リディアン音楽院の問題児   作:dedicates545

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いつも超絶不定期更新なこの作品を読んで頂きありがとうございます





ずっと昔、世界が今みたいになるずっと前のこと
この街の谷底に羽のはえた悪魔が棲みつきました
悪魔は炎を吐き大地を揺らし人々を苦しめました
そしてついに砦に住んでいた乙女たちをさらい
地下の迷宮に閉じ込めますけれど娘たちはあきらめず
天主さまから授かった金の角笛で呼び合い迷宮を脱出すると
巨大な蜘蛛のちからを借りて悪魔を倒しその首を討ち取ります
するとその首は激しく炎を吹き上げますこのままでは上にある街は全て燃えてしまう
娘たちは吹き出る炎をおさえるために順番に悪魔の首を抱き続けました
燃えさかる悪魔の首と娘たちに村人たちは毎日水をかけ火は一年経ってようやく消えました
以来村を救った娘たちの霊を慰めるため水かけ祭りを始めたのです


Concordia

「未来ちゃん•••?」

 

 

 

 写真に写っているのは、リディアンの校門の前で笑顔を見せる小日向未来の姿

 

 

 

「知ってるんですか?」

 

 

「いや••知ってるというか、隣のクラスで同級生ですうち•••」

 

 

 

 双方驚いたようである

 

 

 

「未来は、元気にしていますか?最近帰国出来てい無くて、本来であれば明日帰国する予定だったんですが、それも難しそうですね……」

 

 

「はい……元気だと思います……今は旅行に行ってると思います、温泉に行くとかで……」

 

 

 

 正直な話、ミラアルクはほとんど未来とは接点が無い

 

 

 クラスも違えば学科も違う、何より響が未来と親しくなったのは、ミラアルクが響と疎遠になった後である

 

 

 

「あの、お名前をお伺いしても?」

 

 

 

 唱歌が切り出す

 

 

 

「あぁ、そうですね、小日向奏一(こひなたそういち)と言います、先程も少しお話ししましたが、元陸上自衛隊員で今は製薬会社に勤めています」

 

 

「謡詠吟唱歌です、国境なき医師団で活動しています」

 

 

「あっ••えっと、ミラアルク•クランシュトウンです、えっと••オーストリア出身ですけど、今は日本で暮らしています」

 

 

 

 各々軽く自己紹介をした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もうどれ位の時間が経っただろうか

 

 

 病院の待合室のベンチに座りながら、ミラアルクは思う

 

 

 フランス政府は大統領による緊急会見を開き、各所で起こっている事件は、ジハーディストによるテロであると述べた

 

 

 大統領は国家非常事態を宣言し、国境の封鎖を行うとした

 

 

 加えて、‘フランスはテロリストとの戦争に突入した’と、首相が発言、テロに対する対決姿勢を表明した

 

 

 

 

 唱歌は腕を撃たれ出血が酷く、包帯を巻く程度では完全に止血出来ずにいた

 

 

 唱歌曰く‘貫通しているから大丈夫’などと言うものの痛い物は痛いだろうに

 

 

 それに、救急隊が到着するまでの間騒ぎに遭遇した

 

 

 大柄な男性が、赤ん坊を抱えた女性に詰め寄っている

 

 

 フランス語だったので会話は分からなかったが、男性は女性を宿のエントランスから追い出そうとしているように見て取れた

 

 

 そして、唱歌が仲裁に入った

 

 

「何をしてるんですか!赤ん坊がいるんですよ!?」

 

 

 

 女性と男性の間に割って入る唱歌

 

 

 

「誰だあんた!引っ込んでろ!」

 

 

 

 なおも女性に詰め寄る男性

 

 

 唱歌も一歩もひかない

 

 

 

「こいつの頭を見ろ!テロリストの仲間に決まってやがる!」

 

 

 

 女性はイスラムの女性が身につける被り物を頭にしていた

 

 

 

「落ち着いてください!ジハーディストとムスリムの人達は無関係よ!仮にこの人がスカーフ禁止法に反していたとしても、それを裁くのは今ではないし、貴方でもありません!」

 

 

 

 唱歌は必死に男性を抑えてている

 

 

 そして赤ん坊を抱えた女性が小さな悲鳴をあげた

 

 

 そして今にも女性に殴りかかろうとしていた男性も

‘ぎょっ’としたように力を緩め、後ずさる

 

 

 唱歌の二の腕からは、まるで蛇口から水が出るようにボタボタと血が落ちていた

 

 

 

「いけない!」

 

 

 

 そう叫んだのは奏一

 

 

 そして唱歌はそのまま膝から崩れ落ちた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唱歌が倒れる瞬間、奏一がなんとか唱歌を受け止める事が出来たおかげで頭部を強打せずに済んだのは不幸中の幸いだろう

 

 

 唱歌は出血性ショック一歩手前の危険な状態であったが、あの後直ぐに救急隊が駆けつけてくれたおかげで、大事には至らなかった

 

 

 

 唱歌の血液型は、RHマイナスのAB型という珍しい血液型であったので、直ぐに輸血が出来なかったのだが、直後に自力で意識を取り戻すという驚異的な回復をみせていた

 

 

 ちなみに言うと、謳歌もRHマイナスのAB型である

 

 

 

 

 

 

「飲むかい?」

 

 

 

 ぼーっとしていたミラアルクは肩を‘ビクッ’と震わせる

 

 

 隣には、飲み物を手にした奏一の姿があった

 

 

 

「あ••ありがとうございます」

 

 

「先程意識が戻ったそうです、本当に良かった」

 

 

「はい••本当に•••」

 

 

 

 しばしの沈黙の後、奏一は語りかける

 

 

 

「•••何か言いたそうだ、私で良ければ話し相手になるが••」

 

 

 

 ミラアルクは少し驚いたようにして、奏一に顔を向ける

 

 

 

「すいません••そんなに顔に出てましたか•••?」

 

 

「まぁ人の親だからね、それくらい分かるさ•••と、言いたい所だけど完全に感さ、でも当たって良かったよ、我慢は1番いけないよ?」

 

 

「•••••••」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よく‘何人か’と聞かれる

 

 

 決まって自分はこう答える’オーストリア出身‘と

 

 

 なぜオーストリア人と言わないかと言われれば、よく分からないのもあるが、あまり‘〜人’という例えは好きではないからだ

 

 

 そもそも父は東ドイツからの亡命市民だ

 

 

 ピクニック事件

 

 

 父はオーストリアを経由して、西ドイツに亡命した

 

 

 西ドイツで母と出会った

 

 

 母は楽団の専属歌手だった

 

 

 完全に父の一目惚れだったそうだ

 

 

 母はオーストリア=ハンガリー帝国時代から続く名家の出だが、歌手の夢を反対され家を飛び出し、ここ西ドイツで歌手をしていた

 

 

 ベルリンの壁が解放され、東西ドイツの統一がなされると同時期に母の父が倒れたとの知らせが届いた

 

 

 母の父、私から見れば祖父に当たる人物だが、母の夢を反対した事を後悔していたようで、母の消息をずっと追っていたようだ

 

 

 最初こそ意地を張っていた母も、父の説得で帰国することになった 

 

 

 祖父は一命こそ取り留めたが、寝たきりの生活を送ることになった

 

 

 その際祖父は父に婿にならないかと持ちかけた

 

 

 もう既に家族を失っていた父は、母と相談し婿に入った

 

 

 数年後に祖父はこの世を去った

 

 

 祖母も後を追うように亡くなった

 

 

 そして父が家を継いだ

 

 

 母の意向もあったが、祖父と祖母の遺言にも父を当主に、と書かれていたそうだ

 

 

 そして父は外交官になった

 

 

 

 

 父は私に様々な事を教えてくれた

 

 

 なぜリンゴは甘いのか

 

 

 雨はなぜ降るのか

 

 

 歳を重ねるにつれ、父は逆に私に質問してくるようになった

 

 

 なぜ昼と夜があるのか

 

 

 なぜ悲しくなるのか

 

 

 答えが明確なものもあるが、そうでないものもあった

 

 

 外交官という仕事上、家を開けている方がはるかに多かったが手紙で質問が届き、それを手紙で回答し、帰ってきたときに答え合わせをするという事を繰り返していた

 

 

 自分に設けたルールとして、‘分からない‘とは書かないことにしていたが、明確に答えられない、もとい自分の考えを述べられない問が1つだけあった

 

 

 

 

 人はなぜ争うのか

 

 

 

 

 以前、なんの気無しに先輩に尋ねた事があった

 

 

 

「うーん、例えばさ、ミラアルクちゃんは写真がすきだけど、写真が嫌いな人の事ってどれ位知ってる?」

 

 

「いや••全然知らないですけど•••」

 

 

「じゃあさ、写真が嫌いな人がAちゃん、好きな人をBちゃんとして、ミラアルクちゃんの知り合い、そうだね••顔見知りくらいにしておこうか、その2人が言い争いをしていました、理由は分かりません、どっちが悪いと思う?」

 

 

「いや••理由が分かんないと•••なんとなくで良いならBちゃんかな••あくまで今の時点ではですけど•••」

 

 

「そう それだよ、人間ってさ、自分の嫌いなものだったり、自分の好きな物が嫌いな人の事ってよく知らない人の方が圧倒的に多いと思うんだよね

 

 でも、よく知らないのにただ嫌いとか、自分の考えに合わない人とかって嫌いになるんだよね

 

 これが最終的にどうなると思う?」

 

 

「え••?喧嘩••とかですかね••」

 

 

「そうだね、それも正解だよね、でもね、最終的にはその人を殺そうとするんだよ、人間って

 

 でもただ殺される人なんて居ないよね?逃げたり、抵抗する人もいるだろうけど、殺そうとしてきた人を殺すって人もいるんだよ

 

 これが、個人から国同士になるとすると、どうなる?」

 

 

「戦争•••ですか•••?」

 

 

「そう、正解

 

 国じゃなくても、人種の違いや宗教の違いなんかでも争いって起こってるんだよね、今私達がこうして話している間にもね

 

 そして、なぜ争っているのかも分からなくなってくるんだよ

 

 一概には言えないし、私の考えだからあんまり鵜呑みにしないで欲しいんだけどさ

 

 ともかく、よく知ること、これが1番大事だって私は思うけど、答えになってる?役に立てたら良いんだけど••」

 

 

「いっいえ!とんでもないです!ありがとうございました!」

 

 

 

 

 

 帰国した父にその話をすると、父はある事を教えてくれた

 

 

 かつて、七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家

 

 そう形容された国の事を

 

 そして、そこで起こった出来事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして•••どうして人は争うんだろう•••」

 

 

 

 

 この日、街中からラ・マルセイエーズの歌声が聞こえていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急に電話なんてどうしたでありますか?お父さま」

 

 

「エルザ••母さんがやられた••」

 

 

「どういう事でありますか•••?やられたというのは•••」

 

 

「50年前と同じだ••婆さんがやられたときと••」

 

 

「!!お婆さまと同じでありますか••まさか•••!」

 

 

 

 

「あいつだ••50年前の悪夢が再びやって来た•••

 

 魔獣が復活したんだ••!」




ずっと昔、世界が今みたいになる前のこと
世界に罰を与えるために神様が遣わされた天使は
傷つき西の果ての街で翼を休めていました
そんな天使を助けたのは果ての街の砦に住んでいた乙女達でした
自分達を滅ぼすはずの者、けれど傷ついたその姿を哀れに思った乙女達は
巨大な蜘蛛の力を借りて天使を谷の底に匿います
乙女達は溢れ出る血を抑える為に順番に天使の首を抱き続けました
そして天使はそのお礼に乙女に金の角笛を授けます
けれどやがて街の人々は天使の存在に気付き谷底に火を放ちます
乙女達は炎に巻かれ天使は首を落とされて息絶えてしまいました
そんな時ついに天使の軍勢が現れ街の空を覆いつくします
けれどどうしたことでしょう、突然高らかなソラノヲトが響くと
天使達が去って行きます、人々の命を救ったのは
最後の乙女が自分の命と引き換えに鳴らした金の角笛の音だったのでした








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