魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter   作:戸礼太

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年越しと初詣

十二月三十一日、大晦日の夜。

 

場所は同じく八神家。

で、そこの座敷に炬燵を置き、そこですき焼きパーティーが行われた。

ちなみに「なんでいちいちパーティーを冠するんだ?」というツッコミは無視された。

垣根とヴィータとはやての三人による熾烈な(笑)肉の取り合いがあった。

銀魂を知っている方はそれでのシーンを想像してくれればありがたい。

 

話がそれた。

 

そして、しょーもない争いが終息した後。

炬燵に入り、年末特番を見ている。

 

「今年ももう終わりやな~」

 

ミカンを剥きながらはやてが呟く。

 

「思えば、今年は色々な事があったね」

 

なのはが、左隣にいる垣根の方を見る。

 

「そうだね、垣根と再会したり、色々知ったり……」

 

「バカに付きまとわれたりゴリラにストーキングされたり……」

 

フェイトに続いて青筋を浮かべながらアリサが呟いた。

そんな彼女を見て乾いた苦笑をするすずか。

 

「ホントにスゲェ年だったな。仕事先でお前等に再会したり、その後、強制的に友人にされたり、行きたくもない学校に通ったり、模擬戦に付き合わされたり、夏は……まあ、色々なモン見せられたり」

 

「「………、」」

 

垣根帝督のボヤきに、思わず例の事を思い出して顔を赤くする少女が二人。

 

「後は、生まれて初めて他人の誕生日祝ったり、体育祭があったり、文化祭じゃ面倒臭い目に遭ったり……散々だったな」

 

「結局、散々って事?」

 

すずかが訪ねる。

 

「まあな」

 

垣根はくだらなさそうに答えた。

 

「でも、私は帝督さんに逢えて良かったですよ~?」

 

言ってリインは、定位置のように垣根の膝に座り、温まる。

年越しそばを食べながら、

観る年末特番が『紅白●合戦』と『絶対に●ってはいけない●●●●24時』と揉めたため、ジャンケンとなった。

 

ジャンケンの最中に……、

 

「アリサさーん!!年越しは是非とも俺と―ッ!!」

 

ストーカーゴリラもとい近藤勲が乱入した。

 

「ちょっ、何人ん家に入ってんねん!!」

 

狼狽するはやて。

 

「なんだこのゴリラ!?」

 

ヴィータもマジで驚いた。

が、

 

「失せなさいこのストーカーゴリラァァァァァ!!」

 

「ぶべらっ!!」

 

アリサのグーパンチによってゴリラの退治納めされた。

ちなみに垣根が出したのは……パー。

しまったー!! と、ガックリと床に手をつくアリサ。

垣根はそんな彼女を尻目にテレビを見ながら愉快に笑うのだった。

そして、なんやかんやで時計はついに、時刻午前〇時三十分を指した頃、

 

「……ん?」

 

回りの状況に気づいた垣根帝督が、辺りを見回す。

 

「……、」

 

垣根帝督を除くこの場にいる者全員が眠ってしまっていた。

 

「帰るか」

 

彼はそう呟くと、炬燵から立ち上がって玄関に向かって歩き始めた。

しかし、

 

「うごっ!?」

 

垣根は間抜けな声を出して、つまずいたようにうつ伏せに倒れた。

彼は自分の足下を見直すと、右足をリインに、左足をヴィータにしがみつかれていた。

 

「何なんだ、これ……?」

 

無理矢理起き上がろうとしたところで、垣根の背中に別の重圧がかかる。

 

「なっ!?」

 

「……何や~、こっそり帰ろとして。あかんで~、帰さへんからなぁ~……」

 

寝ぼけ眼で彼の背中に取り付いたのは八神はやてだ。

しかもそのまま再び寝てしまった。

床に突っ伏して両足と背中に、何だか柔らかい感触を感じながら、垣根は一人呟いた。

 

「何……だ、こりゃあ……」

 

「……明け……まして……おめで、とう……」

 

なのはが寝言で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一月一日、元日。

結局大晦日から元旦まで寝過ごした五人は一度解散し、それぞれの自宅で着替えて海鳴市内の神社で再集合することになった。

 

元旦ということもあり、神社は非常に混雑していた。

 

そしてその神社来た面々なのだが、神社の一角ではこんな光景が展開されていた。

 

鹿の着ぐるみでも着ているかのような顔の濃い男がいた。

 

「何でテメェがこんなとこにいんだよ?」

 

鹿人間にメンチを切っているのは垣根帝督だった。

そしてメンチを切られている鹿は、鹿ではなくトナカイの使い魔、ベンであった。

 

「ここは人間が御詣りする神社なんだよ。トナカイなんざお呼びじゃねえんだ、失せろ」

 

「うるせーな。こっちは仕事で来てんだよ。クリスマス以外も働かねーと食えねーの」

 

不貞腐れた顔でそう返すベンは、『初詣の作法ガイド』とか書かれているアンチョコらしきものを手にしている。

 

「要らねえだろ、初詣のガイドとか。それ以前にその外見で不審者として通報されねえか?」

 

「うっせーな、もうどっか行ってくれよ!仕事の邪魔なんだよ!!」

 

鹿人間……じゃなかった、トナカイの使い魔ベンの叫び声を無視して、垣根が別の方向へ目をやると、近くの屋台に立つ見覚えのありそうなジジイが目に写る。

赤い服を着ていないからそれとなく分かりにくいが、このじーさん、サンタのじーさんである。

垣根が何を売っているのかと近づくと、けん玉が山のように積み上げられていた。

 

「イヤ、売ってるモンおかしいだろ」

 

彼は思わずツッコむ。

 

「げげっ、オメーは学園都市の暴力学生!!」

 

そう言いながらじーさんが驚きながらのけ反る。

 

そこへ、振袖を着たフェイト・T・ハラオウンと八神はやて、リインフォースⅡ他、シグナム達は普段着だった。

 

「あれ、高町達は?」

 

「後で合流するって」

 

垣根の問いにフェイトが答えた。

 

「どや、わたし達の振袖姿」

 

笑顔ではやてが訪ねた。

 

「おう、よく似合ってると思うぜ」

 

簡単にだが、珍しく素直に彼は褒めた。

リインが、おのぼりさんよろしく周りをキョロキョロしながら言う。

 

「人がいっぱいですぅ~」

 

「ま、元日だからな。初詣の参拝客で賑わうのも無理ないだろ」

 

「あ、そこのお嬢ちゃん達けん玉買わない?」

 

と、サンタのじーさんがリインに話しかける。

 

「売り付けんな。つーか、どう考えても去年の余りモンだろそれ」

 

「別にいいだろーが、腐るモンでもねーんだしよ」

 

サンタのじーさんは悪びれた様子もなく言う。

 

「それによ、こういう在庫品ってのは持ってるだけで税金かかっちゃうんだよ。だからさっさと売って現金に換えといた方がいーの」

 

「いや、テメェ、子供に夢を与える気ゼロかよ?聖夜に夢を配る白髭のじいさんが税金対策?」

 

垣根のセリフを聞いて、はやてとフェイトはこのじーさんが何者か気付く。

サンタのじーさんは構わず続ける。

 

「夢配るにも先立つモンが必要なんだよ。あ、そこのお兄さん!けん玉買わない?一個五百円、二個だとなんと千円だよ!!」

 

「ビタ一文負けねえんだ。そういう点でも夢ねえのな」

 

呆れる垣根達。

ちなみにけん玉を売り付けられていたのは古市達だった。

そこへ手をふりながら、振袖姿の高町なのは、アリサ・バニングス、月村すずかが合流する。

 

「遅れてごめんね」

 

「ううん、わたし達も今来たところだから」

 

話しているなのはとフェイトに、サンタのじーさんが割り込む。

 

「お嬢さん、けん玉買わな_」

 

「買わねーよ」

 

言い終わる前に、垣根帝督がジジイにかかと落としを決める。

垣根はこれ以上彼等に関わりたくないため、なのはとフェイトの手を掴んで歩き出す。

 

「えと、良いの?ほっといて」

 

「一応……サンタクロース、なんだよね?」

 

フェイトとなのはが戸惑いながら訪ねる。

 

「良いんだよ。ありゃ、けん玉を売ってるただのジジイと、融合実験に失敗して生まれたただの鹿人間だ」

 

「いや、後半のは『ただの』やないやろ」

 

というはやてのツッコミを無視して、彼はズンズンと強引に鳥居を抜けて参拝の列に並んだ。

 

 

 

 

 

 

「サッサと参拝済ませてサッサと帰るぞ」

 

不機嫌そうに彼は言った。

 

「何だか、新年早々に変なもの見ちゃったわね」

 

「そ、そうだね」

 

サンタショックが大きかったのか、表情を引きつらすアリサとすずか。

 

「あ、先輩!」

 

振袖姿の赤城咲耶が合流した。

 

「明けましておめでとうございます。あの、垣根先輩、ど、どうですか?咲耶の格好……」

 

「ああ。よく似合ってるけど」

 

「わ、わたし達は?」

 

なのはも感想を求める。

 

「似合ってる」

 

「も~、他に感想無いの」

 

あまりにも淡白な反応になのは達は不機嫌そうな表情をする。

 

「別に良いじゃねえか、実際に似合ってるんだし。そんな事より、サッサと御詣りすっぞ」

 

とにかく、皆で鈴を鳴らして二礼二拍手を行った。

 

 

 

願い事は、なのは、フェイト、アリサ、すずか、はやて、リイン、咲耶、垣根の順で以下の通りである。

 

(んー……。あ、やだ。余計な事浮かんじゃった。えっと、違う違う!わたしそんなアレじゃないし、まだ恋愛とかよく分からな_ッ!!あーもう!雑念退散!!)

 

(えっと……。…………………………、……………!!……か、家内安全と無病息災で)

 

(ストーカーゴリラが消えますように)

 

(皆の家内安全と無病息災を♪)

 

(うーん。想うだけタダやし、折角やから好き勝手に願ったろ。えっと……_)

 

(みんなともっと、帝督さんが仲良くなれますように♪)

 

(垣根先輩に、いつか……)

 

(土方即死)

 

二名ほどおかしな願い事だったが、皆それぞれの願いのために頑張る事だろう。

余談だが、土方十四朗の死を願ったのは他にもいた。

さて、お次はこれまた初詣の定番とも言えるおみくじである。

 

「さ、引いたらみんな、一度に見るわよ!!」

 

特に深い意味はないが、その場のノリでアリサが決めた。

 

なのは、フェイト、はやて、すずか、リイン、咲耶は、(大吉)

 

「やったぁ!!」

 

「嬉しい♪」

 

「ええ年になりそうやなぁ♪」

 

「ふふっ♪」

 

「わーいですぅ~♪」

 

「う、嬉しいなぁ~」

 

それぞれ歓喜の声を上げる。

 

アリサは(凶)だった。

しかも、『ゴリ面の同級生に悩まされるでしょう』とまで書かれていた。

 

「って、『ゴリ面』って何よ!?ゴリラ面って事?大体想像つくわ!!」

 

激怒しておみくじをビリビリに引き裂いた。

 

シグナムは(中吉)。

特に変わった事は書いていなかった。

 

シャマルは(末吉)。

 

『料理の腕が微妙に上がったり上がらなかったりするでしょう』と書いてあった。

 

「どっち!?しかも微妙なの!?」

 

思わずツッコむシャマル。

 

ヴィータは(微凶)。

 

『素直じゃない性格が禍して微妙に不幸でしょう(笑)』と書かれていた。

 

「あたしに対する当て付けか!!(笑)もムカつく!!」

 

おみくじを地面に叩き付けた。

 

そして、垣根帝督は、

 

(大凶)

しかも、『近いうちに一度死ぬでしょう(笑)』とまで書かれていた。

 

(ムカつくな)

 

胸中で毒づきながらおみくじを握り潰してゴミ箱に放り捨てた。

 

「ねえねえ」

 

なのはが彼に声をかけた。

 

「垣根くんは何だった?」

 

「大凶だった」

 

「ええ!?」

 

不意に、垣根の携帯電話が着信音を鳴らした。

彼は彼女達に「悪い」と一言。

そして少し離れた位置で通話した。

通話が終わると、垣根帝督は少し済まなさそうに彼女達の方へ戻ると、

 

「あー楽しんでる所悪いが、ここで今さっき決まって、言わなきゃいけない事がある」

 

「どうしたんや、帝督くん?」

 

はやてが問いかける。

次の瞬間、彼女達が予想もしなかったセリフが彼の口から飛び出した。

 

「俺、学園都市に戻る事になった」

 

『……、えええええーッッッッ!!!?』

 

垣根帝督の発言に、シグナム以外の全員が一斉に大声をあげて驚く。

まー驚くよな、といった感じで垣根は頭をかいた。

 

「ついさっき戻れっつー指示が入ってな。元々、学園都市の外で用事があったから海鳴市に来てた訳だから、これでも長い出張になるんだが」

 

のんびりと話す垣根に、フェイトが慌てたような調子で言う。

 

「それで、帰るのはいつになるの!?」

 

「明日」

 

『はやっ!!』

 

またセリフがハモる。

 

「まあ、とにかくそーいう訳だから。悪いな、突然」

 

「嫌ですぅ~!!私はもっと帝督さんと一緒にいたいですぅ~!!」

 

リインが垣根の服を掴む。

彼女の目には僅かに涙が浮かんでいた。

 

「リイン、ワガママ言うなよ。垣根だって好き好んで言ってる訳じゃねーんだから」

 

ヴィータがリインを宥める。

垣根は一瞬だけ無意識に優しく微笑み、リインの頭を撫でる。

「悪いな」 と、小さく呟きながら。

 

その後、八神はやてとアリサ・バニングスに詰め寄られたり質問攻めにあったりなど、一悶着あった。

そのあとは皆で屋台を回って飲み食いをした。

なぜか全て垣根帝督の奢りで。

 

「何でだよ」

 

「ええやん♪」

 

「新年早々に爆弾発言するからよ。当然の罰よ♪」

 

と、たこ焼きを片手にいってるのははやてとアリサ。

なのはとフェイトはお汁粉、すずかと赤城咲耶はお雑煮を食べている。

リインは林檎飴。

垣根は「正月関係ねーじゃん」とツッコんだが無視され、結局買わされた。

 

「帝督さん、私の林檎飴ちょっと食べても良いですよ~」

 

「いや、遠慮しとく。お前が全部食いな」

 

寝坊したため初日の出には拝めなかったが、垣根帝督にとっても彼女達にとっても、良い思い出となっただろう。

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