「痛った……」
謳歌に突き飛ばされる形になった調は、尻餅をついてしまった
「何なのよもう……」
ふと辺りを見渡すと、謳歌の荷物がそのまま残されていた
いつも肌身離さず持ち歩いてるメディカルバックと、今回はかなり大きなリュックも持参していた
「珍しい……忘れて行くなんて」
謳歌は、いつも肩からメディカルバックをかけて持ち歩いてる、授業はもちろんどんな時でも持ち歩いてる為、逆に持っていないと違和感すらある程である
「もう……」
調はため息をつきながら、メディカルバックを担ぐ
「よいしょ……重っ!」
調からしてみれば、かなりの重さに感じられたが、何とか持ち上げ、今度はリュックに手をかける
「いよっ!〜!?重い!!」
リュックを持ち上げようとしたが、びくともしない
「もう!何入ってるのよ!」
「調ぇ〜?」
難儀していると、切歌がやって来た
「! 切ちゃん」
「遅いから見に来たデス、何してるデスか?」
調はリュックを指差す
「謳歌さんのデスか?ところでその謳歌さんはどこにいったデスか?」
「知らない!」
調は頬を膨らませ、そっぽを向いてしまう
「……とりあえず、これを運ぶんデスね?私も手伝うデス!」
「うん……ありがとう切ちゃん」
気をとりなおして、2人はリュックを持ち上げにかかる
『せーの!』
2人で息を合わせて持ち上げにかかるが、わずかにリュックが浮いただけであった
「重いデェス!」
「本当に何入ってるのよ……」
ため息を付く調
「本当に何が入ってるんデスかね……」
2人は顔を見合わせる
「開けてみるデスか……?」
「でっ、でも……勝手に開けるのは……」
なおも顔を見合わせる2人
「気にならないデスか……?」
「気になるけど……」
切歌はさらに調に問う
「きっと謳歌さんなら勝手に見ても許してくれるデス……」
「そうだよね……あの人怒られてるのは何度も見たことあるけど、怒ってるの見たこと無いし……」
「きっと笑って許してくれるデス……」
2人は視線をリュックに向け、ファスナーに手をかける
「どう?切ちゃん」
「う〜ん、何だか色々入ってるデス」
切歌は手に触れた物から順次取り出していく
「本が沢山あるデスね」
「どれどれ?えーと……家庭の医学に輸液の方法?それに救急の手引きに……」
中には10冊程の本が入っていた、どの本にもおびただしい付箋が付いている
「どれどれ?うーん、難しいデェス!!」
切歌は本を1冊手に取り、パラパラ見てみるが、よく分からない
「後は……滅菌アルミックシート?と消毒液にガーゼに……」
「こっちの袋が1番重いデスッ!」
切歌は、中に入っていたビニール袋を持ち上げる、今にも袋が破けてしまいそうだ
中には大量のメダルの様なものと、カラフルな模様の小さな板状のものが入っていた
「これって……」
「何してるの?」
「うわぁ!?」
「デェス!?」
突如背後から声が聞こえた
「おっ、鬼デス!鬼がいるデェス!!」
「きっ、切ちゃん落ち着いて……」
2人の目に飛び込んできたのは、おぞましい表情の鬼のような顔
「まっ、豆デス!豆をぶつけるデェス!!」
「切ちゃん!よくみて!お面よお面!!」
切歌はパニックになり豆を探す
「大変デェス!豆が無いデェス!食べられるデェス!!」
「切歌ちゃん……」
謳歌が切歌の肩を叩く
「あぁ!謳歌さん大変デス!鬼が!鬼が……?あれ?いなくなったデス!」
「ごめん……ここまで驚くとは思って無くて……」
謳歌は切歌に面を見せる
「なんだぁ〜お面だったデスかぁ、びっくりしたデェス……」
「本当ですよ、驚かせないで下さい」
2人は謳歌に不満を漏らす
「はは……ごめんごめん、ところで何してるの?」
指す方には、散乱した謳歌の荷物
「あ!ちっ、違うんデス!これには深い事情がデスね!」
慌てふためく切歌を尻目に、調が続ける
「ごめんなさい……あんまり重かったので中身が気になって……」
「あぁ、別に大丈夫だよ?逆に何入ってた?急な話だったからとりあえず詰めれるだけ詰めてきたんだけど」
謳歌はそう言うと、リュックをひっくり返す
「うわ、やっぱりちょっと整理してから持ってくれば良かったなぁ」
謳歌はぶつぶつ言いながら整理を始める
「何か手伝いますか?」
「あぁごめんね?じゃあそっちを……」
調と切歌も整理を手伝う
「これは何デスか?」
切歌は蛍光イエロー色の無線機の様なものをもっている
「あぁそれはね、PLBっていうんだけど……そうだね……簡単に言うと、個人用救難信号発信器って所かな」
「うぅ……よく分からないのデス……」
切歌が調に助けを求める
「そうね……迷子になったときにそれがあれば、場所を知らせてくれる機械だよ」
「おぉ!便利なのデス!」
「調ちゃん……流石にそれは端的すぎでは……?」
謳歌は苦笑いを浮かべている
「およ?写真が出てきたデス」
例のビニール袋を漁っていた切歌が写真を発見した
「これ……」
「この人、風鳴先生ですか?それに一緒に写ってる子……謳歌さんにクリス先輩ですよね?」
写真にはスーツを着た風鳴弦十郎と、制服姿のクリスと謳歌が写っている
「風鳴先生がスーツ着てるデス!」
「本当だ……それにしても謳歌さん何でこんな仏頂面なんです?ていうかここ、リディアンじゃないですよね?」
謳歌は困ったように答える
「皇居……」
「こうきょ?」
「皇居!?」
調は驚きながらも、質問を続ける
「皇居ってあの皇居ですか!?」
「うん……叙勲された時の写真……」
切歌が謳歌に尋ねる
「何をもらったデスか?」
「紅綬褒章……」
調は携帯を取り出し、検索をかけるとある新聞記事がヒットした
「……秋の叙勲、紅綬褒章に最年少10歳の少女が受賞、タンクローリー横転事故救助活動に尽力……」
「……それ私」
唖然としている調の横で切歌がごそごそ何かをしている
「写真と同じのがあったデス」
切歌がビニール袋から取り出したのは、まごうこと無き本物の紅綬褒章であった
「ちょ!何でこんな物こんな所に無造作に入れてるんですか!?」
「切歌ちゃん、欲しいならあげるよ?」
謳歌が切歌にそう告げる
「本当デスか?何だかよく分からないデスが、カッコいいのデ……」
「切ちゃん!!」
調から何やら不穏な気配がするのを感じ取った切歌は、慌てて手を離す
「本当は貰いたく無かったんだよねそれ……私その時ほとんど何も出来なかったし……私が居なくても助かっただろうし……」
謳歌は続ける
「それなのにみんなして貰え貰えってさ……あのウェル先生も貰った方が良いって……いつもは“君の好きにしろ”って言うクセにさ?」
そう少しいじけた様に話す謳歌に、大きく深呼吸して調は言う
「でも……こんな風に扱っちゃ駄目ですよ?ましてやあげるなんて言っちゃ……」
「うん、ごめんね……」
その時、奥から人影がやって来た
「あっ!謳歌さんこんなところに居た」
未来である
「謳歌さん、お母さんから今度の面談の件で連絡欲しいって」
「未来ちゃん……あれ?携帯電源切ったままだった」
そう言いと、いそいそと電話をかける謳歌
「もう、こんなに散らかして、早く片付けて部屋にもどるよ?」
未来はそう言うと、リュックに荷物を詰めていく
「あの……未来さん今の会話はどういう……」
調が未来に尋ねる
「へっ?あぁ、私のお母さん児童福祉司なの
それより早く片付けるよ
ほら!切歌ちゃんも手伝って?」
夜はまだ始まったばかり
明るくしたつもりですがどうでしょか・・・
次回も頑張ります・・・
質問等あれば、出来る限りお答えします
ご指摘感想等あれば何でも構いません、お寄せ下さい
新しい作品書いても良いですか・・・?(詳細は19話あとがきをご覧下さい)
-
良いよ
-
だめ