パリから約500km、高速鉄道とバスを乗り継ぎ、唱歌とミラアルクはロゼール県にあるとある小さな村にやってきていた
目的はエルザ・ベートの母親であるキルスティン・ベートの怪我の治療である
バスはレ・ウバックという村のバス停に停まる
バスを降りると、30代後半くらいの男性が近寄ってきた
【はじめまして、あなたがショーカさんですか?】
【はい、ではあなたが••】
【はい、キルスティンの夫でエルザの父のヨセフ•ベートです
大変なときにありがとうございます
本当に感謝します】
そう言いながら握手を交わす2人を見つめているミラアルク
なんせミラアルクには何を話しているかさっぱりである
ふと、バス停の後ろにある大きな木が目に入った
木の根元には、何やら石碑のようなものが建てられている
案の定、これもフランス語なのかさっぱり何が書いてあるのか分からない
「それは慰霊碑だよ」
不意に、そう日本語で話しかけられた
「はじめまして、エルザから聞いているよ
ミラアルクさんだね
エルザの父のヨセフです」
「あっ、はい•••ミラアルク・クラウンシュトウンです」
目的地であるエルザの家までは、ここからさらに30分ほど車で走った所にあるらしい
そしてふと、のどかな風景の中に不釣り合いな物が目に入る
ところどころ民家の塀の上や柵の周りに、有刺鉄線が巻き付けられている
最初は防犯の為かとも思ったが、それにしたら少し仰々しい気がする
「それは昔の名残だよ」
そう話してくれたのはヨセフである
「昔狼が原因で大勢の人が亡くなったんだ、あのバス停の慰霊碑も最初に狼に殺された女の子を弔う為に当時の村の人達が建てた物ときいているよ
今でも年配の世代はああして狼に襲われないようにしている家が多いんだ
若い世代はあまりそういうことはしていないけどね」
昔エルザがこの話題を話していたのを思い出した
基本的に自分は怖い話はてんで駄目である
特に幽霊なんかは冷や汗が出るほどだ
エルザが話していたこの話は、通称‘‘ジェヴォーダンの獣’’
と呼ばれているらしい
実際にあった事件の話のようで、映画にもなったりしているそうだ
大勢が狼に殺され、その姿形から‘‘魔獣’’との噂も出ていたとのこと
旧ジェヴォーダン地方、現在のロゼール県
エルザの出身地であるこここそが、魔獣騒ぎの舞台だった
そしてここレ・ウバック村は、最初の被害者の女の子が殺された村だということ
村の近くで行方不明になり、後日内蔵を食い荒らされた状態で発見されたという
そこで怖くなり、エルザの話を遮ってその後の話は聞いていない
15世紀には、首都のパリが狼の群れに襲撃されたとの話も残っているようで、何にせよ昔から狼による被害は深刻だったようだ
「おまたせしました、見えてきました」
そうヨセフが声をかける
「それから•••上に何かしら羽織ることをオススメします
なければ後ろのトランクにコートが入っているので、それを使って下さい」
外気はまだ冷たさを感じられないし、特別今日が肌寒いという訳でもなかったが、家に近づくにつれその言葉の真意が明らかになった
「到着しました、足元に気をつけて下さい
滑るかもしれませんから」
目の前に広がっているのは、一面凍りついた木々と家屋の姿だった
出来る限り定期的に投稿がんばります•••
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