魔法少女リリカルなのは with Dark_Matter 作:戸礼太
下部組織に命じて荷造りとマンションの引き払いに取りかかっていると、高町なのはから電話がかかってきた。
『急な話だったから、簡単にだけど送別会するから、はやてちゃんの家に来れない?』
「別に、そんな気を回さなくても良いぞ」
『
「……分かったよ。今から行くから、そう急かすな」
垣根は若干仕方のなさそうな声で了承する。
『うん、待ってるからね』
なのはは少し声を弾ませると、そのまま電話を切った。
通話の切れた携帯電話を眺め、彼はポツリと呟く。
「別れ際に、文句の一つや二つ言いたくなったか?」
確かに急な話ではあった。
『スクール』のエージェント曰く、学園都市統括理事会は追跡対象の尻尾が掴めないばかりか、そもそもその対象の存在そのものが疑わしく思え、いつまでも直下の実行暗部組織を『外』に野放しのままにするのもあまり都合が良くないという訳で、先日帰還命令を下す事になったらしい。
もっとも、垣根帝督にとってはそもそも『外』で半年以上も滞在する事になっていた方が、大分イレギュラーな事態だった訳だが。
垣根は身に纏っていた学園都市での所属校の学ラン制服の上にコートを羽織り、外に出た。
そしていざ行ってみると八神一家となのは、フェイト、アリサ、すずか、といういつもの面子と赤城咲耶、ユーノ・スクライアに子供形態のアルフ、クロノ・ハラオウンとリンディ・ハラオウン、エイミィ・リミエッタまで来ていた。
「お前等、よく来れたな」
垣根の一言に、クロノ達はフッと小さく笑った。
「事実上、
「ねー♪」
「僕とアルフも普段はコキ使われてる訳だし、たまにはね」
言いながらユーノは横目でクロノを見るが、案の定クロノは知らん振り。
「良いのか?その貴重な休暇を、こんな事に使っちまって」
「アンタはそんなガラでもない事気にしなくて良いんだよ。アタシ達が好きでやってんだから。中々会ったり話したりする機会も無いんだしさ」
そうアルフに言われ、流石にあまり気にするのはやめる事にした。
その後。
ソファーの上で跳び跳ねながらヌンチャク状のワイヤレスコントローラを振り回している、アウトフレームモードのユニゾンデバイスの少女、リインフォースⅡ。
「ふおおおおおお!!白雪姫は渡さないですよーっ!!」
「王子様に渡せば幸せになれる保証なんて実はどこにもなかったのだー、的な感じか?」
とゲームに付き合ってるのはヴィータ。
ギャラリーは皆、微妙な表情で観戦している。
メルヘンな画風や可愛らしい星やハートのエフェクトに惑わされがちになるが、よくよく見てみれば七人の小人が斧や鍬などの農機具系で白馬の王子様をフルボッコしているようにも見えるのだ。
このゲーム、農民の反乱でもモチーフにしているのだろうか?
観戦含めて付き合わされている、学ラン姿の少年。
学園都市では第二位の座に君臨する
「はいっっっ!!!!!!」
「おりゃあッ!!」
白馬の王子様を七人がかりで袋叩きにし、王冠やマントなんかを分捕って一息つく。
「……なあ、八神」
「んー?」
垣根は傍らで友人達とティーブレイクしているはやてに言った。
「何でこんな変なゲーム買ったんだ?」
「帝督くんに似てるやろ?メルヘンチックな見た目で、その実暴力的な所とか♪」
「ふふっ」
「クスッ……」
彼女の答えに思わず吹き出してしまったのは、なのはとフェイト。
「おい」
垣根は二人にメンチを切るが、やっぱり目を逸らされた。
視線をリインとヴィータに戻すと、
「チッ。……で、満足したか?」
「まだ嫌ですぅ!!もっともっと遊んでください!!」
「次いつ会えるかなんて分からねーんだろ?なら、リインの気が済むまでは付き合ってやってくれよ」
という訳で、結局この日は日中の殆どを遊びやら他愛の無い雑談に費やす形になった。
「流石にそろそろ行くぜ。迎えも待たせてるしな」
リインが遊び疲れて眠ってしまったタイミングで、そう言って垣根は腰を上げる。
「あ……」
誰かが声を漏らした。
これで最後。
軽い足取りの彼にリンディが声をかける
「あ、なら見送りを_」
「よしてくれ、辛気臭い」
うっすら苦笑いを浮かべ、それを断ろうとする。
しかし、案の定ぞろぞろと玄関の外までついてきた。
「ったく」
溜め息を吐く垣根に、クロノが思い出したように告げる。
「ああそうだ。魅神から君に伝言があったんだった」
「は?あの野郎からか?」
怪訝な顔をしていると、エイミィが言葉を継ぐ。
「『勝ち逃げなんて許さねえ。いずれ必ずリベンジしてやるから、必ずもう一度勝負しろ』ってさ。ふふっ、目を付けられちゃったね?」
「面倒臭せえな。じゃあヤツにゃこう言っといてくれ。それならせいぜい腕を磨いとけ、何度やろうが結果は同じだろうがなってな」
「そうか。じゃあユーノ、伝言は頼んだ」
「何で僕!?面倒事を押し付けるなよ!……はあ。垣根、そっちに戻っても時々で良いから、僕達の愚痴に付き合ってくれないかい?」
「ま、暇な時にな」
またもや貧乏くじを引かされ、萎れ気味のユーノ・スクライアを垣根はうっすら笑いながら承諾した。
「元気でね、垣根くん。たまには連絡してね」
「無視したら承知しないわよ?」
すずかとアリサに続いて、なのはとフェイトとはやても言う。
「アリサちゃんも言ったけど、連絡はわざと無視しないでね。電源切ったら今度こそ怒るからね?」
「そうだよ。本当はもっと、ミッドで垣根を連れてきたい所があったし、時間がある時だけで良いから、呼んでも無視はしないでよね?」
「せやで。わたしの携帯で時々リイン達も電話やメールもするやろうから、無視せんでね~?ていとくん」
「お前等、根に持ち過ぎだろ。あとていとくん言うな」
いつものやり取りに似ていて、彼女達は思わずクスッとした。
この会話ももう最後だと思うと、一抹の寂しさを感じるのだった。
と、そこへ、意外な人物が現れた。
土方十四朗と沖田総吾だ。
「……まさかテメェ等が来るとはな」
「垣根パイセンが転校するって聞きやしてね。まあ俺達ァただの付き添いと『回収』ですけどね」
垣根の言葉に沖田が答え、いつ訪れていたのか分からない、既にアリサに倒された近藤勲を担いで去っていった。
土方は垣根の前に立つと、静かに口を開いた。
「垣根、テメーがこれからはどういう生き方をするか、どういう道を進むのか、それを決めるのはテメー自身だ」
「何だいきなり」
真面目そうに語っているため、ひとまず垣根は一応聞いている。
土方は続ける。
「ただ決めるといっても、そう簡単にはいかない事もあるだろう。自分では判断のつかない場合もあるはずだ。が、そんな時は遠慮せずに俺の所に相談に来い。道に迷ったら、迷わず俺の真横に来い。真夜中でも良いから真横に来るんだ。まあ、よく考えたら、真横というのも難しいかもしれない。でも、なるべく真横に来い。そして一緒に岡本真夜の歌を……」
「いや、マヨマヨうるせーんだよ!!」
垣根は耳を塞いで怒鳴る。
「何しに来たんだよテメェは!!訳の分からねえマヨのサブリミナル仕掛けてきやがって!つーか、それやって何の意味があんだよ!?」
ツッコむ垣根に、土方はマイペースに続けた。
「それから、これは俺個人からの餞別だ」
彼はマヨネーズのフタを差し出した。そして言う。
「魔除け代わりだ」
「いるかボケェ!!」
垣根はマヨネーズのフタを地面に叩き付けながらシャウトする。
結局別れ際の時までもグダグダだった。
土方が退散した後、今度こそ帰るからなと垣根は歩き出す。
「ったく、最後まで調子狂わされた。何だったんだあいつ等」
そう呟いた所で横からこう言われた。
「まあまあ。しんみりした空気も一緒に吹き飛んで、ある意味良かったんじゃないかな」
「ね。垣根もその方が良かったんでしょ?」
「なー♪」
「……、何シレッと付いて来てんだよ。帰れ」
声のした方を向けば、予想通り当たり前のようになのはとフェイトとはやての三人が。
「「「えー」」」
「合流ポイントにいるのは『裏』の連中なんだから着いてこられちゃマズいんだっつの」
イラッと眉を動かしつつ、シッシッと手を振る。
「四の五の言うな。高町なんとか、ハりゃ_フェイト、八神」
「なのはだから!!」
「って、え!?垣根……ううん、帝督!もう一度、もう一度呼んでくれない!?」
「あーズルいでフェイトちゃんだけ。わたしも『はやて』って読んでや!ていとくん!」
「呼ぶか馬鹿。ていとくん言うな。じゃあな」
三人を振り切るように、足早に去っていく垣根帝督。
彼女達は立ち止まり、そんな彼の後ろ姿を見つめながらこれがひとまずは最後だと思い、言った。
「じゃあね。またね!
「またね、
「ていとくん、またね~!」
「……、」
彼は答えない。
代わりにチラリと振り向いて鬱陶しそうな表情の顔を見せると、ズボンのポケットに突っ込んでいた右手を出して、軽く左右にヒラヒラと振った。
合流ポイントに待機していた黒塗りのミニバンに乗り込む。
ミニバンはすぐに発車し学園都市に向かって走行する。
「……、」
思い出すと、色々な事があった。
そもそもの始まりが学園都市の外に逃げ出したDAという
追跡している内に五年ぶりに『魔法』が関わっている事を知り、首を突っ込んだ。
魔法サイド科学サイド問わず、刃向かってくる存在は片っ端から蹴散らした。
偶然か必然か、五年ぶりに魔導師の少女達やその仲間と再会した。
勝手に『
邪魔だったついでに、時空管理局側が追っていた犯罪テロ組織ワイルドハントを潰した。
色々交渉やら事情聴取やら話し合いの末、何故か取引するように半ば強引に友達にされた。
一時転入先で同じクラスになって悪目立ちする羽目になった。
何故か魔法サイド側と、単対多の模擬戦をした。
初めて他人の誕生日に、ガラにもなくプレゼントを渡した。
忘れ物を取りに夜の学校に忍び込み、成り行きで学校七不思議を暴き、お馬鹿な真相を目の当たりにした。
試験勉強を見てやるついでになのは相手にくだらない賭けをし、勝った。
一日がかりで買い物に、それも魔法サイドの総本山の都市でショッピングに付き合わされた。
海水浴にも行かされた。
リインに耳を引っ張られた後は、謎の敗北感を覚えた。
シャマルの料理は相変わらず食べられない消し炭か、良くても微妙な味付けだった。
フェイト・T・ハラオウンのハプニングストリップという余計なもの見て気不味くなった。
縁日でも似たような目に遭った。
久しぶりにらしい仕事があったが、トータル的には空振り同然の結果になった。
アリサ・バニングスの誕生日パーティーに生まれて初めて参加した。
ちょっとふざけた。
想定外の再会の末、まさかの告白をされた。
酷い振り方をしたのに何故か食い下がられた。
体育祭でも散々周りに振り回された。
月村すずかの誕生日パーティーに参加した。
またちょっとボケてみた。
文化祭はふざけてフケようとしていたら、文化祭デストロイヤーをデストロイする羽目になった。
偶然に偶然が重なり、初めて魅神聖と立場と思想の違いから、真正面で対立し、文字通りぶつかり合った。
クリスマスパーティーでは何の脈絡も無くゲームで振り回されたと思うと、八神はやてと五年前の事をきっかけに腹を割って話し込んだ。
初めて年越しと正月を大人数で過ごした。
八神はやての作ったすき焼きは美味かった。
生まれて初めて初詣に行った。
そして今。
長かった、と思う。
この半年余りの経験は、大半は一般人や『表』に住む、高町なのは達にとっては普通のありふれた出来事なのだろう。
だが、物心付いた頃からずっと長い事、学園都市の『闇』に呑み込まれ沈み続けていた、年相応という言葉とは無縁な事が多かった人生の、垣根帝督にとっては良くも悪くも初めての体験が多かった。
ここに来る間の出来事は、不本意で決して楽しい事ばかりではなかった。
だけど。
しかし。
「……、ふっ」
楽しい事、面白い事、確かにあった。
不本意ながら、振り回されつつも日常生活面では、かなり充実できたんじゃないだろうか。
元々はあまり能動的でもなかったから、尚更。
「ふっ……」
垣根帝督は小さく笑った。
一瞬だけだが、年相応の子供のような笑みだった。
絶対にあの少女達には一生言うつもりは無いし、死んでも言いたくないが。
こうして魔導師と能力者との、科学と魔法の交差が、再びそれぞれの道を、目指す先を求めて分かれていく。
この時は、誰も思わなかった。
夢にも思わなかった。
流石に予想はしていなかった。
『彼女達』も『彼』も。
これが今生の別れになる事とは。
約三年後の十月九日。
学園都市の独立記念日。
その内部に限り祝日となるこの日。
『
彼は、一度目の『死』を迎える事となる。
もちろん『外』には、誰にも知られる事もなく。
これで終わりとなります。
pixiv既出の書き直し前のでは、この後原作同様に学園都市暗部編を経て、その先も続きがありますが、このリメイクではこの先はあくまでIF物語として解釈していただければと思います。
要するに、
この先は原作通り垣根帝督サイドは『とある科学の
なのはサイドも『StrikerS』等々‥と物語が続き、
互いに再会は果たす事無く締めくくる……という流れを基本軸として、一応、新規でpixiv既出の『学園都市暗部編』以後の流れをリメイクないし多少修正して投稿し、StrikerS編までやってみようかと考えています。
いわゆる『
ハーメルンでは『学園都市暗部編』はやりません。
大筋は原作とそんなに変わらないので。
なので、私のpixiv既出の方か『原作をそのまま経て』から『以後編』に流れていくかは、読者の皆様それぞれの脳内解釈にお任せ致します。
無印編から書き直しを始めて一年間、最後まで拙作を読んでいただき、ありがとうございました。