リディアン音楽院の問題児   作:dedicates545

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遅くなってしまい申し訳ありません・・・・


猿田毘古大神

 

 

 

“コンコン”と部屋をノックする音が聞こえ、友里は扉をあける

 

 

 

「あら謳歌ちゃん、響ちゃんもう来てるわよ?」

 

 

 

 扉の前には、息切れしながら謳歌が立っていた

 

 

 

「すいません!遅くなりました」

 

 

「それじゃあ私は暫く出てるから、ゆっくりしてね?」

 

 

 

 友里はそう言うと、部屋を後にする

 

 

 

「ごめん響ちゃん!遅くなって」

 

 

「いえ大丈夫です、そんなに待ってないですから」

 

 

 

 謳歌は例によって般若の面を付けている

 

 

 

「それまだもってたんですか?ていうかそもそも何で般若何ですか?」

 

 

「いやぁ、これ訃堂のおじいさんにもらったんだけどね?調べてみたら5万円くらいするみたいでさぁ……捨てるには悪いし、お面これしかなかったんだよねぇ」

 

 

 

 ハハハと面を付けたまま笑う謳歌

 

 

 

「あの……今日はごめんなさい……折角の旅行なのに」

 

 

「……やめてよ、むしろ悪いのは私だから……ね?」

 

 

 

 響が続ける

 

 

 

「謳歌さんが卒業するまでにはって考えてたんですけど……すみません……」

 

 

 

 謳歌はおもむろに響の肩を引き寄せ、頭を撫でる

 

 

 

「そんな事気にしなくて良いから、ね?」

 

 

 

 響にそう語りかける謳歌、だが響からは意外な言葉が返ってきた

 

 

 

「……謳歌さんって髪触るの好きですよねぇ……」

 

 

「えっ、え……?どうしたの急に?」

 

 

 

 予想外の答えに困惑する謳歌

 

 

 

「いやぁ……何か手つきが手練れてるというか、いやらしいというか」

 

 

「ごっ、ごめん……」

 

 

 

 慌てて手を離す謳歌

 

 

 

「あっ……ごめんなさい、別に責めようとしてる訳じゃ無いんです、私は別に気にしませんし

 

 それに謳歌さんってサラサラのストレートが好みですよね?今さら私にどうこうって訳でも無いでしょうから」

 

 

「そっかぁ……って!何で私が髪の毛フェチみたいな流れになってるの!?」

 

 

 

 それを聞いて、響は不思議そうな顔をする

 

 

 

「えっ?違うんですか?」

 

 

「違う!……と思うけど……」

 

 

 

 自信無さげに謳歌は言う

 

 

 

「自信無いならもうそうなんですよ?だって謳歌さんって人の事誉める時とか絶対髪の毛の事言うじゃないですか」

 

 

「そうかなぁ……」

 

 

 

 さらに響は続ける

 

 

 

「謳歌さんが調ちゃんに付きまとってた頃もあったじゃないですか、背後から忍び寄って気持ち悪く笑いながら“サラサラだねぇ”っていって髪の毛に頬ずりしたじゃないですか」

 

 

「私そんな変態みたいな事したっけ……?」

 

 

 

 謳歌は本当に覚えていなかった

 

 

 

「その後大変だったんですよ?調ちゃんバリカンで自分の髪の毛刈ろうとして、私と未来と切歌ちゃんで何とか止めましたけど」

 

 

 

 響は笑いながら話す

 

 

 

「うーん、なんとなく覚えているような……」

 

 

「ていうかこの前もベンチで黒髪の子の事ベタベタ触ってましたよね?」

 

 

 

 ふと思い出したように響は言う

 

 

 

「へっ?う、うん……

(ベンチ……この前……ミラアルクちゃんの事かな……?)」

 

 

「というかよく嫌がられませんね?あんなにベタベタしてて」

 

 

 

 響が尋ねる

 

 

 

「うん……良い子だよ

(やっぱり気付いて無いのかな……)」

 

 

「もしかして、謳歌さんの事好きだったりして」

 

 

 

 響が茶化すように言う

 

 

 

「……響ちゃんはその子の事知ってる?」

 

 

 

 謳歌は尋ねる

 

 

 

「? いや、顔はよく見えませんでしたけど、多分知らないと思いますよ?少なくともああいう感じの髪の子は知らないです」

 

 

(そっか……“ああいう感じの髪”、かぁ……)

 

 

 

 謳歌は納得しながらも、心に残る焦燥感を感じずにはいられなかった

 

 

 

 

 

 

 ●

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ〜まだなんだぜ?」

 

 

 

 リディアン音楽院の理事長室に、ミラアルクは居た

 

 

 

「そう急かすでない、旅券の発行というのは時間がかかるものなんじゃ」

 

 

 

 ミラアルクの前には、リディアン音楽院理事長である風鳴訃堂の姿があった

 

 

 

「だからうちは自分の持ってるパスポートで良いって言ったんだぜ?もう1週間もたっちまうんだぜ!?」

 

 

「貴様の持っているのは本国の一般旅券じゃろうが、いくら貴様が大使の娘であっても公人ではないのじゃぞ?」

 

 

 

 それを聞いたミラアルクは大袈裟に身振りする

 

 

 

「あ〜はいはい!何度も聞いたんだぜその話」

 

 

「それゆえ貴様を公人にするため各省庁へ依頼して文書を作成しとるんじゃ、加えて公用旅券までくれてやるのだから少し待て、と何度も言っておるじゃろうが」

 

 

 

 訃堂にミラアルクは言い返す

 

 

 

「だけどうちは一刻も早くしたいっていったんだぜ!?」

 

 

 

 訃堂は一瞬沈黙するも、ミラアルクの問いに答える

 

 

 

「……貴様があやつの為に動いてくれるのはわしとしても願ってもない事じゃ、わしもどうにかしなければとは思っておったんじゃがな……」

 

 

「……先輩が居なきゃ、うちは今頃死んでたかもしれないから……」

 

 

 

 訃堂は尋ねる

 

 

 

「あれからどれ程たったかの?もう傷は目立たぬようになっておるようじゃが……」

 

 

「今年で7年になる、傷も大分違和感なくなってきたんだぜ……」

 

 

 

 

 

 

 

 7年前、劇物である苛性ソーダを積載したタンクローリーが横転する事故があった

 

 タンクローリーはガードレールと電柱で停止したが、荷台が電柱に激突した為に大量の苛性ソーダが流出した

 

 そこに運悪く居合わせたのが、在日オーストリア大使の娘、ミラアルク・クラウンシュトウンであった

 

 迫るタンクローリーに、とっさに背中を向けたものの、荷台から吹き出した大量の苛性ソーダを後頭部から臀部にかけて、大量に浴びてしまった

 

 焼けるような激しい痛みに、悲鳴をあげていたミラアルクの耳に声が聞こえてきた

 

 その場に居合わせた、謡詠吟 謳歌の声であった

 

 その内容は“動かないで!”というような内容であったとミラアルクは記憶している

 

 謳歌は荷台を見て、積載されているのが苛性ソーダなのを確認すると、付近にあった消火栓を用い、ミラアルクの周りの苛性ソーダを除去した

 

 しかし、謳歌の手持ちのメディカルキットではこれ以上の対処の仕様がなかった

 

 そんな謳歌に声をかける人物が現れた

 

 迷彩柄の服を着ている、自衛隊員のようであった

 

 肩のエンブレムを見て、謳歌は驚きと歓喜の感情を隠せずにいた

 

 肩のエンブレムにはこう書いてあった

 

 

「Central NBC Defence Unit OHMIYA」

 

 

 彼らはさいたま市大宮駐屯地所属の、対NBC兵器対処部隊である、陸上総隊直轄部隊の中央特殊武器防護隊であった

 

 謳歌は苛性ソーダが流出し、怪我人がいることを伝えた

 

 いわば毒物や細菌のスペシャリストである彼らの登場に、謳歌は安堵していた

 

 ふと顔を上げ、周囲を見渡すと、またも信じられない光景が広がっていた

 

 

 そこには、大量の緊急車両と多くの隊員がいた

 

 いくらなんでもまだ事故発生から5分もたっていないのに、こんなにも警察や消防が集結しているという事実に、謳歌はあっけにとられていた

 

 その中には、東京消防庁化学機動中隊や消防救助機動部隊、警視庁化学防護隊に機動救助隊、さらには赤十字血液運搬車、献血供給事業団の車両などが続々と集結しつつあった

 

 

 実はこの時、偶然にも事故現場から0.8kmの地点で、国民保護共同訓練における大規模テロ訓練が行われる予定であった

 

 そこに向かう一団が事故現場に通りがかったのである

 

 極めつけは、事故現場から約1.5kmの地点に患者の搬送を終え、燃料補給の為に駐機していたドクターヘリがいたのである

 

 リディアンのヘリポートを使い、ミラアルクは迅速に病院まで搬送された

 

 

 

 

 

 

「……病院で手術してる時に血が足りなくなって、先輩の血を分けてもらって、皮膚移植の時にも先輩から皮膚をもらって……」

 

 

「そうじゃったな」

 

 

 

 さらにミラアルクは続ける

 

 

 

「事故のあと塞ぎこんでたうちを、先輩は励ましてくれた……あの赤い髪のウィッグだって、先輩がくれた物……」

 

 

「…………」

 

 

「だからうちは、先輩に返さないといけない」

 

 

 

 訃堂は尋ねる

 

 

 

「それはたとえ、あやつが嫌がる事でもか?」

 

 

「……それでもいい、それで先輩が幸せになれるなら、うちは……」

 

 

 

 訃堂はさらに問う

 

 

 

「本当に良いのか?貴様はあやつの事好いておるのじゃろ?」

 

 

 

 訃堂の言葉に、ミラアルクは動きが固まってしまった

 

 

 

「待った、なんでその事知ってるんだぜ!?」

 

 

「いや……教師の間ではわりと有名な話じゃぞ?」

 

 

 

 そう訃堂に言われ、ミラアルクは驚愕する

 

 

 

「ゆっ、有名ってどのくらい……?」

 

 

「そうじゃな……貴様があやつの写真を撮り集めているとか、無人の教室で貴様があやつの体操着に顔を埋めていたとか……」

「わ──!!」

 

 

 

 訃堂を制止するミラアルク

 

 

 

「耳元で叫ぶでない!騒々しい!」

 

 

「うぅ……恥ずかしいんだぜ……」

 

 

 

 ミラアルクは、両手で顔を抑えて耳まで真っ赤になっている

 

 

 

「失礼します」

 

 

 

 ノックと同時に、風鳴弦十郎が部屋に入ってきた

 

 

 

「おぉ、出来たか」

 

 

「ミラアルク君、これを」

 

 

 

 弦十郎は、紙袋をミラアルクに手渡す

 

 

 中には、緑色のパスポートに封がされた封筒、1枚の航空券が入っていた

 

 

 

「すまない……本来教師である俺たちがやるべき事なのに……」

 

 

「やめてほしいぜ、うちが好きでやることなんだから」

 

 

 

 弦十郎とミラアルクのやり取りを見て、訃堂が続ける

 

 

 

「気を付けるのじゃぞ?いくら母国の隣国とは言え、見知らぬ土地に年若い娘が1人で赴くのだからの」

 

 

「大丈夫だぜ!うちはこう見えて強いんだぜ?」

 

 

 

 そう言うと、ミラアルクは理事長室を後にする

 

 

 

(先輩……私、頑張りますから……それがたとえ先輩が望まない事だとしても……私が、先輩を救ってみせます……)

 

 

 

 

 

 

 航空券の行き先は、 Zürich と記載されていた

 

 




遅くなってしまいました・・・

年末年始忙しくて・・・

かつ、地獄少女が面白くて・・・・

本当にごめんなさい・・・

次回はなるべく早めに書きたいです・・・・

ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・

ご質問等あれば、出来る限りお答えします

ご指摘感想等あれば何でも構いません、お寄せ下さい

新しい作品書いても良いですか・・・?(詳細は19話あとがきをご覧下さい)

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