リディアン音楽院の問題児   作:dedicates545

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Naturalization

「ところで切歌ちゃん」

 

 

「何デスか?」

 

 

 

 部屋に戻りながら、謳歌は尋ねる

 

 

 

「さっきどうやって調ちゃんの事倒したの?一瞬過ぎてよく分からなかったんだけど……」

 

 

「あぁ!あれはしーきゅーしーデス」

 

 

 

 予想外の返答に、謳歌はさらに問う

 

 

 

「それって、軍隊とかが使う格闘術だよね?どうしてそんなの知ってるの……?」

 

 

「farは兵隊さんだったデス!」

 

 

 

 聞きなれない単語に、謳歌は聞き返す

 

 

 

「far?」

 

 

「ノルウェー語で“お父さん”って意味ですよ」

 

 

 

 調が答える

 

 

 

「世の中物騒だからって、教えてくれたデス」

 

 

「そうなんだ……ていうか調ちゃん、ノルウェー語分かるんだね」

 

 

 

 謳歌の問いに、調が答える

 

 

 

「……切ちゃんと初めて会ったとき、切ちゃんノルウェー語しか話せなかったので」

 

 

「調に英語を教えて貰った代わりに、ノルウェー語を私が教えたのデス!」

 

 

「そうだったんだ……って英語?日本語じゃなくて?」

 

 

 

 調が答える

 

 

 

「あぁ……そういえば言ってませんでしたね、私アメリカ産まれのアメリカ育ちなので」

 

 

「えっ!?そうなの!?」

 

 

 

 謳歌は驚愕する

 

 

 

「母がアメリカ系日本人で、父が日系アメリカ人だったので」

 

 

 

 調はそう言うと、ポケットから何かを取り出し謳歌に見せる

 

 

 

「アメリカのパスポートに……在留カード……」

 

 

「一応まだアメリカ国籍なんですよ」

 

 

 

 切歌も続ける

 

 

 

「私もまだノルウェー国籍デス!」

 

 

「そうなんだ……全然知らなかったよ」

 

 

 

 調は切り出す

 

 

 

「……実は帰化しようかと思ってて……」

 

 

「そうなんだ……でも調ちゃん達って中等科から編入したけど、もしかしてその前から日本にはいたの?」

 

 

 

 切歌が答える

 

 

 

「10歳の時に日本に来たデス」

 

 

「そっか……じゃあ今年で……」

 

 

「はい、5年になります」

 

 

 

 謳歌は、疑問をぶつける

 

 

 

「でも……ご両親はなんて言ってるの?5年たっても未成年じゃあ……」

 

 

「あぁ……私達2人とも両親は亡くなっているので」

 

 

 

 切歌が続ける

 

 

 

「morは私を産んですぐ死んでしまったデス、farは戦争に行って……どこだったデスかね?ア……アフ……忘れちゃったデスが、暑い国デス、そこで死んじゃったデス」

 

 

「私も母が兵士だったので……父は……

 “ワールドトレードセンター”って言えば謳歌さんなら分かりますかね……」

 

 

 

 謳歌は絶句していた

 

 

 

「ごっ、ごめん……2人とも、私、知らなくて……」

 

 

 

 もうすでに泣きそうな顔をしている

 

 

 

「あぁ、もう……またすぐ泣く」

 

 

 

 調は、謳歌の背中をさする

 

 

 

「だっ、大丈夫デスよ!今さらそんな事気にしないデス!だから泣かないで下さいデス!」

 

 

 

 切歌も慌てて謳歌をなだめる

 

 

 

「マム……じゃなくて、ナスターシャ先生が、もし私達が帰化を望むなら、養子縁組しても良いって言ってくれていて……」

 

 

「ちょっと迷ってるデス……」

 

 

 

 謳歌にハンカチを渡しながら、2人は言う

 

 

 

「そっか……」

 

 

「というか……もしやと思いましたけど、案の定国籍取得の条件とかさらっと知ってましたね」

 

 

 

 謳歌は、今にもこぼれ落ちそうになっていた涙を拭う

 

 

 

「そうだね……まぁいろんな本も読んだし、いろんな人から話聞いたりしてたし……後はほら、クリスが帰化した時に色々調べたりしたからね」

 

 

「クリス先輩は何で帰化したデスか?」

 

 

 

 切歌は問う

 

 

 

「私と……」

 

 

「えっ?何ですか?はっきり言って下さい!」

 

 

 

 調にせっつかれ、謳歌は答える

 

 

 

「私と一緒にずっといれるから……だって」

 

 

 

 照れながら答える謳歌

 

 

 

「わぁ……」

 

 

「こっ、こっちまで恥ずかしくなってくるのデス!」

 

 

 

 謳歌は続ける

 

 

 

「クリスは10歳の時に帰化して、15の時に永住権取得したからね」

 

 

「それじゃあクリス先輩にも相談してみようか、切ちゃん……」

 

 

「そうデスね……」

 

 

 

 そう話していると、遠くから呼ぶ声が聞こえる

 

 

 

「ちょっと、何してるんですか廊下の真ん中で!早く戻りますよ?」

 

 

「あぁ、ごめんね未来ちゃん……」

 

 

 

 謳歌達が追い付くと、未来が謳歌に尋ねる

 

 

 

「あぁそういえば、クリスちゃんが何だかすごい怒ってたんですけど、何したんです謳歌さん?」

 

 

「えっ……分かんない……」

 

 

 

 謳歌は振り向く

 

 

 

「何ですか……?私達の方向かれても知りませんよ?」

 

 

「何だか電話がどうこうって言ってましたけど」

 

 

 

 “電話”という単語を聞いたとたんに、顔が青ざめる謳歌

 

 

 

「……心当たりあるんですね?」

 

 

「はい……」

 

 

 

 そのまま部屋に到着した謳歌たち

 

 

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

 

 

 謳歌すっかり意気消沈している

 

 

 

「まだ怒られるって決まった訳じゃないデスからしっかりするデス!」

 

 

 

 部屋に入るとクリス、キャロル、エルフナイン、響の4名が居た

 

 クリスの背中に響がおぶさり、キャロルとエルフナインは膝の上に座っている

 

 

 

「いい加減離せお前ら!今から私はあのバカと話があるんだ!!」

 

 

 

 クリスが3人に怒鳴っている

 

 

 

「まぁまぁ、穏便に穏便に」

 

 

 

 響がなだめる

 

 

 

「まったくだ、温泉に来てまでお前らの痴話喧嘩聞かされる方の身にもなれ」

 

 

「誰が痴話喧嘩だ!」

 

 

 

 エルフナインも続く

 

 

 

「そうですよクリスさん、見てください、あんなに怯えています(^-^)」

 

 

 

 視線の先には、調の背にピッタリ張り付いている謳歌

 

 

 

「ちょっと!息が首にかかってくすぐったいんですけど!」

 

 

「だってぇ……」

 

 

 

 未来が発言する

 

 

 

「とにかく、何があったのか説明してくれないと……」

 

 

 

 向かって左に謳歌と調、切歌

 

 右に響とクリス、キャロルにエルフナイン

 

 中央に未来が入り話し合いの場が持たれる

 

 

 

「で?何があったんです?」

 

 

 

 未来がクリスに尋ねる

 

 

 

「謳歌、携帯見せてみろ」

 

 

「えっ……何で……?」

 

 

 

 嫌がる素振りを見せる謳歌に、未来がさとす

 

 

 

「謳歌さん、出して下さい、ここでごねてもしょうがないでしょ?」

 

 

 

 渋々携帯を取り出し、未来に渡す謳歌

 

 

 

「かしてくれ」

 

 

 

 携帯を渡されたクリスは、何の迷いもなくパスワードを入力し、携帯を開く

 

 

 

「これが証拠だ」

 

 

 

 未来は渡された携帯を見る

 

 

 

「えっと、着信履歴?えっ?不在着信52件……」

 

 

 

 携帯には大量の不在着信、うち2件は児童福祉司である未来の母からの物である

 

 

 

「えっと……相手は“風鳴さん”ってこれ、翼さんですか!?」

 

 

 

 着信は、現在アメリカで音楽活動を行っている風鳴翼からであった

 

 

 

「先輩、謳歌が鼻折ったって言ったら、一度電話してみるって言ってたんだ」

 

 

「どうして出なかったデスか?」

 

 

 

 切歌が謳歌に質問する

 

 

 

「だって……」

 

 

「だって?」

 

 

 

 調が聞く

 

 

 

「怒られるから……」

 

 

『へ?』

 

 

 

 クリスを除く一同はポカンとしている

 

 

 

「みんなは知らないかもしれないけど……風鳴さんって怒るとすごく怖いんだよ?だから電話とるのためらっちゃって……」

 

 

「そのままズルズルここまできたという訳か……」

 

 

 

 キャロルが呆れたように言う

 

 

 

「あのなぁ!お前があんまり電話でないから、先輩“もしや電話に出られない程の大怪我をしたのではないか”って、心配して私に連絡寄越したんだぞ!?」

 

 

 

 クリスが怒気を強めて言う

 

 

 

「えーっと……つまり謳歌さんが全面的に悪いと……」

 

 

 

 未来が結論を述べる

 

 

 

「直ぐに先輩に連絡しろ!いいな!?」

 

 

「そんなぁ……」

 

 

 

 なおもごねる謳歌

 

 

 

「ほらかせ、俺がかけてやるから」

 

 

「待って……心の準備が……」

 

 

 

 そんな謳歌に呆れたように調が言う

 

 

 

「もう……そんな事言ってるからいつまでたっても終わらないんですよ?」

 

 

「かけるぞ」

 

 

 

 キャロルが翼の携帯に電話をかける

 

 

 

 ♪〜

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 違和感に気付いたキャロルが、一旦電話を切る

 

 

 

「気のせいか?」

 

 

 

 キャロルがかけなおす

 

 

 

 ♪〜

 

 

 

「近くで鳴ってるよね……これ……」

 

 

「そう……だね……」

 

 

 

 一同顔を見合わせる

 

 

 

「ここから聞こえるデス!」

 

 

 

 押し入れを指差す切歌

 

 

 

「じゃ、じゃあ私が……」

 

 

 

 恐る恐る押し入れを開ける未来

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何してるんですか翼さん……」

 

 

 

 

「いや……その……何だ……すまない……」

 

 

 

 

 

 押し入れの中にはトップアーティストの風鳴翼が居た





ついに彼女がやって来ました

次回も頑張ります・・・

質問等あれば、出来る限りお答えします

ご指摘感想等あれば何でも構いません、お寄せ下さい

新しい作品書いても良いですか・・・?(詳細は19話あとがきをご覧下さい)

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