

「は?」

 

魅神の左肩に手を置いて、武装隊服のクロノが告げる。

魅神が鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするが、構わず彼は言う。

 

「チーム編成を見てなかったのか、それとも敢えてしらばっくれたのかは分からないが、そういう勝手は上官として許さん。ユーノと合流するから一緒に来い」

 

「えー、男しかいねーじゃねーか。オレヤだよ」

 

 

「僕だって好きで組む訳じゃない。任務なんだから我慢しろ。そんな好き勝手ができるほど、余裕のある事態じゃないんだから」

 

ちなみに、巡回・捜索時のチーム編成は以下の通りだ。

 

Aチーム

高町なのは

フェイト・T・ハラオウン

ヴィータ

 

Bチーム

八神はやて&リインフォースⅡ

シグナム

ザフィーラ

シャマル

 

Cチーム

クロノ・ハラオウン

ユーノ・スクライア

魅神聖

 

……ただし、ワイルドハントかDA、もしくは両方に遭遇した場合、無条件で遭遇したチームの元に他のチームが即時合流し集団戦闘しつつアースラと本局の双方に、緊急信号と支援要請を通達する手筈となっている。

 

「ちぇっ……、よし、じゃーなのは、フェイト、はやて。任務終わったら今夜ディナー行こーぜ」

 

にっこりと甘いマスクの笑顔で誘うが、

 

「わたしは家で食べるから」

 

「わたしも」

 

「わたしもや」

 

サラッと断って3人はそそくさと退散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同時期、学園都市統括理事会は、学園都市外に無断外出・離反を行ったDAの一部隊を情報漏洩等の阻止を理由に、全員捕獲または殲滅、機材等情報源の全回収を秘密裏に、とある暗部組織に命じた。

統括理事会直下の組織名は『スクール』。

そしてそこには、1人の超能力者(レベル5)という戦術兵器級の怪物が所属している。

 

 

科学と魔法が交差する時、物語は始まる。




序盤はこんな感じです。

オリキャラの魅神聖ですが、元々は所謂ベタな踏み台型の転生オリ主キャラで書き直し前は無印編から出ていましたが、正直邪魔だったので全カットしました。
そして、合っても無くても良い状態の転生者設定も削除し背景設定も変更、性格も若干変更しています。
冷静に考えたら典型的な性格屑キャラのままだと、いくら実力者と評されるようでも、管理局員になれるとも思えないので(笑)

ある程度プロットは決まっていますが、ストックして書き直している訳でもないので、結構不定期更新になる見込みです。
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