魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter   作:戸礼太

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衝突

十二月二十二日。

 

私立聖祥大附属中学校、二年六組の教室。

 

「え?クスリマスパンティー??」

 

と、頭の悪そうな事を言ったのは、学園都市第二位の超能力者(レベル5)・垣根帝督。

 

「どんな聞き間違いよ」

 

とツッコんだのはアリサ・バニングス。

手を横に降りながら八神はやてが言う。

 

「ちゃうちゃう、クリスマスパーティーや。明後日はクリスマスイブやろ?そやから今日の終業式が終わったら、みんなでその日程を相談しよ思ってんねん」

 

「場所は翠屋かはやてちゃんの家か検討中だけどね」

 

と、さらに高町なのはが付け加える。

 

「ふうん。月村かバニングスの家じゃやらねえの?」

 

垣根の問いに月村すずかが答える。

 

「この季節は色々と来客が多かったりするからね」

 

彼は成る程なと相槌を打った。

 

終業式は丁重に行われ、いつも通り校長のありきたりな長い話があったり、表彰式があったりなど、本当にありきたりな終業式だった。

 

垣根帝督はやはりサボった。

 

 

 

 

 

終業式が終わり、帰路につく六人。

先程の話し合いで開催場所は八神家となった。

 

「それじゃまた後でね」

 

「私は咲耶ちゃん誘ってみるね」

 

そう言ってアリサとすずかは別れていった。

志村と古市も参加したがっていたが、あいにく二人とも部活で不参加となった。

道を進む四人。

 

十二月中旬という事もあり、気温は低く、風も冷たい。

 

「う~、やっぱり寒いねぇ」

 

「うん、今年は秋らしい涼しさはあまり無かったしね」

 

「夏から一気に冬になった気分やなぁ」

 

そんな話をしてなのはがふと、垣根の方を見て尋ねた。

 

「垣根くんは寒くないの?いつもと同じ格好だけど」

 

「ああ、俺は常に皮膚や服の上から能力でフィルタを張ってるから余分な冷気や不純物を遮断してるんだ。だから平気だ」

 

彼は簡単に答える。

はやてが羨ましそうに言う。

 

「ええなぁ帝督くんの能力。わたしにもそのフィルタ付けてくれへん?」

 

「嫌だ」

 

「何でや!」

 

愉快な雑談をしつつ歩き進む四人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、次元航行艦『アースラ』。

 

艦内の訓練室にはフェイト・T・ハラオウンと八神はやてがいる。

ついでにクロノ・ハラオウン提督に呼ばれる形で、垣根帝督もいた。

この時、なのはとヴォルケンズが任務中で出払っており、クリスマスパーティの段取りの話をするために待つ事にした。

待ちぼうけを食らっている間に、フェイトが暇だから模擬戦をしないかと垣根に持ちかけた。

しかし彼は当然、面倒臭いと断る。

が、別に全力でぶつかり合いをする訳ではなく、ただの肩慣らしついでに相手をしてほしいと、彼女はあまりにもしつこく懇願してきたため、最終的には渋々了承し、軽く模擬戦をする事になった。

 

で、その模擬戦の後の場面な訳である。

はやてが差し入れに冷えたスポーツドリンクを二人に渡した。

 

「二人ともお疲れさん。ブリッジから見てたで」

 

「ありがとうはやて。それにしても相変わらず垣根は凄いね。能力でAMFみたいな空間にしたり、魔力刃を薄い翼で受け止めたり、どんな魔法も『未元物質(ダークマター)』で防ぎ切っちゃうから……」

 

「俺にとっては別に何て事はねえよ。何にしても応用次第って訳だ。言っちゃ何だが、いちいち苦戦するようなら第二位の名が廃るしな。そういうお前も、また速くなったんじゃねえか?それに比例して露出度も高くなったけど」

 

「う、でもその分軽くなるから……」

 

垣根はニヤッと笑いながら冗談混じりに言う。

 

「そのうち全裸になるんじゃねえだろうな?」

 

「な!?そこまでしないよ!」

 

「もしそうなってもうたら、フェイトちゃん捕まってまうな」

 

悪乗りするはやて。

 

「もう!!はやてまで!」

 

二人の冗談に顔を真っ赤にするフェイト。

そこへ、招かれざる客が現れた。

 

「お、フェイトにはやてじゃないか」

 

呼ばれた二人が振り向くと、そこには銀髪のイケメン少年、問題児エースこと魅神聖が歩いてきていた。

 

「あれ、魅神。今日はミッドに行ってたんじゃ?」

 

フェイトが怪訝そうに尋ねる。

 

「ああ、思ったより早く任務が済んだんだよ。そんでついでに頼んでたデバイスの改修も済んでたから、受け取りに戻ってきたって訳」

 

「デバイスの改修?」

 

首を傾げるはやてに、魅神聖は得意げに答える。

 

「ようやくカートリッジシステムを実装できたんだ。マリーには感謝感激だよ。これでなのはやフェイト、シグナム達にも引けはとらないぜ」

 

そう言った所でようやく彼は、彼女達二人の傍らで我関せずといった調子で佇む場違いな男、垣根帝督に気付く。

魅神は目の色を変えてズカズカと近づく。

 

「垣根、何でまたアースラにいる?まさか半年前の事件にかこつけて、はやて達に付き纏ってんのか?」

 

言って彼は垣根の胸ぐらを掴む。

 

「何言ってんだお前。つーか放せよ」

 

そう言って彼は魅神聖を突き飛ばす。

 

「なっ?貴様……っ」

 

「テメェが俺を毛嫌いしようが目の敵にしようが別に構わねえし、興味もねえよ。ただし事情も確認せずに言い掛かりやら因縁を付けてくるのはやめてもらおうか?テメェも一応、公僕なんだからよ」

 

吐き捨てるように言ってきた垣根に、魅神は忌々しそうに舌打ちの音を立てた。

はやてとフェイトが仲裁しようと口を挟む。

 

「もうやめーや。顔合わせる度に喧嘩腰なんやから」

 

「二人ともやめなさい。無理に仲良くしようとは思わないけど、魅神も、学校でもここでも毎回一方的に突っかかるのはやめてね?今日はクロノに呼ばれて垣根も来てただけなんだし」

 

理屈では理解できるが、感情的には納得できなかった。

 

「……けどよ、はやてもフェイトも、あとなのは達も、こいつが何者か分かってるはずだろ?気を許し過ぎじゃねえか?」

 

それは……、と言いかけて僅かに言葉を詰まらせた。

黙って聞いている垣根も、内心そこに関しては同感だった。

 

「オレは君達のそういう分け隔てのない優しい所は好きだけど、クロノ達もいくら昔からの仲だからって甘過ぎだ。何より……」

 

そこで言葉を切って、魅神聖は再びキッと垣根帝督を睨み付ける。

 

「貴様みたいな悪党が、なのは達のそういう無償の優しさに甘えてるのが、堪らなく気に入らないんだよ」

 

「はあ?」

 

垣根は意味が分からなさそうに眉をひそめるが、魅神は構わず言い続ける。

 

「貴様の事は、件の事だけでなく五年前の調書や戦闘記録等も見てより一層調べたぜ。……確かに、お前にはお前なりの悲劇や苦悩があったんだろう。それは認めてやる。だが、お前は自分で分かってるはずだ。過去に酷い目に遭ってきたからって、同じ道を歩まなければならない道理は無いとな」

 

「……、」

 

「だが実際のお前は、自分の意思で悪の道を選んだ。それ以外の道を選ぶチャンスが皆無ではなかったはずなのにだ。そうだろ?」

 

「ハッ、説得力に欠ける説教だな。俺を理解したつもりか?」

 

垣根は鼻で笑う。

彼は続ける。

 

「まあ確かに、テメェの言い分は一理あると思うぜ。俺は確かに自分が外道だっつー自覚はあるし、分かった上で、今こうしている。テメェが俺としても不本意ながら、高町達とオトモダチゴッコしてるのも気に食わねえのも理解はできる。だが、それこそそいつらに言えって言ってるだろうが。俺に突っ掛かってきた所で、本質的にはしょうがねえっつってんだろうが」

 

「いいや!お前にも問題や責任はある!無自覚になってるかもしれないが」

 

「随分と、知った様な口をききやがるな」

 

垣根はくだらなさそうな声で答えるが、魅神はビッと指を垣根に向かって指して実際に、と告げる。

 

「お前は何だかんだ、なのは達の厚意や優しさの類いを拒絶も受け流す事もし切れてないだろ。何なら理由や言い訳を自分にして、受け入れてさえいるんじゃないか」

 

「あ?」

 

ピクッと眉間にシワが寄る。

それを見て魅神は小さく笑う。

 

「ふっ。案外、自分では意外と気付けなかったみたいだが、図星だったようだな」

 

「ち、ちょっと!」

 

「待って魅神!」

 

そこではやてとフェイトが再び口を挟んだ。

 

「その事に関しては帝督くんが悪いとかはないはずやで?」

 

「そうだよ、わたし達が好きで色々誘ったり連れ回したりしただけで……」

 

「いいや!」

 

普段は彼女達に露骨な口答え等はしない魅神聖だが、今回だけは譲れないらしく即答してきた。

 

「本気で徹底的に拒絶しようと思えば、不可能じゃなかったはずだ!垣根、お前とはやて達の今の関係は一見良く見えるが、フェイト達側からの厚意や善意が絶たれればすぐに崩れて消えるような、とても脆いものだ」

 

「……、」

 

そこは否定しない。

故に彼は答えない。

反論を敢えてしなかった。

 

「今のこの関係に慣れ始めてるだろ?そこにお前の『甘え』があるって言ってるんだよ。垣根帝督、貴様は自他共に認める悪党だ。腐った人間だ。オレは何も別に貴様がただ単に腐った悪党だからってだけで、安直になのは達から遠ざけたいって訳じゃあない」

 

「え、そうやったん?」

 

「違ったの……?」

 

意外そうな顔でキョトンとしてしまう、はやてとフェイト。

 

「おいおい、単に悪事を働いたり犯罪を犯したからってオレが考え無しに否定はしねえよ。それ言ったら、昔のフェイトや守護騎士達もそれに当てはまるが、彼女達はちゃんと贖罪し正しい道を歩んでいる。だが!」

 

魅神聖は憎悪と敵意を込めて、垣根帝督を睨んで言う。

 

「垣根、貴様は違う。今現在も悪党であり続けながら、優しいこの()達に甘えてすがっていやがる!過去の悪事に対して何の償いもしてないしする気も無いばかりか、この先も正しい道を歩もうともしない!」

 

すらすらと言葉は出た。

 

「だからオレは、そんな貴様がヌケヌケと善意と優しさの象徴のようななのは達と懇意にする事も、貴様みたいな救いの無い様な腐った外道の存在そのものが許せないんだ!!」

 

「……君の言いたい事は分かったけど、でも、それだって、君のエゴだよ……」

 

魅神聖の言葉に、フェイトは思わず反論するように、再び口を挟む。

こき下ろされた垣根帝督はしかし、小さくうっすらと笑っていた。

 

「……そうだな。まあテメェの言い分は一理ある。で、ならば、どうするよ?」

 

魅神は辺りを見回した。

ここは訓練室。

そして自分はついさっきにデバイスを全面改修・改良したばかりだった。

テストもしたいところだった。

魅神聖は、垣根の方に向き直る。

 

「ちょうどいい、いい加減白黒つけたかった所だしな。垣根、オレと勝負しろ」

 

「あ?」

 

垣根は首を気だるそうに首を傾げる。

 

「ああ、ルールは簡単。どっちかが気絶するか降参するか、戦えなくなったらだ。そしてオレが勝ったらもう二度と彼女達に金輪際関わるな!!」

 

垣根は最初、面倒臭いから断ろうと思った。

 

「散々偉そうに能書き垂れておきながら、結局それかよ。現状、管理局の法じゃ俺を裁けないから、それで決着つけようってか。バッカじゃねえの?テメェの都合で勝負に乗った所で、俺にメリットがねえな」

 

「はっ。何だ、まさか負けるのが怖いのか?超能力者(レベル5)の癖に」

 

「そんな安い挑発に乗るとでも?」

 

意地でも模擬戦に誘うべく、敢えて更に露骨に挑発する。

 

「貴様の事は事情聴取の資料を調べたと言ったはずだ、学園都市第二位。一見単純に学園都市で二番目に強い存在で凄そうだが……」

 

「あん?」

 

「本質は違う。所詮は『第二候補 (スペアプラン)』。お前の存在意義は、第一位の代わりでしかないシロモノなんだろ?」

 

ドッ!! と。

 

不意に正体不明の不快感が周囲を包む。

思わず肩をビクリと震わせたはやてとフェイト。

対照的に、魅神は武者震いをしつつ、ニヤリとした。

 

「ははっ。ムカついた (、、、、、 )かよ、チンピラの悪党風情が」

 

「テメェ……」

 

怒りに呼応するように超能力(レベル5)の『未元物質(ダークマター)』が漏洩し、周囲に影響を与えていく。

 

「ふん、短気なヤツだ。ヤル気になったか?スペア野郎」

 

「上等だよ三下。この俺に喧嘩を吹っ掛けた事、後悔させてやる」

 

魅神聖はフェイトとはやてをチラリと見てウインクをした。

微妙な表情になる二人。

 

何はともあれ、悪党と正義漢による、意地とプライドを賭けた闘いが始まった。

 

「……えーっと、これはどんな状況なの?」

 

アースラのブリッジのスクリーンに映る二人の少年達を見て、任務から帰艦した高町なのはが呟いた。

他にもヴォルケンズも帰艦し、スクリーンを見つめている。

訓練室には、両手をポケットに突っ込んで立っている垣根帝督と、彼を睨み付けて対峙する魅神聖。

自他共に認める、水と油。

 

「なぜヤツが垣根と……?」

 

「それはな、シグナム_」

 

はやてとフェイトが、これまでの一連の流れを説明した。

 

「_という訳や」

 

「相変わらずな子ね……」

 

シャマルが呟く。

 

「でも、垣根ならあいつ相手でも負けねえだろ」

 

ヴィータが言う。

シグナムも頷き、シャマルも同意する。

 

「そうだな、垣根は並の魔導師どころか私達でも勝つのは難しいほどの実力者だ。魅神も実力者だが、何も心配は要らないのでは?」

 

「そうよね」

 

「そうですぅ!帝督さんが負けるわけないですぅ~!!」

 

「うん、でもちょお落ち着こうな。リイン」

 

興奮気味のリインフォースⅡに小さくはやてがツッコんだ。

 

 

その頃、相対する二人の少年。

垣根帝督と魅神聖。

時空管理局所属の次元航行艦船『アースラ』側から制御され展開する、訓練用施設で競技ドーム並にだだっ広い模擬戦向けの、上空まで伸ばした二重結界に戦闘訓練用のレイアー建造物。

ライフ制で魔法は非殺傷設定なのはもちろんだが、『未元物質(ダークマター)』の防御フィルタを突破したとシステムが判断した場合は自動でダメージ計算され、ライフポイントが削られる事になる。

対して非殺傷設定を模倣した『 未元物質(ダークマター)』も、魔法防御を突破ないしすり抜け等をした場合、想定される物理的ダメージを計算し同じようにライフポイントが削られる事になっていた。

 

「セットアップ!!」

 

デバイスを起動させて朱色のバリアジャケットに身を包み、右手には赤い大剣を握る。

 

「行くぞ!!時空管理局のスーパーエースの実力にひれ伏せ悪党!!」

 

「ハッ!見せてやるよ。俺の『未元物質(ダークマター)』に、常識は通用しねえ」

 

ドン!! と、ありったけの魔力を纏った魅神聖と『未元物質(ダークマター)』を纏った垣根帝督が真正面から衝突した。

ゴパッ!!!! と轟音と共に衝撃波が周囲一体に炸裂し、莫大な粉塵を撒き散らす。

激突の結果は明らかだった。

垣根帝督の一撃を喰らった魅神聖が後方へ弾き飛ばされる。

 

「……チッ、流石は物理法則を捻じ曲げるだけのデタラメなスキルだ。ただ真正面からぶつかるだけじゃダメか」

 

しかし、莫大な魔力にモノをいわせた防御フィールドを応用して身を守り、衝撃を吸収しダメージを大幅に軽減してみせた。

 

「だが、白兵戦ならどうだ!!」

 

魅神は垣根に斬りかかる。

無駄の無い剣術だが、何処か機械的な動きにも見える。

垣根はフットワークやバックステップで斬撃をかわす。

 

(強いっちゃ強いが……)

 

(くそっ当たらねえ!ならば!!)

「一気に決めてやる、食らえ!!」

 

魅神聖は一度垣根から距離を取る。

そして彼の周りから魔力が込められた無数の剣や槍などが出現し、垣根に向かって勢い良く飛び込んでいく。

しかし、

ゴァ!! と、垣根を中心に正体不明の爆発が巻き起こる。

それは飛んできた大量の武器を粉々に破壊し、さらには魅神聖の体も薙ぎ払った。

彼の体が十メートル以上ノーバウンドで吹き飛ばされ、壁に激突した。

それを眺めがら垣根はくだらなさそうに呟く。

 

「何だ、もう終わりか?大した事ねえな」

 

「抜かせ!!」

 

しかしまだ、魅神聖は倒れていない。

彼は立ち上がると、スターライトブレイカー並の極太の砲撃魔法を放つ。

その時、轟!! と空気を唸らせて垣根帝督の背中から、天使のような六枚の白い翼が生える。

垣根は翼を弓のようにしならせて一気に放つ。

変質した烈風が砲撃魔法を撒き散らした。

 

「チッ!!行け!ファング!!」

 

空中に大型のサンヨウチュウのような形をしたファングが十四基出現した。

それらはさらに各一基が小型ファングを十基ずつ射出していき、合計百五十四基からなるファングの群れは、さながら星の海のようだった。

ファングが垣根帝督に光線を発射しながら襲いかかる。

だが彼は動じない。

 

「ハッ、上等!」

 

ズァ!! バゥ!! バォ!! と激しい風切り音が一帯に何度も炸裂した。 

彼は六枚の翼を振り回し、一枚はファングを叩き落とし、一枚は切断力を有した衝撃波を放ち、一枚は無数の羽を散らして散った羽がファングに突き刺さっていき、破壊していく。

振り回し巨大な刃物となった翼は、周辺の建物を次々に切り裂き、粉砕し無数の瓦礫と粉塵を撒き散らした。

残りの翼を魅神聖に叩き付ける。

魅神は咄嗟に全周式のプロテクションで防御する。

 

「チッ!!」

 

垣根と魅神は互いの能力と魔法を激突させながら空中へ躍り出た。

そしてぶつかり合いながら高速で街中を駆け抜けていく。

 

「おらどうした?俺という悪をぶっ潰すんじゃなかったのかよ」

 

垣根は数十メートルにも伸びた白い翼を振り回しながら言う。

 

「うるさい!!言ってろこのメルヘンクソ野郎が!!」

 

一度距離を取り、即座に集束魔力の槍を放つ。

垣根は翼でガードし、反撃するように六枚の翼を槍のようにランダムに突き出していく。

魅神聖は翼から逃れようと横に飛ぶ。

 

「いくら魔法のサーチができて防御をすり抜けたりAMFの真似事ができても、細かく何度も組み立てを変更すれば_」

 

「馬鹿か?無駄だ。それをすぐに再サーチすれば済むだけだ」

 

「ッ!!」

 

つまりこのままでは堂々巡り。

攻防を繰り返す間に魅神聖だけダメージが蓄積していく事になり、ライフポイントも確実に削られる。

 

「クソッ!!」

 

「これで逆算も終わり。テメェの魔法は解析済みだ。もうテメェに勝機はねえ」

 

「ほざけ!!」

 

中距離、遠距離、近距離と、様々な攻防戦を繰り広げていくが、フェイト・T・ハラオウンに似たミッドチルダ式近接格闘型デバイスを操るとはいえ、元々マルチロールタイプで俊敏さはフェイトに劣り、火力や集束能力では高町なのはに一歩劣り、純粋な技量はシグナムやクロノ・ハラオウンに劣った。

砲射撃も実質的に無力化され、防御魔法も無視されてしまい、遂に手も足も出ないような状況に陥られてしまった。

垣根帝督は六枚の翼を構え、冷徹に告げる。

 

「ここは俺の世界だ。テメェの知る場所じゃねえんだよ」

 

剣のように降り下ろされた翼は地面に、猛獣の鋭い爪で引っ掻いたような痕を作った。

 

「くっ!!まだまだぁ!!」

 

魅神聖は今度は、大きなスフィアを形成し、発射する。

それらは分裂していき、全部で二五六基になり、垣根帝督の近くで一気に爆発した。

爆発で粉塵が立ち込める。

 

「は、ははは!!どうだ!!何が勝てないだ!!勝てないのは貴様だ!!……なにっっ!!!?!?」

 

突然、魅神聖は地面に押し倒された。

まるで体が一気に重くなったかのように。

彼に触れた素粒子(ダークマター)によって体感重力が変貌したのだ。

さらに粉塵が晴れていくと、そこには六枚の翼で身体を包んで完全防御した垣根が立っていた。

彼は翼を羽ばたかせて空気を叩き、ゆっくりと上昇する。

魅神聖の喉が干上がる。

 

「でもまぁ、強いっちゃ強かったし、結構頑張ったんじゃねえの。エース自称するだけはあるかもな。このまま順当に成長すりゃ高町達より強くなれるかもしれねーぞ」

 

「貴様……ッ!!」

 

称賛の一つ一つが人を馬鹿にしているとしか思えなかった。

そんな彼に対して無情に躊躇なく、白い翼が構えられた。

 

「正義の味方なのに悪党を倒せなくて残念だったな。悪いがこれで終わりだ」

 

降り下ろされた六枚の翼が衝撃波を巻き起こし、魅神聖を無理矢理吹き飛ばして、壁に叩き付けた。

 

この瞬間、改めて勝敗は決した。

垣根帝督の勝利によって。

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