キャロルは動揺していた
死んだ?10年前の今日?
「おっ、おい•••どういう事だよ•••」
キャロルは謳歌に恐る恐るたずねる
「ううん、何でもない!」
謳歌は立ち上がると、歩き始める
「おっ、おい!何でもない訳ないだろ!」
キャロルは謳歌を呼び止めるように言う
「もう、何でも無いったら〜」
「うわ!?ちょ、降ろせ!」
謳歌はキャロルを頭上に持ち上げる
「はーい飛行機〜」
「たっ、高い高い!!降ろせ!」
キャロルを降ろす謳歌
「そーだ!キャロルちゃん、未来ちゃん見てない?」
「小日向ならさっきあっちに行ったが•••」
訝しむキャロル、謳歌はそれに気づいたのか、聞いてもいないのに話しだす
「いやぁ〜実は未来ちゃんと喧嘩しちゃってさ〜謝んないといけないからさ〜」
「あの小日向と喧嘩か?」
さらに訝しむキャロル
「う〜ん私が悪いんだけどさ〜」
「それだけ目真っ赤にして何言ってる•••お前は誰と喋ってた、琴音って一体誰だ、言え!」
問い詰めるように話すキャロル
キャロルは何か腹の底からこみ上げるような恐怖を感じていた
今ここで繋ぎ止めておかなければ、暗い闇の底へ、謳歌が引きずり込まれていってしまう
そんな感じがした
「分かんない••」
謳歌が口を開く
「よく分からないから••話せない•••」
「良い、断片的でも良いから話せ•••?」
キャロルは気づく
さっきまでは気持ちの良い程晴れていた
確かに晴れていたのだ
「なっ、何だ••?」
木々はざわめき風が吹き始めた
キャロルは無意識に、父に貰ったルーン文字が刻印されたお守りに手を伸ばしていた
「えー!?何してんのさ!」
突如として聞こえる声
声の主は謳歌
「よりによって!神奈備のお膝元で何やってんのさ!」
謳歌は虚空に向かい話している
「‘ヤバイわw’じゃないから!もう!」
慌てるようにして、謳歌はそのまま館内に消えていく
1人取り残されたキャロル
「はっ?えっ?おっおい!?」
慌てて後を追いかける、キャロルは追いかけているつもりだ
本当に追いかけているつもりだったのだ
「あれ••••何でだ•••」
確かに謳歌を追いかけ、後を追っていた
しかし、館内に入る直前に、気づくと元の場所に立っていた
「くそ!何なんだ••!」
何度か繰り返してみたが、結果は同じ
元いた場所に戻されてしまう
「何なんだよ•••一体•••」
明らかな異常事態に、困惑するキャロル
「キャロルちゃーん!」
声が聞こえる
謳歌の声だ
「なっ、何だ•••コスプレ•••?」
キャロルがそう表現したもの
それは、巫女装束を着た謳歌の姿であった
「大丈夫!?キャロルちゃん、とりあえずこれ!」
「おっ、おう•••」
反射的に謳歌から物を受け取るキャロル
それは御札のような物
「どう?」
「いや•••どう?って聞かれても•••」
そう言いながら謳歌の方を向くと、謳歌はまた虚空に顔を向けている
「本当?やっぱり効くんだなぁ鷺ノ宮さんの護符•••」
空に向かって答えた謳歌は、キャロルの方を向き1言
「キャロルちゃん、終わるまでじっとしててね」
謳歌はそう言うと、手に持っていた鈴のような物を鳴らしながら、踊りを舞い始めた
何やら歌も口ずさんでいるようだ
ポカーンとしながらキャロルは踊りを眺めていた
そしてふと気が付く
いつの間にやら、辺りは最初の時のように晴れ渡り、淀んだ空気も無くなっていた
「どう?大丈夫そ?」
また虚空に向かって話す謳歌
「はぁ!良かったぁ!もう勘弁してよ〜!」
そう言うと、地面にへたり込む謳歌
「おい••何が何やら訳がわからん、説明しろ」
「あぁ••ごめんね?琴音が色々やらかしたみたいでさ」
キャロルはもうこの際、琴音という人物については良いとして、とりあえず話を聞くことにした
「ここって神奈備、えーっと••つまりそういう霊的な力みたいなのが濃い所何だけどね?うーん•••例えばフィンスコーゲンみたいなとことかね?」
フィンスコーゲンは、ノルウェーの有名な心霊スポットであるが、なぜ謳歌がそんなことを知っているのか、等とキャロルは突っ込まない
キャロルは、聞けば何でも答えが返ってくる人間辞書として、謳歌を認識するようにしている
「まぁ、ここがそういう場所だって事は理解したが•••何がどうなったらあんな事になる•••今思い出しただけでも悪寒がする•••」
キャロルは二の腕をさすりながら‘ブルッ’と震える
何せあんな経験は人生で初めてだ
「えっと••かいつまんで説明するとね?ここって周りは山に囲まれてるじゃない?
それぞれの山には祠があって、それで何かしらの結界が組まれてたらしいんだけど•••
イライラした琴音が祠の1つにひびを入れちゃったみたいで••
ちょっと良くないものが染み出してきたって感じかな•••」
「考えうる最悪の自体だな•••」
謳歌は続ける
「あぁでもね?キャロルちゃんがここから出れなくなってたのはその’良くないもの‘じゃなく、ここに昔からいる土着の精霊やらなんやらがこの状況をなんとかしたくて集まってたみたい」
「みたい?」
「あぁ、自慢じゃ無いけど私そういうの琴音以外視れないんだ」
色々ツッコミどころ満載だか、ここはぐっと我慢する
「それで舞を奉納して、精霊たちになんとかしてもらったって訳
あとはこの土地の管理者たちがなんとかするだろうから」
キャロルは大体理解した
「まぁ、大体分かったが••お前こんなものも作れるのか?」
キャロルは、手に持っているお札をしみじみと眺める
ほのかに温かい気がするが、恐らく気のせいだろう
「違う違う、いくらなんでも私じゃ作れないよそんな代物、私じゃただの紙切れになっちゃうよ」
苦笑いしながら答える謳歌
「それは鷺ノ宮さんがつくった護符だからね、効果は折り紙付きだよ」
「で?誰だそいつは」
段々と慣れてきた
的確なタイミングで質問を入れる
謳歌と話していると、自分が賢くなったような気分になる
「あぁごめんごめん、琴音が死んだ後に霊的な状態で姿を見せてさ、あんまりびっくりしたから思わずウェル先生に喋っちゃって••
この後どうなるか、大体予想つくでしょ?」
苦笑いを浮かべながら話す謳歌
「教師たちは大あらわ、あれやこれやとしているうちに知り合った
こんなところか?」
「まぁ大筋としては間違ってないね、
まずウェル先生や風鳴先生なんかは、PTSDを疑ってカウンセリングやらなんやら色々したんだよね
で、この件で私のカウンセリング担当になったのが未来ちゃんのお母さんで児童相談所に勤めてた未歩さん
で、本当に霊的な物が原因の線を疑った訃堂のおじいちゃん何かは、人脈をフル活用してそういうのに詳しい人達を学院に呼んで私に引き合わせてくれたの
何を気遣ったのか、全員年の近い女の子だったなぁ、離れてても高校生くらいだったかな」
「で?これは集められた奴らの中の1人が作ったものだと」
お札、もとい護符をしげしげと見つめながらキャロルは言う
「うん、そういう魔除けとか退魔とかの関係は鷺ノ宮さん谷山さんに原さんから教えてもらったし
舞いに関しては鈴原さんに雨宿さん、宮水さんに
もし憑依とか、魂が抜けたとか、そういう時の心得は、駒玖珠さんと一橋さん
神具とかの扱い方は三枝さん達
あぁ、あと稗田さんが日瑠子殿下連れてきた時は驚いたなぁ」
「日瑠子殿下って今の天皇の事か?」
「うん、まぁ私があった時はまだ4歳だったから内親王だし、今も綾宮さまが摂政についてるけどね?
あと私はクセで言っちゃうけど日瑠子殿下は今天皇だから正しくは陛下だからね?キャロルちゃん」
(でた、こいつの悪いクセだ、聞いてもないのに色々説明し過ぎなんだ、いつもは必要最低限しか説明しない癖に、どうでもいい事を話し過ぎなんだ、こういう時にサッと本題を述べた試しがない)
段々と謳歌を理解しつつあるキャロル
さて、どう軌道修正した物かと思慮にふける
(てか若いな•••コイツの2つ下って事はまだ15か••
ん?ていうかオレの国の第2王子もそれくらいだったな••)
「キャロルちゃん?聞いてる?」
「ん?すまん、聞いてなかった•••」
(オレまでこんなんでどうする•••)
自らの頬を軽くペチンと叩いて、気を取り直すキャロル
「あと最後に剣術、これは来栖川さんに姫宮さん、草壁さんに衛藤さんに習ったよ」
「剣術?なんで剣術なんだよ」
「うーん、九字切り護身法や護符が効かなかった時の為っていわれてさ、鷺ノ宮さんの護符が効かないのは相当危険な時なんだけど
大幣(おおぬさ)や神楽鈴じゃ結界や祝詞を正確にしないといけないから、刀にするって皆で決めたらしいけど••」
謳歌は懐から小刀を取り出す
「なんか小さいな•••」
「流石に太刀は私振るえないよ、それに太刀より小刀くらいの方が慣れてない人にはいいんだって言ってたし
衛藤さんは流石現役の特祭隊だけあったけど、草壁さんはそれはもうとんでもなく強かったね
なんか実家から持ち出した刀とか言ってて衛藤さんが興奮しながら草壁さんの刀見てたなぁ
来栖川さんと姫宮さんは衛藤さんと草壁さん程ではないけど強かったけど、なんか付き合ってるとかで事あるごとにイチャイチャしてたなぁ、特に姫宮さん
あぁ、あと••••」
「だぁ!話がなげぇんだよお前は!」
キャロルも同調する
「そうだ!いつもそれくらい饒舌にしろ!」
「そーだ!そーだ!」
さらに続ける
「ベラベラしないで簡潔に話せ!」
「そうだ!そうだ!•••••ん?」
キャロルは気付く
いま自分は誰に賛同しているんだ?と
恐る恐る頭上を向いてみる
「••うわぁぁ!!」
宙に人が浮いている
思わず尻餅をつくキャロル
「え?え?何?キャロルちゃん見えてるの?」
「へぇ、お前以外じゃ初じゃね?」
そのままキャロルを覗き込みながら、ふよふよと謳歌の頭上に移動するそれ
「うっ、浮いてる!浮いてる!」
口をパクパクさせながら、キャロルは言う
「ははっ!なんかコイみてーでおもしれーな!」
「そっか•••視えてるならいっか•••
キャロルちゃん、紹介するよ」
そう言いながら、空を一瞥する謳歌
「え?何?俺すんの?」
「視えてるし聞こえてるなら自分でやってよ」
「それもそーか」
そう言うと、フヨフヨと宙を移動しながらキャロルの顔の前に降り立つそれ
「俺は弓谷琴音、見たとおり死んでっからそんなに気ぃ使わなくていいぞ
•••おーい」
「どうしたの?」
指をさす琴音
「あちゃー•••気失ってる•••」
まぁ、本筋には関わらないですが、名前だけ登場ということで
是非感想お寄せ下さい
頑張ります