遅れちゃってごめんなさい
珍しくとても緊張している
こんなに緊張しているのはいつぶりだろうか
いつもはへらへらとごまかしてきたが、今回ばかりはそうはいかない
「あっ、あの•••」
そう言いながら、未来とその母である未咲にぺこりと頭を下げる謳歌
「あら••ごめんなさいね謳歌ちゃん、もうそんな時間だったかしら•••」
いそいそと時計を確認しながらベンチから立ち上がる
「いや、その•••違うんです未咲さん、未来ちゃんに用があって•••」
「未来ちゃんに?そう•••
じゃあ、終わったら連絡ちょうだいね
じゃあまた後でね未来ちゃん」
「うん•••」
未咲は未来の頭を撫でるとその場を後にする
「••••••••」
「••••••••」
その場を支配する沈黙
だがいつまでも黙ったままでいるわけにもいかない
意を決して喋りだす
「••••未来ちゃんってさ••かみゅのきぇきゅれいらよれ」
噛んだ
思いっきり噛んだ
もう最悪!私のバカ!こんな大事な時に噛んだよ!
だって緊張したんだもん!
口の中パサパサだし!?
心臓バクバクだし!?
はぁ••••
ひとしきり心の中でそう叫んだ後、隣に座る未来に視線を移す
「•••••!!」
ベンチの肘掛けに突っ伏してぷるぷるしている
「あの•••未来ちゃん•••?」
なおも突っ伏しぷるぷるしている未来の背中を、人差し指でなぞってみる
「くっ••!あははは!」
するとどうだろうか、お腹を抱えて笑いだした
「みっ、未来ちゃん•••?」
突然の出来事に困惑する謳歌、なおも未来は笑い続けている
「すいません••ふふ••あんまりおかしくって••」
謳歌が自らやってきたということは、さっきの件で何かしらの話があってのことだろう
謳歌はやさしい性格だ、怒っている所など見たことがない、だがさっきの自分の態度はあまりにも酷いものだったから
ひょっとすると厳しい言葉をぶつけられるかもしれない
と、未来は身構えていたのだが、怒っている感じは皆無だし思いっきり噛んだと思ったら顔を覆ってうなだれているしで、謳歌らしいと言えば謳歌らしいのだが、そんな様子を見ていたらなんだかおかしくなってきてしまった
というのが事のてんまつである
「なんだかごめんね?しまり悪くて••」
謳歌は苦笑いを浮かべながら少し恥ずかしそうにしている
「いえ、•••こちらこそさっきはごめんなさい」
「ううん、私は全然構わないよ?」
少し間をおいて、未来は話し始める
「私•••親友ってものに憧れていたんです•••」
未来の言葉に?マークを浮かべる謳歌
未来ならば、対人関係も良さそうだし、自分なんかよりよっぽどそういう関係に到れると思ったからだ
「どうしてって顔してますね、まぁ•••確かに疑問に思うのも分かります
私って、‘‘友達’’や‘‘友人’’って呼べる人は沢山居るんです
だけど•••‘‘親友’’って呼べる人いなかったんです
上辺だけの関係じゃない、そんな‘‘親友’’が欲しかった••
そして響に出会ったんです•••
初めて親友って呼べる人に出会えたんです••
だけど、いつも怖かった••
いつか響に見限られるんじゃないかって•••
本当に怖かった••
だから、謳歌さんと響が会ってるのを知って、取り乱してしまってあんな酷いことを•••
•••贅沢な悩みですよね」
謳歌は未来を引き寄せ、優しく頭を撫でる
「うん、よく頑張ったね、えらいえらい」
「あっ、あの•••」
当惑している未来をよそに、謳歌は続ける
「未来ちゃんさ、あんまり人に甘えたこと無いでしょ?
甘えられた事は多いと思うけど
未咲さんが言ってたよ?いつも未来ちゃんは気を使ってるって」
「•••そうかもしれません」
「うちに編入する時だって、1日何10時間もピアノの練習してたって
合格出来たけど腱鞘炎になって3ヶ月くらい両手使えなかったんでしょ?
だけどそんなときでも私達夫婦に気を使ってって未咲さん言ってた」
未来はバツが悪そうに答える
「えぇ、2人とも忙しいので•••」
「もう少し甘えてほしいってよ?せっかく親子なんだからそんな他人行儀なことしちゃだめだよ」
自分がこんなことを人にアドバイスするなど滑稽なことこの上ないが、人は人自分は自分だ
未来の家庭はある種‘‘普通の家庭’’だ
それぞれ形こそ違えど親子の絆なる物は存在していると考える
なぜそれを自分に当てはめて考えられないのかと聞かれれば、答えは簡単
そもそも親子という認識がないからであろう
愛情のかけらも感じないし、会いたいかと言われれば、全く興味がない
心底どうでもいい
憎んでいるわけでもない
そもそも憎むほど関わったことがないからそんな感情微塵もわかない
本当にどうでも良かった
だがどういうわけか、両親の話題になると決まって過呼吸を起こす
過呼吸の時の記憶はいつもおぼろげにしか無いが、どうやらうわ言のように‘‘ごめんなさい’’と言っているらしい
校医のウェルが言うには、‘‘トラウマになっているのだろう’’と
厄介なことこの上ない
苦しいし、周りに迷惑をかけてしまう
本当に勘弁してほしい
しかし、ただ1つ自分を産んでくれたことにだけは感謝している
結果的に今のみんなと出会えたのは両親というよくわからない存在が自分を産んでくれたから
それだけは感謝してもいい
「あの•••」
「あぁ••ごめんごめん、とにかく私は気にしてないし、未来ちゃんはもう少し人に甘えてみるといいよ」
そう言うと、謳歌は立ち上がる
「行こう未来ちゃん、風鳴さんもそろそろ出るだろうし
今日で旅行も終わりだから、楽しもうね」
そんな二人の様子を釈然としない表情で、琴音は見つめていた
旅行編はこれにて終幕です
ていうか交互に書いてたから超読みづらかったですよね
更新も遅いし・・・
次回からはミラアルクちゃんと唱歌のお話の続きです
感想あったらぜひ・・・
よろしくおねがいします