魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter   作:戸礼太

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遅くなりました。

今回は書き直し前の『模擬戦』話をリメイクした内容でもあり、閑話同然なので、サラッと流し読みしていただきたく思います。


とある日のエース達と超能力者(レベル5)

人の噂も七十五日という諺があるが、私立聖祥大附属中学校に、表向き東京方面からの転校生として転入し初日から悪目立ちしてしまった学園都市第二位の超能力者(レベル5)・垣根帝督と、その周りの人間関係についての風評や噂等の騒ぎは存外長続きはせず、ものの半月ほどで徐々に終息していった。

 

不本意ながら中心人物となった垣根帝督が、全く動じず飄々と日々を過ごしていたり、高町なのはを始めとする五人の少女達もあまり気にした様子を見せず、何か訊かれる事がある度に簡潔に誤解を正していた事、そして何より、原因の一端が女性関係でややだらしなくホラ吹きとされている魅神聖だった事が風評被害が拡大しない主な理由だった。

 

実際に端から見て大きな変化が有ったとすると、今までは高町なのは、月村すずか、アリサ・バニングス、フェイト・T・ハラオウン、八神はやての五人グループには、良きにしろ悪きにしろ彼女達だけの絆の輪のような雰囲気があり、彼女達以外で彼女達並に仲の良さそうな人間は見られず、気がある人間もあまり積極的には関わってこれていない。

それなりに関わりが長くなりつつある魅神聖とも、基本的には一方通行な関係だった。

 

そこへ、誰もが想像していなかった楔が打たれる事になった。

それが突如先日、転校してきた垣根帝督という少年。

意外なのは、垣根が高町なのは等とは小学生の頃からの知り合いだったようなのだが、小学生時代からの彼女達を知る同級生によると、学校ではそういう男友達らしい人物を見かけた事はほぼ無いらしい。

元々地元の他校の生徒だったのか、それかフェイト・T・ハラオウンのように学校外で何かをきっかけに知り合う機会があったのか、そういう噂話が細々と二年六組の生徒達の間で交わされている。

奇妙なのは、垣根帝督から五人に声をかける事は皆無に等しく、必ず五人の内の誰かが、先に声をかける等してやり取りが始まる。

他のクラスメイトから見て、垣根帝督は何だかガラの悪そうな風貌だが意外と、声をかけられたら普通に応対するので案外、普通の少年なのではないかと思われてきていた。

高町なのは等に絡まれている時は若干、面倒臭そうにもしている。

 

ただ、互いに気心はそれなりに知れているのか、気を許しているのか、なのはとアリサは、垣根に対してだけは、いつも友人以上に砕けた態度で接して明け透け物を言っている。

 

フェイトも毎日、雑談の合間に隙を見ては彼の下の名前を呼ぼうとトライしては、セリフを遮って阻止され、小さく肩を落とすというのがいつものやり取りになりつつあった。

逆に、垣根が普段呼んでいたフェイトのファミリーネームの『テスタロッサ』を一度「てしゅ……」と噛みかけた時はなのはとはやてとアリサに散々ツッコまれ、しかも彼は何故か頑なに噛んだ事を認めず、終いには「あーちょっとトイレ行ってくる」と逃げ出し、それ以降からは基本的に『ハラオウン』と呼ぶようになった。

フェイトは「普通に名前で、フェイトって呼んで良いよ」と言っているが彼は何が嫌なのか、絶対にそれに応じない。

 

やたらと彼と距離感の近い接し方をするはやては、よく肩を叩いたり手を掴んできたりと、直接触れるようなやり取りが多く、「馴れ馴れしい、垣根で良い」と垣根が言っても頑なに「帝督くん」と呼び、ふざけた時は「ていとくん」呼ばわりまでしている。

垣根帝督はそれらの呼び方を一切、容認していないが、怒ったり本気で嫌がって忌避している仕草もしていないので、何だかんだで気を許しているのか何故か暗黙の了解になっているようだった。

時々、すずかもはやてに便乗して垣根からツッコまれている。

 

そして、五人に気があり独占したい、それら少女達と垣根の関係性が気に入らない魅神聖が別クラスから絡みに行き、割って入るが話が噛み合わず、最終的に本気で苛立ちだした垣根帝督のおっかない一睨みに怯み、予鈴が鳴って撤退する。

 

この魅神聖と、高町なのは達五人グループと、垣根帝督の奇妙極まりない三角関係(?)とその一連のやり取りが、二年六組の新たな日常になりつつあるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そしてある日の放課後、時空管理局所属の次元航行艦船『アースラ』側から制御され展開する、訓練用施設で競技ドーム並にだだっ広い模擬戦向けの、上空まで伸ばした二重結界に戦闘訓練用のレイアー建造物。

見た目や雰囲気は、かつて高町なのはとフェイト・テスタロッサが雌雄を決する為に使用した空間と酷似した、地面が水没した市街地を模した戦闘空間。

 

執務官フェイト・T・ハラオウンと特別捜査官補佐シグナムが、バリアジャケットと騎士服を纏い互いにデバイスを構えて対峙していた。

 

「レヴァンティンも改修でまた中身はだいぶ最新式になった。怪我をさせないよう気を付けるからな、テスタロッサ」

 

『ja』

 

「お構い無く。バルディッシュも元気いっぱいですから」

 

『Yes sir』

 

互いに闘志を燃やして視線を交わす。

デバイスの調整後慣らしのはずが、何だかんだでまた模擬戦をする流れになったらしく、その様子をはやて達となのはも見守っていた。

今日は、例の事件の追加聴取に呼ばれて付き合わされた垣根帝督も、なのはとはやてに手を引かれて来て半ば強引に、とばっちりで見物している。

余談だが、なのはとはやてもヴィータもシャマルも、いつも纏っている局員制服だが、局員でも何でもない垣根は学校制服を自分好みに崩した着こなしにして、乗艦の許可証を首から下げていた。

 

「ウチのリーダーもフェイトも、まったく呆れたバトルマニアだ」

 

ヴィータが溜め息混じりに呟く。

 

「フェイトちゃんもまた嫌いじゃないから……」

 

シャマルも微笑みながら言った。

はやてが、レイジングハートの定期メンテナンスを終えて途中からなのはと、一緒に見に来ていたユーノ・スクライアとフェイトの使い魔で、久しぶりに顔を会わせて垣根帝督と軽く談笑しているアルフの方を向いた。

 

「なのはちゃんもエクセリオン戻ってきてんねんやろ?参加するかー?」

 

「ええっ!?」

 

「そうだね。なのはとヴィータも一緒にどう?」

 

はやての提案にギョッとするなのはだが、フェイトは結構乗り気でヴィータをも誘ってきた。

 

「わ、わたしは今日は遠慮を……」

 

「あたしもパス。無駄な戦いは腹が減るだけだしな」

 

しかし二人にその気は無いらしく、なのはは苦笑いで遠慮がちに、ヴィータは全く興味の無さそうな調子で断る。

それを聞いてシグナムは残念そうに、眉をひそめる。

 

「何だつまらん。このレベルの団体戦ができる機会は今や貴重なんだがな。今日は魅神の水入りも無いというのに」

 

「あはは。それは勤務訓練の時にでもー……」

 

と、相変わらず苦笑いのなのは。

ユーノがなのはに言う。

 

「なのはって、シグナムさんとやるの苦手なんだよね」

 

「やりづらいタイプってのもあるけど、シグナムさんのは訓練じゃなくて殆ど真剣勝負だから……」

 

一方のフェイトもヴィータに、ニッコリと笑っておいでおいでと手招きをする。

 

「ヴィータも混ざらない?」

 

「口説いぞ。あたしははやての為以外で無駄に戦う気はねー。お前等みたいなバトルマニアと一緒にすんな」

 

「あーひどーい」

 

そこへシグナムが口を挟む。

 

「と言って、主の前で敗北するのが、嫌なだけだったりはしないか?」

 

分かりやすい、ベタな挑発だ。

だが、偶々いつもより虫の居所が悪いのか、ヴィータはブチッと切れて怒り出し、食い付いた。

 

「何だとテメェッ!!」

 

「わたしにッ!?」

 

なのはに。

 

「良いぞこのヤロー!!やったろうじゃねえか!!準備しろなのはッ!!」

 

「ええええッ!?」

 

これにより、なのはもとばっちり確定となった。

そうしている間に、はやてとシャマルも、

 

「わたし達もやろかー♪」

 

「やりましょーか♪」

 

そんなこんなで、モニター越しで監視していたクロノ・ハラオウン艦長やザフィーラ、参加する気の無かったユーノも巻き込まれ、ベルカ式騎士vsミッド式魔導師の集団戦エキシビションマッチになりそうになった。

手の空いていた他の局員達のギャラリーまで出てきた。

 

しかし、そこで盤面が狂う事になる。

我関せずといった態度で見物を決め込んでいた垣根帝督を、八神はやてが視界に捉えた。

そしてニヤリと笑って告げる。

 

「……あ、そやそや、帝督くん」

 

「あん?ってかお前、いい加減垣根って呼べっての」

 

「まあまあ。それよか超能力者(レベル5)って、確か単独で軍隊と戦えるんよね?」

 

「あ?まあな。学園都市の基準では、そういう事になっているな」

 

事も無げに答えた垣根に、自然とシグナムを始め、やる気満々の面子が視線を向ける。

 

「……所で帝と_「垣根な」あう……。魔法をサーチ済みの今の『未元物質(ダークマター)』なら、魔法の非殺傷設定を模倣する事って、できる?」

 

フェイトが尋ねてみると、彼は意図を掴み、若干嫌そうに眉間に眉を寄せて答える。

 

「……まあ、完全に再現は無理だが……満更できなくはない……、かな」

 

「じゃあ、設定次第では単純な力比べみたいな感じで、魔法との模擬戦はできるんだね?」

 

「まあ、多少はな」

 

それを聞いてシグナムとフェイトが特に色めき立つ。

 

「よし、ほな帝督くんも参戦しよ!「おい、ちょ……待_」あ、どっちかのチームに入れるとパワーバランス崩れてまうし、折角やから超能力者(レベル5)の実力、試してみたいんやけど。ええかな?」

 

「_待てっての。チーム分け云々以前に、参加する気ゼロなんだがな。お前等は興味本位だろうが、俺にメリットがねえ」

 

全く応じるつもりの無い垣根帝督に、シグナムとヴィータが挑発を仕掛ける。

 

「と言いつつ、もしも負けでもしたら超能力者(レベル5)としてのプライドが傷付くのが嫌なだけじゃないか?」

 

「しかもお前は第二位だもんなー?」

 

が、そう言われた程度では、彼は簡単には動じない。

 

「悪いが、そんな安い挑発にゃ乗らねえよ。ヴィータと一緒にするな」

 

「んだとコラァ!!」

 

あしらわれた挙げ句、貶されていきり立つヴィータ。

そこへはやてが、新たに交渉のカードを出す。

 

「……ほな、こういうのはどうや?エキシビションマッチやという前提はそのままとして、今回は公式試合用のタグでライフポイント制で行う。もし帝督くんがわたし達に勝ったら、わたしはこれから『帝督くん』呼びをやめたるよ?」

 

「そもそも一度もそれを許してねえ」

 

「んで、わたし達が時間内で帝督くんにトータルで見てか、一人でも優勢以上でおれたら、わたし達と正式に名前呼び決定っていう、交換条件や♪」

 

「……、」

 

この条件が提示された瞬間、分かりやすくなのはとフェイトが俄然やる気を出してきた。

 

「垣根くん!!」

 

「垣根!!」

 

対照的に、より嫌そうな顔をする垣根帝督だが、クロノとユーノが遠目で「もう諦めろ。こうなると梃子でも動かん」と無言で告げてきた。

押し切られて流されるのは癪だが、流石にここで引き下がるのも、学園都市第二位の名が廃る気もする。

小さく溜め息を吐いて、彼は言った。

 

「……はあ、分かったよ。だが、その条件は忘れるなよ?」

 

「「「やった♪」」」」

 

そして、ベルカ式騎士とミッド式魔導師の混合チームvs学園都市第二位の超能力者(レベル5)という異色のエキシビションマッチが開催された。

ルールは局の戦闘訓練準拠で、攻撃の非殺傷設定は言うに及ばず。

武器持ちは今回、いわば生きた質量兵器の垣根帝督が相手という事で、バリアジャケットを抜かない等の威力調整は特別必要無いので、無し。

垣根の方は単純なパワー戦闘対応に、魔法の無力化等のやり方は今回は無しに設定。

つまり、『未元物質(ダークマター)』の強味の一つである『物理法則を捻じ曲げる』等の特殊な芸当に関しては、今回は封印という訳だ。

更に魔法の非殺傷設定を模倣し、ライフポイント制に則る形で翼等で被弾させても外傷を与えにくいように調整するというハンディキャップが付いた。

早い話、貫いたりして即死レベルのダメージを与えた事になっても、ライフポイントがゼロになるだけのほぼ形だけという事になる。

だが、烈風や衝撃波等の物理効果は魔法側同様に、ほぼそのまま。

当然、白兵戦は通常通り対応できる事とした。

ミッド式はクロノ、ベルカ式ははやてがリーダーを務める。

 

「わたし達はヴィータとザフィーラが前衛、シグナムは遊撃、シャマルはわたしの後ろや。リインはわたしと即ユニゾンな」

 

「フェイトとアルフで前衛と基本は前衛と遊撃を行って撹乱しつつ、なのははユーノを上手く壁にして火力支援を頼む」

 

「「うん!」」

 

そして、模擬戦というある意味安全な条件で、ある種の未知の存在との戦いに、皆モチベーションが上がっていく。

 

「相手の力は未知数だが、管理局指揮官四名とその使い魔三名!騎士三名!高度な連携戦を見せるぞ」

 

「よっしゃ、魔導師と騎士の戦闘を見せたろ!!」

 

一方、彼女達と対峙する位置の、ビルの屋上に佇む垣根帝督も、

 

「……、ま、言い方は悪いが、あいつ等にも押し負けるようじゃ、野望所か第二位の名も廃るよな。……しかし、始めから殺し合いじゃない戦いって、何気に初めてかもな」

 

両者とも、全員ライフポイント三〇〇〇に設定し、奇妙なエキシビションマッチが開始された。

 

作戦通り、レヴァンティンを構えて突進するシグナム。

そのすぐ後ろに続くヴィータとアルフとフェイト。

それ以外は、一斉に誘導式のシューターを放って援護と撹乱を図る。

 

一方、垣根帝督は、轟!! という風の唸りと同時に背中から六枚の翼を生やして、羽ばたいてゆったりと上昇した。

 

〈わー!!やっぱりあの白い翼、綺麗ですぅー〉

 

「まー綺麗やけど、あの六枚の白い翼が、おっかない凶器なんよね~」

 

ユニゾン中のはやての中で声を弾ませるリインフォースⅡに、はやてがチャージを開始しながらのんびり答える。

垣根からしたら、露払いのシグナムとヴィータとフェイトとアルフを即座に駆逐し、司令塔のクロノや、なのはとはやての遠距離大火力砲撃を撃たれる等のアウトレンジ攻撃をされる前に、さっさと潰しに行きたい所。

全員が歴戦の手練れでも、指揮官の有無の違いだけで大分形成は有利にする事ができる。

しかし、当然ながらそう簡単にはいかない。

万全の後衛を得た、シグナムによる得意の白兵戦による足止め、フェイトの中距離砲撃とアルフの援護と牽制、シグナムとの連携白兵戦の同時攻撃による翻弄、ヴィータとザフィーラによる一撃離脱、そして入れ替え早めのマッチアップ。

数十メートルもの長さに伸ばした白い翼を振り回しながら、衝撃波同然の烈風や建物破砕、切断による破片や散らして硬質変化させた羽のシャワーを浴びせて、少しずつも確実にライフポイントを削るも、ダメ押しの如く放たれるクロノのバスターに早くも膠着状態に持ち込まれた。

 

(チッ。能力の特性上、ハンデ有りとはいえ、流石に簡単にゃいかねえか!!)

 

フェイトのプラズマスマッシャーの雷撃を紙一重でかわし、アルフとヴィータとザフィーラの打撃を受け流し、シグナムの紫電一閃の炎を変質させた烈風を伴って吹き消すも、そのシグナムの炎となのはとクロノの射撃が垣根の白い翼をもぎ取り、撃ち漏らしたシューターが体に当たってライフポイントを少しずつ確実に削り取っていく。

 

性質も特性も何もかも違うチカラのぶつかり合いの余波を受けて、周囲の構造物がギシギシと頼りなく揺れる頃には、既に全員そこから消えている。

平行するように移動しながら互いに能力と魔法を激突させる彼と彼女達は、時に街灯に飛び移り、時にビルの一角を蹴って空中に移動しながら、恐ろしい速度で街並みを駆け抜けていく。

 

白兵戦と中距離射撃の連携で一瞬、垣根が空中で動きを止めた。

そこへなのはが正確な照準でディバインバスターを放つ。

しかし撃たれた事に気付いた垣根も、白い翼にありったけの力を込めて砲撃を撒き散らした。

両者の中間で波と波が激突し、余波による空気の津波がビルの窓ガラスを粉砕し、周囲の街灯や電柱、信号機等をもぎ取っていく。

空気が爆発し、数秒遅れて、ズバァ!! という爆音が鳴り響く。

相手の巧みな連携で足止めを繰り返しされつつも、垣根帝督は少しずつなのはとはやての方へ距離を詰めつつあった。

彼女達を自分の有効射程に捉えたと判断した垣根は、ブォ!! と六枚の翼が一気に力を蓄えた。

長さを変え、質量を変え、巨大な剣か鈍器と化した白い翼が広がった。

まるで引き絞られた弓のようにしなり、その照準がなのはとはやて、クロノの急所へ正確に定められる。

心臓部か頭部に命中すれば、ライフポイントは即にゼロにされる。

しかし、

 

『Stand by ready charge set』

 

「フィールド形成、発動準備完了!!お待たせ皆!!帝督くん、おっきいのいくよ!!」

 

「ッ!!」

 

今までの足止めはチャージの時間稼ぎ。

それは容易に予想できていたが、それを防ぎ切れなかった。

いつの間にかなのはの元にフェイトが合流し、コンビネーションを実行する。

 

「N&F中距離コンビネーション!空間攻撃ブラストカラミティ!!」

 

「……なら、撃つ前に纏めて叩いてやる……!!」

 

しかしそれと同時に、はやてもチャージが完了して垣根帝督に照準を合わせる。

 

「どっこい。こっちも詠唱完了や!!広域攻撃Sランクの意地がある!!」

 

八神はやての足元にはミッドチルダ式の円形魔方陣が展開され、彼女の前方にはベルカ式の正三角形魔方陣が展開され、頂点から三連砲撃が行われる。

二つの魔法技術が使用されている、はやての最強攻撃魔法、ラグナロク。

それと同時に、

 

「全力全開!!」

 

「疾風迅雷!!」

 

「「ブラスト・シュートッッ!!」」

 

ミッドチルダ式連携魔法とベルカ式広域砲撃魔法と、対する超能力(レベル5)の『未元物質(ダークマター)』、その塊であり象徴である巨大な六枚の白い翼。

 

異なるエネルギー同士が真正面から激突した。

 

ドバンッッ!!!! という爆音が炸裂する。

 

直後、大きな爆煙と無数の白い羽が舞い散り、空間中に降り注いだ。

 

ギャラリーが固唾を呑んで見守る中、煙が晴れ、羽が消滅して姿が見えてきた。

高町なのはとフェイト・T・ハラオウンと八神はやての三人と、至近距離にいたシャマルとクロノ・ハラオウンが仲良く纏めて瓦礫の一角に墜落し、バリアジャケットもボロボロになって尻餅をついていた。

当然、ライフポイントはゼロ。

相対する垣根帝督は、彼も相対するような位置で瓦礫の山に立っていた。

纏っている制服や、顔が薄汚れているが、何ともないような様子でしかめっ面で佇んでいる。

彼の背には、六枚の翼。

こちらも直撃を受けてしまい、ライフポイントはゼロに。

これで、シグナムかヴィータかザフィーラかユーノかアルフ。

誰か一人でもライフポイントが残っていたら、魔法サイドの勝ちになる、……のだが。

 

「うげ~……、あたし達まで吹っ飛ばされたぞ……」

 

「く……。我等の中で、ライフポイントが残っている者はいないか?」

 

「……ダメだ。あたしもゼロ」

 

「僕も……」

 

「私もだ。先ほどの余波……というよりは、垣根の仕業か……?」

 

これがある意味、最大の戦略の一つだったのだが、第二位はそれを見逃すほど甘くはなかった。

が、彼も彼で、引き分けではなく打ち勝つつもりだったのだが、正直、彼女達の実力を多少甘く見ていた。

そんな訳で、今回の異種格闘技的なエキシビションマッチは引き分けで幕を閉じた。

 

「……よし、では休憩後にテスタロッサ。改めて一対一(サシ)でやるぞ」

 

「はい!」

 

そんな事を言っていたシグナムとフェイトに、垣根は髪をかき上げてパンパンと袖の汚れを叩いて払いながら、半ば呆れた顔になる。

 

「……、お前等、ムダに元気だよな。バトルマニアって言われても仕方ないな」

 

シグナムはフッと小さく笑うと、誘うように言う。

 

「何ならお前も、私やテスタロッサとそれぞれ一回ずつ、一対一(サシ)でどうだ?今度は非殺傷設定以外のハンデは無しでだ。お前もこの結果には納得いってはいないのだろう?」

 

「バッカじゃねえの。意図が見え見えなんだよ。お前がただ単にやりてえだけだろうが。これ以上付き合ってやる義理はねえな」

 

「えー」

 

彼がくだらなさそうな調子で吐き捨てるように言うと、フェイトが残念そうな声を発した。

 

「えー、じゃねえよ。これ以上、とばっちりで悪目立ちもしたくもねえしな」

 

結局、シグナムとフェイトだけで第二ラウンドが開催され、ギャラリーの注目を集めた。

 

「あーあ、折角わたし達の名前を、帝督くんに呼ばせるチャンスやったのになー」

 

「ホントだよね。もう友達同士になったんだし、帝督くん(、、、、)にもいい加減、なのはって呼んで欲しいのに」

 

「そうだよね。変に距離を保つような事をする必要は無いのに。わたしもいい加減フェイトって呼んで欲しいし。帝督(、、)の方が逆に、拘り過ぎだと思うよ」

 

「……おい、つーか最近八神に加えて、高町とハラオウンまで無断で下の名前呼びの頻度高いよな? 何となくこのまま自分達だけは、下の名前呼びに移行しようっていう作戦?」

 

目を細めてジトーッとした視線で、はやてとなのはとフェイトを睨む垣根帝督。

しかし確信犯の三人娘は、気付かないフリをして飄々とするのだった。

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