正直心底驚いている
何せあの未来である
誰にでも分け隔てなく接し、慈愛に満ちた笑顔を見せるあの未来を、泣かせてしまった
謳歌は呆然と立ち尽くしている
そして、力なくベンチに腰を落とす
「どうして••私はいつもいつも•••」
今回に関しては相当堪えてしまった
知らず知らずに相当傷つけてしまった事は明白だ
「はぁ••••」
頭を抱え、うなだれる
「いや、今回はお前何も悪くなくね?」
隣から声が聞こえてくる
「••••なに?」
うなだれたまま問う謳歌
「あーあー!メソメソメソメソしてんじゃねーよ、お前のメソメソでここら一帯梅雨入りするわ!」
「••••••臨・兵・闘・者・皆••••••」
「おぉい!いきなり九字を切るなこのやろう!」
謳歌はムスっとしながらそっぽを向く
「おっ?なになに?イライラしてんの?」
顔を覗き込み煽る
「••••何さ、最近居なかったくせに、てっきり奪衣婆にでもなったのかと思ってたのに•••」
「誰が奪衣婆だこのやろう、もし奪衣婆になんかなったらその時はお前も道連れにして懸衣翁にしてやるよ」
なおも続ける
「大体居なかったんじゃなくお前が気づいてないだけだろうが」
「•••うるさい」
不満げにもらす
「•••用がないならどっか行って」
「だからぁ、さっきのはあの女が勝手に勘違いして勝手に癇癪おこしてお前に八つ当たりしてきただけだろぉがって言ってんの」
「違う、私がはっきりしないのがいけなかったから」
大きなため息
「はぁ〜••、はっきりもくそもねーだろあれは、お前はいっつもそうだよなぁ、全部自分のせいにしてよ?なんだ?かまって欲しいのか?ん?」
「•••別にそんなんじゃない」
謳歌は眉間にシワを寄せ、押し殺したように答える
「他の奴らもそうだ、まるでお前を分かっちゃいねぇ、クリスくらいだなお前を理解してんのは、後の奴らはクソばっかりだ」
「•••いい加減にして」
小さくそう嘆く謳歌
「なぁ、だからさ、久々に遊ぼうぜ?あんなゴミみたいな連中とつるむよりよっぽど楽し••」
「うるさい!!いい加減にして!!」
朝の澄んだ空気を切り裂くように、謳歌の絶叫がこだまする
「なんでいつもそうなの!?悪口ばっかり!私の大切な人達にこれ以上非道いこと言わないでよ!!」
「本当のことだろうが」
うつむいたまま叫ぶ謳歌に、怒気を含んだ声が返ってくる
「うるさい!うるさい!もう聞きたくない!お願いだから今すぐ私の前から消えて!」
「チッ••••そーかよ!あんなゴミ連中の方が大切かよ••お望みどうり消えてやるよクソが!」
●
(•••まずい、完全にタイミング逃した••)
キャロルは謳歌の背後で息を殺している
寝起きでトイレに行った帰りに怒鳴り声が聞こえてきたので、ふと目をやると未来と謳歌の口論を目撃したのである
(何だってんだ一体•••小日向が怒鳴ってるだけでも驚いたってのにコイツもか•••)
(大体こいつは一体何にそんなに怒ってる••誰かと話してるのかと思ったが•••)
キャロルには、最初から最後まで謳歌1人の姿しか見えていない
(このままでも埒が明かないしな•••よし!)
●
「••••おい、大丈夫か?」
キャロルの問いかけに‘ハッ’!と振り返る謳歌
「きゃ、キャロルちゃん••ううん、何でも••なんでも••ない••••」
言い終わる前に、謳歌の目からは大粒の涙がこぼれ落ちる
「よしよし•••無理するな、少し落ち着け••な?」
謳歌の頭を優しく撫でるキャロル
「何が有ったんだよ•••」
謳歌の頭を撫でつつ尋ねるキャロル
「みっ、未来ちゃんっ、に、ひどっ、ひどい、こと、しちゃっ、しちゃって、そしたっ、ら、ことっ、ことねがっ、でてきて、みんなのことっ、わるっ、わるくいうから、きえっ、きえろって、ことねにっ」
ボロボロ泣きながら、嗚咽まじりに話す謳歌
(えーっと•••つまり小日向とケンカ?して、コトネ?コトネって誰だよ••そのコトネが酷い事言ってきて自分も酷い言葉を言ってしまったと••••ん?まてまて、コイツ今の今までずっと1人だったよな•••小日向が飛び出してからは確実に1人のハズなんだが•••)
「えーっと•••こんな時に悪いんだがコトネって誰だ?電話でもしてたのか•••?」
謳歌は呼吸を整えながら、答える
「あぁ•••そうだよね•••ごめんね•••えっと•••琴音はね•••」
そこまで言い終えると、‘ハッ’としたように携帯を取り出し、画面を一瞥する謳歌
その手から携帯が滑りおちる
カシャン!!
「おっおい•••落ちたぞ•••」
携帯を拾い上げながら、謳歌の顔を見るキャロル
謳歌は顔面蒼白であった
「私•••なんてことを•••」
うなだれながら、つぶやく謳歌
「おっおい•••何がどうしたんだよ•••」
謳歌は続ける
「今日なの•••」
「何が今日なんだよ•••」
謳歌は続ける まるで救いを求めるように
「10年前の今日なの•••琴音が亡くなったのは••••」
キャロルは、背筋が寒くなるのを感じた
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