「やってしまったんだぜ……」
途方にくれるミラアルク
日本から飛行機で約13時間、ミラアルクはスイス連邦に降り立っていた
「あぁ……どうしよう……」
何故こんなにも頭を抱えているかと言うと、
チューリッヒ空港に降り立ち、当初の目的地であるジュネーブに向かうため、鉄道を利用したは良いものの
ローザンヌ行きの列車に誤って乗車してしまい
さらには、先の線路が土砂崩れにより寸断され足止めを食らってしまった
「荷物……あぁ!思い出せない……」
ミラアルクは手荷物を紛失してしまっていた
中には、携帯に財布等ほとんどの物が入っていた
「パスポートとかは有るけど……この先どうすれば……」
常々、オーストリア大使である父親から“パスポートとビザだけは絶対に肌身離さず持ち歩け”と言われていた
しかし財布も携帯も無いのではどうしようも出来なかった
「せめて……言葉が通じれば……」
スイス連邦は、26の州で構成される連邦共和制国家である
その為公用語は、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語、ラテン語とされており、州によって、公用語が異なる
ミラアルクの出身である、オーストリアの公用語はドイツ語であるが、ここローザンヌの公用語はフランス語である
「うぅ……寒いんだぜ……」
そもそも当初の予定では、日本から直接ジュネーブに渡航する予定だったのだが
大雪によりジュネーブ空港が閉鎖されてしまい、急遽チューリッヒ空港に行き先を変更し、航空券を用意した
「本当にどうしよう……」
途方にくれるミラアルク
手荷物を紛失の際は、最寄りの警察署に届け出て、最悪大使館に助けを求めることも考えたが
そもそも警察署が何処にあるか分からない
携帯さえあれば、翻訳ツールを使って意志疎通出来るのだがそれも出来ない
かといって大使館に行こうにも
日本大使館は、事実上の首都である連邦都市ベルンに、ジュネーブにも領事事務所があるが、
ここローザンヌは2つの都市の中間に位置し
とても歩いてたどり着ける距離ではなかった
寒さと空腹で、ドイツ語が通じる人を探し出す気力も体力も失っていた
“ガシャン!”
何かが倒れる音が聞こえた
「?」
ミラアルクが視線を向けると、車椅子にのっていたと思われる人が、転倒していた
「! 大丈夫ですか!?」
ミラアルクは、直ぐさま女性に駆け寄り、助け起こす、とっさに日本語で話しかけていた
「えぇ、ごめんなさい……ありがとう」
「どこか怪我とかは?してないですか?」
「えぇ、大丈夫よ、本当にありがとう」
女性はお礼を言うと、電動車椅子を操り、去っていく
「良かった…………ん?
今うち……日本語……!!」
ミラアルクは女性をおいかける
「あのー!!」
「? あなた……さっきの……」
「日本語分かるんですか!!?」
「えっ、えぇ……私は日本人だから……」
「本当ですか!?良かったぁ……」
ようやく言葉が通じる人を発見し、ミラアルクは地面にへたりこんでしまった
「そう……大変だったのね……」
女性に事情を説明する
「そしたら、私ジュネーブに住んでいるから、今からバスで帰る所なの、一緒に行きましょう」
「えっ!?良いんですか?でも……うちお金が……」
「大丈夫よ、私が払うから、着いたら領事事務所に行きましょう?」
「あっ、ありがとうございます!」
ミラアルクは、女性と共に近くの警察署に赴き、紛失届けを出したのち、高速バスでジュネーブへとむかった
「これで良し」
領事事務所で、手荷物の紛失を届け出た
「何から何までありがとうございます……」
「良いのよ全然、今日は1日フリーだったから
この後はどうするの?泊まるところは?」
「……まだ何も決まって無くて……」
「まぁ、そうよね……もし良かったらうちに泊まると良いわ」
ミラアルクにとっては、願ってもない提案だったが、さすがにそこまでしてもらう訳にはいかないと感じた
「そっ、そんな……そこまでしてもらう訳には……」
「良いのよ、遠慮しないで?それに……もうすぐバッテリーが切れちゃいそうなの、だから押していって貰えると助かるの、ね?」
「分かりました……何から何までありがとうございます」
ミラアルクは、女性が住む家にむかう
〔ショーカ、今帰りかい?荷物を預かってるよ〕
女性の住むマンションに到着した所、フロントで初老の男性に呼び止められる
恐らくここの管理人か何かであろう
〔ありがとう、多分メンテナンスに出してた義足が戻って来たんだわ〕
〔そうかい、で?そちらのお嬢さんは?〕
おそらくフランス語であろう、ミラアルクには会話の内容が分からない
〔えぇ、手荷物を無くしちゃったみたいで……今日泊めようと思って〕
〔そうかい……本当にあんたはそういう事が好きだね〕
〔まぁ、職業病みたいなものかしらね〕
ひとしきり談笑すると、男性はミラアルクに袋を手渡す
「#@$¥=+~;ー゜※‥」
「えっ?あっ、はい……」
男性が何を言ったか分からない、女性に助けを求める
「あぁ、“これ食べて”って言ってるのよ」
「あっ……メッ、メルシー……」
男性は笑顔を返すと、去って行った
「私たちも行きましょう」
「はっ、はい」
女性の部屋に到着する
「お風呂は……あなた出身は日本かしら?」
「いえ、今は日本に住んでますけど、出身はオーストリアなので使い方は分かります」
「そう、なら大丈夫ね、今からお風呂沸かすから、お先にどうぞ」
ミラアルクは入浴を終え、部屋に戻る
「ごめんなさい、そこの棚にあるドライバー取って貰えないかしら?」
「あっ、はい」
ミラアルクは棚のドライバーを取りに向かう、そこには1枚の写真が飾られていた
「? どうかした?」
「あっ、いえ……」
「……娘がいるの、そうね……丁度あなたと同じ位かしら」
心なしか、もの憂いげな表情に見える
そして、ミラアルクはあるものを発見する
「これ……」
「あぁ、それはまだ現場に居た頃に使っていた物よ、義足になってからは本部勤務になったから、使っていないの」
よく見覚えが有るものだった、そこには特徴的な“人”の字のような赤いエンブレムと
Médecins Sans Frontières
の字が刻印されている
そしてその物から、手紙の様なものが滑り落ちる
「あっ……」
ミラアルクが拾い上げると、その手紙には
“おかあさんへ”
と、拙い字で書かれていた
「あら、懐かしいものが出てきたわね……」
女性はそう言うと、手紙へと視線を向ける
「娘がね……くれた物なの、もう随分と経ってしまったけれど……」
ミラアルクは恐る恐る手紙の差出人を確認する
“おうかより”
そう書かれていた
「あの……!」
「? 何かしら?」
ミラアルクは、かなりの鼓動の高鳴りと緊張を感じていた
「お名前……!お名前伺っても良いですか……?」
「あら、そういえばまだ名乗っていなかったわね」
ミラアルクは“ゴクリ”と息をのむ
「私は、ショーカ、謡詠吟 唱歌って言うの、よろしくね」
「……先輩の、お母……さん……?」
目的の人物との思わぬ邂逅に、只ただ呆然とするしかなかった
齟齬が無いよう色々調べてはいますが・・・
何かおかしな部分があればお教え下さい・・・
次回も頑張ります・・・
ご質問等あれば、出来る限りお答えします
ご指摘ご感想等ありました、何でも構いません、お寄せ下さい