魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter   作:戸礼太

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行間二

昼休み。

高町なのは達五人と一人だけの、校舎の屋上。

彼女達はいつものようにランチにしていた。

寝ようとした垣根を捕まえて。

余談だが、魅神聖は管理局の仕事で、今日は登校していない。

垣根は購買で買ったパンをかじりながら、ふと何かを思い出したように、なのはとフェイトとはやてに尋ねた。

 

「なぁ高町、ハラオウン、八神。管理局の指名手配犯か何かで、魔導師とかで、サンタクロースみてえな恰好してて、気持ち悪いトナカイの使い魔とか知らないか?」

 

彼女達には、一瞬彼が何を言っているのか理解できなかった。

 

「「「……、……え???」」」

 

「……何よ、ソレ?」

 

「サンタと、トナカイ……?」

 

思わずアリサとすずかも呟く。

 

「ああ。実はな、もう去年の十二月頃の話になるんだが……」

 

話し始めた垣根は、そこで一度言葉を切ると、

 

「つーか説明すんの面倒臭いし、かったりーから、回想シーンに纏めるわ。だから『※』の後を読んでくれ」

 

「イヤ、小説何だと思ってるの!!」

 

垣根のトンデモ発言に思い切りツッコむなのは。

 

「なのはも"小説"って言っちゃダメだよ……」

 

フェイトはそんななのはに静かにツッコんだ。

なのはの叫びとフェイトの言葉も虚しく、回想シーンへ続く。

 

 

 

 

 

 

去年の十二月二十四日。

クリスマスムード一色の、夜の学園都市。

とある学区に建つマンション。

そこの一室には、垣根帝督が居た。

何もやる事も無く、そしてやる気も無い彼はソファーに寝そべりながらテレビを眺めていた。

垣根は暗部の仕事が無ければ、基本的に結構暇である。

だが彼の性格上、クリスマスを楽しもうという発想は無い。

彼にとってはクリスマスなどどうでも良い。

グダグダとだらけながら過ごそうと思っていると、

 

ピーンポーン

 

不意にインターホンが鳴った。

 

(……誰だ?こんな時間に。しかも……)

 

垣根は面倒臭そうに起き上がりながら、玄関のモニターに向かう。

垣根帝督の家に来る者は限られる。

暗部関係か、郵便や宅配ぐらいである。

だが、この日来た者の容姿は、彼の予想の斜め上をいった。

モニターに映っているのは二人の男。

丸々太った体型で白く長い髭に長い白髪。

上下共に赤い服装で帽子まで赤く、黒いブーツを履いている。

何が入っているのかやたらとデカい白い袋を担いでいた。

要するに、絵に描いたようなサンタクロースである。

妙に少し目つきが悪そうなのが気になる。

だが垣根が注目したのはもう一人の方だった。

 

鍛えられたようなゴツい肉体。

髭を剃った跡なのか青い顎で濃い顔。

なぜか鼻っ柱が赤く、側頭部にはトナカイのような立派な角が生えている。

そして全身を鹿のような茶色い(胸部と腹部のみ白い)着ぐるみを着ているように見える。

鹿と人間を融合して失敗したらちょうどこんな感じになるんだろうな、と垣根は思った。

サンタのような男が言う。

 

『宅配便です』

 

「ハロウィンは過ぎたぞ。あと、キモい仮装オヤジなんざデリバリーした覚えはねえ」

 

垣根は即答してモニターを消した。

 

ピーンポーンピーンポーン

 

『ホントに宅配便ですって!開けて!マジで!!』

 

(必死だな。何なんだ一体)

 

垣根は舌打ちしながら玄関に向かい、扉を開ける。

 

「メリークリスマス!!」

 

ドグシャッ!

 

反射的にサンタをぶん殴った。

 

「ぐぶふっ!!な、いきなり何すんだ!?」

 

「何かムカついたから」

 

「初対面の人間殴るとかありえねえだろ!!」

 

垣根はサンタの文句を無視して、鹿のような仮装男に目を向ける。

 

「俺としても色々テメェ等にはツッコミ入れてえけど、一番気になるとこから言うわ。このキモい鹿人間は何だ?」

 

鹿人間は青筋を浮かべて怒鳴る。

 

「誰がキモい鹿人間だ!!俺はトナカイだ!!」

 

「いやいや。鹿にしろトナカイにしろ二足歩行しないだろ。人面顔だし、濃いし、キモいし、死ねば良いのに」

 

「お前後半ただの暴言じゃねーか!!」

 

「どっかの闇研究所で、悪ふざけで鹿と人間の融合実験とかやらされて、失敗したか?可哀相に」

 

半笑いで言う垣根は毛ほども同情などしていない。

 

「トナカイだっつってんだろ!!あと、俺が人形になれるのは使い魔だからだ!!」

 

「わ!馬鹿!ベン!!何言ってんだ!!」

 

どうやらこのトナカイ、サンタの使い魔でベンというらしい。

 

「あ、やべっ!!」

 

ベンは口を滑らせたと思い焦る。

 

「へえ、じゃあジジイ、魔導師だったりすんの?」

 

「「え?」」

 

これがきっかけで互いに確信を持ち、垣根帝督は魔導師や魔法に関する事情を知っている事、サンタは魔導師で、"副業"でフリーの魔導師をやっている事を互いに話した。

 

「まさか、学園都市に魔法を知っているヤツがいるとはな。まあとにかく、今日は聖なる夜だ。ドブみたいな目をしたお前も一応子供だ。プレゼントやるから感謝しろクソガキ」

 

「恩着せがましい上口悪いな」

 

垣根の呟きを無視して、サンタはおもむろに袋から何かを取り出し、彼に手渡した。

 

「メリークリスマス♪」

 

渡されたのけん玉だった。

 

「いらねーよ、こんなモン」

 

垣根はサンタを呆れたように見つめる。

 

「つーか、今時小学生でも喜ばねえぞ。けん玉じゃ」

 

「はあ?けん玉嘗めンじゃねーぞ!!クリスマスっつったらけん玉だろ!!サンタっつったらけん玉以外ねーだろーが!!」

 

チンピラみたいな剣幕で垣根帝督に叫ぶサンタ。

出で立ち以外はもはやサンタクロースらしさは無い。

ただのガラの悪いジジイだ。

 

「聞いた事ねえよ。どこの情報だよそれ。大体、サンタの発祥地は日本じゃねえだろ」

 

ちなみにサンタクロースの本場はフィンランドだ。

 

「だーから言ったじゃねえか。今時のガキにウケる訳無いって」

 

ベンが口を挟んだ。

 

「ホラ、人類科学の悲劇で生まれた鹿人間もそう言ってんじゃねえか」

 

「何が人類科学の悲劇だ!!つーか、トナカイだっつってんだろ!!」

 

サラっと毒を吐いた垣根に突っ込むベン。

 

「まさかとは思うがテメェが担いでる袋の中、全部けん玉か?」

 

(ギクッ!!)

 

サンタのジジイは、ジト目で言う垣根に分かりやすく驚く。

試しにサンタから袋を取り上げて中身を確認する。

 

「……、マジかよ」

 

袋の中は大量のけん玉だった。

 

「〜ッッ!!チクショー!!どーしてくれんだよ!もう俺、仕事する気失せちゃったよ!!」

 

「あげくの果てに逆ギレかよ、サンタクロース辞めちまえよ。つーかもう帰れ」

 

ウンザリしたように彼は手をシッシッと振る。

 

「ふざけんな!!慰謝料とけん玉代と代わりのおもちゃ代寄越せや!!」

 

「帰れ」

 

ブォッ!!

 

未元物質(ダークマター)』で巻き起こした烈風でサンタとベンを吹き飛ばす。

 

「「ぎゃああああああッッ!!」」

 

 

 

 

 

 

「……て事があったんだよ」

 

「「「「「…………、」」」」」

 

顔を引き攣らせて、色々な意味で絶句する五人。

 

「で、心当たりあるか?」

 

「……あいにく、そんな、奇抜な人は知らない、かな……」

 

代表してフェイトが答えた。

 

「ふうん」

 

尋ねた張本人の垣根が、一番興味のなさそうに呟いたのだった。

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