リディアン音楽院の問題児   作:dedicates545

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前回よりシリアスになってしまいました・・・


ストックホルム症候群

「いやぁ、参ったよ参ったよ」

 

 

 笑いながら謳歌は話す

 

 

「笑い事じゃありませんから!鼻骨折してるんですよ!?」

 

 

 

 あの流血騒ぎの際、直ぐに先生達が駆けつけてきた

 

 

 

 ●

 

 

 

「ちょと通してもらって良い!?」

 

 

 

 最初に駆けつけて来たのは高等科の養護教諭の櫻井了子と生徒指導兼クリスと謳歌の担任である風鳴弦十郎であった

 

 

「ちょと見せて見て」

 

 

 

 了子はそう言うと慎重に患部を見ている

 

 

 

「痛みはある?」

 

 

「はい……ものずごぐ……」

 

 

 

 了子が謳歌とやり取りしていると、初等科の方から人影がこちらに向かってくるのが見える

 

 

 

「何事ですか?」

 

 

「ナスターシャ先生」

 

 

 

 ナスターシャ先生と呼ばれた人物は、初等科の養護教諭ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤであった

 

 

 

「何があったのですか?」

 

 

「がおがらゆがにおぢまじだ……」

 

 

「出血がひどいので恐らく折れているかと……」

 

 

「そうですね……我々では詳しく判断しきれますね……」

 

 

 

 そう言うとナスターシャは近くにいた響と未来を呼ぶ

 

 

 

「あなた達」

 

 

「はい!なんですか?」

 

 

「中等科に行って校医のウェル先生を呼んできてくれますか?」

 

 

 

「ウェル先生……ですか?」

 

 

 

「はい、彼は恐らく保健室のほうには居ないと思いますから最初に生物室に行ってみて下さい」

 

 

「あの……大丈夫ですか?あの先生で……」

 

 

 

 未来が不安を示すと、響も同じく不安を示す

 

 

 

「あの……その……何かちょっと不気味というか」

 

 

「まぁ……気持ちは分からなくもないですが、医師免許を持っている者としての自覚は有りますでしょうし……」

 

 

「それにうちの学園は私立だから結構お金が良いのよ?特にウェル先生みたいな外部から招聘されてる人はね」

 

 

 

 ナスターシャの説明に了子が捕捉する

 

 

 

「つまりわざわざ自分からクビになるような真似はしないと?」

 

 

「そういう事」

 

 

「分かりました……」

 

 

 

 未来と響が中等科に向かうと、しばらくしてウェルと共に戻って来た

 

 

 

「全く……僕は色々と忙しいのに……」

 

 

 

 何やらぶつぶつ言いながら謳歌の状態を確認している

 

 

 

「どうですかウェル先生」

 

 

「まぁ骨折は間違いなくしているでしょうが、しっかり応急措置してあるから大丈夫でしょう 後は整形して固定しておけばそのうち治るでしょう」

 

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

 

 

 ナスターシャがウェルに礼を言うと、実験があると言ってそそくさと帰ってしまった

 

 

 

「……あれで本当にお医者さんなんですか?」

 

 

 

 未来が呆れたように言う

 

 

 

「まぁ彼は医師免許は持っていますが、本職は生物学者ですからね」

 

 

「絶対怪しげな薬とか作ってそうじゃないですか……」

 

 

 

 未来とナスターシャのやり取りを遮るように了子は言う

 

 

 

「まぁ大事にならなくて良かったじゃない、謳歌ちゃん?これに懲りて少しはおとなしくしてなさいよ?

 ほら!弦十郎先生とクリスちゃんも怖い顔してないで肩かして下さい」

 

 

『あぁ』

 

 

 

 素っ気なく弦十郎とクリスが答える

 

 

 

 〔ヤバいヤバいヤバい!これマジギレしてるやつじゃん!!〕

 

 

 

 謳歌は内心、鼻の痛みより2人の様子の方がよっぽど恐ろしかった

 

 

 

 

 

 2日後、流血騒ぎの当事者が集められ、当時の詳しい状況を確認する集まりが持たれた

 

 

 

「ていうか授業中にやるんですね」

 

 

「授業サボれてラッキーデェス!」

 

 

「放課後とかにやるものだと思ってたよ〜」

 

 

 

 金曜日に流血騒ぎがあって、週明けの月曜日の9時から集まりが持たれている

 

 

 

「ていうか謳歌さんひどい顔してますけど大丈夫ですか?」

 

 

 

 未来が謳歌に問いかける

 

 

 

「まだ痛むんですか(^-^)?」

 

 

「そんなニコニコして言う事じゃ無いだろエルフナイン……」

 

 

 

 いつも通りニコニコしてるエルフナインにキャロルが突っ込みを入れる

 

 

 

「いや……ね……」

 

 

「大方クリス先輩にこってり絞られたんでしょ」

 

 

「自業自得だな」

 

 

 

 調とキャロルがそんな事を言っていると予想に反した言葉が帰って来た

 

 

 

「この2日間クリスが口聞いてくれないんだ……」

 

 

「口聞いてくれない?」

 

 

「とうとう見限られたんじゃ無いデスか……?」

 

 

 

 なおも謳歌は続ける

 

 

 

「しかも部屋にも入れてくれないし……何か風鳴先生と部屋で何か色々やってるみたいだったし……」

 

 

「あぁ……だから土日泊めて欲しいなんて言ったんですね」

 

 

「謎が解けたデス!」

 

 

 

 切歌と調が納得したように言う

 

 

 

「えっ?……調ちゃん達この人の事部屋に泊めたの?」

 

 

 

 響が驚いたように質問する

 

 

 

「えぇ、今にも泣きそうな顔で“何も聞かずに週末泊めて欲しい”って言われたんです」

 

 

「良くOKしたね……」

 

 

 

 未来も驚いたように言う

 

 

 

「正直私も調が許可するとは思わなかったのデス!」

 

 

「いやぁ……何か見てたら気の毒になってきちゃって……それにこの状態なら流石に馬鹿な事はしないと思ったので……」

 

 

「実際何もなかったデス!」

 

 

 

 そんな会話をしていると、部屋をノックする音が聞こえて来た

 

 

 

「待たせてしまって申し訳ない」

 

 

 

 部屋に入って来たのは弦十郎とクリスであった

 

 共に大きな段ボールを抱えている

 

 

 

「では始めよう 早速だが、今回の件は誰が原因だね?」

 

 

「……私がキャロルちゃんにセクハラしたからです」

 

 

 

 謳歌がばつが悪そうにそう答える

 

 

 

「そうか……他の皆は何か異論などはないかね?」

 

 

 

 各々が大丈夫と意思表示をする

 

 

 

「そうか……謳歌君、君とはクリス君と同様5歳の頃からの付き合いになるが少し甘やかし過ぎたかもしれんな」

 

 

「だけど今回ばっかりは心を鬼にする事にした」

 

 

 

 弦十郎とクリスの意図が分からず皆ポカンとしている

 

 

 

『謳歌(くん)お前(君)を更生させる』

 

 

「手始めにこれは全部処分する」

 

 

 

 クリスはそう言うと、段ボールを開けて中身を机に並べる

 

 

「何これ……アルバムにSDカードにビデオカメラ?」

 

 

「高そうなカメラもあるね……」

 

 

 

 それらを机に並べている間に、謳歌の顔はみるみる青くなっていた

 

 

 

「ちょっと、大丈夫ですか?」

 

 

 

 調の問いかけに反応出来ないほどである

 

 

 

「中身見てみろよ」

 

 

 

 クリスにそう言われ一同で中身を確認しようとするが謳歌が割って入って来た

 

 

 

「ちょっ!ちょっと待って!勘弁して!!」

 

 

「あっ!こらっ!」

 

 

 

 飛び出した謳歌をクリスは羽交い締めにする

 

 

 

「いだだだ!!クリス痛い!!痛いって!!」

 

 

「大人しくしろっ!!」

 

 

 

 謳歌を弦十郎に引き渡した、クリスは改めて皆に中身を確認させる

 

 

 中にはおびただしい数の少女の写真や動画が入っていた

 

 

 

「予想はしてたけどすごいね……」

 

 

「私気持ち悪くなってきちゃったよ……」

 

 

「キモい!キモ過ぎるデス!」

 

 

 

 一同批判の嵐であるがそれもそのはず、謳歌が所持していた写真やデータのほとんどがここにいるメンバーを盗撮したと思われる物であった

 

 

 

「極めつけはこれだ」

 

 

 

 弦十郎が取り出した物は鍵がかけられていたであろう箱と、動画ファイルが記録されているカードであった

 

 

 先程まで暴れていた謳歌の動きがピタリと止まった

 

 

 

「後は自分で話せ」

 

 

 

 クリスに促されるも、謳歌は首を左右に大きく振る

 

 

 

「じゃあここで映像流すか?」

 

 

 

 先程より激しく首を振る謳歌

 

 

 

「じゃあ話せ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お風呂場」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一同絶句である

 

 

 

「まさかここまでとは……」

 

 

「う……気持ち悪くなってきた……」

 

 

「謳歌君、君も分かっているとは思うがここまでくるともう庇いようがない」

 

 

 

 弦十郎が諭すように言う

 

 

 

「残念だが……謳歌君は今後暫く他の生徒との接触が禁止される、基本寮からの外出や他学年への出入り、初等科と中等科への出入りも禁止だ」

 

 

 

「……はい」

 

 

「……それと良い機会だから一度じっくりカウンセラーや校医の先生と面談を……」

 

 

 

 

「……ちょっと待って下さい」

 

 

 

 弦十郎の言葉に調が割って入った

 

 

 

「……つまり何ですか?この人を隔離して更生させると?」

 

 

「まぁ……端的に言えばそうなるな……」

 

 

「それって変じゃないですか?」

 

 

 

 調の言葉からは怒気が感じられた

 

 

 

「どっ、どうしたんだろ調ちゃん……」

 

 

「……あれは本気で怒ってるデス」

 

 

 

 長い付き合いの切歌には分かる

 

 

 

「さっきから聞いてればまるでこの人が異常者みたいな言い方するんですね」

 

 

「まっ、待ってくれ調君!誤解だ!」

 

 

「そっ、そうだぞ調!私達はただ謳歌の事を更生させようと……」

 

 

 

 弦十郎とクリスが慌てて言う

 

 

 

「また言った!!更生?そんな言葉使うって事は端からこの人の事異常者だって言ってるような物じゃないですか!!」

 

 

 

 調は次第にヒートアップしていく

 

 

 

「なんでこの人の人格を全否定するような事しか言えないんですか!? 確かにこの人はどうしようもない位行動が意味不明ですけど? でもそこまで言わなくても言いじゃないですか!!」

 

 

 

 まわりは呆気にとられている

 

 

 

「どうしよう……切歌ちゃん、止めないと……」

 

 

「いや……あれはもう言いたい事言うまで止まらないデスね……調はああ見えて頑固者デスから」

 

 

 

 調はなおも続ける

 

 

 

「それにお2人はこの人と長い付き合いだってさっき言ってましたよね?」

 

 

「あっ、あぁ……5歳の頃からだからかれこれ12年程になるが……」

 

 

「だったら何でさっきみたいな言葉使ったんですか!!小さいころから、一緒にいた人達に自分を全否定されたんですよ!?どれだけそれが苦しいことか分かりますか!!?」

 

 

 

 弦十郎とクリスは言葉が出ない

 

 

 

「調さん、その辺で(^-^)」

 

 

 

 エルフナインが調の左手側に立つ

 

 

 

「調の言うとおりだ、俺はそのやり方には承服できない」

 

 

 

 キャロルは右手側に立つ

 

 

 

「調さんが言った事も最もですが、そもそも欲求を抑圧して押さえ込められた試しはほとんどありません(^-^)」

 

 

 

 エルフナインがいつものニコニコ顔で言う

 

 

 

「だから俺達なりのやり方でやらせてもらう」

 

 

 

 キャロルがそう言うと、調はうつ向いている謳歌を引っ張る

 

 

 

「ほら!行きますよ!!」

 

 

「とりあえず今日から僕達が謳歌さんのルームメイトになりますね(^-^)」

 

 

「ちょっ!ちょっと!」

 

 

「早く歩いて下さい!!」

 

 

 

 調達はそのまま謳歌を連れて行ってしまった

 

 

 

「しっ、調ぇ!置いてかないでデェェス!」

 

 

「響!行くよ!」

 

 

「ちょっ未来!うわぁ!」

 

 

 

 後を追いかけるように切歌、未来、響が部屋からででいく

 

 

 

 

「……何やってるのよ弦十郎君?」

 

 

「了子君か……」

 

 

 

 そこに居たのは高等科養護教諭の櫻井了子であった

 

 

 

「いつから聞いてたんだね?」

 

 

「うーん、調ちゃんが怒ったあたりかな?」

 

 

「そうか……」

 

 

「……だから忠告したじゃない、絶対上手くいかないって」

 

 

「あぁ……君の言うとおりだったな……」

 

 

 

 2人の会話の隣で、クリスはいつの間にかへたりこんでしまっていた

 

 

 

「……大丈夫?」

 

 

「先生……私、間違ってたのかな……」

 

 

「今はまだ分からないわ、でもあなたが謳歌ちゃんの事大切に思ってるのは伝わったはずよ?」

 

 

 

 クリスはいつの間にか泣いていた




シリアスな上長くなってしまいました・・・
次はもっと頑張ります・・・

次回はフランスにゆかり?のある3人組が登場予定です

感想、ご指摘ご意見なんでも構いません、お寄せ下さい

新しい作品書いても良いですか・・・?(詳細は19話あとがきをご覧下さい)

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