魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter   作:戸礼太

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2週間近く掛かってしまった……。


とある科学の未元物質(ダークマター)

「散々捜し回る羽目になったが、どうやらここが例の連中の拠点らしい」

 

夜の海鳴市の外れに位置する、一見寂れた資源再生処理施設の前に佇んでいるのは学園都市暗部組織『スクール』のリーダー、垣根帝督。

DAの残党狩りとその上の存在を狙って、下部組織を利用しながら一日中活動を続けていた。

そしてようやくめぼしい情報が入ってきたのだが、何度も偽の情報を掴まされている上、ここがダミーの可能性も十分にあったのだが、それでも垣根帝督自ら直接動いたのには理由がある。

 

(最近のあいつ等の情報は必ずここを示してた。その情報が本当なのかどうかを確認しに来てやる)

 

つまり、明らかに怪しいから乗ってやる、という訳だ。

 

(もし罠なら上等だ。それごと握り潰す)

 

手始めに正面の門を抉じ開けて敷地に侵入してみるが、調べ回ってみても今の所何も見付からず、反応も無かった。

 

(見て回った限り、敷地周辺は完全に無人。研究がされてた様子も無い。こりゃ一杯食わされた……かもしれないが、僅かだが誰かいた痕跡が残ってる。慌てて逃げ出したか、或いは……)

 

物騒な予想の方が当たったようだった。

想像通り、警備員(アンチスキル)の格好をしたDAが数十人出てきた。

全員フル装備で銃火器を構える。

 

「対象を作戦ポイントにて目視!これより正義を執行する!!」

 

「ターゲットは第二位の能力者だ、気を抜くな!!」

 

声色からして、男女混合の部隊のようだったが、垣根は構わず能力を振るう。

 

ザシュッ!! ドバァ!!

 

彼の背中から出現した6枚の翼。

更にそこから瞬時に放たれた無数の羽が、凶器のシャワーとなって襲い掛かる。

 

「一瞬で__ごッ、がぱァ……!?」

 

「一瞬で、何だ?大人数で囲めば勝てるとでも思ったのか?」

 

うっすらと冷笑する垣根に、彼等は歯噛みしながらも叫ぶ。

 

「くっ……ひ、怯むなぁ!!悪は粛清する!!正義は我等にあり!!」

 

「相変わらずイラつく連中だ。誰にケンカ売ったか教えてやるよ」

 

それから、時間は掛からなかった。

1分足らずで戦闘は終わる。

無差別に無秩序に無慈悲に振るわれた、超能力(レベル5)の『未元物質(ダークマター)』によってDA隊員は皆殺しにされていった。

 

「ははっ、テメェで終いだ!」

 

「ぐ、おぉおおおおおおおおおおッ!?……く、クソ……全滅、だと……!!」

 

痛烈な一撃を受けて倒れたDA隊員の男を見下ろし、嘲笑う垣根帝督。

彼は両手をズボンのポケットに突っ込んで佇み、冷徹な視線を向けながら告げる。

 

「わざわざ準備したのに、無駄になっちまったな。……さて、テメェには特別に手加減してやった。そのままだと、じわじわ苦しみながら死ぬ事になる。そこで、だ。知ってる事を全部話してもらおうか。そうすりゃ苦しまないようにすぐ殺してやる」

 

「……くっ、我々の正義を、微塵も理解できない害獣に従うつもりは無い……!」

 

「またそれかよ、飽きねぇ連中だ」

 

うんざりした様子で吐き捨てるように呟く。

そして興味が失せたように歩き始め、建物の内部へ進む。

 

「……ま、そうだろうと思ったから、勝手にあちこち隅々まで物色させてもらうわ。あばよ、三下」

 

そう言った頃には、DA隊員の男は動かなくなっていた。

能力の重圧が増した事で易々と殺された。

彼は施設の内部へ入り込み、通路を進むと案の定新手が出てきた。

今度は武装局員の格好をしたDA隊員達だった。

 

「おーいたいた。今回は案外当たりみたいだな」

 

「ッ!来たぞ、対象の能力者だ!!こっちに同志達を集結させろ!!」

 

「徹底抗戦ってか?それとも……いよいよ逃げる事も情報を操作する事もままならねぇか?」

 

「悪が調子に乗るな……!残存兵力を全て投入して、ここで我々の正義を成す!!」

 

ズラリと十数人の武装局員DAが展開し、垣根帝督を狙う。

 

「散っていった同志達の仇を討たせてもらう!!正義は我等にあり!!」

 

「救いようのねえ連中だ」

 

垣根は興醒めしたように言うと、正面の障害物を排除すべく超能力(レベル5)を振りかざす。

 

「……いい加減、失せろ!!」

 

一瞬で、禍々しい白い正体不明の翼が振るわれ、文字通り叩き伏せられる。

追撃が来ない事を確認すると、彼は歩き出して更に奥へ進む。

 

「増援が出てこなくなったか。はん、どうやら雑魚共の悪足掻きは打ち止めらしいな。それじゃ奥へ漁りに行くかな。……どんなクソみてえなもんが出てくるか楽しみだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから遅れる事、十数分。

高町なのは等の時空管理局捜査隊が、件の資源再生処理施設に到着した。

直近まで武装局員DAと交戦し消耗し切っていたクロノ・ハラオウン、ユーノ・スクライア、魅神聖達のCチームはアースラに帰還し、有視界通信の回路を開いてモニタリングしながらバックアップに回る事となった。

結界を展開しながら状況を確認する。

既に何者かによる侵入と攻撃を受けた後らしく、正面の門は破られ外側はまさに死屍累々といった具合で警備員(アンチスキル)DA達の死体が転がっている。

侵入口から覗いてみると、大破した駆動鎧(パワードスーツ)や武装局員DA隊員達が倒れていた。

ご丁寧に彼等は気絶だけで済まされている。

 

「これって……」

 

「先を越されたみたいやね」

 

なのはとはやてが呟いた。

侵入者が何者なのか、誰なのかは、今更確認するまでもなかった。

砲射撃型の高町なのは、後方支援型のシャマル、広域型の八神はやてとリインフォースⅡ、そして彼女達の直衛としてザフィーラが、施設の包囲を行いながら上空待機。

そして、彼女達とデバイスを通じて有視界通信回線を開いたまま、シグナムを先頭にヴィータ、フェイト・T・ハラオウンが内部へ侵入を開始した。

 

「内部の警備は……反応は、無いが……強力なAMFが展開されているな」

 

「やっぱな……」

 

「……っ」

 

シグナムとヴィータが呟き、フェイトもバルディッシュを魔力刃にノイズが入るハーケンフォームからアサルトフォームに切り替えた。

しばらく歩き進むと、薄暗い通路から出て、広いオープンスペースに辿り着いた。

実験か何かを行う為の部屋なのだろうか、無機質な空間が広がり、片隅には記録や検査等を行う為のパネルやコンソールが設置されている。

そして、そこには予想通りの先客がいた。

 

「何だ、もうお前等も来ちまったのか」

 

あっさり言ったのは、垣根帝督。

前回出会った時と同じように、崩した着こなしの学ラン姿で佇んでいた。

シグナムが確認するように尋ねる。

 

「ここまでのDA達は、お前が?」

 

「ああ。そっち側の連中は気絶で済ましといてやったぞ」

 

どうでも良さそうな態度で答えた。

そこでヴィータが気付く。

 

「……あれ、お前は今何してんだ?てっきり奥まで能力使って扉だろーが隔壁だろーが突き破って進んでるのかと思ったけど」

 

そう。

今までの垣根なら、隔壁やバリケードで行く手を阻まれても、能力を行使して強引に無理矢理にでも突破していくはずだったのだが、

 

「ああ、俺もそうしたい所なんだが根城らしく、流石にここじゃ能力者対策もされてるみたいでな」

 

面倒臭そうな顔で言いながら、彼はコンソールを弄って扉の解錠を試みている。

 

「対能力者用にAIMジャマーが区画内を網羅している。本来は凶悪能力者を収容するような、学園都市の少年院向けの設備なんだがな」

 

「……じゃあ、能力は使えないの?」

 

フェイトが尋ねるが、垣根は緩やかに首を横に振った。

 

「いや、完全に使えなくなる訳じゃねえ。集中力を散らせる感じかな。ただし無理をすると能力が暴走する可能性がある。並の能力者なら怪我ぐらいで済むだろうが、俺みてえな高レベル能力者になると危険になるな。……特殊な電磁波でAIM拡散力場を反射させていやがる」

 

AIM拡散力場を乱反射させて能力に干渉させる事で、能力行使を妨害する装置。

ミラーボール型やワイヤー型、遠隔狙撃用の超音波兵器型等の様々なタイプがあり、範囲内で能力を使った場合、完全に抑え込める訳ではないが制御ができなくなり自爆の危険性が高くなる。

垣根は銃を持っていない。

自分の能力にそれだけ自信があるのだろう。

だが、万が一にもその能力が暴走すれば、真っ先に巻き込まれるのは垣根本人だ。

 

『ほう。予想はしていたが、存外早く現れたね。第二位』

 

『それにプロジェクトFの産物に守護騎士プログラムとは』

 

「っ?」

 

「あん?」

 

「何……?」

 

聞き覚えのある中性的な声。

と、知らない中年男性の声。

フェイト、ヴィータ、シグナムが眉をひそめる。

全員が目を辺りに走らせるが、音源が掴めない。

 

「はん、このタイミングで出てくるっつー事は、テメェ等が親玉だと思って良いのか?」

 

薄く笑う垣根に、中年男性の声が答える。

 

『まぁ、その認識で間違いはありませんよ』

 

「そうかよ。じゃあ、ぶち殺すけど文句は無いな」

 

『ふっ、AIMジャマーで自慢の超能力(レベル5)が自由に振るえないでしょう?だからこそ、その前に少し話をしようじゃありませんか』

 

「今更話だ?まさか命乞いじゃないよな?」

 

『いいや、私達がするのは提案だよ』

 

今度は中性的な声が答えた。

 

『第二位、我々の計画に君の身を貸してはくれないか?』

 

「……、命乞いより性質(たち)が悪いな。カスが腐った言葉吐くんじゃねえよ。俺が首を縦に振るとでも思ってるのか。隠れてナメた真似してくれた時点で、願い下げだボケ」

 

呆れきった顔で、吐き捨てる。

 

『困りましたね~。君の傍若無人な振る舞いで捨てゴマだったとはいえ、DAもワイルドハントも全滅。息子のシュラまで捕まってしまいましたよ。このままでは協力を申し出ていたスポンサーも離れてしまいますよ』

 

しかし、その声色に落胆の様子は無い。

むしろ侮るような笑いさえ感じ取れる。

それがまた、垣根は気に食わない。

 

「ハッ。あの三下、テメェの息子かよ」

 

『ふむ、家族の類いを知らない君に嗤われましてもね』

 

「ふん」

 

「え……?」

 

垣根の表情が変わらなかったのと対象的に、フェイトが怪訝な声を発して彼を見つめる。

彼女につられるように、シグナムとヴィータも事も無げに佇む垣根の方を見る。

有視界通信回線を通して、外からなのは達も垣根の方へ視線が向く。

中年男性の声は、わざとらしい口調で懇切丁寧に説明するように言い始めた。

 

『おおそうか。彼女達は知らなかったのですな。第二位の超能力者(レベル5)、垣根帝督の素性を』

 

「俺の素性?そいつはもうバレちまってるよ。俺が暗部に身を置いてる事もな」

 

退屈そうな垣根に、相変わらず不愉快な声色で告げる。

心底愉しそうに。

 

『いやいや。そこじゃありませんよ、分かるでしょう?私は魔法側の人間ですが、私と学園都市側を結び付けたネゴシエーターによって、「最暗部」の片鱗や書庫(バンク)に秘匿された、第二位。君自身の生い立ちを』

 

「へえ……、」

 

『第二位、君の生い立ちはそこにいる彼女達に負けず劣らず悲惨で壮絶ですねえ。君は置き去り(チャイルドエラー)の孤児で天涯孤独。しかもどういう訳か学園都市に来る前の、能力開発を受ける前の君の記録は不思議と残っていない。その上、君自身は苛烈で危険を顧みない開発実験の後遺症なのか、5歳……つまり学園都市入りする前の記憶を喪失していますねぇ。不思議ですねえ~。そして能力開発実験の末8歳頃の時に、超能力(レベル5)の「未元物質(ダークマター)」を発現。学園都市第二位の順位付けと統括理事長の進めるプランの一つ、「第二候補(スペアプラン)」となる。君はそれを振るって今までの意趣返しの如く暴走し研究施設の破壊活動をし研究者達を虐殺した、と。そしてこれを切っ掛けに本格的に闇に堕ちて統括理事会直下の暗部組織「スクール」に所属。そして今に至ると』

 

説明、とでも言うべきか垣根帝督の隠された過去の暴露話とでも言うべきか、その中年男性の声から発せられる話を、フェイト達は固唾を呑んで聞いていた。

視線の端の垣根へ目を自然に向けながら。

当の本人、垣根帝督は黙って佇んだままだった。

そこへ、中性的な声が少し弾ませた声で告げる。

 

置き去り(チャイルドエラー)な上に、記憶も記録も同時期より前が綺麗さっぱり残っていない。不可解だと思わないかい?』

 

「何が言いたい?」

 

『分かるだろう?君には本当に両親がいたのか、そもそも普通の子供として生まれたのか、だよ。疑問が残る以上、そういう仮説も成立する』

 

言葉で抉る。

毟り取る。

 

「……っ」

 

その一言に反応したのは垣根ではなく、フェイトの方だった。

 

『例えば、あらかじめ超能力者(レベル5)を……「未元物質(ダークマター)」を発現する能力者を生み出す為に大量生産されたデザインベビーの1体だった……とか、あるいは垣根帝督という人間が元々別にいて、今の第二位である君はクローンか何かかも、てね。いやあ可能性は広がるねえ』

 

一言一句が馬鹿にしているようにしか聞こえなかった。

思わず、フェイトのバルディッシュを握る手に力が入り、表情も険しくなる。

いや、彼女達全員が不快感に表情を歪めていた。

フェイト・T・ハラオウンも、八神はやても、その家族である守護騎士達も、皆それぞれ壮絶な過去や罪を背負い、それでも立ち上がって前を向いて今を生きている。

困難や絶望の縁に立たされた時、傍らに寄り添ってくれた人がいて、手を差し伸べてくれた人がいて、差し伸べられた手に気付けて、それを掴む事ができていたからこそ、今正しい道を歩めていると言える。

だが、この少年には、無かった。

肉親はおろか味方もいないまま、暗闇に放り込まれ、文字通り実験動物として使い潰されるつもりで研究に酷使され、周りの同類達が倒れる中、自分一人だけ死に損ない、救いの手が差し伸べられる事は無く、そういう人物も現れる事は無かった。

あったのは、終わりの見えない闇と絶望の果て。

おそらく垣根帝督も、その絶望的な環境と悲劇に触れ続け、壊れたのだろう。

それが、今の彼を作り出したのだろう。

 

しかし、

 

「それで?」

 

今まで黙っていた男が、当事者であるはずの彼が、一番興味の薄そうに退屈な顔で言う。

他人事のように。

心底くだらなさそうに。

フェイトもシグナムもヴィータも、外から見ていたなのはもはやてもリインフォースⅡもザフィーラもシャマルも、少なからず驚いた。

僅かに目を剥いて、垣根帝督の顔を見る。

 

「満足したか?こっちは退屈だったよ。テメェ等の能書きがあまりにも長いもんだから、飽き飽きしてたよ。あくびが出るぜ」

 

垣根帝督は揺るがない。

ほんの僅かでも、心が揺れたり狼狽えたりもしない。

全く堪えた様子の無い彼に、中年男性の声が怪訝そうに尋ねてくる。

 

『おや?一応君の話なのだけどねぇ』

 

意外そうな声を出す。

だが、その彼は動揺した様子はやはり皆無だった。

 

「別にわざわざ他人に言いふらす必要の無い事を、ペラペラと講釈垂れやがった事にゃ多少ムカついたが、それだけだな」

 

人生の裏道を歩き続けた者にしか宿らない暗い眼光に、相変わらず自信に満ち溢れたような口元の薄い笑み。

そしてその両手はズボンのポケットに突っ込んだまま。

名実ともに学園都市という街で作られた怪物のトップランカーの片割れは、ゆっくりと口を開く。

 

「単純だよ。単純なんだ。学園都市の暗部に沈んでりゃ、嫌でも分かる。悲劇なんてのは星の数ほどその辺にゴロゴロ転がっているってな。確かに世間一般の人間からすりゃあ俺の体験も、それなりに悲劇なんだろうが、俺はわざわざ他人にそれを語って聞かせるようなタチじゃないんでな」

 

垣根帝督はそれより何よりと、

カメラとモニター越しに自分達を見ているであろう相手へ、冷徹な視線を向けながら言う。

口元に、薄い薄い笑みを張り付けながら。

 

「それがどうした」

 

揺さぶりを仕掛けた相手を、逆に鼻で嗤う。

仕掛けられた言葉の檻を一蹴する。

心の底から馬鹿にした口調で。

嘲笑うように宣言する。

 

「俺が置き去り(チャイルドエラー)の孤児で、学園都市入りする前の記録も記憶も無い。それは確かに事実だが、それだけだろ? だから何? 可能性として俺が人造的に生み出された人間かもしれない? 元々は別に垣根帝督という人間が存在して、この俺はそのクローンか何かかもしれない? 仮にそれが本当にそうだったとして、だったら何なんだ?」

 

彼は簡単に言う。

明確な、確信を持って。

 

「テメェ等のくだらん仮説のどれかが当たっていたとしても、俺が俺である事に変わりはない。今この場に存在している、『未元物質(ダークマター)』を操る学園都市第二位の超能力者(レベル5)、垣根帝督は俺だ。俺のものだ。『未元物質(ダークマター)』は俺の脳から、『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』から生じているんだ」

 

彼は、垣根帝督という人格の芯にあるものは、心の柱としているものは、アイデンティティーは、被検体として強いられた苦痛と屈辱的な忌まわしい体験等ではないと自覚している。

彼が求めているものは、家族でも、恋人でも、表の世界での平穏な生活でもない。

もっとずっと、シンプルなものだ。

 

垣根帝督が垣根帝督である事。

 

未元物質(ダークマター)』。

 

学園都市第二位の超能力者(レベル5)である事。

 

それだけだ。

それだけで良い。

その意思の強さが。

良くも悪くも、第二位まで上り詰めた要因の一つだったのか。

 

『へえ』

 

ようやく。

傍聴していた相手が、中性的な声の主が口を開いた。

 

『そうかそうか。君にとって天涯孤独な事や実験動物(モルモット)扱いされ続けた事も、暗部に堕ちて暗闇の中で生きている事自体も、君の心を折る事や乱す事までにはならなかった訳か』

 

「まあ腐りはしたけどな」

 

そうくだらなさそうに答えると、姿の見えない、分からない相手が再び煽る口調で告げる。

 

『……でも、直接的な理由は、第二位、君が言ったようにもっと単純な事だったんじゃないかな?』

 

「あ?」

 

『君が壊れた原因は、もっとありきたりな悲劇の一つに触れた事なんじゃないのかい』

 

相手はまだ、何か知っている。

何か含みを持たせた雰囲気が伝わる。

 

「……?」

 

眉をひそめる垣根帝督に、心当たりは無かった。

この声の主達に聞き覚えは無い。

だが相手は言う。

 

『思い出せない? おやおや本当に覚えてないのかい? なかなかに薄情な男だねえ。……それとも、思い出したくもないほどのトラウマで、記憶に鍵をかけて脳内の奥底に封印しているのかな』

 

「テメェの言ってる意味が分からねえな」

 

『本当にかい? 第二位の事は、能力開発の始まりからより深く調べたよ。どうしても思い出せないかなぁ? 君には1人いたじゃないか、施設でかなり仲良しだった娘が。オ・ト・モ・ダ・チの事』

 

学園都市にはいくつかの『闇』があって、その『闇』にも種類や深さのようなものが存在した。

全体としてはジグソーパズルに近く、各々の真っ黒なピースが組み合わさって、学園都市の『闇』としての巨大な絵柄を完成させている。

動物の腐った死骸にびっしりとこびりついた羽虫の群れでも想像してもらえば分かりやすいだろうか。

そんな中でも、特に学園都市の運営能力を担う、いわゆる統括理事会に近い位置の『闇』。

 

「……、」

 

返事は無かった。

だが僅かに、彼の眉間にシワが寄っている事に気付いたシグナムが、口を挟んだ。

 

「どういう事だ」

 

中性的な声の主は、簡単に言う。

 

『昔ね、非人道的で苛烈な能力開発の過程で、第二位のオトモダチが死んじゃったのさ。彼の目の前で』

 

「何……?」

 

「あ……ッ」

 

「え……!?」

 

何か。

小さな棘のようなものが、垣根帝督の精神へ確かに刺激を与えた。

だがもう遅い。

流石に勘づいたようだったが、垣根は黙っているままだった。

声の主は愉しげな口調で説明する。

 

『ここまで言えばいい加減、嫌でも思い出しただろう? 何なら当事者である君から、何があったのか教えてくれないかい?』

 

「……、」

 

彼は答えない。

不快感を漂わせた、ジロリとした眼光だけがカメラへ向いていた。

 

『沈黙は肯定と捉えるよ。やはり図星だったのだね。女の子で唯一の仲良しだったようだし、もしかして実は好きだった? 何て言ったっけ? あの娘。私もいちいち名前まで覚えていないけどね』

 

「おい」

 

『まあ待ちなって』

 

今度はヴィータが不愉快そうな声で口を挟むが、止められた。

 

『君達だって気になるだろう? 第二位が今まで隙も見せずに忘れたつもりになってまで、隠し続けていたほどの心の闇や傷だ。もっと傷口を抉ってやれば見られるかもしれないよ』

 

クスクスという笑い声まで聞こえてくる。

 

『……しかし長年暗部に身を置いている第二位が、過去の事等で揺さぶりを仕掛けた程度では中々ブレない彼にしては、意外だよね。第二位はオトモダチの事が最大のトラウマになったみたいだが、子供が消費されて潰されるなんて、学園都市にとっては普通の事だろう?』

 

「貴様……ッ」

 

「テメェ……!」

 

「何て事を……ッ!!」

 

呻く。

呟く。

今はそれくらいしかできない事に歯痒さを覚えつつ、心優しい彼女達は明確な怒りを感じた。

シグナムとヴィータとフェイトが、声の主へ届けるようにカメラを睨み付ける。

垣根は一言も発さず、相変わらず無表情で正面のカメラを睥睨している。

 

『"ありふれた悲劇のひとつ"でこんなになるなんてね__』

 

「あの学園都市(まち)での常識……か」

 

今の今まで黙っていた垣根帝督が、まるでタイミングを見計らったように、静かに呟いた。

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!! と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建物全体が、構造の基部さえ破壊しかねないほどに揺さぶられた。

垣根帝督達が足止めされている地下の広いオープンスペースの隔壁が突如炸裂し、弾け飛ぶ。

その後も絶え間無くドカッ!! ゴガン!! ドゴン!! と正体不明の破壊が連続し、爆発音と同時に無数の粉塵がもうもうと舞い上がる。

彼の背中には、6枚の翼。

 

『な、何事です!?何故急に暴れているのですか!?』

 

狼狽える中年男性の声が聞こえた。

そこへ、垣根の蛮行を押さえ付けるように、もと来た通路側を含めた全ての隔壁がガコンガコンと閉め切られる。

その直後、響き渡っていた炸裂音が鳴り止んだ。

 

『……おかしいな。AIMジャマーは問題無く効いているはずなのだけれどね。だが、それでもこの施設は対能力者用に作られている。そう簡単には__ッ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴッッッッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

資源再生処理施設の建物が、まるでロケットを発射するかのように下から強引に一瞬で吹き飛ばされた。

 

ゴシャッ!! バキバキベキ!! ドゴォ!!

 

吹き飛ばされた建物は、その原形を維持したまま垂直に落下し崩壊。

瓦礫の山を築いた。

 

「な、何!?中で一体何が_!?」

 

「シグナム!!ヴィータ!!」

 

「フェイトちゃん!!垣根くん!!」

 

ビルの解体より強烈な大爆発と粉塵に驚き、シャマルとはやてとなのはが内部にいるはずの人物の安否を探る。

しかし存外早く、粉塵を突き破ってシグナムとヴィータとフェイトが上空へ飛び出してきた。

 

「私達は大丈夫だ」

 

「建物は垣根(あいつ)のせいで粉々になっちゃったけどな」

 

「垣根くんが?」

 

「何をどうやってかは分からないけど、彼しか考えられないから……」

 

と、なのはにフェイトが答えた。

 

「な、何で……、ここは地下なのに……月が……っ」

 

「は、はは、はははは。凄いね。これが……」

 

そして遂に、声の主達の正体が(あらわ)になった。

声色から想像通りの、高級ブランド服を纏った丸々太った中年男性と、白衣を着たショートヘアの中性的な風貌の女。

 

「本気でこの俺を、こんなもんで止められるとでも思ったのか?」

 

瓦礫の山の頂点に、月明かりを背に君臨するように立っているのは、6枚の白い翼を広げた垣根帝督。

 

「AIMジャマーの力場はジョセフソンコンピュータが発するテラヘルツ波のように電磁波で減衰できる。慎重にサーチすれば、対応は難しくない」

 

(途中黙っていたのは、こちらの話のせいではなくこの為に__!!)

 

「テメェが学園都市の枠組みをどう捉えようが、この世界の中でどう生きようが知った事じゃないが、超能力者(レベル5)を甘く見るんじゃねえ」

 

「対能力者用の施設のはずでしたよね!?ありえない……こんな……っ」

 

中年男が怯えて呻く。

垣根帝督はそれを無視して、女の方を向く。

 

「やられたよ。で、どうするんだい? 私達を殺すかい?」

 

「その前に、テメェの顔は資料の一端で見たぜ。行方不明の研究者としてな。まさかこの一件の首謀者側だったとは。俺に目を付けて調べたみたいだが、俺もテメェの事は重要参考人としてそれなりに頭に入ってたよ。まだ研究途上のもんを外野からあれこれ欠点ばかり指摘されてムカついたって所か? 学園都市から離反した主な理由は」

 

「ふっ……さてね……」

 

冷笑を向け合う2人。

垣根が再び口を開く。

 

強度(レベル)ってのは純粋な戦闘力や出力だけの評価じゃない。技術的な伸び代、他分野への応用等、様々な発展性を鑑みて決定される。ただし……、戦闘力と違って発展性ってのは一見評価しにくい。研究途上のものの、更に未来を見据えて決めなくっちゃなんねえからな」

 

「何が言いたいのかな?」

 

「お前、本当に超能力者(レベル5)の、『未元物質(ダークマター)』の価値が見えてんのか?」

 

「ッ!!」

 

初めて、飄々としていた彼女の表情が歪んだ。

 

「お前は『未元物質(ダークマター)』を自分が理解できる分だけ飲み込んで理解した気になっただけじゃないのかっつってんだ」

 

「……っ」

 

魔法サイド出身の男の方を確保したなのは達を一瞥する。

そして彼は小さく得意気な笑みを浮かべて、白衣の女となのは達の双方に向かって告げる。

自分の能力、超能力(レベル5)の『「未元物質(ダークマター)』を披露するように。

 

「折角だ、デモンストレーションとして見せてやるよ。お前達の常識は、俺の『未元物質(ダークマター)』について来られるか?」

 

ザァ!!

 

風向きが変わる。

奇妙な方向へ空気が流れ、パァッ!! と不意に垣根の正体不明の白い翼が発光する。

 

「!?」

 

注目が自身に集まる中、彼は言う。

 

「俺の能力で発現する『未元物質(ダークマター)』はその名の通り『この世に存在しない物質』だ。自然界には__いや、この空間に限っても、無数の物質が存在しそれぞれの法則に従って、現象が起きている」

 

いつの間にか全員が、神秘的な光をたたえ、しかし同時に機械のような無機質さを秘めた6枚の翼に魅せられていた。

操る第二位が能力を振るって見せるように右腕を広げる。

 

「だがそこに『未元物質(ダークマター)』という新たな物質が加われば……」

 

「!!」

 

ぐにぃ と白衣の女の視界が一瞬歪んだ。

見ると、ヂ、ヂ、と無数の火花が散り、火の気も無い地面が発火し炎が出た。

突如地面から無数の泡が発生し、手枷を付けられた中年男性の足元に広がり腰を抜かした。

更に着地したなのは達の周りの地面は結晶が発生し地面を覆い尽くす勢いで広がっていく。

 

「わっ!わっ!何!?何が起きてるの!?」

 

「これも、彼の……『未元物質(ダークマター)』が引き起こしてるの……っ?」

 

「……無茶苦茶なチカラやとは思っとったけど、ホンマに常識はずれやなぁ……」

 

しかし不思議と彼女達の足元には干渉してこない。

意図的に、切り抜くように結晶体や泡の水溜まりが止まっていた。

 

「はわわ……凄いですぅ……。……かっこ…いい……羽も、きれい…で……」

 

未元物質(ダークマター)』という異物、新たな物質が加わる事によりひとつひとつの現象において、通常とは全く違った結果が生じるようになる。

故に常人には何が起きるか理解できない空間と化す。

 

「ただし」

 

未元物質(ダークマター)』の使用者たる垣根帝督だけは、この空間で何が起きるかを演算して展開している。

つまり、今発生している事は学園都市第二位が司る可能性の提示だ。

 

「テメェが本当に『未元物質(ダークマター)』を理解できるのなら、」

 

ビッ、と垣根は白衣の女へ指を差した。

 

「この可能性を飲み込んでみせろ」

 

彼女を取り囲むように空気の渦が生まれる。

だが、それは竜巻とも台風とも当てはまらない奇妙な超常現象だった。

空気の渦の中から無数の火花や小爆発が発生する。

それらに目を爛々と輝かせ、魅入っていく。

 

「……凄い、凄い。凄い!!これ程の事象を同時に展開できるなんて……!!分かる、分かるさ!!これが『未元物質(ダークマター)』の、君の世界!!数千もの事象が……まだ、まだまだ可能性が広がっていく……!!」

 

段々と、頭がクラクラしてきた。

ゆっくりと、呑み込まれていく、この世界に。

 

(ああそして……このあたりが、自分の……限界か__ッ!?)

 

ふらつき、膝をつく。

 

「……テメェには過ぎた世界だったみたいだな」

 

「なっ、ま待て! 何をする気だい!?」

 

「ハッ、決まってるだろ。思い知らせてやるんだよ」

 

悪意と殺意が、不意に翼という毒牙を伴って放たれる。

 

「俺の『未元物質(ダークマター)』に、テメェの常識は通用しねえ!」

 

「ッ!? や、やめっ、待__てぇああああああああッ!!」

 

ザンッ!! と、女の体を翼が鋭い刃のように貫いた。

ズザァ!!

一瞬で影響を受けた人体が砂に変換し、悲鳴をあげ終わる間も無く風化し、消滅した。

それを確認すると、垣根は能力の展開をやめて翼を消失させた。

その瞬間から、周囲に展開された超常現象が、奇妙な風の渦も結晶も泡の水溜まりも、欠片も残さず空気に溶けていくように消えていく。

これで少なくとも、学園都市サイドの事件はとりあえず終息したと言えるが、垣根帝督の表情は浮かない。

彼は自身の手で破壊し用の無くなった資源再生処理施設の敷地から出ようと、歩き出す。

魔法サイドの首謀者も彼女達は無事に逮捕したようだし、これで忌々しいほど鬱陶しい、善人共と関わる事も絡まれる事も、何かしらのきっかけも金輪際無くなるはずだ。

 

(件のこの女の上に今回の張本人がいるとすれば……そいつをも引きずり出す。そしてどこまで知ってるのか、同じようなヤツは何人いるのかまで知る必要があるな。それにしても……)

 

もちろん、引き出した情報は独占する。

魔法サイドの関連情報を、アレイスターを含めた統括理事会に漏らす気はない。

 

(……、今回の事で気付いた。俺はアレイスター所か、その下の連中にまで見くびられてるらしい)

 

「ねえねえ」

 

ならば、そうはさせない為にどうすれば良いか?

いや、だからこそ、

 

(…やる事は何も変わらねえ。有象無象にナメられないようにアレイスターとの直接交渉材料を手に入れる。だが、今までのやり方じゃダメだな。またナメた連中が湧いてくるかもしれない。だから、もっと深い所に行く。ヤツのプランを揺るがせるような材料を見付ける為にな)

 

「ねえって」

 

歩きながら思案する。

両手をズボンのポケットに突っ込む。

そして、口元に野心を秘めた薄い笑みを浮かべて、

 

(アレイスター。今のうちに精々好き勝手しとくんだな。無関係なヤツ等まで巻き込むつもりはねえが、邪魔なモノは全て壊してでも、必ずお前の元に辿り着く。俺が想定を上回った時、お前がどんな顔をするか楽しみだ)

 

「ねえってば! 聞いてよ!!」

 

至近距離から発せられた高町なのはの大声が、垣根の思考を中断させた。

彼は立ち止まり、鬱陶しそうに顔をしかめて振り向く。

振り向いた先には予想通り、若干しかめっ面の高町なのは。

そして、その傍らにはフェイト・T・ハラオウンと八神はやてとリインフォースⅡ、守護騎士達が揃っていた。

 

「……んだよ、うっせえな」

 

「さっきから呼んでるのに無視するからだよ? それより、また聴取とか含めて用事があるからアースラまで任意同行して欲しいって、クロノくんが」

 

「はあ? お前等側の首謀者は捕まえたんだろ? 俺もこっち側のカス始末したし、もう終わりだろ。俺とお前達が関わり合う理由はもう無いはずだ。それとも何だ? また文句でも言いたいのか?」

 

露骨に面倒臭そうな表情を浮かべ、突き離すように吐き捨てるように答えた。

だが、それで引き下がるほど高町なのはという少女は柔な相手ではない。

 

「正直、帝督く「馴れ馴れしい」_むぅ、垣根くんには言いたい事や個人的な不平不満もあるけど、上官の命令でもあるからね。簡単には引き下がれないよ」

 

「そうかい、ならお前達で上手く言っといてくれ。俺は学園都市に帰る」

 

「もう帰るん? 事件が事実上終わったんやし、そんなに急がんでもええんちゃうの?」

 

はやてが口を挟むが、垣根は取り合う気は無い。

 

「終わったからだよ。用事が無くなった以上、学園都市の外にいつまでもいる必要もねえ。あばよ、今度こそもう会う事は無いだろうがな」

 

そう言って再び歩き出そうとした瞬間、

 

「そうはいかない」

 

転移魔法が発動し、垣根帝督の前にクロノ・ハラオウンが、立ち塞がるように現れた。

 

「お前直々にか……」

 

眉をひそめる垣根に、クロノは図ったように小さく笑いかけた。

そして、何かを確認するかのように告げる。

 

「_君は、学園都市のある暗部組織に所属しているんだよな」

 

「ああ。今更確認が必要か?」

 

クロノはそれには答えず、再び尋ねる。

 

「ふむ。所でその組織は『スクール』という名前で間違いないな?」

 

「ああそうだよ。テスタロッサとかから聞いたか?」

 

「あ、わたし、今はクロノの義妹になってて、フェイト・T・ハラオウンって言うの。苗字がクロノと同じになったから『フェイト』って呼んで良いよ」

 

今度はフェイトが話に割り込んだ。

しかし彼は気にも留めない。

 

「ふうん。で、テスタロッサ(、、、、、、)からはどこまで聞いた?」

 

「あう……」

 

名前呼びの頼みをサラリと一蹴され、フェイトは軽く肩を落とした。

同情したなのはとはやてが、ポンと彼女の肩に手を置く。

クロノは少しだけ苦笑いすると、再び口を開く。

 

「……それで、だ。君の所属する『スクール』の構成員で連絡が取れない者はいないか?」

 

「!」

 

ピクッと僅かに、一瞬だけ表情が固まった。

それを見逃さなかったクロノは、

 

「図星だな」

 

「まさか……、お前……」

 

「そのまさかだ。これまでのDAとの交戦等で遭遇し、乱戦になった末、公務執行妨害として数名を拘束している。学園都市と所属組織名以外を黙秘しているんだが、アースラまで同行して確認してくれるな? もちろん、聴取等が済めば釈放できる。交戦したのは先走った魅神だけだし」

 

「なるほど……」

 

これ以上の進展が無い状況で、彼はタイミング良く現れた。

連絡が取れない正規要員を回収するには、同行する以外に方法は無さそうだが、それを理由に協力関係ないし制御下へ置くように仕向けてくるかもしれない。

 

(……相手が以前の知り合いであっても、__罠なら突破すれば良い。障害になるなら……敵になるなら、潰せば良い)

 

「分かった。乗ってやるよ」

 

「そうか、良かった」

 

クロノだけでなく、なのは達の表情も綻んだ。

 

(件の魔法サイドのクソ野郎共とくそったれ研究者と、警備員(アンチスキル)のコスプレ野郎共を結び付けた、情報の経路を弄っていたであろう張本人のヤツの正体。それを掴める可能性があるんなら__)

 

そう思いながら、垣根は小さくニヤリと笑って告げる。

 

「昔馴染みのお誘いだもんなあ。しっかりもてなせよ?」




垣根帝督の過去等については、原作を参考に想像したものなので当然ながら公式とは無関係です。
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