魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter   作:戸礼太

29 / 57
かなり焦って書いたので、粗や誤字脱字があるかもしれません。
気付かれた方は、遠慮なくご指摘ください。


正義を名乗る悪意

同日深夜、数十分後。

遠見市の町外れに建つ薬品研究所の前に、学園都市暗部組織『スクール』のリーダーとして活動している超能力者(レベル5)、垣根帝督が立っていた。

有刺鉄線で囲まれたこの施設は、半分は研究所としてはデコイで、科学サイドと魔法サイド双方出身のDAのアジトとして機能し、半分はそれ等と同行しているはずの科学者が数名潜伏しているはずだった。

 

「ここか?俺の『未元物質(ダークマター)』をコソコソ研究してる連中のアジトは」

 

垣根は、直接聞き出した情報を元にここへ辿り着き、文字通り叩き潰すつもりだった。

 

(仮に吐かせた情報が嘘だったとしても、罠なら突破すれば良い。敵が出りゃ潰せば良い。……しっかし、やはりというか何というか、魔法ってのが絡んでいたとはな。つー事は、管理局とあの女達(、、、、、、、、)ともいずれ顔を合わせる可能性が高いって事になるか。厄介だな)

 

そう考えていると、面倒臭い展開になりかねないな、とウンザリして顔を歪ませる。

しかし、彼は頭をすぐに切り替える事にした。

 

(……いや、関係ねえな。知り合いだろうが何だろうが関係ねえ。俺の邪魔をするようなら、敵と見なして蹴散らすだけだ)

 

それだけ思うと、施設の搬入口から施錠された分厚い扉を蹴破り、内部へと侵入し始めた。

付近にあった自販機で購入した、缶ジュースを片手にしながら。

 

「お邪魔しますよーっと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

施設の更なる内部では、既に戦闘が発生していた。

上下左右全てが白いパネルで敷き詰められた、広めの通路で対峙しているのは、白ずくめと黒ずくめに白いマントのバリアジャケットを纏った2人の少女と赤基調の騎士服の小柄な少女、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンとヴィータ、大型の防護盾やサブマシンガンのような銃火器を携えた10人と、10人の見た目時空管理局武装隊員の魔導師の姿をした男女だった。

執務官フェイトの、投降と武装解除の呼び掛けを無視し発砲してきた為、やむなく交戦状態になっていた。

 

『Accel Shooter』

 

「シュートッ!」

 

様子見で、1発だけなのはから放たれた桜色の魔力弾が、パヒュッと、見えない何かに触れて打ち消されるように消滅する。

 

「また無効化フィールド……!」

 

なのはが僅かに顔をしかめた。

フェイトの愛機、バルディッシュが告げる。

 

Searched jummer field(ジャマーフィールドを検知しました)

 

「アンチマギリングフィールド、また一段と強いのが……。AAAランクの魔法防御を……?」

 

フェイトも正面を見据えながら言う。

管理外世界の街で、魔法サイドの機械兵器を運用している事実に疑問を抱きながら。

傍らに立つヴィータも、グラーフアイゼンを振りかぶり、

 

「チッ、またかよ!どーりでこいつ等、全員デバイスじゃなくて銃を持ってる訳だ」

 

舌打ちして忌々しそうに言った。

3人とも、僅かに汗を滲ませている。

というのも、この場所を探知して侵入してから絶えず、AMFを発するドローン型兵器や学園都市製の駆動鎧(パワードスーツ)と交戦を繰り返してきた為、特に前線を担っていたAMFの影響があまり大きくないベルカ式のヴィータや、魔法の『発生した効果』をぶつけるやり方で突破してきたフェイトは、少なからず魔力と体力を消耗していた。

比較的、消耗の少ないなのはも、その分敵の実弾攻撃から味方の防御でそれなりの魔力とカートリッジを消耗している。

一方の警備員(アンチスキル)と武装隊員の格好をしたDA連中は、全員がAMF発生機能を有した装置でも身に付けているらしく、余裕そうにしている。

 

「我々は正義の為に行動している」

 

「何なら君達も、我々の元に来ると良い。我々が保護し管理してやる」

 

「適切な環境で適切な生活を。劣悪な環境で暮らさなくても良いんだ」

 

「これは正義の行いなのだ。精神的にまだ未熟な子供の君達が力に振り回され、利用されぬよう、我々大人がきちんと適切に見守らなくては」

 

「絶対正義は我等にあり」

 

狂信さを感じるセリフを口々に言い放つ。

ヴィータは露骨に表情を歪ませ、吐き捨てるように言う。

 

「ハッ、正義?笑わせんなよ。テメェ等のは独り善がりってんだよ」

 

「正義の名の元で、あなた方が何をしてきたと……」

 

フェイトもDA隊員達を睨む。

彼女達の態度に、少し落胆した素振りを見せ、銃を構えながら告げる。

 

「まあ良い。近いうちに知るはずだ、真の正義は我等にある事を」

 

その時、

 

バギャッッッッ!!!!

 

と。

白いパネルで敷き詰められた横の壁が、突如爆撃されたように粉砕され、大小無数の瓦礫が飛び散った。

 

『ッッ!!!?』

 

咄嗟になのは達3人は防御障壁を展開し、DA達は大型の防護盾で防ぐ。

粉塵が舞う中、壁を突き破って飛んできた物体を確認する。

それは、この施設の警備に使われている、学園都市では既に旧型の駆動鎧(パワードスーツ)の1体だった。

一同がそれから突き破られた穴の方へ目を走らせる。

 

「ぐぎっ!!ああああああああーッッ!?」

 

穴から、絶叫同然の悲鳴を上げて、ボロボロになったDA隊員が転がり込んできた。

 

「どうした、何事だ!!」

 

(一体何が起きて……?)

 

なのは達3人は、一瞬新手か第三の勢力の介入を想定し、固まっていざという時に強制脱出を考えておく。

クロノ・ハラオウンの班と八神はやての班には、通信を送っていたが、両方ともDAやワイルドハントと遭遇し戦闘状態に入っており、急行は無理なようだった。

 

「ああ、情報通り集まってんな」

 

もうもうと粉塵が舞う中から、軽薄そうな若い男の声が聞こえる。

目を向けると、学ランを纏った茶色い髪の少年が歩いてきた。

学ランもワイシャツもボタンを留めずにラフな着こなしで、右手をズボンのポケットに突っ込み左手に持った缶ジュースに口を付けながら、まるで夜遊び中の散歩でもしているような気軽さだった。

その気軽さで、見た目ただの中学生の少年が、施設内に侵入しDA隊員を倒したり駆動鎧(パワードスーツ)を駆逐しながら、突き進んできたというのか。

 

「何だよ、この俺を研究してるって割りにはセキュリティがザル過ぎんだろ」

 

魔導師……ではない。

魔法を行使した形跡は見えない。

だが、DAのように何か武器を手にしている様子もない。

しかし丸腰のただの人間に、これだけの現象を起こせるはずがない。

一体何者なのか、となのはとフェイトが考えていると、少年がこちらを一瞥して一瞬目を丸くしたようだったが、すぐに視線を外してDAに向けてゆったりと言う。

 

「それとも警備員(アンチスキル)のコスプレしてるような頭じゃ、機密保持の意味も理解できないのか?」

 

「……、あなたは何者ですか……?」

 

なのはが警戒をしつつ尋ねてみるが、彼は無視してDAの方を見て告げる。

 

「一丁前に警備員(センセイ)の格好してても、こっち側のクソみてえな悪党の臭いがプンプンするぞ」

 

DAの1人が、怪訝そうに答える。

 

「我々が悪だと?」

 

「自覚ねえの?じゃあ悪党以下だな」

 

嘲笑しているのが目に見えている。

場違いな気軽さと口調、余裕綽々の態度、全てがDA達の不興をそそる。

管理局の武装隊員姿のDAがトリガーに掛けた指をピクリと震わせ、少年に強い口調で言う。

 

「我々の活動は正義だ。我等こそが正義なのだ」

 

すると少年は缶ジュースの残りを飲み干し、持ったスチール缶をグシャッと握り潰す。

 

「正しさを掲げて疑わないってのが、一番の悪だと思うんだよな」

 

そしてそのまま投げ付けた。

 

「お前等の事だよ、カス」

 

潰れた空き缶が銃に当たり、カツンと音を立てる。

一斉ににDA達が銃口を少年に向けた。

 

「なっ……お前等!」

 

思わずヴィータが声をあげる。

見た目丸腰の相手に銃を向ける彼等に、怒りを覚えた。

しかし少年もDA達も、ヴィータには目もくれず耳も貸さない。

 

「何それ?自称正義の味方が丸腰の人間に銃を向けるのか?」

 

銃口を向けられても、少年は薄く冷笑を浮かべている。

その態度や仕草に、既視感を覚えたヴィータは眉をひそめる。

 

(何だ……こいつ……?)

 

「問題ない。不良学生鎮圧用のとても安全な模擬弾だ」

 

「あ?」

 

退屈そうに首を傾げていると、武装隊員姿のDAの何人かがストレージデバイスに持ち変えて構える。

 

「君はどうやら能力者という存在のようだが、未知のこれは防げるか?非殺傷設定だが魔法という安全なものだ」

 

彼等は得意気に言う。

 

「そう、安全なんだ」

 

「何せ、性能試験では何発浴びせても、的になった学生は死ななかった!」

 

それを聞いたフェイトが、驚きと怒りを織り混ぜた表情を浮かべる。

 

「何て事を……ッ!」

 

「ちゃんと生きたまま罪を全身で理解させる事ができる。安全な武器だ!」

 

なのはもヴィータも、目を剥いて彼等を見る。

 

「あなた達…、今まで何をしてきたの……ッ!」

 

「お前等、何が正義だ!やってる事悪党そのものじゃねーか!!」

 

それに答えず、彼女達と少年の双方に銃口とデバイスを向け、一斉に放つ。

 

「我々の正義を理解できない悪め!お前達も我々が正しく導いてやろう!!」

 

ドドッ!!

 

無数の光線と弾丸が襲い掛かるが、それらが命中する事はなかった。

少年の中心から、ゴォッ!!と正体不明の爆発と同時に烈風が発生し、弾丸も魔法も、DA隊員達をも纏めて凪ぎ払った。

 

「_ッ!?」

 

DAが混乱し狼狽える一方、吹き飛ばされた魔法の代わりに見境なく放たれた烈風から、なのはが前に出てヴィータとフェイトを展開したプロテクションで守る。

プロテクションと左手に握るレイジングハートを通して、防御した風圧の感覚に違和感を覚えた。

記憶の片隅にあった、奇妙な既視感が。

 

(何……この感覚……?)

 

視界が晴れると、その奇妙な違和感と既視感の理由を断定できる光景が広がっていた。

 

「安全だとか危険だとか関係ねえな。『超電磁砲(レールガン)』くらいまでなら、俺の羽は耐えられるぞ?」

 

少年の背中から、天使のような6枚の白い翼が生え、ゆったりと羽ばたいている。

DA隊員達だけでなく、なのはとフェイト、ヴィータの3人も驚愕に染まる。

何故なら、その翼とそれを操る人間を見知っていたのだから。

 

「き貴様その翼!まさかっ、第二位ッ!?」

 

「なッ何故ここに研究対象が……ッ!?」

 

主に元警備員(アンチスキル)のDAが切羽詰まった様子になる中、

 

「俺が何者なのか、誰にケンカ売ったのか把握したようだな」

 

うっすらと自信に満ちた笑みを浮かべながら、その学園都市第二位の怪物は告げる。

 

「そうだ、俺が『未元物質(ダークマター)』。垣根帝督だ」

 

服装はもちろん、背格好も成長し声変わりもしているが、その仕草の癖や態度。

そして何より、あの神々しさと禍々しさを内包する圧倒的な力の象徴、風貌と不釣り合いな正体不明の白い翼。

 

「か……垣根、くん……?」

 

「垣…根……なの……?」

 

「お前……何で、ここに……?」

 

思わずといった調子で、彼女達は小さく呟いた。

いいや、尋ねたつもりだったが、驚きのあまり震える程度にしか、唇さえ動かせなくなっている。

そして当の垣根帝督は、彼女達には相変わらず眼中に無いかのように目もくれず、

 

「が、学園都市第二位の貴様が、何故我々の邪魔をしに現れた!!」

 

「何故正義の道を阻む真似をする!?」

 

超能力者(レベル5)という才能を持ちながら、何という……」

 

「嘆かわしい、我々こそが正義だというのに」

 

何言ってんだこいつ等、と退屈そうにDA達を眺めていた。

そこへ、

 

「狼狽えるな、落ち着け同志達よ」

 

全身を特殊なプロテクターのようなアーマーを纏った、大柄な男が現れた。

態度と様相からして、この男は警備員(アンチスキル)DAのリーダー格なのだろう。

 

「学園都市第二位といっても、我々が教え導かねばならない存在というだけの事だ。それに、これは我等の正義がもたらした、またとないチャンスだ」

 

「あん?」

 

「哀れな子供には我等が正しさを教え導こう。力は正しく使うものだという事を、お前に教えてやる」

 

端から見れば、正義の名の元に独善的な暴力を振るっていた彼等がどの口で、と思うだろう。

だが、とりあえず今の垣根にとってはどうでも良かった。

が、

 

「それから正義の礎となってもらおうじゃないか。だから、まずはそのふざけた羽を仕舞え」

 

「あ?ふざけてんのはテメェ等の方だろうがクソッタレ。本格的に頭沸いてんのかよ……。ま、どうでも良いけどな」

 

鼻で笑いながら吐き捨てるように言う。

 

「お前等が持ってる情報を全部よこせ。大人しく従えば、無傷で見逃してやっても良いぞ」

 

「調子に乗るなよ悪党。残存している隊員を集めろ!正義を行使す_」

 

言い終わる前に、垣根が奇襲を仕掛けた。

白い翼の内の1枚がギュンッ!!と伸長し、アーマーを纏った大男をドッと突き飛ばした。

軽傷では済まないほどの衝撃を受けたはずの男は、不思議と後方に数センチ押されただけで表情に変化も無かった。

 

「うむ、それが『未元物質(ダークマター)』か。だが私が着ているこのアーマーは、試作品だが対能力者鎮圧用でな。複合金属製の装甲と内部に詰まった衝撃吸収ジェルで、あらゆる属性の攻撃を減衰、無効化するのだ」

 

得意気に語りながら、男はこれまた学園都市製とおぼしき折り畳み式のサスマタを構えてきた。

それも本来は警備員(アンチスキル)用の装備なのだが、改造が施されている。

 

「哀れだな。正しさも分からぬまま、ただ能力開発に従う子供というのは」

 

「はは、何だそりゃ。サスマタでこの俺を捕まえようってか」

 

「軍用品の数倍、1000万ボルトが流れると言っても笑えるか?」

 

バヂィッ!!と威嚇するように高圧電流のスパークを見せてみる。

明らかに、学生所か人に向けるべき代物ではない。

 

「それ死ぬんじゃねえの?さっきのヤツも、模擬弾の安全がどうのとか抜かしてたが」

 

いつの間にか、他のDA隊員が集結し、垣根帝督に銃口を向けて構えていた。

 

「死ぬのは我々の、絶対正義を理解していないからだ」

 

「押し付けがましいのも大概にしろよ。お前等ただのカルト集団じゃねーか」

 

ヴィータが吐き捨てるように口を挟んだ。

しかし彼等は揺るがない。

他人から見て支離滅裂でも、彼等なりの理屈が確立しているからだ。

故に、説得が中々通じない。

 

「哀れな子供よ。そして時空管理局という脆弱な正義の使者よ、お前達のその不完全な力も我々が管理し更正させてやらねばなるまい」

 

「……そぉかよ」

 

垣根は、6枚の翼を広げてくだらなさそうに告げる。

 

「だがそのアーマーとやら、所詮は『普通の能力者』の相手を想定して作られたもんだろ?」

 

「何?」

 

次の瞬間、垣根帝督の真っ白な6枚の翼が巨大化し凄まじい勢いで伸長し、一斉に襲い掛かった。

爆発的な射出があった。

 

「俺の『未元物質(ダークマター)』に、常識は通用しねえ!!」

 

ドンッ!! という轟音が炸裂した。

回避も防御もする間も無く、武装隊員姿のDAは凪ぎ払われ壁に思い切り叩き付けられた。

そして警備員(アンチスキル)姿の方は、体を易々と刺し貫かれ鮮血を撒き散らす。

 

「どんな属性の攻撃であろうと、そのエネルギーを減衰すれば_っ!?」

 

全身に特殊なアーマーを纏った大男も、両腕でガードしてみせた直後、目を疑う現象が起きた。

未元物質(ダークマター)』の攻撃で影響を受け、右腕が風化するように肘から先が消失し、左腕も同じく肘から先がグチャグチャに捻じ切られるようにズタズタになり、原形を留めていない。

ようやく惨状を理解し、ぼとぼとと赤黒い血を大量に流しながら絶叫する。

 

「ぬおおおおおッ!!なぁッ!!何故だあ!?何が起こっている!?ぬああああおおおおおッッッ!!!?」

 

受け入れられないほどの現象と激痛に、喉を震わせて絶叫するもそのまま、ゴシャァッ!! と倒れ込み気絶してしまった。

 

「ま、まだだ!!やれ!!」

 

「最低でも脳さえ確保できれば良い!!」

 

「この悪を殺せ!!」

 

残存している隊員が狼狽えながらも、駆動鎧(パワードスーツ)や無人ドローン型兵器も集結し、一斉に発砲したり魔力弾を放つがもはや結果は見えていた。

状況的には高町なのは達も垣根に加勢しようかとも思ったが、その隙すら無いほどの蚊帳の外同然の、圧倒的なワンサイドゲームに終始し、そう時間も掛からなかった。

 

 

 

「_啖呵切っておいて10分程度で全滅かよ。全く、拍子抜けってもんだぞ」

 

無秩序に暴力を振るい、君臨する垣根帝督という怪物は、心底失望し退屈そうな口調で、両腕を失って気絶していた大男を蹴り付けた。

 

「さて、お前がリーダー格だな。わざと生かしておいた理由は分かってるか?」

 

激痛に悶えながらも、大柄な男は恨めしそうに垣根を睨む。

 

「ぐっ……。正義を理解できぬ哀れな子供が……、我等に牙を剥いてタダで済むと思っているのか……ッ!!」

 

「はぁっ。そういう口はよ……、地面に這いつくばりながら言うもんじゃないだろっ」

 

ガスッ!! と思い切り胸を繰り上げ、アーマーもその下の骨をも砕く。

 

「ぐげっ!!が、はっ……!?」

 

「この状況で虚勢を張られるなんて見くびられたもんだな。これだからザコは救いようがねえ。何を企んでいるか、あと何より、テメェ等学園都市の人間と魔法サイドの人間、この2つを結び付けた仲介役……ネゴシエーターの類いのヤツがいるはずだ。それについて全部言えば許してやるよ。さっさと喋れ」

 

「貴様のような……力を正しく使う事も……できぬ能力者に……、話す事など何も無い……!!」

 

「おっと、手が滑った」

 

ゴリリ!!

という音が聞こえた。

 

「あ、ぐおぁあああああッ!?あぁあああ一体何がぁ!?」

 

何が起きたか分からなかった。

垣根は相手には触れていないのに、男の体が見えない何かに踏みにじられる。

 

「騒ぐなよ。研究してるなら知ってるだろ?『未元物質(ダークマター)』はこの世界に存在しない物質を生み出す。その物質に既存の物理法則は通用しねえ。使い方次第で、こんな事もできるっつー訳だ」

 

体がビクンと震えた。

傷口の赤黒い血の染みが、圧迫を受けてあっという間に広がっていく。

 

「気分はどうだ?忠告を聞き逃すから酷い目に遇うんだよ」

 

更に垣根の能力が重圧を増す。

男は吐血しもがき苦しむ。

 

「だが、今日は特別にもう一度だけチャンスをくれてやる。愉快な死体になりたくなきゃ、質問に答えろ」

 

「ふ、ふふふ……はは、ふははははッ!!」

 

突然、何の脈絡もなく笑いだした。

それを見て、垣根帝督は眉をひそめる。

 

「あん?何笑ってやがる」

 

「くはは!貴様が滑稽だからだ。何も知らぬ子供がイイ気になるなよ!!お前は我等にとって明確な悪となった。研究素材を裁けるとなれば、あの計画が本格始動するだろう!!」

 

「計画?テメェ等如きが、しかも学園都市の外で俺の『未元物質(ダークマター)』を研究して何をする?」

 

「話した所で、我等の正義を理解できるはずもない。哀れな能力者だ……。二番手で足踏みをしている害獣如きではな!!」

 

その一言に彼は僅かに苛立つが、敢えて静かに告げる。

 

「へえ、言い遺す言葉がそんなんで良いのか?」

 

「ははははは!!感謝してやるぞ害獣!!悪は粛清され、絶対正義である我等は新たな力を得られる!!私の正義は別部隊の同志達に託す……」

 

明らかにマトモな目の色をしていない。

極端な思想に染まりきった狂気的な目をしている。

 

「絶対正義は我等にあり!!」

 

「はあ、戯れ言は飽き飽きだ。消えろコラ」

 

興醒めだ、といった調子で吐き捨てる。

 

「待って!!もう_ッ!!」

 

と、フェイト・T・ハラオウンが駆け寄って制止しようとしたが、間に合わず垣根の足元で、男は絶命した。

なのはとヴィータは、この惨状の中で生存者の確認と最低限の治癒魔法を行使していた。

よく確認してみると、学園都市出身のDA隊員は皆殺しにされていたが、元管理局員のDA隊員は重傷を負わせているものの、全員が気絶で済まされていた。

フェイトの声を無視して、垣根は呟く。

 

「はん、どうやらアレイスターのクソ野郎以外にも、俺を甘く見ている連中がいるようだな。しょうがねえヤツ等だ。まずはそいつ等にも、思い知らせるとするか」

 

ゆっくりと歩き出し、奥へ進もうとすると、

 

「待って!!」

 

再び彼を呼び止める声が聞こえた。

心底面倒臭そうな顔をして、垣根帝督は気だるそうに振り向く。

 

「……んだよ」

 

目を向けると、予想通りバリアジャケットにデバイスを携えた高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、ヴィータの3人が走って近付いてきた。

彼女達もヴィータ以外は成長し背格好もバリアジャケットのデザインがかなり変わっているようだったが、それでも、一目見れば誰が誰だかはすぐに分かった。

 

「あ……、えっと……」

 

「あ……」

 

「……、」

 

呼び止めたは良いが、何て言って良いのか分からなくなった。

退屈そうな垣根とは対照的に、哀しげで複雑な面持ちのなのはとフェイト。

ヴィータは警戒心を全面に押し出して見せているが、同じ気持ちだった。

なのはもフェイトも、古い知り合いに会えた喜びを最初の一瞬だけ、驚きと同時に感じたが、それはすぐに消し飛んだ。

他でもない、彼の所業によって。

敵が重犯罪者同然で、殺意を向けられていたとはいえ、何の躊躇も無く相手を殺戮し、尋問しながら残虐にいたぶって最後はまた気軽な様子で殺害してみせたり等と、彼が垣根帝督である事に間違いないのだろうが、明らかに自分達が知っている垣根帝督ではなかった。

管理局員としての視点でも事情聴取を試みたい所だが、あくまでも任意同行が限界だろう。

局員に危害を与えた訳でもなく、少なくとも魔法サイドの人間を殺害した訳でもなく、一応正当防衛が成立する状況ではあった。

 

「垣根、くん……だよね?」

 

やっと出た一言だった。

両手をズボンのポケットに突っ込み、垣根は煩わしそうにコキコキと首の関節を鳴らして答える。

 

「ああ。俺は正真正銘、垣根帝督だ」

 

「でも……、何で……」

 

「あ?」

 

今度はフェイトが、震える唇を動かして小さな声で、尋ねる。

 

「……どうして、こんな事を……?何で、そんな……、簡単に_」

 

「_人殺しができるんだってか?」

 

「「「ッ!!!?」」」

 

彼は予想していたらしく、質問を先読みして告げてきた。

目を見開き、言葉を失い、全員の喉が引きつる。

垣根帝督は僅かに眉を眉間に寄せて、薄い薄い邪悪な笑みを浮かべている。

 

「何で……どうして!?」

 

我慢できず、吐き出すようになのはが無意識に声を張り上げて、問う。

 

「どうして、こんな事したの!?わたし達が知らない間に何があったの!?お願い教えて!!」

 

しかし、彼は表情一つ変わらずに答える。

 

「答えてやる義務は本来ねえんだが、まあ一応知り合いのよしみで教えてやる。別に何もねえよ。どうして?そういう仕事だからだよ」

 

「「え……ッ!?」」

 

「お前……ッ?」

 

なのはとフェイト、ヴィータの体が震える、冷や汗が流れる。

事も無げに、いちいち説明するのも面倒だと言わんばかりの声で、

 

「何か勘違いしてるようだが、俺は初めからこういう人間だ。……ヴィータ、だったよな」

 

「ッ!あ、ああ……。でも……」

 

垣根が言って、小柄な少女を見据える

ピクッ、とヴィータが肩が震わせながらも答えた。

 

「お前とお前の仲間にゃ、昔に言ったよな。俺は外道のクソ野郎だって」

 

「あ……ッ」

 

言われてから、ヴィータはその時の事を思い出す。

彼女はただの軽口だと思っていたが、そうではなかったのだ。

 

「もう良いか?こっちも用事があるんだ。お前等はお前等の仕事してろよ、折角そっちサイドの連中は、命だけは見逃してやったんだから」

 

それだけ言うと、垣根は再び歩き出す。

 

「あ!ちょっと……!」

 

「ま、待って……!」

 

なのはとフェイトが引き留めようとするが、彼は無視して耳を貸さなかった。

垣根帝督は立ち去ってしまい、やむなく、3人は元局員DAの治癒と拘束、アースラへの通達を行っていく事とした。

 

 

一方、垣根は奥へ突き進んでいく。

しかし、

 

「それじゃ、情報を漁りに行くとするか」

 

しらみ潰しに施設中を歩き回ったが、いずれも無人で、研究者もDAも見当たらない。

 

「研究してた痕跡も、作られた兵器とやらもどこにもねえな。抵抗してきた戦力からここが本拠地かと思ったが、ここは外れたか?」

 

思わずため息が出た。

このままでは、骨折り損のくたびれもうけだ。

 

「面倒だが、この部屋にだけ集まってる端末で、探ってみるしかねえか。何かめぼしい情報だけでもあれば……」

 

稼働状態の端末や演算器具のコンソールを叩いて、中身を確認していると、それらしきレポートを発見する。

 

「あーあったあった。計画の詳細と研究概要に関するレポートねえ……」

 

それには、こう記されていた。

 

※『未元物質(ダークマター)』の兵器転用※

『Project Equ.Dark_Matter(ダークマター)

 

『超能力を炎と考え、炎を使って新たな鉄の装備を作り出す思想を基に、始動。

しかし、『未元物質(ダークマター)』のサンプルが少なく、資金も限られていた為生産ラインを確立できず凍結』

 

「ハッ。大口叩いた癖して金欠で断念だと、情けねえ。こっから先は泣き言でも書いてありそうだな」

 

鼻で笑い、気分良さげに馬鹿にしながら続きを読む。

 

『そこで『未元物質(ダークマター)』が生み出す新物質の独自性に着目。

能力を利用して能力者を造るセカンドプランへ移行。

未元物質(ダークマター)』を人体へ埋め込み改造する実験を開始。

サンプルの少なさ故に回数は少ないものの、犠牲は出つつも人体への定着が可能と分かった。

結果は良好、懸念と実用化には最大数年掛かる見込みはあるものの、既存の法則に囚われない改造能力者を製造可能な事までは判明した。

ただし、兵器としても実用性は乏しく、利用価値が低ければ同志もスポンサーも納得せず。

正義を成す為には、検体として第二位本人を捕縛し『未元物質(ダークマター)』そのものを入手する事が最も望ましい。

現在、示し合わせたように第二位は闇に墜ちている。

第二位そのものを掌握し、計画を完璧なものとする。』

 

レポートは、そこで終わっていた。

つまり、『未元物質(ダークマター)』を兵器または武器装備品としての転用量産化計画。

そして同じ効果を狙った『未元物質(ダークマター)』そのものを行使する人工的な第二位、またはそのダウングレードの量産化計画。

過程こそ違うが、同じ目的を目指した計画。

共通しているのは、研究も始まったばかりで将来性も実用性も未知数で、今の段階では画餅としか言いようがなく、たとえ本当に第二位を研究素材として掌握できたとしても、研究試験だけでも後数年は要する上、実用化の目処はその後になってからでないと不明という代物だった。

 

(つまり、実質的にゃ何一つ進捗してない訳だ)

 

「ははは、笑えるなこりゃ。ははははは!!あははははははッ!!」

 

乾いた笑い声が、部屋中に響く。

その声を聞き付けたなのは達3人が、部屋に入ってくる。

 

「あ、垣根くんここにいたんだ……」

 

「何笑ってんだよ……?」

 

「ここって……、研究室……?」

 

「_はー……。ふざけるなッ!!」

 

「「「ッッ!?」」」

 

彼はひとしきり笑い終えると、怒りを爆発させ怒鳴り散らした。

もちろん彼女達に怒鳴った訳ではないが、タイミング悪く鉢合わせしたせいもあり、彼女達はびっくりして肩を震わせた。

垣根はなのは達の存在を無視して怒りを撒き散らす。

 

「俺を、俺の『未元物質(ダークマター)』を料理の材料か機械の部品程度にでも思ってやがんのか!?……俺の『未元物質(ダークマター)』は唯一無二だ。俺以外のヤツ等が勝手に触れて良い領域じゃねえ」

 

垣根帝督は、レポートが表示されている画面を鋭く睨み付け、ギリッと歯を食い縛って怒りを滲ませる。

彼女達はそんな彼の剣幕に、自分達が怒鳴られた訳でもないのに思わず鼻白む。

なのは達が覚えている限り、普段は飄々としている事が多かった垣根が露骨に怒りの感情を露にしていたのは、およそ5年半前のリインフォースとの別れの時くらいだった。

立ち尽くしたまま、彼は思案する。

 

(しっかし、やっぱ腑に落ちねえ。何で警備員(アンチスキル)のコスプレ野郎共とクソッタレ研究者がつるんでるのは理解できるが、そこから何で、どうやって魔法サイドの人間と関係を持った?しかもそこの連中もDAを名乗っているだと……?やっぱ俺みてえな両方知ってるヤツがいて、そいつが仲介してわざわざ結び付けた、という線は間違い無さそうだな)

 

だが、あいにく今は判明している事より不明な事の方が多い。

一層の事、目の前で何故かまごまごしている女達に取引を持ち掛けて、情報交換を試みようかと思ったその時、

 

『このプロジェクトはお気に召さないかい?第二位の超能力者(レベル5)、「未元物質(ダークマター)」よ』

 

方向性の掴めない中性的な声が、垣根となのは達の耳に届く。

全員、全方位へ注意を向け、なのはとフェイトが複数のサーチャーを射出した。

音源不明なゆったりとした声に、垣根は面倒臭そうに答える。

 

「はん。名前で呼んで欲しいもんだな。俺には垣根帝督って名前があるんだからよ」

 

『そうか、ならば呼び方を変えよう。学園都市暗部組織「スクール」のリーダー、垣根帝督少年』

 

「えっ……、あ、暗部、組織の……」

 

「リーダーって……」

 

「お前、やっぱり……」

 

いまだに半信半疑というか、あまり信じたくなかった3人にとって、これはダメ押しの決定打となった。

相手の狙いはなのは達の動揺を誘う事だろう。

つまり魔導師としてか、垣根の表の知り合いとして、なのは達を知っている。

 

「わざとらしく言いやがって。しかも『スクール』の名を知ってるっつー事は、テメェも暗部関係者なんだろうが」

 

隠していたとはいえ、今更裏稼業である事を暴露された所で、何とも思わない。

後々面倒臭そうではあるが。

 

「テメェが今回の首謀者か?」

 

だとしたら手っ取り早い。

そいつを引きずり出す事に集中すれば良い。

 

『当たらずとも遠からずかな』

 

妙に含みのある言い方をしてくる。

 

『まあ、全貌は私の元に辿り着いたら教えてあげるよ。あ、ちなみに、この声は遠くの別地点から発信しているから、この建物をサーチしても無駄だよ』

 

「「ッ!!」」

 

図星を突かれ、なのはとフェイトが一瞬動きを止めた。

確かに、生体反応も何も無い。

2人が歯噛みしていると、中性的な声の主は、相変わらずのゆったりとした態度で告げる。

 

『それでは、楽しみにしているよ。第二位』

 

それを最後に、声が途切れた。

数秒間、誰も口を開かずにただ佇んでいる。

正面の画面を睥睨していた垣根帝督は、その沈黙を破り、怒りと悪意を内包した口振りで言う。

 

「……良いぜ、何もかもブッ潰してやる。俺が他の能力者みたく、ただ利用されるだけのクソ共と同じだと思うなよ」

 

とりあえず、この施設にはもう用は無い。

残りのDA狩りに次へ行こう。

そう思って一歩踏み出した彼の、

 

「待って!!」

 

ポケットに突っ込んだ右手首を、高町なのはが左手で掴んだ。

 

「……今度は何だよ?」

 

鬱陶しそうに、首だけ振り向いた。

見ると、なのはは得物のレイジングハートを待機状態にして、徒手空拳の丸腰になっていた。

なのはだけではない。

フェイト・T・ハラオウンもヴィータも、同様にしていた。

彼女達の、対話の意思の示し方だ。

垣根帝督は怪訝に思い、眉をひそめる。

 

「何のつもりだ?」

 

「その……ね?お話、したい…だけなの……。垣根くんの事……とか、色々訊きたくて……。わたしも……、話せてない事……話したい事、とか、あるから……」

 

「垣根も、わたし達と同じようにDAを追ってるんだよね?……なら、協力……とまではいかなくても、情報交換とかの取引くらいは……できないかな……?」

 

「あたし達としても焦ってて、あんまり……なりふり構ってられねーんだ」

 

垣根は馬鹿だ、と思った。

時空管理局員と学園都市暗部組織の構成員。

地球の、日本で例える所の警察と暴力団の類いが協力するようなもの。

普通に考えてあり得ない話だ。

管理外世界という意味では、ある意味法の抜け穴を突く形で満更無理という話でもないが、やはり倫理的にマズイだろう。

だが、それを理解した上で彼女達は告げていた。

しかし、

 

「別に話す必要がある事なんざねえだろ。確かに追ってるのは共通の相手のようだが、目的が違う。お前達は捕まえに行くんだろうが、俺は違う」

 

「でも……」

 

「しつこいんだよ」

 

体を揺すって掴んだ手を振りほどく。

 

「あ……っ」

 

垣根はなのは達を睨み付けて、突き放すように告げる。

 

「敵が同じなら、俺は味方になってくれるとでも?甘いんだよ。知り合いなら遠慮してもらえるとでも思ってんのか」

 

「そりゃ、局員として悪党やってるお前に、協力とか取引とかは良くないかもしれねえけど、被害を抑える為にも_「そんな事どうでも良いんだよ」っ!」

 

ヴィータのセリフを遮って、吐き捨てるように言い放つ。

 

「敵の目的が何だろうが、どこで誰が巻き込まれて何人死のうが興味はねえよ。ただ、俺の邪魔をしようってんならお前等だろうが誰だろうが関係ねえ。纏めて敵と見なして叩き潰すだけだ」

 

「……っ!」

 

ギロリと暗く鋭い視線を向けられ、それなりに悪意や殺意の類いに敏感で、慣れているフェイトが息を呑む。

ただの脅しじゃない事が伝わってくる。

だから、と垣根は言う。

 

「お互いに不干渉で行こうや。俺はテメェ等の邪魔はしない。その代わりお前等も俺の邪魔はしない。ちょうどターゲットも魔法サイドと学園都市サイドに分かれているようだし、それでイーブンだろ」

 

協力も取引も応じないが、行動の妨げをされなければ、少なくとも、最低限局員には危害を加えない。

落とし所としては、これが妥当だろう。

なのはとフェイトは、やや表情を曇らせながらも頷く。

 

「うん、分かった……」

 

「わたし達も、垣根くんと戦いたくはないしね……」

 

2人にとってそれは、学園都市第二位という名の脅威と敵対したくないという局員としての考えと、垣根帝督という古い同級生と仲違いしたくないという一個人としての気持ちが強かったからだ。

もっとも、後者の方はきっと垣根本人には、伝わらないだろう。

彼は薄く笑って告げる。

 

「よっし、交渉成立だな」

 

所詮は口約束でしかないので、どこまで効力が活きるかは疑問だが。

 

「……あ!」

 

しばらく黙って見ていたヴィータが、不意に声を発した。

 

「どうしたの?ヴィータちゃん」

 

「偵察隊から緊急通信だ、元武装局員だけのDAを捕捉したって」

 

尋ねたなのはに、ヴィータは早口で答えた。

それを聞いたフェイトも、

 

「なのは!」

 

「うん、急ごう。フェイトちゃん!ヴィータちゃん!」

 

「ああ!……っと、垣根…お前は……どうする?」

 

早足で部屋から出始める3人。

ヴィータが一度足を止め、少し戸惑った様子で尋ねた。

突っ立って聞いていた垣根は、興味の無さそうな様子で言う。

 

「聞く限り、警備員(アンチスキル)のコスプレ野郎共はいないようだし、俺はパスだな。お前達の領分だ」

 

「そっか。……じゃあな」

 

それだけ言うと、ヴィータはなのはとフェイトを追って部屋から出ていった。

 

残った垣根は『スクール』の下部組織に連絡を入れ、自身が殺したDA隊員の死体の回収と処理、その他施設内部の改装等の偽装工作といった後始末を命じる。

施設の屋上に佇み暇を潰していると、下部組織の別動隊から定時連絡が入り、携帯電話を取り出す。

 

「…俺だ。例のふざけた連中は見付かったんだろうな? あ?わざわざ収穫無しの報告なんかしてくんじゃねえ。チッ、次は海鳴市へ行ってみろ。消されたくなきゃ死ぬ気で手掛かりを見付けろ」

 

それだけ言うと、さっさと通話を終わらせて携帯電話をしまった。

ため息を吐きながらぼやく。

 

「ったく面倒臭せえ、何人か生きたまま捕まえときゃ良かったな」

 

隅々まで調べあげてみると、結局ここのアジトは研究所としてより寝床としての方が利用されていたようだった。

一番欲しい情報は相変わらず掴めず後手に回っていて、少なからず苛ついていた。

他の正規要員とも連絡が繋がらないのも気になる。

まさか敵と遭遇し、そのまま返り討ちにでも遭ったのか……。

一層の事、協力を申し出て誘き寄せたい所だが、肝心の接触する手立てが無い。

かと言って、約束を交わしたそばから魔法サイドのDAを狩りに行って反故にするのも、あまり良くない。

 

「……まあ、相手から手を出して来たら、話は別だがな」

 

そう、相互不干渉と銘打ったが、あくまでもケースバイケース。

魔法サイドでも関係無く、相手から仕掛けてくれば敵と見なして対応する。

もっとも、接触に成功して、相手側から攻撃を仕掛けてくれればの話なのだが。

 

「さて、くだらねえ鬼ごっこ……いや、隠れ鬼か?ま、どっちでも良いが、さっさと終わらせたいもんだ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。