「んー……」
眠り眼をこすりながら、謳歌は目覚める
「重い……」
アダムとの会話の後、部屋に戻った謳歌は妙な心細さから、クリスの布団に潜り込んでいた
しかし目覚めて見ると、左側にはクリスが、右側には響がそれぞれくっついていた
そして、腹部には切歌が頭をのせ、スヤスヤと寝息を立て寝ていた
「動けない……」
首をグリグリと動かしながら、辺りを見回す
「流石にみんな寝てるかぁ……」
それもそのはず、時刻は午前5時を少し回った所
ふと、響に目をやる
「こんなにまじまじと顔見たの久しぶりだなぁ……」
いつもは仮面越しに響を見るため、こんなにも近くで顔を見る機会がなかった
「……」
“ツンツン”
(おぉ……!意外に柔らかい……)
何を思ったのか、謳歌は指で響のほっぺたを触る
そしてそのまま指を唇に運び、なぞる
(ほぉ!ぷにぷに!)
「んー……?」
(ヤバッ!)
慌てて手を離す謳歌
しかし、響はまたスースーと寝息を立てる
(はぁ……危なかった……)
胸を撫で下ろし、天井を見上げる謳歌
(ん?)
視界の上、頭の方に映る“なにか”
「うわぁ!!?」
思わず大声を上げる謳歌
「しー!」
そこには、人差し指を口に当てる調の姿があった
「しっ、調ちゃん……!?良かったぁ……座敷わらしかなんかかと思った……」
「なんです?子供っぽいって言いたいんですか?」
「いっ、いやぁ……そんな訳無いじゃない……あはは……」
朝からどことなくご機嫌斜めに見える
「早起きだね……」
「はい……まぁ、いつもこれくらいに起きるので……」
「そう……私もなんだよなぁ……」
そう言うと、先ほど飛び起きた反動で、3人が体から離れていることに気が付く
「しかし起きないなぁ……」
そう言いながら、クリスには枕を与え代わりにする
切歌は今度は響の足に絡み付きながら寝ている
響には掛け布団を与えた
「エルフナインも起きてますよ」
調が指を指すとニコニコのエルフナインが携帯片手にこちらへやってくる
「おはようエルフナインちゃん」
「おはようございます、謳歌さん(^-^)」
すると、謳歌に携帯を見せるエルフナイン
「綺麗に撮れました(^-^)」
それは、先程の謳歌の行動が刻名に記録された動画
「削除っと……」
「あぁ!ひどいです謳歌さん(`´)」
「エルフナインちゃん……世の中には残らない方が良いものも有るんだよ……」
そう言う謳歌に、調は言う
「大丈夫です、すでに未来さんに送信済みです」
「何も大丈夫じゃないよ!?」
思わず大声を出す謳歌
それに対し、調とエルフナインが非難の表情で口に人差し指を当てる
『しー!』
「あぁ……ごめんなさい……」
恐る恐る尋ねる謳歌
「ところで……その未来ちゃんは……?」
「あぁ、多分ジョギングじゃないかと」
思わず聞き返す謳歌
「ジョギング!?」
「日課らしいですよ(^-^)?」
「へぇ……そうなんだ……」
そう言っていると、謳歌の携帯に通知が入る
「うっ……噂をすれば……」
未来からである
【外、出れますか?】
シンプルなだけに不気味な1文である
「命は大切にしてくだい」
「謳歌さん、お大事に(>_<)」
「ちょっと!縁起でも無いこと言わないでよ!?」
朝のひんやりした空気が顔に刺さる
外に出ると、未来らしき人物の後ろ姿が見えた
「未来ちゃん?おはよう……」
「…………」
しかし、返答が無い
「未来ちゃーん……?おーい……」
謳歌が肩に手をかけた瞬間だった
「うわぁ!?」
突如首がぐりんと回り、鬼が顔を向ける
「ふふ、可笑しい、そんなに驚くなんて」
それは般若の面を付けた未来であった
「未来ちゃん……びっっくりしたぁ〜……」
力が抜ける謳歌
「響をベタベタさわった罰です」
「いっ、いやぁ……あの……その……」
しどろもどろしている謳歌
「ふふっ、そんなにびくびくしないで下さいよ?別に怒ってる訳じゃないんですから」
「へっ……?そうなの……?」
聞き返す謳歌
「もう、皆さん私を何だと思ってるんですか?調ちゃんやエルフナインちゃんも!」
少し拗ねたように話す未来、携帯のメッセージには
《未来さん、きっと悪気はなかったんです》
《早まっちゃダメです\(>_<)/》
そんな内容であった
「じゃあ……何で呼んだの……?」
「……昨日の夜、響と何してたんですか?」
「……へ?」
明らかに先程とは声のトーンが違う
「だから!昨日の夜、友里先生の部屋で2人っきりで何してたのかって聞いてるんです!!」
大声で怒鳴る未来、謳歌の記憶の中で、ここまで大声を上げる未来は見たことがなかった
「みっ、未来ちゃん?何か誤解してるよ……あれはただ……」
「“ただ”何です?」
未来が詰め寄る
「そっ、それは……言えない……」
謳歌は、響が未来に事情を知らせたくない事は、聞かずとも分かっていた
「ふふっ……響もそうでしたよ……“誤解している”だけど“理由は話せない”」
「未来ちゃん……本当に私と響ちゃんは何も……」
謳歌がさとす
「どうして!?ならどうして響は何も言ってくれないんですか!?」
「そっ、それは……」
「……親友だと思ってたのに、そう思ってたのは私だけ?」
「そんな事ないよ!響ちゃんだって未来ちゃんの事……」
「じゃあ!どうして何も言ってくれないんですか!!
私知っているんですよ!?いつも2人でこそこそ会ってるの!どうしてはぐらかすんですか!?どうして……」
未来の言葉は次第に嗚咽がまじり始めていた
「未来ちゃん……本当に何も無いから……ね……?」
そう言いながら未来に手を伸ばす謳歌、未来はそれを払いのける
「やめて!!」
「未来ちゃん!!」
そのまま未来は走り去ってしまった
「未来ちゃん……」
未来は泣いていた
本当はあんなことするつもりは無かったのに
「もう嫌……」
未来には分かっていた、響と謳歌には何も無いことも、謳歌の言葉に偽りが無いことも
「私……最低……」
未来は泣き続けた